カーナビゲーションについて<2>

~カーナビゲーションの「現在」と「近未来」~

オートバックスセブン

今回のニュースレターは、2016年8月に発行した「カーナビゲーションについて<1>」の続編、「カーナビゲーションについて<2>」です。カーナビゲーションについて<2>は、市販カーナビの「現在」と「近未来」をテーマとしました。
まず「現在」については、成熟期にある市販カーナビのトレンドやニーズにスポットを当てて紹介します。
市販初のカーナビが発売されて27年。その間、カーナビはさまざまなモデルチェンジを繰り返し、進化を遂げてきました。しかし国内出荷台数はグラフ1の通り、成熟期に入っています。

グラフ1 市販AVナビ出荷台数推移グラフ1 市販AVナビ出荷台数推移

 成熟期に入った要因は新車販売の低迷と、カーナビのコモディティ化です。コモディティ化の先にあるのは価格競争ですので、業界としては看過できない問題です。ただ、こうした危機感が新たな商品開発の動機づけとなり、個性的なモデルの創出に結び付きはじめています。グラフ1にある2016年度の市販AVナビの復調と2017年度の業界予測は、そうした理由によるものと見られています。

「大画面化」「安全運転支援」へのニーズの高まりと「近未来のカーナビ事情」

 オートバックスでは、現在販売されているオーディオ一体型カーナビゲーション(以下、AVナビ)のトレンドを「大画面化」と「安全運転支援」と見ています。前者は家庭用テレビと同様、クルマの中でも大画面で地デジ放送などを楽しみたいというニーズです。後者は車載カメラや各種センサーの普及により、「ぶつからないクルマ」という安全運転支援技術が注目され、アフターマーケットでも安全運転支援関連商品の開発が始まりました。
 一方、「近未来」のカーナビについては、スマートフォンの存在が大きなカギを握ります。スマートフォンの普及に伴い、ユーザーには従来の車載ナビに加え、「スマホナビ」という選択肢が加わりました。またアップルの基本ソフトiOSをベースとした車載機器用ソフト「CarPlay(カープレイ)」、グーグルのAndroidをベースとした同「Android Auto(アンドロイドオート)」は、“スマホは車内でも安全に使えます”と提案しています。これらが現在のカーナビ市場にどのような影響を与えるのか。従来のカーナビメーカーは今後どのような方向性を打ち出し、すみ分けを図っていくのか。有力カーAVメーカーへの取材をもとに検証していきます。

1「現在」のカーナビゲーションについて

(1)進むカーナビゲーションの大画面化
 現在発売中のAVナビで、消費者の支持を集めているのが「大画面ナビ」(ディスプレイ画面7V型を超える)です。7V型を超えるナビにはワイド7V型、スーパーワイド7.7型、8、9、10、11V型があり、オートバックスにおける販売台数比率も年々上昇傾向にあります。

グラフ2 AVナビ画面サイズ別販売台数比率グラフ2 AVナビ画面サイズ別販売台数比率

 グラフ2はオートバックス店舗におけるAVナビ画面サイズ別販売台数比率の推移です。凡例の「ノーマルDIN」は7V型タイプ、「ワイドDIN」はワイド7V型とスーパーワイド7.7型タイプ、「DINサイズ外」は8V型以上の大画面ナビを指しています。
 2012年度に販売構成比で88.5%だった「ノーマルDIN」は、4年後の2016年度に34.1ポイント減の54.4%となり、同期間、逆に比率が増えたのは「ワイドDIN」「DINサイズ外」でした。「ノーマルDIN」は今年度中に50%を割り込む見通しです。

 AVナビの大画面化は、2010年6月に発売したアルパインのBIG Xナビ「VIE-X008」(8V型)から始まりました。当時、プリウス(30系)など車種専用品として発売されたBIG Xシリーズは、大きな反響を呼びました。その理由は、車両側のコンソールが2DIN規格(ドイツの工業規格1DINを縦に2つ重ねた外寸サイズ=幅180mm×高さ100mm)が当たり前だった時代に、規格外の大画面ナビという新たな発想を提案したからです。

車載ディスプレイのサイズ比較車載ディスプレイのサイズ比較

 大画面のAVナビを搭載するにはコンソールまわりのパネルを外し、専用パネルに付け替えなければなりません。つまり大画面のAVナビを取り付けられるクルマは、専用キットが用意されている一部の車種のみに限られていました。

 

 現在は新車の段階で大画面ナビの設定が増え、純正大画面ナビのラインナップも充実してきましたが、大画面化が市販市場に限られたものだったのはそうした事情がありました。

既販車にも対応する汎用性のある大画面ナビが登場

ストラーダ9V型と7V型ストラーダ9V型と7V型

 2016年6月、大画面化の流れを加速する商品が発売されました。パナソニック ストラーダの9V型ナビ「CN-F1D」です。同製品はディスプレイ部をコンソールスペースに入れずに、手前に浮き出させて取り付けることで、多くの車種に取り付けることを可能にしました。車に大画面ナビの設定がなく、市販の専用キットもないことから大画面ナビをあきらめていたユーザーにとっては待望の商品の登場となりました。
 2017年5月25日現在、「CN-F1D」の装着可能車種数は「262」です。適合については、ドライバーがシートに座った位置から見てハザードランプ(非常点滅表示灯)のスイッチが見え、かつハンドルの左側に付いているウインカーレバーなど、車両側の機能に干渉しない(右ハンドル車の場合)ものを原則として装着可能車種としています。パナソニックでは「適合調査は新型車であればディーラーやレンタカーなどで比較的調査しやすいですが、既販車は調査車両の調達が困難な場合があります。現在の適合結果は実際の車両で調査できたものを適合としているので、今後も更に調査を進め、適合車種を増やしていく見通しです」としています。
 大画面ナビは現在、各メーカーより人気車種を中心に車種専用品として発売されていますが、これらは主に新車を対象としたものです。一方、CN-F1Dは汎用性があるため、新車のほか、多くの既販車にも取り付けられます。現行モデルよりも旧モデルのデザインが好きで乗り続けているというユーザーからは、「こういう商品を待っていた」「もっと大きなサイズのナビも作って欲しい」という声が寄せられているそうです。
 家庭用TV同様、一度、大画面に慣れてしまうと、小さい画面では満足できなくなるものです。こうしたことからもカーナビの大画面化は今後も進んでいくものと見られています。

(2)安全運転支援機器としてのカーナビゲーション
 現在のカーナビの二つ目のトレンドは「安全運転支援機能」を持つカーナビです。世界各国の自動車メーカーが将来を見据えて開発しているのが自動運転機能を持つ車両です。自動運転を実現するためには、事故などの可能性を事前に検知し、回避するシステムが必要です。このシステムは先進運転支援システム(アドバンスド・ドライバー・アシスタンス・システム/略称・ADASエーダス)と呼ばれ、スバルの衝突被害軽減ブレーキ「アイサイト」(EyeSight)が代表的なシステムです。ADASは自動車メーカーや自動車部品メーカーが中心となって開発が進められていますが、本格的な自動運転社会の到来にはもうしばらく時間がかかりそうです。
 自動運転社会が到来するまでの期間、国内約8千万台の自動車の安全運転をサポートしていくのは、ADASと運転中のドライバーに降りかかる様々なリスクを画像や音声を通じて警告する情報伝達機能です。「衝突被害軽減ブレーキ」を搭載した車であっても安全は100%確保されるものではありません。情報伝達機能は、自動ブレーキが作動する前に、ドライバーに注意や気付きを与えることによって、安全運転をサポートしていくことになります。市販AVナビメーカーの安全運転支援機能からいくつかご紹介します。

サイバーナビ ターゲットスコープサイバーナビ ターゲットスコープ

 パイオニアが現在発売しているAVナビは、高性能カメラでとらえた映像を専用ユニットで解析、周囲の状況変化を検知してドライバーに知らせます。前を走るクルマとの距離や誤発進、信号の変化や車線逸脱も見逃さず、AR(拡張現実)表示や効果音でドライバーに安全運転のための情報を提供します。
 パナソニックの安全運転支援機能は、道路標識情報を音声と地図上にポップアップしてドライバーの安全運転をサポートします。制限速度案内や一時停止案内、踏切案内など、ドライバーの“うっかり見落とし”を軽減させます。
 その他、複数の車載カメラからの画像を俯瞰画像として、ドライバーの死角となる部分を映し出したり、新交通規制「ゾーン30」(住宅街などで車の最高速度を時速30キロに制限するエリア)や事故が起きやすい危険区域を地図上に表記するもの、交差点で赤信号待ちの状態から青信号に変わるまでの残り時間を地図画面に表示するもの、さらにドライバーの運転技術を診断して安全運転を促す機能を持つものもあります。
 市販AVナビは今まで高機能やエンターテインメント性を純正ナビとの差別化として打ち出してきましたが、今後は大画面化、安全運転支援機能が付加されていく見通しです。「現在のカーナビは既にカーナビを卒業して、安全運転支援機器となった」、そう説明するメーカー担当者もいます。

2 「近未来」のカーナビゲーションについて

(1)“スマホカーナビ”の登場でカーナビ市場に“新たな選択肢”
 ここからはカーナビの近未来について考えてみます。カーナビの近未来は、スマートフォンを抜きに語ることはできません。なぜならここ数年、スマートフォンをカーナビ替わりに使う“スマホカーナビ”のユーザーが増えているからです。
 実際にどのぐらいのユーザーが使用しているのかは分かりませんが、スマートフォンやカーナビアプリの普及状況を見れば、今後、カーナビを選ぶ際の選択肢に入ってくるのは間違いなさそうです。
多くのスマートフォンユーザーが最初に「スマホナビ」を経験するのは「徒歩」のナビではないでしょうか。最寄りの駅から歩いて目的地に向かう場合や旅先で、自分のいる場所、目的地までの道順、要する時間がスマートフォンに表示されます。一度でも使えば、その利便性を体感できます。
 この「スマホナビ」のカーナビ版が、「スマホカーナビ」です。iPhoneのAppストアで「カーナビ」と検索すると、ざっと40種類のカーナビアプリが出てきます。
 無料アプリで人気があるのが「Google Map」や「TCスマホナビ」「Yahoo!カーナビ」「NAVIRO(ナビロー)」などです。

Yahoo!カーナビYahoo!カーナビ

 「Google Map」は車、電車、徒歩の3パターンに対応したオールマイティナビ、トヨタの「TCスマホナビ」やヤフーの「Yahoo!カーナビ」はカーナビに特化したアプリで、DeNAの「NAVIRO」は、車、電車、徒歩のナビ機能以外に、ドライブレコーダー・AR表示・オービス案内などの機能も搭載しています。
 「Google Map」は一般ユーザーのスマートフォンや携帯電話などから得た位置情報を解析して渋滞情報も独自に提供しており、「TCスマホナビ」はトヨタの純正カーナビなどで収集している「Tプローブ交通情報」に基づく渋滞情報を、さらに「Yahooカーナビ」「NAVIRO」はVICS(渋滞や交通規制などの道路交通情報をFM多重放送やビーコンを使ってリアルタイムにカーナビに届けるシステム)の渋滞情報を反映しています。
 スマートフォンでカーナビが利用できれば「従来の専用カーナビはもう必要ないのでは?」という声をよく耳にします。スマートフォンの通信機能を使えば地図はいつも最新で、しかもその多くは無料で使用できるわけですから、そう思われるのも当然です。ただ、実際にスマホカーナビを使ったユーザーは、専用カーナビに比べて満足度はあまり高くないと聞きます。「ディスプレイの画面が小さく、車での使用には適していない。地図も専用カーナビに比べ見劣りする」というのがその理由のようです。
 前段でも紹介しましたが、カーナビに対するユーザーのトレンドは「大画面」です。大画面ナビの見やすさや迫力は、手のひらサイズのスマートフォンでは体験することができません。加えて専用カーナビにはGPSが受信できないところでも自車位置を測位する「ハイブリッド測位」(GPS情報に車速情報・ジャイロセンサからの情報を付加)という機能も搭載されています。
 カーナビは専用機、スマートフォンそれぞれに魅力があると思います。カーエレクトロニクスメーカーの担当者は「日本のユーザーは“専用機”を好む傾向があるので、AVナビは今後も生き残り、ユーザーは使用目的に応じて、専用機、スマートフォンを使い分けていくのでは」としています。

(2)CarPlayとAndroid Auto
 2014年3月、米アップルはドライブ中でもiPhoneを安全に活用できる「CarPlay」を発表しました。CarPlayはiPhoneを車のテレマティクス装置と連動させるシステムのことで、CarPlayを搭載した車にiPhoneを接続すると、車載ディスプレイにiPhoneのアイコンが現れ、直接操作できるようになります。対応OSはiOS7.1以降。
 現在CarPlayで使えるアプリは「マップ」(行き方を調べる)、「電話」(電話をかける)、「メッセージ」(メールを送受信する)、「ミュージック」(音楽を聴く)などです。これらはタッチパネルもしくは、iPhoneの音声認識機能「Siri」(シリ)を使って操作します。ハンズフリーによる電話はもちろん、留守電やニュース、インターネットラジオ、受信したメールなどはすべて音声で聞くことができ、メールを返信する際は、声を文字にして相手に送ってくれます。つまり車の中では手や目で操作、確認する必要がないハンズフリー、アイズフリーという環境でiPhoneを操作できるわけです。電子地図はiPhoneの地図アプリ「マップ」がカーナビ用の地図になります。
 一方、米グーグルはAndroid OSを搭載したスマートフォンと車のテレマティクス装置を連動させるシステム「Android Auto」を2014年6月に立ち上げました。Android Autoのアプリをインストールしたスマートフォンを対応車両と接続することで利用できます。操作方法や内容はCarPlayとほぼ同じで、対応OSはAndroid 5.0(Lollipop)以降となります。なおCarPlayおよびAndroid Autoに対応した国内市販モデルについては、5月25日現在、JVCケンウッド、パナソニックの2社が上級モデルに設定しています。

(3)ナビを搭載しないカーナビ “ディスプレイオーディオ”
 今後も市販AVナビに、CarPlay、Android Autoに対応する機能が追加されるかどうかは不明ですが、ひとつの方向性としてはディスプレイオーディオへの搭載が考えられます。

パイオニアFH-9300DVSパイオニアFH-9300DVS

 パイオニアは5月19日、CarPlayおよびAndroid Autoに対応したディスプレイオーディオ「FH-9300DVS」を6月より発売すると発表しました。
 ディスプレイオーディオとは何か。聞き慣れないという方もいると思いますので簡単に説明します。一言でいうならば、モニター付きCD/DVDプレーヤー型のメインユニットのことです。「ナビは必要ないが、音と映像はちゃんと車内で楽しみたい」そんなニーズに応えたメインユニットになります。
 ディスプレイオーディオはナビの機能は搭載していませんが、iPhoneやAndroidのOSを搭載したスマートフォンをUSB接続することで、カーナビの機能が加わります。実勢価格はカーナビを搭載していない分、値頃感のあるモデルになる見込みです。
 CarPlay、Android Autoの市販市場での展開については、既存のAVナビの付帯機能として追加されるのか、ディスプレイオーディオに追加されるのかは分かりません。ですが、スマホユーザーが年々増えている現状を見れば、カーエレクトロニクスメーカーも無視はできないと考えられます。
 CarPlay、Android Autoもスタートしたばかりで、今後の需要動向はまだ分かりませんが、カーエレクトロニクスメーカーの声をまとめると、「グローバル市場では普及していくが、日本市場では大きな普及は難しい」と見ているようです。実際、海外ではCarPlay、Android Autoの対応モデルを販売している日本のカーエレクトロニクスメーカーも、日本では未発売というところもあります。
 CarPlay、Android Autoを生んだ国アメリカは、アメリカ人のライフスタイルに見合ったサービスとしてスタートしました。スマートフォンを車の中でも同じように使いたい。車が生活の一部になっているアメリカでは、その思いは日本より強いと思います。米国ジェトロのレポートによれば、アメリカ人一人あたりの年間走行距離は2万1,60kmと日本の倍以上、全車両の年間走行距離は日本の8倍というレポートもあります。
 一方、日本の移動手段は、都市部においては公共交通機関がメインになります。カーナビはシンプルな地図で廉価なオンダッシュのPND(ポータブルナビ)が基本、というアメリカのドライバーニーズに対し、日本では車の内装との一体感や、詳細地図、頻繁な地図更新、日本独自のカーエンターテインメント性がドライバーのニーズを支えてきました。こうしたライフスタイル、カーナビに対するニーズの違いは、CarPlay、Android Autoを利用するか否かの意識に大きな影響を与えていくと思います。

3 おわりに

 マイボイスコムが2016年12月に実施した調査によれば、日本におけるカーナビ機器の所有率は全体の6割弱、 自動車所有者では75%にのぼるそうです。つまりカーナビはドライバーにおいては必需品といってもいいと思います。これだけ普及したのは、カーナビを製造してきたメーカーがその時代、その時代のお客様のニーズを的確に捉えた商品を世に送り出してきたからです。
 オートバックスは、市販ナビが登場した1990年からカー用品総合専門店としてカーナビの販売、取り付けを行っています。車が一台ごとに個性があるように、カーナビにも一台ごとの個性があります。そしてそれを使われるお客様も一人ひとり異なるニーズを持っています。メーカーがこだわりを持って作った商品と、お客様との大切な出会いを演出する、これが私たちオートバックスに課せられた仕事だと思っています。

※本リリースの全文につきましては、弊社ホームページ(http://www.autobacs.co.jp/ja/news/newsletter.php)に掲載しています。

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URL
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業種
商業(卸売業、小売業)
本社所在地
東京都江東区豊洲5-6-52 NBF豊洲キャナルフロント
電話番号
03-6219-8787
代表者名
堀井 勇吾
上場
東証1部
資本金
339億9800万円
設立
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