IoT・ウェアラブルデバイスの接続性・連携性に革新をもたらす国際標準規格「センサ信号のコンテナフォーマット:IEC 63430」が発行
~普及・啓発活動を推進・加速へ~
公立大学法人広島市立大学、TIS株式会社、株式会社エー・アンド・デイ、帝人株式会社(以下「4者」)が中心となり、日本からの新規国際標準としてIEC(※1)に提案し、2021年に審議が始まった「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマット(※2)」の、国際標準規格が2025年2月に「IEC 63430」として発行されました。
今後は、IoT領域の多様な事業者などに向け、リファレンス・アプリ(※3)の提供、ユースケースの開発や検証・実証、実装ガイドラインの作成をはじめとするさまざまな普及・啓発活動を、「センシングIoTデータコンソーシアム(※4)」を中心に推進・加速していきます。
【背景、経緯】
近年、日常生活での体調管理や運動時の活動測定などを目的としたIoT・ウェアラブルデバイスの普及・利活用が急速に拡大しています。一方で、取り扱う信号の形式などがメーカーや機器ごとに異なるため、"メーカーA社とメーカーB社の機器を同時に接続できず、データ連携や共有がしづらい"など、利便性に多くの課題を抱えています。
4者は、経済産業省公募(※5)による「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマットに関する国際標準化」の採択を契機として、ウェアラブルデバイスでの上位レイヤーから下位レイヤーまでのセンサ信号を共通的に処理できるよう、信号のやり取りを「コンテナ」化する技術仕様一連の策定作業を行ってきました。
2021年には、IEC TC100/TA18(※6)に対して、「ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術」を国際標準規格として提案し、同年12月に新規プロジェクト承認され、2025年2月に国際標準規格(IEC 63430)として発行されました。
【利活用分野・領域】
多様なIoTサービスやウェアラブルデバイスと親和性の高いセンサ信号のコンテナフォーマット技術は、まず「ヘルスケア・医療」領域での活用を想定しています。
Society5.0で目指す超スマート社会の実現には、"高齢者対策に資するサービスの開発やニーズの掘り起こし"が重要課題と目されており、AAL(※7)の重要性が一層高まると予想されます。しかし一方で、AALに係るセンサやデバイスのメーカー・システム開発企業が各々別個に開発を進め、ソリューション・サービス事業者も各々への個別適応に終始する取り組みのままでは、実現スピードが遅滞し早期の事業規模拡大への懸念も生じかねません。
国際標準規格を採用することで、自社の製品やサービスと他社との連携において迅速かつ主導的な展開が図れるとともに、国内はもとより海外と共通のデバイス、システムやサービスを構築することができ、国内で成功したモデルをグローバルに展開することが容易になります。
標準化されたウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術は、製造、流通、金融、建設、運輸、サービス、エネルギー、公共など社会のさまざまな分野・領域への適用が可能であり、広範に普及活用されることによって、事業の競争力強化や新たな市場の創造が実現するものと考えます。
【技術概要】
「コンテナフォーマット」は、ウェアラブルセンサ信号に係る互換性や5G・6Gと連携するIoTへの適応性を高め、データの共有・利活用を柔軟に行える、標準化の核となる技術です。

Sensor Device(測定) |
Sensor Deviceは、センサ素子が得る信号をデジタルデータに変換して、Edge Computing Deviceに送出する。 |
Edge Computing Device(計算) |
Edge Computing Deviceは、Sensor Deviceから受け取ったデジタルデータを「コンテナ」化する。以降はコンテナフォーマットをベースとして計算処理を行う。 |
Repository(収納) |
Repository(サーバー)は、Sensor Deviceからの情報に基づき、データの構造情報を提供する。 |
Viewer(閲覧) |
クラウド・ネットワークを経由し、Viewerで、測定値を可視化する。 |

【今後について】
今後は、ウェアラブルセンサ信号の利活用が見込まれるIoT領域の事業者・関係諸団体などを対象に、IECでの2025年度の標準化原案提案を目標とする「セキュアなセンサデータストアシステム(※9)」と併せて、多様な利用用途を念頭においたリファレンス・アプリの提供、ユースケースの開発や、実用化に向けた検証・実証、実装のためのガイドラインの作成などさまざまな普及・啓発活動を、IEC国際標準化の促進などを掲げる「センシングIoTデータコンソーシアム」を中心に推進・加速していきます。
IoT・ウェアラブルデバイスの接続性・連携性に革新をもたらし、日本発の新たな事業・産業の創出に道を拓く国際標準規格「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマット:IEC 63430」に、ぜひご注目ください。
※1 IEC:International Electrotechnical Commission(国際電気標準会議)
※2 ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマット:Data Container format for wearable sensor
※3 リファレンス・アプリ:考案したウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術の機能や実装の検証用アプリケーション
※4 センシングIoTデータコンソーシアム:IECでの標準化に向けて技術開発、検証、啓蒙活動を進めてきた企業・団体により、標準公開後の普及と利活用拡大を目的に2020年に設立。
「IEC国際標準化の促進と社会実装によるSociety 5.0の実現と日本初の発の産業創出への貢献」を基本理念としており、IoTデバイス提供企業、IoT活用システム開発企業、関連団体などが参画。
[代表者]山田 肇(IEC SyC AAL国際幹事・ICPF代表)
[ウェブサイト]https://www.sensing-iotdata.com/
※5(経済産業省:令和2年度 募省13)省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマットに関する国際標準化」(令和2年度から3年間)
※6 IEC TC(Technical Committee)100/TA(Technical Area)18:オーディオ、ビデオ、マルチメディアシステムおよび機器の技術分野に関連する国際標準化を担当する技術委員会
※7 AAL:Active Assisted Living(自立生活支援)
※8 BAN:Body Area Networkは、人体の周囲にネットワークを構築することで、バイタルサイ等データ測定適所に装着した複数センサの計測情報を集約する近距離無線通信技術です。
代表的な規格として「SmartBAN(スマートバン)」が挙げられます。
SmartBANは、複数センサを連携させ情報を統合する「高精度な時間同期」のほか、医療・ヘルスケア用途での信頼性の高い通信に不可欠な、生体情報に応じた許容誤り率での「最適伝送」、生体の異常に係る緊急信号の「低遅延伝送」、混信など他人との「干渉回避」、充電を削減し長時間使用できる「低消費電力化」、スイッチを入れるとすぐに使用できる「短時間での初期接続」 など数々の特長を有している『次世代ボディエリアネットワーク無線通信規格』です。
なおSmartBANは、2015年にETSI(欧州電気通信標準化機構)で標準規格化されており、IECにおいても国際標準規格(IEC 63203-801-1:SmartBAN PHY規格、IEC 63203-801-2:SmartBAN MAC規格)として2022年に発行されました。
※9 セキュアなセンサデータストアシステム:自らのデータが取り扱われる際の懸念や不安の低減、データ流通の適切性や円滑性の向上などを目的とし、ウェアラブルデバイスなどで取得したセンサデータをセキュアに保存・管理するためのシステム。
公立大学法人広島市立大学 大学院 情報科学研究科 医用情報科学専攻 医用情報通信研究グループ
Body Area Network(BAN)を用いた医療・ヘルスケア・介護クラウドシステム、生体センサシステムによる医療・ヘルスケアシステム及び多機能ウェアラブルバイタルセンサとウェアラブルマルチ伝送システム、及び無線通信技術とデータ解析技術等の研究と開発等を行っており、情報通信技術と医療・医学との融合による新たなワイヤレス医療ヘルスケアの創生を目指しています。
[研究室長]田中 宏和(教授)
[所在地]〒731-3194 広島市安佐南区大塚東三丁目4番1号
[研究室サイト]https://mict.info.hiroshima-cu.ac.jp/
TIS株式会社
TISインテックグループのTISは、金融、産業、公共、流通サービス分野など多様な業種3,000社以上のビジネスパートナーとして、お客さまのあらゆる経営課題に向き合い、「成長戦略を支えるためのIT」を提供しています。50年以上にわたり培ってきた業界知識やIT構築力で、日本・ASEAN地域の社会・お客さまと共創するITサービスを提供し、豊かな社会の実現を目指しています。
[代表者]岡本 安史(代表取締役社長)
[所在地]〒160-0023 東京都新宿区西新宿8丁目17番1号
[企業サイト]https://www.tis.co.jp/
株式会社エー・アンド・デイ
エー・アンド・デイは、アナログとデジタルの変換技術を基幹技術として、「電子計測機器」の開発・製造・販売を手掛け、「計測・計量機器」「医療・健康機器」等の幅広い製品を世界市場に提供しております。医療健康分野では、遠隔医療・リモート診断の体制構築に寄与することにより、健康長寿社会実現へ貢献いたします。
[代表者]森島 泰信(代表取締役)
[所在地]〒170-0013 東京都豊島区東池袋三丁目23番14号
[企業サイト]https://www.aandd.co.jp/
帝人株式会社
帝人グループは合成繊維のパイオニアとして1918年に創業し、社会のニーズを先取りして継続的にポートフォリオを変革しながら、マテリアル事業、繊維・製品事業、ヘルスケア事業を主な事業として、人々の健康で快適な暮らしの実現に向けて成長を続けてきました。「Pioneering solutions together for a healthy planet」をパーパスとして掲げ、未来の社会を支える会社になることを目指しています。
[代表者]内川 哲茂(代表取締役社長執行役員)
[所在地]〒100-8585 東京都千代田区霞が関三丁目2番1号 霞が関コモンゲート西館
[企業サイト]https://www.teijin.co.jp/
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