アンケート結果公開!「教育予算、優先的に使うべきはどこ?」
教育予算を増やす場合、「現場の教職員は何に優先的に使ってほしいと考えているのか」を可視化するために、全国の教職員の方の意見を聞きました。
こども家庭庁ができたことや、自民党の特命委員会による提言が出たことなどを受け、こども・教育予算をめぐる議論が活発化しています。
2019年時点で、日本の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合は2.8%と低く、データのあるOECD加盟37か国中36位(平均4.1%)でした。教育予算全体を増額するべきという声は学校現場からも長年上がっています。一方で、「何から進めていくべきか」という議論も実際には重要になってきます。
今回のアンケートでは、教育予算を増やす場合、「現場の教職員は何に優先的に使ってほしいと考えているのか」を可視化するために、全国の教職員の方の意見を聞きました。
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2023年6月5日(月)〜2023年7月10日(月)
■実施方法:インターネット調査
■回答数 :80件
アンケート結果
設問 教育予算を優先的に使うべきはどこ?
Q1. 以下のうち、もっとも優先的に予算措置をして進めてほしいと思うものを選んでお答えください。
Q2. 以下のうち、2番目(設問1で答えた内容の次)に優先的に予算措置をして進めてほしいと思うものを選んでお答えください。
Q3. 以下のうち、3番目(設問2で答えた内容の次)に優先的に予算措置をして進めてほしいと思うものを選んでお答えください。
※ 以下、Q4・Q5も同様
<教員負担軽減,給与体系の改善,各種手当の改善>
少人数学級の推進(1クラスあたりの人数を少なくする)
⚫︎少人数にすることで、一声かけたい子どもに声がかけられる。困っていることに気づけるのではないかと思う。少人数にして、学年付きの先生もいれば、ゆとりが持てるのではないか。【大阪・小学校・教員】
⚫︎欧米先進国に比べ圧倒的に1学級あたりの人数上限が多い。子に応じた指導が求められているのに、指導環境は数十年前の一斉指導型主流のときと変わっていないため。【栃木・小学校・教員】
⚫︎中学校でも30人にして欲しいです。現在の40人を見ている場合、やはり一人一人をよく見るのが難しい実感があります。また、一学年4クラスで構成されている場合、教科担当が見る生徒は160人になり、テスト採点、評価をつけることにも日々追われてしまいます。【千葉・中学校・教員】
1人の教員の持ちコマ(授業)数を少なくする
⚫︎学習指導要領が改訂され、指導事項や必ずおさえておく事柄がどっと増えたため、それぞれの教科等の準備や後始末が物凄く増えた実感がある。主体的で対話的で深い学びを構築するための準備できる時間的体力的余裕が現場には皆無だから。【島根・小学校・教員】
⚫︎授業と授業準備、事務作業や行事準備に追われ、子どもと向き合ったり、創意工夫をしたりする時間がなく、教員という仕事の魅力が低下していると思います。【大阪・中学校・教員】
残業代の完全支給(給特法の廃止)
⚫︎子どもが長い時間いる以上、勤務時間内に全ての業務が終わることは不可能だから。けれども保護者は当たり前に学校の対応を求めているため、負担に見合う報酬は必要。【島根・小学校・教員】
⚫︎残業代が支払われる仕組みになってこそ、長時間労働に歯止めがかかると思います。すべての教員が残業なしで働けるように人員配置をした上で、給特法を廃止してください。【埼玉・小学校・学習支援員】
基本給のアップ
⚫︎現職の給与を上げることをしないと、なり手が減っていく。時間外労働も非常に多い中で、教職員を減らさないために、給与を上げることを第1に。【神奈川・中学校・教員】
教職調整額の改善
⚫︎調整額は月30〜40時間に相当する%に引き上げ。超過分は個別に残業代を認める。管理職のマネジメントが必要。【大阪・高校・教員】
⚫︎同じ地方公務員でも市役所職員の人気は高い。良い人材が集まっている。教職調整額を改善し人気を高かめ、減少する人材の中から優れた人材の確保をお願いしたい。諸問題の未然防止、早期発見、早期解決が望まれる中、子どもたちと直接接して影響を与える教員は、少しでも優秀な方が良い。一人の優秀な教師は、多くの優秀な人材を育てる。時間がかかる問題なので、少しでも早く改善してほしい。もう手遅れ、破綻している、沈みかけている、等々言われているが、一年でも早く改善してほしい。【茨城・小学校・校長】
学級担任手当の創設
⚫︎本意ではないが、職場が壊れている(担任を断る教員が増えている)ため、導入せざるを得ないと考えます。【山口・高校・教員】
部活動手当の改善
⚫︎一部の教員の情に任せたシステムは、あまりにも時代遅れ。顧問として名前があっても本人任せの今のシステムでは負担が偏る。部活の活動量の差による負担の偏りも考慮に入れたシステムを求める。【兵庫・中学校・教員】
⚫︎自分の自治体は4時間以上は一律3600円、たとえば引率や試合で8時間かかってもそのままなので、時給500円以下でさらに交通費は自腹です。部活動手当は、せめて労働者の最低賃金と、加えて交通費支給をしてほしいです。【大阪・中学校・教員】
管理職手当の改善
⚫︎管理職の価値が低すぎる。大変な仕事であるともう少しリスペクトされるべき。【大阪・中学校・教員】
上記以外の手当の改善(主任手当など)
⚫︎役職によっての手当ては改善してほしい。現実的に負担がかかる状況から考えて、様々な業務の手当て、役職手当の改善をお願いしたい。警視庁等の手当てなどを参考にしてもらうと、困難な業務でも求人倍率は改善されていくでしょう。【茨城・小学校・校長】
<専門職種の新規配置・配置増>
スクールサポートスタッフの配置増
⚫︎教員が背負っている業務があまりに多すぎる。行事のコーディネート専任の職員がいると大変助かる(特に宿泊行事)。【福岡・特別支援学校・教員】
部活動支援員の配置増
⚫︎地域によるかと思いますが、全く部活動の地域移行が進んでいません。指導者を確保できないためだと思います。具体的にどのような手当がでるのか、地域の方に知らせていくことが必要だと思います。【千葉・中学校・教員】
⚫︎公立の中学校だと、部活動の仕事が多すぎる。休みの日に休めていない。ゆとりのある教育現場を目指すべきである。【大阪・中学校・教員】
⚫︎教員にとって心理的にも体力的にも最も負担なのは部活動であると考えている。部活動を支援員の方に全てお任せできれば、教員の仕事はだいぶ軽減されると思う。実際、私は今年、部活動の顧問を受け持っていない。それでも、その他の様々な仕事を抱えているため、定時に帰ることはできない。しかし、部活動と違って自分の専門性も生かせるし、工夫次第では早く終わらせることもできる。部活動は、専門性がいかせないことも多く、「ただその場にいるだけ」という、かなり時間を無駄にした仕事になることも多く負担であった。【鹿児島・高校・教員】
スクールソーシャルワーカーの配置増
⚫︎子どもの抱える課題について、学校側がどうにもできないことが増えています。各校にスクールソーシャルワーカーを配置することによって、福祉面から子どもや家庭を支えるようにしていかなければ、これから先、学校は立ちゆかなくなると思っています。【大阪・小学校・教員】
スクールカウンセラーの配置増
⚫︎本来必置が努力義務のはず。未だに「他の子のことを考えると…」などと「通常教室内での特別支援」に対する理解が浅い教員が多い。臨床心理士がより時間をかけて児童を見とり、きめ細かく助言を与えていけるようにすべき。【東京・小学校・主任/主事】
⚫︎月に1回しかカウンセラーの先生が来られず、常に予約でいっぱいである。また、教員とは違った立場の専門性をもった方が学校にいらっしゃった方がいいと思う。予算措置をして、常勤(できれば正規雇用)になれば、尚よいと思う。【鹿児島・高校・教員】
事務職員の配置増
⚫︎他の業種から教員になって本当にびっくりしたことの1つが、「教員が何から何までやっている」ことでした。専門職と言われている職業で、お金の徴収からトイレの修理、ワックスがけまでするのには驚きを通り越して呆れ、それを当然視する他の先生にも、正直引きました。事務処理も実はかなり多いのに、そのことは学校外では余り知られていません。選択肢はいずれも大切だと思いますが、教員が本来する仕事ではないものを可視化する、業務の切り分けをするという意味で、敢えて事務職員の増員を選びました。【愛知・小学校・教員】
ICT支援員の配置増
⚫︎タブレットの不調やログインまでの対応などで時間をとられて、その間に子どもと関わる時間や他の業務を行う時間が減るので。【大阪・小学校・教員】
<その他の施策>
学校施設や教具・教材等の改善 / 充実
⚫︎校舎は雨漏り状態、教具はボロボロで数も足りず、教室の机には穴や過去の落書きが残っている状態です。それでも「予算がない」ので、そのまま使います。直ちに人命に関わることではありませんが、そうやって後回しにされ続け、結局何も変わりません。【宮城・小学校・教員】
⚫︎トイレ、温水の出る水道、エアコン、情報機器、掃除用具や調理器具など、子どもたちの家庭にはあるものが学校にはない。指導しながら不便が多い。エレベーターもなく、怪我をした子や身体障害のある児童が不便でならない現状があるから。【滋賀・小学校・教員】
若手教員支援の充実
⚫︎人材確保のため。離職を減らすには、教員の支援体制が整うことが優先的に必要だと思う。【大阪・小学校・教員】
給食費や教材費の無償化など保護者負担の軽減
⚫︎子どもを産み育てることのハードルの高さは「お金がかかる」点にあると思われる。(各調査を総合して考察すると、ほぼこの点に収束されるのではないか)公立学校でも、給食費、教材費、その他行事等での出費はかなり負担が大きい。水着も体操着も上履きも習字道具も裁縫セットも各教科の指定ノートも、合計すると相当な額になる。子どもたちを、快く学ばせてあげたい。塾に行かせて私立に行かせて、ができる保護者ばかりではない。【埼玉・中学校・教員】
フリースクールなどへの補助
⚫︎子ども達の選択肢を広げて欲しいです。【静岡・中学校/高校・教員】
⚫︎学校以外の場所の方が、自分らしく学べる子どもたちは一定数存在する。フリースクールなどでは、学校ではできない個別支援が可能である。学校にいかなくてもいい、ほかにもきちんと学んで成長できる場がある、ということは、多くの親子を安心させることにつながる。複数の選択肢を、子どもに与えてほしい。【埼玉・中学校・教員】
その他
⚫︎近年、非常勤講師の割合が増えてきていると思いますが、給与面でかなり冷遇されていて、非常勤講師の質の低下が懸念されます。非常勤講師もなり手不足で、高齢化しています。もっと魅力的な待遇にすれば非常勤講師のモチベーションも上がるし、なり手が増えて、学校側が必要だと思う人材を選べるようになると思います。【静岡・中学校/高校・教員】
<まとめ>
23の選択肢(「その他」を含む)を用意し、回答者に優先順位をつけて5つ選択をしてもらいました。最も多く選択されていたのは、「少人数学級の推進」で全体の78%にのぼりました。次いで多かったのは、「1人の教員の持ちコマ(授業)数を少なくする」で76%。3番目以降は大きく数値が下がり、「スクールサポートスタッフの配置増(33%)」「残業代の完全支給(33%)」「学校施設や教具・教材等の改善 / 充実(31%)」「基本給のアップ(28%)」「部活動支援員の配置増(25%)」と続きました。
少人数学級の推進と持ちコマ数の削減は、多くの教員が望んでいることがわかります。その他の項目については、個人によって回答が大きく分かれる結果となりました。校種別に見た際に最も多かったのは、小学校では「1人の教員の持ちコマ(授業)数を少なくする」で、中学校と高校では「少人数学級の推進」でした。
自由記述欄に目を向けると、選択した人が比較的少なかった項目(教員以外の専門職の配増や給与や手当の見直しなど)であっても、決して重要度が低いわけではないことも伺えます。教員だけでは対応しきれない児童生徒や保護者との関わりにおいて、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーなどの存在が不可欠であることや、教員が担っている事務的な仕事を担当する職員の必要性を訴える声が目立ちました。
※WEBメディア「メガホン」の記事(https://megaphone.school-voice-pj.org/2023/07/post-3693/)より、全回答がご覧いただけます。
運営団体:NPO法人 School Voice Project
学校現場の声を「見える化」し、対話の文化をつくるプロジェクト。児童生徒も教職員も「自分の思いや声には価値がある」「私には現実を変えていく力がある」と実感できる学校づくりのために、教職員WEBアンケートサイト「フキダシ」と学校をよくするWEBメディア「メガホン」の運営、政策提言・ロビイング活動を行なっています。
【団体名】NPO法人 School Voice Project
【代表理事】大野 睦仁
【設立】2022年8月19日
【所在地】〒105-0013 東京都港区浜松町2丁目2番15号 浜松町ダイヤビル2F
【問い合わせ先】https://school-voice-pj.org/contact.html
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