【第5回】海外活動:カンヌが教えてくれた「抹茶ブームの違和感」
グローバル市場の最前線で直面した、大量効率化と職人技の剥離
世界市場の最前線で見つめたもの
サンフランシスコ州立大学で国際ビジネスを学び、シリコンバレーの起業家精神に触れた私にとって、WMATCHA & CO. の創業初期から世界市場を見据えることはきわめて自然な選択でした。ニューヨークや東京での投資・コンサルティング業務を通じて培ったファイナンスと戦略の規律を携え、私たちは日本茶の本質的な価値を海外へ届けるための活動を展開していきました。

その一環として、世界最高峰の文化の舞台であるカンヌ国際映画祭の関連イベントにおいて、私たちが扱う抹茶を提供する機会にも恵まれました。
海外の洗練された都市のバイヤーやクリエイターたちが、日本の伝統的な緑茶や抹茶の背景にある精神性、そしてその味わいに深く感銘を受ける姿を、私は最前線で何度も目撃してきました。グローバルな市場には、私たちが想像する以上に、日本茶の本質的な価値を求めている人々が確かに存在している。その手応えを得たことは、大きな事実でした。
既存のシステムと、そこからこぼれ落ちるもの
しかし、これらの一見華やかなグローバル展開の実践を重ねるなかで、私は同時に、現在の市場の仕組みにおける「構造的な棲み分け」の必要性に直面することになります。
世界的な「MATCHA」ブームの拡大に伴い、海外での需要は急速に高まっています。これに対し、多くの人へ安定的にお茶を届けるために構築された既存の流通システムは、大量効率化と均一な供給を支える、極めて重要な社会の仕組みです。この構造があるからこそ、世界中の多くの人がお茶を日常的に愉しむことができています。
一方で、その「大量・安定供給」に最適化された既存の流通構造のなかでは、どうしてもカバーしきれない部分が出てくることも事実でした。

それはたとえば、生産現場が気候と対話しながら磨き上げてきた卓越した職人技や、土地や畑ごとに異なる繊細な風味のグラデーション、あるいは「生産背景やストーリーを深く理解した上で、直接正当な価格で購入したい」という、海外のバイヤー側の個別で純粋なニーズです。また、小規模な生産者にとっては、言語や複雑な輸出入実務、加工環境の壁があり、それらの熱狂的なニーズへ直接応えることが難しいという構造もありました。
どちらの仕組みが優れている、ということではありません。広く安定してお茶を届ける既存の大きな循環があるからこそ、私たちはそこからこぼれ落ちてしまう「繊細な価値や職人の美意識」をそのままの純度で繋ぐ、もう一つの小さな循環の構造を並立させる必要があるのではないか、と考えるようになりました。
流行の消費から、本質的な関係性の調律へ
この海外活動の最前線で得た解像度こそが、私に、ただプロダクトを売り抜けるビジネスではなく、全く異なる時間軸の構造が必要であるという静かな決意をもたらしました。
世界や既存の仕組みを否定するのではなく、それぞれの役割を正しくリスペクトするからこそ、私たちは単なるプロダクトの物販や、既存の生産管理をデジタル化するだけのビジネスモデルを選びません。
私たちが目指すのは、徹底的な透明性を担保した独自のプラットフォームや空間モデルを通じて、海外の目の肥えた参加者と、日本の卓越した生産現場を、そのままの美意識の純度でシームレスに直接つなぐことです。

伝統を博物館に閉じ込めるのではなく、現代の世界の文化都市の人々が心から愛着を持てる形で翻訳し、50年先も持続する対等な関係性をデザインしていく。世界での実績と、そこで直面した課題があるからこそ、WMATCHA & CO. の戦略は、より解像度の高い、揺るぎないものへと研ぎ澄まされています。
WMATCHA & CO.合同会社
ウェブサイト:https://linktr.ee/wmatchaco
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