市街地に熊が出没する時代、私たちはどう備えるのか
子どもを守るなら熊スプレーを持て?

ほんの10年前まで、熊との遭遇リスクは主に奥山にありました。
被害に遭うのは、登山者や山菜・キノコ採り、林業従事者など、自ら山へ入る人たちでした。
しかし近年、その状況は大きく変わっています。
熊の出没は里山や山間集落にとどまらず、住宅地、学校周辺、河川敷へと広がり、さらには県庁所在地の中心部や主要駅周辺で目撃される事例も報じられるようになりました。
宇都宮市ではショッピングセンター内を熊が走り、福島県では会社員が熊に追いかけられ、去年は幼稚園の扉に熊が突進しました。
通学中の子ども、買い物客、散歩中の高齢者、公共交通機関の利用者など、誰もが当事者になり得る時代になっています。
熊対策を考える

熊鈴
熊に人の存在を知らせる。
自然音しかない山の中で、鈴の音が響けば人の存在を熊に認知させ不意の遭遇を避けうる。
ラジオ
熊に人の存在を知らせる。
自然音しかない山の中で、人の声や音楽を流れれば人の存在を熊に認知させ不意の遭遇を避けうる。
熊スプレー
カプサイシンを主成分とする薬液をガスの力で噴射する。
製品にもよるが有効距離は最大10m程度。
一般には5m程度の距離で熊の顔面に噴射できれば効果が期待される。
噴射時間は数秒から十数秒程度。
熊槍
長さ1~2m程度の柄の先に突起を備える。
熊が接触する距離で使用する。
自治体や地域によっては配備されている例もある。
傘
雨の日だけでなく日傘として携行する人も多い。
熊との間に距離を作るために利用できる。
木の棒
散歩中や公園、河川敷などで手に入る場合がある。
熊との間に距離を作るために利用できる。
カバン・リュック
通勤、通学、買い物などで日常的に携行する。
体と熊の間に置くことで防護に利用できる。
熊と対峙した時の行動

まず立ち止まる
熊は動くものに興味を示し、逃げるものを追いかけます。
突然熊を見つけても、慌てて走り出してはいけません。
まず立ち止まり、熊との距離、熊の様子、周囲の状況を確認します。
熊との距離が十分にあり、熊がまだこちらを認識していない場合は、大声を出すのも得策とは言えません。
驚いた熊が興奮したり、こちらに注意を向けたりする可能性があるためです。
熊がこちらに気付いていないのであれば、まずは落ち着いて距離を取ります。
電信柱、街路樹、駐車中の車、建物の陰などが利用できる場合は、それらを遮蔽物として活用しながら静かに離れます。
熊から目を離さず、急な動きは避けます。
建物や車両など安全な場所への退避を優先します。
まわりに人、子供がいる場合
子どもや同行者をそっと促して後ろへ下げます。
大声を出したり、急に走り出したりすると、周囲がパニックになる可能性があります。
熊との間に自分が入るように位置を変えます。
子どもがいる場合は自分の後ろへ集めます。
同行者がいる場合も離れずに固まります。
一人ずつ別方向へ逃げてはいけません。
まずは全員で落ち着いて距離を取り、安全な場所への移動を優先します。
熊から目を離さない
熊の位置を確認しながらゆっくり後退します。
背中を向けて走らない。
熊がこちらを見ているのか、移動しているのかを確認し続けます。
熊がこちらに気付かず立ち去る。
あるいは気付いても興味を示さず立ち去る。
それが最も望ましい結果です。
熊が近づいてきたら
熊がこちらに気付き、ゆっくり近づいてくることがあります。
それだけで攻撃と判断してはいけません。
熊が何者なのか確認しようとしている場合もあります。
こちらも慌てて走らず、熊の動きを観察しながら後退します。
熊スプレーを携行している場合は使用できる状態にします。
構えて安全装置を外しましょう。
熊槍を携行している場合は構えます。
熊槍でなくても、近くに木の棒や丈夫な枝があれば拾って構えます。
傘を持っている場合も構えます。
ただし慌てて急に動いたり、熊から目を離したりしてはいけません。
棒や傘は熊を攻撃するためではなく、熊との距離を確保するために使います。
熊が立ち止まることもあります。
そのまま方向を変えて立ち去ることもあります。
熊が近づいてきたからといって、すぐに最悪の事態を想定する必要はありません。
落ち着いて熊の様子を観察しながら距離を保ちます。
熊が立ち去れば、それで終わりです。
熊が走ってきた
熊が頭を低くし、こちらに向かって走ってきた場合は危険な状況です。
背中を向けて走ってはいけません。
熊から目を離してはいけません。
熊スプレーを携行している場合は使用します。
熊が有効距離内に入るまで引き付け、顔面方向へ噴射します。
熊槍を携行している場合は構えます。
木の棒、枝、傘などを持っている場合も捨てずに構えます。
熊との間に置き、少しでも距離を確保します。
目の前に熊がいる
熊との距離は数メートル。
後退する余裕もありません。
まず決断します。
抵抗するのか。
防護姿勢を取るのか。
熊槍、木の棒、枝、傘などがあれば構えます。
リュックやカバンを持っている場合は手放しません。
体と熊の間に置きます。
抵抗すると決めたなら、熊に人間は危険だと認識させます。
熊に「この相手は危険だ」「割に合わない」と思わせ、あきらめさせることを目指します。
防護姿勢を取ると決めたなら迷わず防護姿勢を取ります。
中途半端が一番危険です。
防護姿勢
あごを引きます。
首を守ります。
両腕で顔と頭を守ります。
肘と前腕を熊の方向へ向けます。
腹部と胸部を守るように体を丸めます。
膝を抱え込むようにしてうずくまります。
リュックやカバンがある場合は後頭部から首の保護に利用します。
熊が離れるまで防護姿勢を維持します。
立ち上がるのは熊が十分に離れたことを確認してからです。
ある日
通学路

数日前から、この地域では熊の出没情報が続いています。
学校からは注意喚起のメール。
保護者には集団登校と付き添いが呼びかけられています。
朝。
保護者が子どもたちの列の横を歩いています。
ランドセルを背負った子どもたちが10人ほど。
その時、道路脇の藪が大きく揺れました。
熊です。
大人は子どもたちを自分の後ろへ集めます。
熊との距離を保ちながら後退します。
熊が接近してくる場合は熊スプレーを構えます。
通学路で熊と遭遇した場合、子どもたちを守れるのはその場にいる大人だけです。
そのためには、付き添いだけでなく準備も道具も必要になります。
朝の散歩
朝5時。
いつもの散歩コースです。
数日前から近くで熊の目撃情報が続いています。
住宅地を抜け、川沿いの遊歩道へ入ります。
前方からパキパキと枝の折れる音が聞こえました。
目を向けると黒い塊が動いています。
熊です。
まず立ち止まります。
熊との距離、熊の様子、周囲の状況を確認します。
熊がこちらに気付いていないのであれば、大声を出しません。
電信柱、街路樹、駐車中の車、建物の陰などを利用しながら静かに距離を取ります。
熊がこちらに気付き、ゆっくり近づいてきた場合は後退します。
熊スプレーを携行している場合は使用できる状態にします。
傘を持っている場合は構えます。
熊がさらに接近する場合に備えます。
熊が立ち止まることもあります。
方向を変えて立ち去ることもあります。
熊が立ち去れば、それで終わりです。
公園

休日の昼下がり。
子どもたちが遊具で遊んでいます。
保護者はベンチに座り、祖父母が孫を見守っています。
その時、公園の植え込みの向こうに黒い影が見えました。
熊です。
まず周囲の子どもたちに近付きます。
大声を出してパニックを起こさせないよう注意しながら、静かに遊具から離れさせます。
子どもたちを集め、熊との間に大人が入ります。
熊の位置を確認しながら後退します。
熊スプレーを携行している場合は使用できる状態にします。
傘を持っている場合は構えます。
熊がこちらに気付かず立ち去れば、それで終わりです。
熊が近付いてくる場合は、子どもたちを背後に下げながら距離を取ります。
熊が走ってくる場合は熊スプレーを使用します。
大人は最後まで熊と子どもたちの間に立ち続けます。
畑
早朝。
自宅裏の畑で作業をしています。
数日前から近隣で熊の目撃情報が続いています。
草取りをしていると、畑の脇の藪が揺れました。
熊です。
まず立ち上がり、熊との距離、熊の様子、周囲の状況を確認します。
熊がこちらに気付いていないのであれば、静かに距離を取ります。
軽トラックや農機具小屋など、安全な場所へ移動します。
熊がこちらに気付き、ゆっくり近づいてくる場合は後退します。
熊スプレーを携行している場合は使用できる状態にします。
熊槍を用意している場合は構えます。
熊槍がなくても、近くにある木の棒や農具の柄を手に取ります。
ただし慌てて動いたり、熊から目を離したりしてはいけません。
熊が立ち止まることもあります。
方向を変えて立ち去ることもあります。
熊が走ってくる場合は熊スプレーを使用します。
熊槍や棒を構え、熊との距離を確保します。
バス停

朝7時。
通勤する会社員。
通学する高校生。
病院へ向かう高齢者。
いつものバス停でバスを待っています。
数日前から近くで熊の目撃情報が続いています。
道路の向こう側に黒い影が見えました。
熊です。
熊との距離、熊の様子、周囲の状況を確認します。
その時、バスが到着しました。
乗車できる状況であれば乗車します。
運転士に熊がいることを伝えます。
周囲に人がいる場合は乗車を促します。
ドアを閉めてもらい、バスの中へ退避します。
その後、警察や自治体へ通報します。
ショッピングセンター
休日の昼下がり。
家族連れや買い物客で賑わっています。
突然、館内放送が流れました。
熊です。
まず子どもを自分のそばへ集めます。
走らせてはいけません。
店員や警備員の指示に従います。
シャッターや扉で区画できる場所があれば、その中へ移動します。
屋外駐車場にいる場合は建物内へ入ります。
建物内にいる場合はむやみに外へ出ません。
熊を見に行ってはいけません。
スマートフォンで撮影しようとしてはいけません。
熊との間に建物の壁、扉、シャッターがあれば、それが最も有効な防護手段になります。
おわりに
熊鈴。
ラジオ。
熊スプレー。
熊槍。
傘。
カバン。
リュック。
場所によって使えるものは違います。
相手が熊である以上、絶対に安全な対策はありません。
それでも何も持たないよりは、何か一つでも備えておく方が良いでしょう。
熊は山の中だけの問題ではなくなりました。
朝の散歩。
通学路。
公園。
畑。
バス停。
ショッピングセンター。
自分なら何を持つか。
一度考えてみてはいかがでしょうか。
この記事について
本記事は、市街地における熊遭遇時の防護手段を研究する株式会社ACT-Xが作成しました。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
