病気を抱える子どもを持つ保護者への調査結果を発表、「学校との連絡・調整」に大きな負担
NPO法人 親子に寄り添う連携支援プロジェクトが、医療的ケアを必要とする子どもの保護者から得た140件の回答を基に学校連携の実態とICT支援の課題を探る。
NPO法人 親子に寄り添う連携支援プロジェクト(通称:おこぷろ)は、病気や医療的ケアを必要とする子どもを持つ保護者を対象に、学校との連携に関する困難とICTによる支援についてアンケート調査を実施しました。本調査では、140件の回答を得て、保護者が直面している問題に焦点を当てました。
「医療情報を学校と共有する難しさ」は10段階評価で平均6.1、
「必要な情報が学校へ伝わっている実感」は平均5.21
具体的には、「医療情報を学校と共有する難しさ」についての評価が平均6.1、「必要な情報が学校へ伝わっている実感」は平均5.21という結果が得られました。
そして、保護者が最も負担を感じている場面は「学校との連絡・調整」で、77件に上りました。おこぷろは、これらの結果を踏まえ、医療・家庭・学校間での情報共有の重要性を再認識し、今後さらなる取り組みを進めていく所存です。

これらの結果を、2026年8月23日にパシフィコ横浜で開催された「第15回日本小児在宅医学会学術集会」において、「病気を持つ子どもの親が感じる学校連携における困難とICTによる支援に関するアンケート調査」の演題で口頭発表しました。
今回の調査を通して、おこぷろでは、保護者個人の「伝え方」の問題として捉えるのではなく、医療・家庭・学校の間で必要な情報をどのように共有し、子どもの学校生活に必要な配慮や支援につなげていくのかという課題として検討を進めています。
保護者140件の回答から見えた学校連携
病気や医療的ケアなどのある子どもが学校生活を送るためには、健康状態や治療、活動上の留意点などについて、家庭・医療・学校の間で情報を共有する必要があります。
今回の調査では、こうした学校との連携について保護者がどのように感じているのかを尋ねました。

1.医療情報を学校と共有する難しさ 平均6.1/10
「医療情報を学校と共有する難しさ」を10段階で尋ねた結果、平均6.1でした。
平均値は回答全体の傾向を示すものであり、この数値だけから個々の保護者の状況や困難の程度を一律に評価することはできません。
一方、医療情報を学校とどのように共有し、学校生活に必要な支援につなげていくのかは、今後さらに検討する必要のあるテーマの一つであると考えています。
2.必要な情報が学校へ伝わっている実感 平均5.21/10
「必要な情報が学校へ伝わっている実感」を10段階で尋ねたところ、平均5.21でした。
この設問は「医療情報を学校と共有する難しさ」とは異なる内容を尋ねたものであり、6.1と5.21という二つの平均値を直接比較して評価するものではありません。
今回の結果を踏まえ、おこぷろでは、情報を「伝えたかどうか」だけではなく、それが学校生活の中で必要な配慮や支援につながる情報として共有されるためには何が必要なのか、検討していきたいと考えています。
3.「学校との連絡・調整」に負担77件
保護者が負担を感じる場面として、
・学校との連絡・調整 77件
・学校行事への対応 62件
・学習や評価に関する調整 58件

などが挙げられました。
日常的な連絡だけでなく、学校行事や学習・評価など、学校生活の複数の場面で負担が挙げられていることが分かりました。
医療情報を「伝える」から、学校生活で「活かす」へ
今回の調査結果を受けて、おこぷろが注目しているのは、保護者の「伝え方」そのものではありません。
医療機関で必要となる情報と、学校生活の中で必要となる情報は、必ずしも同じ形ではありません。
例えば、診断名や治療内容を伝えるだけではなく、
「体育にはどのように参加できるのか」
「学校行事では何に留意する必要があるのか」
「体調が変化したとき、どのように対応するのか」
など、医療情報を実際の学校生活に結びつけて考える必要があります。
おこぷろでは、医療情報を学校生活で活用できる形にすること、そして進学・進級時にも必要な情報を引き継ぐことを、今後取り組むべき課題として捉えています。
「保護者がもっと頑張って伝える」を解決策にしない
子どものことをよく知る保護者が、学校との情報共有に関わることは重要です。
一方で、必要な支援につながるための情報共有や調整を、保護者の情報収集力や説明力、調整力だけに委ねることが望ましいのかという問いがあります。
おこぷろが今回の調査を通して考えたいのは、
「保護者がもっと上手に伝えるにはどうすればよいか」ではなく、
「保護者の努力だけに頼らず、必要な情報が必要な人につながる仕組みをどうつくるか」
ということです。
学校連携の課題を個々の家庭の困りごとだけにとどめず、医療・教育・福祉・家庭の間をどのようにつなぐのかという仕組みの課題として捉えていきたいと考えています。
保護者だけでなく、専門職も一人で抱え込まない仕組みへ
病気や医療的ケアなどのある子どもには、医療、教育、福祉、行政など、さまざまな立場の人が関わります。
それぞれの場所に専門職がいても、異なる領域の「間」で、誰が、どの情報を、どのようにつなぐのかという課題が生じることがあります。
なお、今回の調査は保護者を対象としたものであり、医療者、教員、福祉職など専門職側の困難を直接調査したものではありません。
そのため今後は、保護者から見た課題だけではなく、医療・教育・福祉など、それぞれの立場から見た情報共有や支援接続についても検討していく必要があると考えています。
保護者だけでなく、子どもに関わる専門職も一人で判断や調整を抱え込まず、それぞれの専門性を生かしながら必要な人や情報につながることのできる連携を目指します。
ICTは「答え」ではなく、支援をつなぐための一つの手段
今回のアンケートでは、学校連携における困難とともにICTによる支援についても調査しました。
ただし、今回の調査によってICT導入の効果を検証したものではありません。
ICTを導入すること自体を目的とするのではなく、
-
誰が、何のために情報を共有するのか
-
どの情報を、誰と共有する必要があるのか
-
医療情報を学校生活に必要な情報へどうつなげるのか
-
進級・進学時に必要な情報をどう引き継ぐのか
という連携そのものを考えたうえで、ICTをどのように活用できるのかを検討していきます。
第15回日本小児在宅医学会学術集会で口頭発表

今回の調査結果は、2026年8月23日にパシフィコ横浜で開催された「第15回日本小児在宅医学会学術集会」において口頭発表しました。
当日は、多くの医療・福祉等の関係者にご参加いただき、病気のある子どもの学校生活や、医療・教育・福祉の連携、多職種・多領域の支援接続について考える機会となりました。
おこぷろでは、今回の学会発表を調査結果の報告で終わらせず、次の研究と実践につなげていきます。
学会発表を次の研究へ―それぞれの立場から「つながりにくさ」を捉える
今回の140件の調査は、保護者から見た学校連携の一側面を捉えたものです。
特定の対象者から得られた回答であるため、結果をすべての病気や医療的ケアなどのある子どもと家族に一般化することはできません。
また、今回の調査だけから、学校連携における困難の原因やICTの有効性を明らかにしたものでもありません。
だからこそ、この発表を「課題が分かった」で終わらせず、次の研究につなげていきたいと考えています。
今後は、保護者だけではなく、医療・教育・福祉など、それぞれの立場から見た情報共有や支援接続の課題についても検討し、誰か一人に調整の負担を集中させない連携のあり方について研究と実践を重ねていきます。
「どう連携したか」ではなく、「どう安心を支えられたか」
おこぷろが目指しているのは、「連携すること」そのものではありません。
子どもが安心して学校生活を送ることができたか。
保護者が一人で情報共有や調整を抱え込まずに済んだか。
子どもに関わる専門職も、それぞれの専門性を生かしながら必要な人や情報につながることができたか。
「どう連携したか」だけではなく、
「その連携によって、どう安心を支えられたか」。
医療・教育・福祉・家庭の間に生じる課題を、当事者・保護者の声と専門職の知見の双方から捉え、子どもを中心としたよりよい支援接続のあり方を探っていきます。
調査概要
調査期間:2025年10月~2026年3月
対象:病気や医療的ケアなどのあるこどもの保護者
回答数:140件
【主な結果】
・医療情報を学校と共有する難しさ 平均6.1/10
・必要な情報が学校へ伝わっている実感 平均5.21/10
・学校との連絡・調整 77件
・学校行事への対応 62件
・学習や評価に関する調整 58件
※平均値は回答全体の傾向を示すものであり、個々の回答状況や分布を示すものではありません。本調査結果は回答者から得られた回答に基づくものであり、対象となるすべての子ども・家庭へ一般化するものではありません。
学会発表概要
学会名:第15回日本小児在宅医学会学術集会
発表日:2026年8月23日
会場:パシフィコ横浜
発表形式:口頭発表
演題名:
「病気を持つ子どもの親が感じる学校連携における困難とICTによる支援に関するアンケート調査」
NPO法人 親子に寄り添う連携支援プロジェクト(おこぷろ)について

NPO法人 親子に寄り添う連携支援プロジェクト(おこぷろ)は、病気や障がいなどのある子どもと家族を中心に、医療・教育・福祉・地域など、分野を越えて必要な支援がつながる仕組みづくりに取り組んでいます。
当事者・保護者の声を起点とした調査研究、専門職との学びの場づくり、地域での活動、情報発信などを通じ、「支援と支援の間」に生じる課題を捉え、よりよい支援接続のあり方を研究・実践しています。
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