鋳造、鍛造、エンジン製造の分野における“ものづくり”企業のIJTTと横浜国立大学が共同で藻場再生に関する共同実証研究を開始
株式会社IJTT(本社:神奈川県横浜市神奈川区、代表取締役社長:瀬戸 貢一、以下IJTT)と国立大学法人横浜国立大学(神奈川県横浜市保土ケ谷区、学長:梅原 出、以下横浜国立大学)は、企業版ふるさと納税を活用して実施される「神奈川県まち・ひと・しごと創生基金科学技術政策大綱推進事業」のうち、『成長産業の創出・育成等に関する実証事業』に採択された同大 大学院環境情報研究院 自然環境と情報部門 髙山 佳樹 助教の「海藻類の現場培養実験による藻場再生技術の検証」において、共同実証研究を開始しました。


■背景
神奈川県は東京湾と相模灘に面し、その海岸線は約431km、全国で第27位の規模です。近年、神奈川県が接する海では、海水温の上昇や藻食生物の増加、海水の貧栄養化などの影響から、「藻場(海藻や海草がたくさん生えている海の森)」が衰退・消失する「磯焼け」が進行しています。藻場は水産生物の産卵場や幼稚仔魚等の生息場、海藻類を食す生物の餌場であり、海の生き物の多様性を維持する機能を有します。また、二酸化炭素の吸収・貯留源としての機能が注目されるなど、藻場の再生が強く求められています。

■実証事業概要
今回の実証事業では、「失われた藻場は再生できるのか?」「どんな方法が藻場再生に適するのか?」といった問いに対し、科学的な検証を進めます。
まず、相模湾の西部と東部において、海の環境を詳しく調査。そのうえで、食害防除の手法を検討、植物由来の新素材(ミネラルなど)や鉱さい※1を活用し、早熟カジメ※2とアカモクを対象に、その成長や藻場の再生にどのような効果があるかを、実海域で実験、分析します。
※1鋳造工程により発生する砂、ダスト、スラグ、等
※2 通常のカジメより成熟に要する期間が短く、食害に遭う前に繁殖が可能
【現場海域への設置状況】

これらの取り組みを通じて、相模湾において最も効果的な藻場再生の方法を見つけ出し、将来的には他の地域でも応用できるよう、社会実装を目指しています。最終的には相模湾をモデルケースとして、藻場再生に向けた技術とその活用方法を示し、持続可能な海洋環境の実現に寄与してまいります。
■IJTTの果たす役割
IJTTでは、鋳造品の製造により年間約8万トンの鋳物砂(鉱さい)が発生しています。鋳物砂はこれまで、主にセメント原料として活用されてきました。しかし、より環境に配慮した資源循環の仕組みが求められる中で、農地や海洋など暮らしを支える必要不可欠な場への利活用を検討してきました。
IJTTは今回の実験で、新たな活用方法と循環型の仕組みづくりのため、資材の設計、製作を担当。安定供給が可能なIJTTの鋳物砂は、社会実装後に港湾資材としての利用が期待できることもあり、今回の実証実験では約800kgを提供する予定です。また、資材が海中でどのような変化を見せるか、海藻類の成長に必要な無機栄養塩※3の溶出を分析する役目も担っています。
※3植物や藻類などの生物が成長するために必要な、無機物の栄養成分のこと。主な成分は窒素、リン、ケイ素等
■展望
IJTTはこれまでも、長崎県大村市のブルーカーボンプロジェクトへの寄付などを通じて藻場の再生を支援してきましたが、この実証を通じて、他の自治体への展開や社会全体への循環型の価値の提供を引き続き推進してまいります。
今後は、資源循環による環境負荷の低減にとどまらず、脱炭素社会の実現に向けた貢献の一環として、ブルーカーボンクレジットの創出・活用にも積極的に取り組んでまいります。
■神奈川県政策局いのち・未来戦略本部室 穂積 克宏 科学技術担当部長 エンドースメント
本実証事業は、藻場再生の拡大やブルーカーボンクレジットの促進を目指している本県にとって、環境政策や水産振興の観点から極めて意義深い取組です。
相模湾では磯焼けが深刻な問題となっており、藻場再生技術の開発が急務となっています。そのため、産学官が協業して取り組んでおり、特に、現場海域での高度な実証を可能とした地元漁業者や本県水産技術センターとの連携は高く評価できます。
本モデルが藻場再生や生物多様性の確保につながれば、今後、他地域への実装にも大きな期待が寄せられます。
■国立大学法人横浜国立大学 大学院環境情報研究院 自然環境と情報部門 髙山 佳樹 助教 エンドースメント
私が所属する地域連携推進機構 臨海環境センターは長年の海洋観測を通して、海洋環境の急速な変化、生態系ならびに生態系サービスの急速な変化に強い課題意識を持ち、藻場再生に関する調査研究を展開しています。磯焼けの要因は藻食生物の増加、海の貧栄養化、海水温上昇等複合的であり、藻場再生は容易ではありませんが、磯焼けは地域・本邦が直面する喫緊課題です。横浜国立大学の知を結集し、産学官で取り組むことで速やかな社会実装を目指します。
■IJTT会社概要
IJTTは、鋳造、鍛造、エンジン製造の分野で長い歴史を持ち※4、主に自動車部品、建設機械部品、産業用エンジン等の製造を通じて日本の産業発展に貢献してきました。現在では、素材開発から完成品製造までを一貫して行える技術力を活かし、産業用ロボット分野へも進出。次世代の製造現場に求められる高精度・高耐久な部品供給を可能にし、スマートファクトリー化の推進にも寄与しています。
※4 IJTTは、それぞれ100年近い歴史を持つ株式会社アイメタルテクノロジー、自動車部品工業株式会社、テーデーエフ株式会社とIJTテクノロジーホールディングス株式会社が2019年に統合して誕生しました。
社名:株式会社IJTT
代表者:代表取締役社長 瀬戸 貢一
本店所在地:神奈川県横浜市神奈川区金港町1番地7 横浜ダイヤビルディング18階
事業内容:輸送用機器製造業
創立年月日:2013 年10 月1 日
売上高:156,195百万円(2025年3月期 連結)
従業員数:4,619名(2025年3月期 連結)
■本件に関する問い合わせ
<株式会社IJTT>
・報道等に関する問い合わせ先
コーポレートコミュニケーション部 広報グループ
電話番号:045-777-5560(代表)
Email: info-ijtt@ijtt-jp.com
・研究に関する問い合わせ先
事業戦略部
電話番号:045-777-5563
<横浜国立大学>
・報道等に関する問い合わせ先
横浜国立大学 総務企画部 リレーション推進課
Email:press@ynu.ac.jp
電話番号:045-339-3027
・研究に関する問い合わせ先
横浜国立大学 大学院環境情報研究院 自然環境と情報部門 助教 髙山 佳樹
Email: takayama-yoshiki-fb@ynu.ac.jp
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