PCR、マイクロアレイの核酸配列の設計に利用できる核酸配列確認のためのデータベースの妥当性評価に関する国際標準が発行されました。
ISO 24480:2024 「バイオテクノロジー — ヌクレオチド配列評価に使用されるデータベースの妥当性評価」が出版されました。
このたび、特定非営利活動法人バイオ計測技術コンソーシアム(以下JMAC)は、当コンソーシアムが中心となって開発した国際標準、ISO 24480:2024 「バイオテクノロジー — ヌクレオチド配列評価に使用されるデータベースの妥当性評価」が出版されたことをお知らせします。
PCRやマイクロアレイなど核酸の配列をキーとして病原体や食品材料の種類を判別する核酸検査が拡大を続けています。核酸検査に使われる塩基配列は、PCRやマイクロアレイに搭載する前に、これまで全世界で膨大に蓄積された塩基配列のデータベースと照合し、検出したい塩基配列のみと類似性があり、意図していない配列とは異なっていることを確認しています。照合の対象となるデータベースは、現実的には米国NCBI等のデータベース等が使われるのが通例ですが、そのデータベースで塩基配列の評価を行うことで、核酸検査の性能を評価できると判断するための方法はありませんでした。今回出版された国際標準ISO 24480:2024 「バイオテクノロジー — ヌクレオチド配列評価に使用されるデータベースの妥当性評価」(英文タイトル:Biotechnology — Validation of database used for nucleotide sequence evaluation)は、配列の確認のために使うデータベースが、核酸検査に用いられるプライマーやプローブと呼ばれる短い核酸断片の塩基配列の確認に適していることを確認するための方法を示しています。
塩基配列が核酸検査に適しているかどうかを確認するための方法については、国際的な議論となっており、食品産業に関係する標準を開発しているAOAC (https://www.aoac.org/)でも検討され、AOAC OMA Appendix Q(注1)として発表されております。今回出版される国際標準については、このAOACの文書と事前の調和を図っております。
食品検査等を実施する試験所は、核酸検査について認定を受けようとすれば、用いる塩基配列のデータベースへの照合結果を検査全体の妥当性確認の一部として用いることが必要ですが、その際、照合するデータベースが適切であるかどうかを示す必要があり、今回の標準を利用することで国際的な基準に基づくデータベースの選択ならびに評価を実施することができるようになりました。
今後は、様々な活動を通じて、ISO 24480:2024を広く周知していくと同時に、認定機関にも働きかけ、核酸検査の認定への応用を促進していく予定です。
注1:AOAC OMA Appendix Q
AOACの提供している「Official Methods of Analysis: 22nd Edition (2023)」の附属書であり、正式なタイトルは「Appendix Q: Recommendations for Developing Molecular Assays for Microbial Pathogen Detection Using Modern In Silico Approaches」である。論文として下記雑誌に発表されている。
- Journal of AOAC INTERNATIONAL, Volume 103, Issue 4, July-August 2020, Pages 882–899, https://doi.org/10.1093/jaoacint/qsaa045
注2:本国際標準(ISO 24480:2024)の開発にあたっては、経産省事業「令和5年度国際ルール形成・市場創造型標準化推進事業費(戦略的国際標準化加速事業:産業基盤分野に係る国際標準開発活動)の支援を受けています。
【本件に関するお問い合わせ先】
特定非営利活動法人バイオ計測技術コンソーシアム 事務局 中江・川島(Tel: 03-6261-1947)
特定非営利活動法人バイオ計測技術コンソーシアム
「バイオ計測技術コンソーシアム(JMAC:Japan bio Measurement & Analysis Consortium)」は、マイクロアレイ等のバイオチップ関連の産業促進・市場創出を目的とし、「バイオチップコンソーシアム」として2007年10月19日に設立され、2008年10月には東京都の認可を受けて特定非営利活動法人となったバイオテクノロジー産業分野の業界団体です。2013年にはバイオチップに関する国際標準ISO 16578の発行を達成し、その後、バイオチップ以外にも広くバイオテクノロジー関連の産業化活動の推進を行っていくため、2018年10月に「バイオ計測技術コンソーシアム」と名称変更し、主に標準化活動を行っています。
バイオテクノロジー関連技術は飛躍的に発展を成し遂げ、今日では有用な研究ツールとして、大学等の研究機関や製薬・食品企業等の研究所にて広く利用されるに至っています。しかしながら、精度測定、サンプル前処理、データ解析・判定、試薬管理などの方法および手順の確立をはじめとする関連技術の標準化がなされていないため、研究利用よりもはるかに大きな市場規模が想定される産業利用が十分になされていません。
一方で、世界各国においてはバイオテクノロジー関連技術の標準化活動が活発に行われており、市場のグローバル化が進む昨今、我が国の産業界もこれらの影響を看過できなくなってきています。
我が国でも、産業界が中心となって、バイオテクノロジー関連技術の産業化に向けた標準化を検討し、欧州や米国をはじめとする国外団体との国際協調を図り、標準化を推進していくことで、バイオテクノロジー関連技術の市場を創生していけるものと期待しています。
また特許や推奨基準などの勉強会を開催するなど、バイオテクノロジー関連技術に関する参加企業が情報を持ち寄って交流し、産業化に向けた課題が導かれ解決されていくことが、バイオテクノロジー関連技術の産業化を促進していくと考えております。
以上の趣旨の下で、バイオテクノロジー関連技術の標準化を通じて、産業化促進、および市場創生を行うことを目的として、当コンソーシアムは設立・運営されています。
当コンソーシアムに関する詳細な情報は、https://www.jmac.or.jpをご覧ください。
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