Quanmatic社、量子コンピュータソフトウェアQANMLに、解の収束性を向上し組合せ最適化問題の解決を改善するアルゴリズム「マルチスピンフリップ法」を追加
背景
近年、大規模化が進む組合せ最適化問題(*1)に対し、量子コンピュータの活用が注目されています。なかでもアニーリング式量子コンピュータの実用化が進んでいますが、ハードウェアの不完全性や計算原理の性質によって、問題サイズの制限や、良解の安定取得が難しいという課題があります。
Quanmatic社は、これらの課題を解決するために、2023年7月にQANMLをリリースしました。QANMLは、ハードウェアや問題に依存せず、解の収束性や精度を向上させるソフトウェアです。リリース時に搭載したアルゴリズム「ダークスピン法」は、線形制約付きの組合せ最適化問題に対して幅広く適用可能な、元の問題の最適性を維持したまま、使用する変数の個数を削減する手法です。
「マルチスピンフリップ法」の特徴
今回新たに、良解への収束性を高めるアルゴリズム「マルチスピンフリップ法」を搭載しました。本手法では、エネルギー地形を変形することで、任意のマルチスピンフリップをシングルスピンフリップとして実現します。これにより、局所解にトラップされる確率を低下させ、アニーリング式の量子コンピュータにおける、解が収束しづらいという問題を解決します。早稲田大学戸川研究室の知財(*2)をもとに一般化したアルゴリズムのため、シングルフリップを動作原理とする既存のマシンにも適用可能で、さらにQUBO(*3)(もしくはイジングモデル)で表現可能なあらゆる組合せ最適化問題に対して適用可能です。
本アルゴリズムを当社が過去に取り組んだ実問題に適用したところ、4%程度の効果が確認できました。
他の業種においても本アルゴリズムを適用することで、多様なビジネス課題の解決が期待できます。たとえば、交通渋滞の解消や物流コストの削減、エネルギー供給の安定化など、社会的問題へ大きく貢献する可能性があります。
今後の展望
当面、QANMLはQuanmatic社内利用によりその性能を高め、SaaSによるリリースを目指します。
今後もQuanmatic社は継続して、アルゴリズムの力を活用した量子技術の早期活用を推進してまいります。
■QANML HP:https://quanmatic.com/product/qanml/
(*1)組合せ最適化問題:複数の組合せの選択肢の中から、ある制約の下で、最も良い組合せを選ぶ問題。製造、物流、金融、化学など様々な業界に内在される問題で、高精度の解を高速に得る計算技術のニーズが向上しています。一方で、問題の規模や複雑性が増すにつれて、爆発的に組合せの数が増えていき、現実的な時間で解を得ることが困難になります。
(*2)T. Shirai and N. Togawa, "Multi-Spin-Flip Engineering in an Ising Machine," in IEEE Transactions on Computers, vol. 72, no. 3, pp. 759-771, 1 March 2023, doi: 10.1109/TC.2022.3178325.
(*3)QUBO:Quadratic Unconstrained Binary Optimization (二次制約なし二値最適化)
株式会社Quanmaticについて
Quanmatic社は、アルゴリズム開発を通じた量子技術の早期活用の実現を目指し、早稲田大学戸川望教授(Chief Scientific Officer)の研究シーズを元に、CEO古賀純隆、慶應義塾大学田中宗准教授(Chief Technology Officer)とChief Product Officer武笠陽介の4名で2022年10月に設立しました。アルゴリズム知財と研究成果をビジネス課題に適用するための最適化エンジンの開発を継続して進め、ハードウェアに依存しない汎用的な量子計算技術の効率化ソリューションを展開します。
設立:2022年10月
所在地:東京都新宿区西早稲田一丁目22番3号
代表取締役:古賀純隆
■本リリースに関するお問合せ先
Mail: info@quanmatic.com
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