世界難民の日に寄せて:日本で学び働く希望の道を広げる
教育を通じた難民・避難民の受け入れ10年、日本発のモデルの広がりへ
世界で紛争や人権侵害などで故郷を追われた人々は、国境を越えて難民となった人々が4,160万人もおり、国内避難民等とあわせた2025年末の総数は1億1,780万人に及んでいます。また、その避難生活が長期に渡る人も多いのが現状です。(UNHCR「グローバル・トレンズ・レポート2025」)一方、母国に留まりながら国外に避難する道を探している人々も多く、例えばアフガニスタンでは、女性の教育や就労が禁止され、前政権関係者や留学経験者、社会的活動をしていた女性、少数民族等が迫害の危険に晒されています。しかし、国外に避難する機会は非常に限られています。これまで多くの難民・避難民を受け入れてきた欧米諸国でも、受け入れ制度の見直しや縮小の動きも見られています。こうした中、教育や就労を通じて新たな受け入れの道をつくる「補完的パスウェイズ(Complementary Pathways)」が国際的に注目されています。
公益財団法人パスウェイズ・ジャパン(所在地:東京都文京区、代表理事:折居徳正)は、2016年に認定NPO法人難民支援協会の一事業として、難民・避難民の若者を「留学生」として受け入れる取り組みを開始しました。今年、事業開始から10年を迎え、これまでに232名(同伴家族含む)を受け入れ、70名を超える若者が日本で就職し、新たなキャリアを歩み始めています。
また、日本で暮らす難民・避難民の若者の高等教育進学を支援する「渡邉利三国際奨学金」も5周年を迎え、今年は過去最多となる25名を支援しています。
難民・避難民の若者が、日本で「学ぶ」「働く」機会を得ることは、本人の未来だけでなく、受け入れ社会の多様性や活力にもつながります。パスウェイズ・ジャパンでは、難民・避難民と受け入れ社会双方に価値を生み出す新たなモデルづくりを進めています。
このたび、事業開始10周年を記念し、これまでの歩みと、難民・避難民の若者、その道のりを支える方々の声を集める特設ウェブサイトを公開しました。サイトでは、今後、来日した若者たちの歩みや、教育機関・企業・支援者など、多様な関係者の声を紹介し、日本で学び働く難民・避難民の若者を支える輪を広げていきます。

サイトURL:https://pathways-j.org/10thanniversary
シリア、アフガニスタン、ウクライナからの受け入れ
過去最多の2,000名超が応募――情勢悪化を乗り越え、26名が日本で新たな一歩
パスウェイズ・ジャパンでは、紛争や人権侵害により学びや将来の選択肢を奪われた若者が、日本で未来への道を拓けるよう、日本語学校での受け入れを行う「日本語学校パスウェイズ」プログラムを実施しています。
2026年度のプログラムには、シリア、アフガニスタン、ウクライナから過去最多となる2,056名の応募がありました。世界的に難民・避難民の受け入れが縮小する中でも、教育を通じて未来を切り拓こうとする若者が数多く存在していることがうかがえます。選考では、日本社会への適応力、日本語学習への意欲、将来のビジョンなどを総合的に審査し、32名を採用しました。家族事情や健康上の理由による辞退を経て、最終的に26名が来日しました。
しかし、来日までの道のりは平坦ではありませんでした。今年は、母国の厳しい状況に加え、2月下旬以降の中東・南アジア地域の情勢悪化の影響を受け、半数以上の学生が渡航延期を余儀なくされました。
それでも学生たちは、日本で学ぶという希望を手放すことなく、来日の機会を待ち続けました。その思いに応えるため、関係機関や教育機関、来日サポートボランティアなど、多くの関係者が連携し、一人ひとりの状況に応じた調整を重ね、学生たちは日本にたどり着き、新たな一歩を踏み出すことができました。来日した学生たちは、日本語学校で授業を受けながら、アルバイト探しを始め、社会との接点を広げています。



*来日後の歓迎会で、学生の代表が思いを話しました。詳しくはこちら
進学、就職へ――広がる難民・避難民の若者たちの支えあい
事業開始から10年。来日した若者たちは、日本で学び、進学し、就職し、それぞれの進路を切り拓いています。支援を受けて来日した若者が、今度は後輩を支える存在へと成長し、難民・避難民の若者同士によるコミュニティも育まれてきました。
新たに来日する学生向けのオリエンテーションでは、先輩学生や卒業生が自身の経験を共有し、日本での生活や学びへのアドバイスを行っています。また、進学・就職に向けた説明会では、卒業生が自身の経験をもとに、後輩たちの進路選択や準備をサポートしています。難民・避難民の若者が学びを通じて成長し、その経験を次の世代へつないでいく循環が、日本社会の中で少しずつ育ち始めています。
<進路状況>
就職:74名
-フルタイム:53名
-パートタイム:10名
-フリーランス:11名
就活中(パートタイム就業中):11名
大学院(修士・博士):14名
大学:37名
大学非正規課程:2名
専門学校:6名
進学準備中:6名
その他(第3国に移住・本国帰国等):33名
日本語学校在籍中:48名
(2026年5月末時点)


*7月9日には、企業向けセミナー「難民・避難民の若者と働く―企業の実践事例と対話から考える採用と活躍―」を開催します。詳しくはこちらをご覧ください。
日本に住む難民・避難民の若者の高等教育を支援
過去最多25名を採用――学びを通じて未来を切り拓く若者たち
難民の背景を持つ人々の高等教育進学率は、世界全体でわずか9%にとどまっています(UNHCR教育報告書2025)。多くの若者にとって大学で学ぶ機会は依然として高い壁であり、国際社会ではSDGsの目標のもと、2030年までに15%への引き上げを目指した取り組みが進められています。
こうした状況の中、「渡邉利三国際奨学金」は、日本で暮らす難民・避難民の若者が高等教育への道を拓き、自らの可能性を広げられるよう支援するために設立されました。寄付者である渡邉利三氏の「難民の背景を持つ若者たちが学びを通じて力を発揮し、日本社会において多様な人財が活躍できる未来をつくってほしい」という願いが強く込められています。
本年度は、前年度を大きく上回る226名の応募があり、学識経験者などで構成される選考委員会による審査を経て、過去最多となる25名の奨学生が選ばれました。
奨学生たちは、2026年度に大学学部へ進学する新入生から博士課程に在籍する大学院生まで、さまざまな段階で学びを深めています。専攻分野も、工学、経済、日本語教育、観光、医療・看護など幅広く、多様な専門性を育んでいます。出身国はミャンマー、アフガニスタン、シリア、ウクライナ、カメルーンの5か国にわたり、女性16名、男性9名という構成です。
来日までの経緯も一人ひとり異なります。内戦や紛争の影響を受け留学生として日本に避難した人、家族が難民として来日し幼少期から日本で育った人、10代に家族と共に避難してきた日本で学び続けてきた人など、その背景は様々です。
しかし共通しているのは、困難な状況に直面しながらも学びへの意欲を失わず、日本で学び続ける道を切り拓いてきたことです。現在は、それぞれの専門分野で研鑽を重ねながら、日本社会だけでなく、出身国や国際社会への貢献も見据え、高い志を持って歩みを進めています。


*授与式では、奨学生が思いを語りました。詳しくはこちら
世界難民の日に寄せて、紛争や人権侵害などにより故郷を離れざるを得ず、困難な状況に置かれている人々に思いを寄せるとともに、難民・避難民の若者が持つ可能性にも目を向けていただければと思います。
パスウェイズ・ジャパンは、事業開始から10年の歩みを通じて、教育や就労を通じた受け入れが、一人ひとりの未来を切り拓くだけでなく、日本社会にも新たな価値を生み出す可能性を実証してきました。
今後も、教育や就労を通じた受け入れモデルのさらなる発展に取り組み、日本における新たな難民受け入れの可能性を広げていきます。
報道関係者の皆様
*パスウェイズ・ジャパンでは、日本で受け入れたシリア、アフガニスタン、ウクライナの学生や、「渡邉利三国際奨学金」の支援をうけ日本の大学・大学院で学ぶ難民・避難民の学生の取材を受けております。より多くの方に日本で学び希望をつなげている若者の姿を知っていただけるよう取材を検討いただけますと幸いです。
本件に関するお問い合わせ
公益財団法⼈ パスウェイズ・ジャパン広報担当
Email: office@pathways-j.org
公益財団法人パスウェイズ・ジャパンについて
難民の背景を持つ若者の国外からの受け入れと高等教育を支援。2016年から継続する受入れ・自立支援事業では、現在までにシリア、アフガニスタン、ウクライナから232名(同伴家族含む)を日本に受け入れ、日本語・高等教育を提供し、就職・自立へと導いています。卒業生のうち70名以上が就職。また渡邉利三国際奨学金により年間約20名に奨学金を供与。2021年一般財団法人設立、2024年公益財団法人として認定。
ウェブサイト:https://pathways-j.org/
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