【イベントレポート】盆栽と瓦鉢のエキシビション「盆瓦 -bon kawara- 2024」を開催 〜TRADMAN’S BONSAIと瓦職人大佛が作る神獣の世界〜
TRADMAN’S BONSAI 小島氏と大佛 庄司のクロストークを公開!
瓦を始めとする日本建築を世界に発信し、後世につなぐ瓦職人集団、株式会社大佛(本社:京都府京都市、代表取締役:庄司達馬)は、2024年11月30日(土)〜12月1日(日)白沙村荘にて「盆⽡ -bon kawara- 2024」を開催いたしました。TRADMAN’S BONSAIと大佛の瓦鉢による合作の展示や、TRADMAN’S BONSAI 小島鉄平氏と大佛代表 庄司によるトークセッションなど、日本の伝統に浸っていただく2日間となりました。
◼【トークセッション】TRADMAN’S BONSAI小島鉄平氏と大佛代表庄司達馬がクロストーク
盆栽界の新星 TRADMAN’S BONSAI小島鉄平氏(以下、小島氏)と、瓦や日本建築を担う大佛 庄司達馬(以下、庄司)。業界は異なれど互いに日本文化の継承を使命とする両氏が、仕事や作品への姿勢について語りました。
かねてより魅力を感じていたTRADMAN’S BONSAIと、念願のコラボレーション
— お二人の出会いは?
(庄司)共通の知り合いをきっかけに繋がりました。元々TRADMAN’S BONSAIの作品がかっこよくて追っていたのですが、実際に鉄平さんとお会いすると一緒に何かやりたい!という気持ちが強まりました。瓦鉢と盆栽のコラボを思いついてすぐに瓦鉢を試作して、作品を持って訪問販売のように会いに行きました(笑)
(小島氏)瓦鉢の技術が素晴らしくて、「こんなもの見せられたら、盆栽植えるしかないでしょう!」という気持ちにさせられました(笑)。ワクワクと高揚した気持ちになりましたね。
妥協をしない“鉢合わせ”で、木と鉢のペアリングを追求
—「盆⽡ -bon kawara- 2024」開催にあたって、こだわりや苦労はありましたか?
(小島氏)木と鉢の相性が盆栽の良し悪しを決めるので、鉢選びはこだわりました。木と鉢を合わせることを「鉢合わせ」と言いますが、ここは妥協できないポイントなので庄司くんにはわがままをたくさん言いました(笑)。鉢は木にとっての服のようなものですから、当ててみないとハマるかどうか分からないんです。
(庄司)一時は鉄平さんからの電話が怖いぐらいでした(笑)。でもここで妥協したら良いものは作れないし、いっそ良いものをたくさん作って鉄平さんを困らせてやろうか!という意気込みで、鬼板師と相談して、試行錯誤していきました。
(小島氏)こういうぶつけ合いをしないと良いものは生まれないですからね。改良を重ねて良い作品を作り上げて、どんどん作品をバージョンアップしていくのが理想です。庄司くんとは良いセッションができました。
違うフィールドからしか、インスピレーションは得られない
— どうやってユニークな発想を得るのでしょうか?
(小島氏)やはり良いインスピレーションが必要ですね。例えば、会場の白沙村荘のお庭は奥行きがあってとても美しいですが、盆栽ではこの奥ゆきを表現できないんです。でもこういう風景を見るからこそ、こんなものをつくりたい!という創作意欲が刺激される。日々の生活の中から吸収して学んでいくしかないですね。
(庄司)僕も同じ意見で、瓦を睨んでいても瓦のデザインは浮かばない。瓦以外のものからしか、インスピレーションは得られない。音楽を聞くことも多いですし、朝や晩でまたインスピレーションも変わってきます。色んな刺激を受けるようにしていますね。
「嫌いな人ほど、自分から挨拶しろ!」
— インスピレーション意外に、仕事の上で大切なことは?
(小島氏)礼儀礼節も大切にしています。「おはようございます」「お邪魔します」という挨拶は必ず自分からします。他人に言われて返す挨拶は返事でしかない。技術は時間と共に身につきますが、礼儀礼節は日頃から意識しておかないと身につかないですよね。
(庄司)挨拶は本当に大事ですね。僕は親方に「嫌いな人ほど、先に挨拶しろ」と叩き込まれてました。どれだけ相手が苦手な人であっても、これだけは守り通しています。
自分の気持ちに素直に
— 人間関係は挨拶から始まりますもんね。では、仕事をする上でブレてはいけないポイントはありますか?
(庄司)好きなことに一点集中することが大事だと思っています。大変なことはいくらでもあるけれど「これが自分の好きなものだ!」と思えるものに取り組むようにしています。
(小島氏)嘘をつかないこと。作品にしろ仕事にしろ、嘘は結局バレてしまうと思います。逆に、嫌な仕事は嫌だ!といって断ってます(笑)。今日は帰る!とかね(笑)。
(庄司)嘘をつくと自分がずっと気になってしまいますもんね。
— 自分の心に素直にいることで、自分が選んだもので身の回りの人や環境を揃えていくことができそうですね。お話をありがとうございました。
◼【7点の作品をご紹介】盆栽、瓦鉢、影が形作る神獣の世界
「盆瓦」にてお披露目した作品7点をご紹介いたします。どの作品も小島氏こだわりの盆栽と、大佛庄司が演出した瓦鉢とが融合した作品です。躍動感ある盆栽、緻密な瓦鉢、こだわりのライティングで生き生きと映し出された影の三位一体が織りなす神獣の姿です。
玄武 ーGEMBUー
真柏 / 模様樹 / 推定樹齢80年
北方を守護する玄武は、亀と蛇が合体した姿をしています。真柏のうねうねと湾曲しながら伸びる幹は蛇のようであり、そこに寄り添う幹は亀の甲羅のような造形です。瓦鉢は、亀甲の堅硬な質感と蛇のなめらかな曲線という異なる動きを調和させて表現しています。
白虎 ーBJAKKOー
真柏 / 模様樹 / 推定樹齢300年
西方を守護する白虎は、筋骨隆々とした身体を持っています。この威徳たる姿を円形の瓦鉢に表現すべく、筋肉の隆起や毛並みを緻密に計算し、一刀ずつ彫り込んで仕上げています。さらに、虎が風をまとい、いまにも吠え出しそうな雰囲気を宿しています。鋭く伸びる真柏の幹模様は、長い年月を経てもなお力強く、雄々しく立ち上がった虎が牙を剥いているようです。
ドラゴン ーDRAGONー
真柏 / 斜幹 / 推定樹齢200年
盆栽と瓦鉢が一体化して完成する「盆瓦」の真髄を体現した唯一無二の作品です。斜幹の力強い樹形はドラゴンが天を駆け上がる姿、幹の舎利(白い部分)はドラゴンの胴体を思わせます。盆栽の枝ぶりを細部まで計測し、接続部分を調整する作業は、繊細さと集中力を極限まで要するものでしたが、盆栽と瓦鉢が完全にひとつになる瞬間を表現するという挑戦の軌跡が、壮大な光景を生み出しています。
青龍 ーSEIRJUー
真柏 / 半懸崖 / 推定樹齢150年
東方を守護する青龍が、雲を切り裂いて天に昇る姿を表現しています。半懸崖の樹形の真柏は、松葉が雲のように見え、幹は青龍が鉢から伸び上がっているかのようです。瓦鉢は、青龍の顔を上向きにすることで、真柏の枝との垂直方向の対比を強調しており、天を仰いだ瓦鉢の青龍がそのまま真柏に憑依していくようです。
朱雀 ーSUZAKUー
五葉松 / 模様樹 / 推定樹齢100年
南方を守護する朱雀が、空へ飛翔する瞬間を表現しています。瓦鉢は、生命の再生を象徴する朱の力強さや炎の揺らぎを形にするため、彫りの深さと角度を微調整しながら彫り込んでいます。瓦鉢にそびえる凛とした五葉松は、美しい朱雀がいまにも飛び立たんと両翼を広げる姿を彷彿とさせます。
化鯉 ーBAKEGOIー
真柏 / 懸崖 / 推定樹齢80年
激流に逆らいながら天を目指して泳ぐ鯉が、やがて龍へと変化する「登竜門」の世界観を表現しています。瓦鉢に彫刻された異形の鯉は、真柏の枝と融合することで天空への道を示唆します。枝棚は、激流の周囲を囲む山に見立てており、力強く突き進む鯉の姿が際立ちます。白沙村荘の池を泳ぐ鯉と瓦鉢、そして盆栽が渾然一体となり、自然の神秘と変化の力を感じることができます。
唐獅子 ーKARASHISHIー
赤松 / 文人木 / 推定樹齢80年
瓦鉢から伸びる赤松は、しなやかに湾曲し、躍動的な獅子の身体を連想させる幹模様が特徴的です。対して、幹に反するように上を向く松葉は、勇猛な獅子のたてがみを思わせます。唐獅子の親子を描いた瓦鉢は、親獅子の威厳と子獅子の無邪気さが織りなす家族の絆を表現しています。瓦鉢に彫り込まれた「竹」と「梅」、そこに「松」が植えられることによって、松竹梅という日本の美意識を形作ります。
◼盆瓦2024イベントをVRで体験! 3D ARCHIVE チケット発売中
盆瓦2024をより多くの皆様にお届けすべく、イベントの様子をVRで体験いただけるチケットを発売しております。日中の展示に加え、幻想的な夜間特別バージョンも初公開。さらに、チケット購入者限定で、オンライン限定アイテムの先行販売や特別映像へのアクセスも。まるで会場にいるような特別な時間をお届けします。
◼【瓦鉢の成形実演】鬼板師 川﨑氏がユニークな作品作りを披露
— 作品作りにかかる時間は?
(川﨑氏)1つの作品を作るのに、1ヶ月強かかります。作品のイメージを膨らませて図面に起こし、成形するまでが約1週間程。その後乾燥の工程で3週間ほどかかり、窯入れ〜窯出しに5日ほどかかります。
ー 瓦鉢のモチーフは?
(川﨑氏)TRADMAN’S BONSAIの小島さんと、大佛の庄司さんをモチーフにしました。
小島さんをイメージした骸骨は頭の中に松の葉を配置しました。口から松の枝を這わせて、言霊を通してお弟子さんたちに伝承していくイメージを表現しました。
庄司さんはとにかくエネルギッシュなので、力強さを表現するために大海原を描きました。頭の中には宝珠※を入れ込み、生業である屋根瓦作り・日本建築が常に頭の中にあることを表しました。
※宝珠:仏教用語で宝の玉。お寺の屋根などに取り付けられる。
◼【ライブパフォーマンス】小島氏が盆栽の剪定を実演
レセプションパーティでは、小島氏が紅葉の剪定をライブパフォーマンスしました。植栽はもみじです。もみじは春の新芽、夏の鮮やかな緑の葉、秋の紅葉、冬の寒樹(葉がない姿)と、一年を通して美しい姿を楽しめる点が特徴です。
朱色に染まったもみじの葉と盆を覆う青々とした苔の対比が美しい作品に、会場は拍手に包まれました。
◼【次世代へ伝統継承を】ミニ盆栽作りのワークショップ
いのちといのちのダイアローグ 第1回「BONSAI」として、TRASMAN'S BONSAI の盆栽職人とともに子どもたちがミニ盆栽を作るワークショップを開催しました。(主催:HOUOH株式会社)
参加者の子どもたちは、挿木をしたり苔を工夫して配置したりしてオリジナリティ溢れる盆栽作りを楽しみながら、盆栽の伝統を学びました。
子どもたちのコメント
・盆栽を作るのは初めてだったので嬉しかった
・先生が優しく作り方を教えてくれて楽しかった
保護者のコメント
・子どもにすごく良い経験をさせることができました。ありがとうございました。
◼大佛 庄司よりご挨拶
イベントを手掛けたのは今回が初めてのことで、私自身にとって大きな挑戦でした。盆栽と瓦のコラボレーションは未知の領域でしたが、瓦という素材がこんなにも豊かな表現を秘めているのだと、改めて実感する機会となりました。瓦はあまり目立たない部類で、言わば「静の建材」ですが、盆栽という生きたアートとの融合により、瓦そのものが呼吸を始めたような躍動感を感じていただけたのではないかと考えております。
最後になりますが、イベントにご来場いただいた皆様、そして共にこの挑戦を支えてくださった全ての方々に、心から感謝申し上げます。この経験を糧に、瓦が未来の文化に息づく存在となるよう、さらなる挑戦を続けてまいります。
◼TRADMAN'S BONSAI 小島 鉄平氏 プロフィール
株式会社 松葉屋
代表取締役社長 小島 鉄平
千葉県柏市松葉町にて幼少期を過ごし柏市立松葉中学校を卒業。
音楽、ファッション、タトゥーなどストリートカルチャーの虜となった学生時代を経て、バイヤーとしてアパレル業界にて活躍。海外へ買付けに行く内に、日本文化の素晴らしさに改めて気づき、『盆栽』の歴史の深さや美しさに魅了される。『日本の伝統文化である盆栽を世界へ伝えたい』と一念発起し、2015年「TRADMAN'S BONSAI」を結成。
(2016年(株)松葉屋を設立)
唯一無二の世界観で『盆栽』のある空間を演出し「shu uemura」
「NIKE」「Dior」「RIMOWA」など様々なブランドやアーティストと共演。
『伝統とは革新の連続』を胸に、日本の格好良さを盆栽を通して、老若男女、そして世界へと発信している。
2023年、2024年 Land Roverディーラーアンバサダー就任。2024 Forbes Japanカルチャープレナー30に選出。
◼株式会社大佛 代表取締役 庄司達馬 プロフィール
株式会社大佛
代表取締役 庄司達馬
1983年奄美大島生まれ、京都育ち。幼少期のホームステイ経験や高校時代のシアトル訪問が契機となり、海外で活躍する職人を志す。高校卒業後に単身渡米し、グラフィック系専攻でコミュニティカレッジを修了。
帰国後は、当時国内でも著名であった瓦施工会社「大佛(Daibutsu Co., Ltd.)」に入社し、修業に励みむ。6年にわたり、瓦職人として技術を磨くと同時に、伝統的な日本建築技術のみならず、西洋建築とのデザインの融合に取り組み、新しい価値を創出することに尽力する。その後、27歳の若さで社長に就任し、内外装工事や日本家屋の建設など事業領域を拡大させ、今もなお革新を続ける。
英語力を活かし、オーストラリア、アメリカ、ドバイなど世界各地からの依頼が舞い込み、伝統技術とモダンな西洋デザインを融合させた独自の施工スタイルを発信。海外の顧客からも高い評価を受け、日本の伝統を守りながら新たな価値を提供し続けている。
主な実績:二条城、永観堂、金戒光明寺、栗東トレーニング・センター、天平山 坐禅堂(アメリカ・カリフォルニア)BANCOORA -INN(オーストラリア)など
◼京都 白沙村荘 橋本関雪記念館
白沙村荘は日本画家、橋本関雪が自身の制作を行うアトリエとして造営した邸宅です。10000平方メートルの敷地内には大正〜昭和初期に建築された居宅、日本画の制作を行っていた3つの画室、茶室、持仏堂などの建造物が散在しており、国の名勝に指定されている池泉回遊式庭園は7400平方メートルにおよび、平安から鎌倉時代にかけての石像美術品が多く置かれています。
後援:京都府、京都市、京博連、京阪ホールディングス株式会社
協力:朝日放送テレビ株式会社、株式会社聖護院八ッ橋総本店、ビリキナータ、福島酒店、宮崎造園
協賛:栄四郎瓦株式会社、UDS株式会社 ホテル カンラ 京都、株式会社寅壱
制作協力:奏 -KANADE-
運営協力:SOUND CREATOR
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