歯磨き粉の「研磨剤」が、口腔内のフッ化物濃度に影響する可能性を示唆 ─ 広島大学/ウエルテックの研究グループが発表
研磨剤を含まない歯磨き粉は、ブラッシング後もフッ化物が長く口腔内にとどまる傾向

広島大学大学院医系科学研究科(小児歯科学分野)とウエルテック株式会社との共同研究により、歯磨き粉に含まれる「研磨剤」の有無が、歯磨き後に口の中に残るフッ化物(一般にフッ素と呼ばれる成分)の量に影響を与える可能性があることを明らかにしました。本研究成果は、学術誌「Dentistry Journal」に掲載されました。
◆ 研究の背景
フッ化物には、歯質強化作用があり、むし歯予防に効果があることが広く知られており、多くの歯磨き粉に配合されています。フッ化物の効果を十分に発揮させるためには、歯磨き後もフッ化物が口の中にある程度の濃度で残り続けることが重要とされています。
一方、歯磨き粉には、フッ化物のほかにも、着色汚れ(ステイン)の除去や白い歯への効果を高めるために「研磨剤」が配合されている製品が多くあります。研磨剤とフッ化物がどのように影響し合うのかについては、これまで十分に検討されていませんでした。
◆ 研究の概要と主な結果
研究グループは、健康な成人7名を対象に、研磨剤を含む歯磨き粉と含まない歯磨き粉、合計5種類の市販品を使用してもらい、歯磨き後の口腔内のフッ化物濃度を経時的に測定しました。また、同一の歯磨き粉で研磨剤の配合量だけを変えたサンプル(0%・10%・20%・30%)を用いた比較や、歯の主成分に近いアパタイト(人工の歯の材料)を用いた実験も行いました。
その結果、次のことがわかりました。
•研磨剤を含まない歯磨き粉は、ブラッシング後5分以降のすべての測定時点で、口腔内のフッ化物濃度が最も高い傾向を示した。
•同じ歯磨き粉で研磨剤の量だけを調整して比較したところ、研磨剤を含まない歯磨き粉(0%)は、ブラッシング10分後以降、他の濃度(10%・20%・30%)の歯磨き粉よりも高いフッ化物濃度を維持した。
•人工の歯(アパタイトペレット)を用いた実験でも、研磨剤を含まない歯磨き粉で磨いた場合に、複数回すすいだ後もフッ化物が多く残っていることが確認された。
これらの結果から、歯磨き粉に含まれる研磨剤には歯の表面に付着したフッ化物を取り除いてしまう働きがある可能性が考えられ、研磨剤の有無が口腔内でのフッ化物の残りやすさに影響することが示唆されました。

◆ 今後の展望
今回の結果は、研磨剤を含まない歯磨き粉が一律に優れているということを意味するものではありません。研磨剤にはステイン除去やプラークコントロールなど独自の役割があり、目的に応じた使い分けが大切です。今回はごく少人数を対象にした探索的な研究であり、実際のむし歯予防効果の差については、今後さらなる大規模な検証が必要です。
虫歯が全身疾患にも悪影響を及ぼしていることが徐々に解明されている昨今、ウエルテックでは予防歯科を予防医療としてアプローチすることを心掛け、広島大学大学院医系科学研究科小児歯科学(野村良太教授)と産学連携し、研磨剤無配合のジェルコートFを提供し研究を行いました。適切なタイミング・使い方を工夫することで、フッ化物の薬用効果の恩恵を更に引き出すことが可能であると考えます。
◆ 論文情報
タイトル:Effect of Silica-Based Abrasive Ingredients on Fluoride Concentration in Toothpaste: An In Vitro and In Vivo Study (シリカ系研磨剤成分が歯磨き剤中のフッ化物濃度に及ぼす影響:in vitroおよびin vivo研究)
著者:Shuma Hamaguchi, Tatsuya Akitomo, Masashi Ogawa, Satoru Kusaka, Ryota Nomura
掲載誌:Dentistry Journal(2026年)
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