Intent Exchange、有人機との衝突回避のためのドローン運航管理システムを実証
Intent Exchange株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役:中台 慎二、以下Intent Exchange)は、2025年2月に静岡県御殿場市にて、有人機との衝突を回避するために有用なドローン運航管理(UTM)の実証を行いました。
従来、ヘリコプター等が場外離着陸場に離着陸する際には、同じく低高度を飛行するドローンとの衝突が懸念されていました。本実証では、一時的なジオフェンス(飛行不可とされたエリア)や、ドローンのリアルタイムな位置情報の把握、侵入検知などを行うことで、有人機との衝突回避に有用であることを実証しました。Intent Exchangeは、本実証の成果を踏まえ、空飛ぶクルマも含めた様々なエアモビリティの安全かつ効率的な運航管理の社会実装を進めます。
本実証は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「 次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト(ReAMoプロジェクト、注1)」の取り組みの一環として実施しました。また、本実証の成果は、「無人航空機の運航管理(UTM)に関する制度整備の方針」(注2)に記載されるUTMサービスプロバイダ(USP)として必要と考えられる機能(リアルタイムでの位置情報共有や逸脱検知など)の検証に用いられる予定です。
なお、本実証実験の成果は、Japan Drone 2025(2025年6月4日~6日、幕張メッセ)で展示いたします。
1. 背景
ドローンや空飛ぶクルマは、新たなエアモビリティとして注目されていますが、低高度空域には既存航空機も飛行するために、これらの間での安全で効率的な運航管理が必要となります。そこで、有人機との連携を行うUTMの研究開発が、ReAMoプロジェクトで行われています。制度面でも、航空局のドローン情報基盤システム(DIPS2.0、注3)を中心とする現在の運航管理に、認定USPを取り込む制度整備方針が示されています。DIPS2.0では、主に静的な情報である飛行計画などが管理されるのに対して、民間の認定USPでは、機体のリアルタイムな位置情報などの動的かつ詳細な情報が管理されます。これらの動きは国際的な動きであり、関連する団体として、ICAO(注4)やJARUS(注5)といった国際的な航空行政ルールを定める団体、ASTM(注6)やEUROCAE(注7)といった民間の国際標準化団体、GUTMA(注8)といった国際業界団体などがあります。現在は、各国で認定制度化が進んでおり、我が国では、一部の機能に関する認定が2025年度に予定されています。
2. 実証
2.1 実証概要
-
日時:2025年2月27日
-
場所:御殿場市NECモビリティテストセンター(場外離着陸場)
-
実施者:Intent Exchange、日本電気株式会社(以下、NEC)
2.2 従来の課題
ヘリコプター等の有人機が離着陸する際には、低高度を飛行するドローンとの衝突リスクがあります。特に、空港等以外の場外離着陸場において、安全確保のための対策が必要と言われています。
2.3 実証の目的
場外離着陸場での有人機とドローンの衝突回避シナリオを設定し、その実現に必要な機能の技術的な検証を目的に、実証実験を行いました。また、そのシナリオを運航者視点での運用の容易性について机上検証しました。

2.4 検証内容
シナリオとして、ドクターヘリの運航管理者(ディスパッチャー)が、救命救急のために場外離着陸場に離着陸する際に、USPのジオフェンス設定サービスを用いて、周辺に一時的なジオフェンスを設定する想定をしました。
-
有人機運航管理者による一時的なジオフェンスの設定
一時的なジオフェンス設定の機能検証を行いました。ドローンとの計画調整を行うために、経路全体の飛行計画を共有する方式に対して、本方式の方が、飛行中の飛行経路の変更が容易である点なども検証で確認しました。
-
ドローンの飛行計画とジオフェンスとの干渉確認
USPを用いるドローン運航者が飛行計画を設定する際に、ジオフェンスと干渉した計画は設定できないことを検証しました。ジオフェンスとしては、短期間で一時的なジオフェンス(ASTM標準)と、空港周辺などの長期間・恒久的なジオフェンス(EUROCAE標準)とを同様に扱えることを確認しました。設定された飛行計画は、ドローンがその内部で運航されるように管理されるジオフェンスとして扱われます。
-
リモートIDによるドローンのリアルタイム位置情報表示
USPを用いるドローン運航者や有人機運航管理者に対して、場外離着陸場周辺のドローンの位置情報が提供できることを実証しました。対象のドローンは、リモートID(注9)を搭載した機体であり、NECが実証したリモートID共有サービスを用いて得られた情報となります。このサービスは、場外離着陸場周辺の受信機で得られた情報を、他のUSPに提供します。
-
有人機のリアルタイム位置情報提供
USPを用いるドローン運航者に対して、周囲を飛行する有人機の位置情報を提供します。この情報は、既存航空機や空飛ぶクルマに搭載されるADS-B(Automatic Dependent Surveillance – Broadcast、放送型自動従属監視)の信号を低高度用受信機によって受信し、監視SDSP(Supplemental Data Service Provider)を介して提供されるものです。
-
ドローンの逸脱・侵入の通知
USPは、各運航のジオケージからの逸脱と、ジオフェンスへの侵入を検知します。検知された情報は、ドローン運航者や有人機運航管理者などに画面やメール等で通知されます。実証では、UTMに接続していないドローンが、場外離着陸場の周辺に侵入したことを検知する検証を行いました。
3 今後の展望
今後も、本実証のように、国際標準に基づく技術体系で構築されたシステムの検証を行うとともに、認定USPの制度設計の観点から、その要件検討の材料となる運用検証を開始します。また、ドローンと空飛ぶクルマ、既存航空機による初期の空域共有に向けた統合的な運航管理システムのアーキテクチャ検討(とりまとめ:国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA))に得られた知見を反映します。
本件に関する問い合わせ
Intent Exchange株式会社
メール:info@intent-exchange.com
(注1)次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト/Realization of Advanced Air Mobility Project:ReAMo(リアモ)プロジェクト~(https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP2_100181.html)
(注2)無人航空機の運航管理(UTM)に関する制度整備の方針(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/kanminkyougi_dai19/sankou.pdf)
(注3)ドローン情報基盤システム(Drone/UAS Information Platform System)/
DIPS2.0~(https://www.mlit.go.jp/koku/content/001443274.pdf)
(注4)International Civil Aviation Organizationの略。国連の専門機関であり、国際民間航空が安全にかつ整然と発達するように、また、国際航空運送業務が機会均等主義に基づいて確立され、健全かつ経済的に運営されるように、一定のルール等を定めることを目的としている
(注5)Joint Authorities for Rulemaking on Unmanned Systemsの略。有志国の航空当局において、ICAO で対象外のものも含めた無人機システムに関する国際規則づくりについて議論するため発足。無人機システムについて、技術面、安全面及び運航面での統一的な指針を定め、各国において当該指針を踏まえた規則を整備することで、無人機を安全に運航させることを目標としている
(注6)正式名称は、ASTMインターナショナル。旧称は、American Society for Testing and Materials。世界最大・民間・非営利の国際標準化・規格設定機関。リモートIDなどの標準も定めている
(注7)European Organization for Civil Aviation Equipmentの略。航空機器およびシステムのための技術規格を策定する欧州の非営利団体。UASやU-space関連の技術標準も策定
(注8)Global UTM Associationの略。UTMの標準化と相互運用性を推進する国際業界団体。通信事業者、UTMサービスプロバイダー、ドローンメーカーが参加
(注9)リモートIDは、ドローンの登録情報や位置情報などを電波で遠隔地から発信する機能であり、原則、全てのドローンが搭載することを義務付けられたもの
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像