こどもの自殺対策の推進に向けて、大人向けの講演会・グループワークをこども家庭庁が主催
~こどものSOSに気づき、つなぎ、支えるためにわたしたちができること~
こども家庭庁は、こどもが自ら命を絶つことのない社会の実現を目指し、大人を対象とした「こどもの自殺対策」に関する講演会を2月23日に北海道札幌市で開催しました。
講演会後のグループワークでは、こどもの自殺対策に携わる様々な分野の支援者が職種の垣根を越えて集まり、事例検討を通して「私たちは何ができるのか」について、意見を交わしました。
同取組は、昨年12月から今年1月にかけて実施した高校生向けワークショップ※1とあわせて、こどもの自殺対策を地域で推進していくために、こども家庭庁が道内で初めて主催したものです。
※1:高校生向けワークショップについては、以下の記事をご覧ください。
<こども家庭庁 こどもの自殺対策推進事業>“心のSOS”に気づいたときの対応を考える高校生向けワークショップを札幌市内3校で開催 | こども家庭庁のプレスリリース


■実施概要
本講演会・グループワークは、こどもが直面する深刻な悩みや表出しにくいSOSに周囲の大人がどのように気づき、支援者同士がつながり、共に対応することができるのかを考えることを目的として、実施しました。
第1部では、自殺対策やこども・若者支援を行う民間団体、北海道教育庁から講師をお招きし、こどもの「死にたい」という気持ちの背景や、道内の学校における自殺予防教育の推進、地域の居場所におけるこども・若者の様子に関する講演を行いました。講演後は、パネルディスカッション形式で、それぞれの現場の視点から、周囲の大人が、こどもたちのSOSにどのように気づき、連携し、支えていくかについて、参加者からの質疑応答も交えながら、議論を深めました。
第2部では、参加者を5名ずつのグループに分け、民生委員がこどもから消えたいと打ち明けられた事例を提示し、どのように他機関と連携を行い、継続して見守るかについてグループで検討しました。
【第1部登壇者】
○NPO法人OVA(オーヴァ) 代表理事・伊藤 次郎氏
○北海道教育庁 学校教育局 生徒指導・学校安全課 課長補佐・稲川 洋生氏
○公益財団法人さっぽろ青少年女性活動協会 こども若者支援担当部長/一般社団法人ソーシャルペダゴジーネット 代表理事・松田 考氏
■実施の背景
こども(小中高生)の自殺者数は、2020(令和2)年に大きく増加して以降、高止まりの状況が続いています。厚生労働省が令和8年1月に公表した令和7年の小中高生の自殺者数(暫定値)は、532人と過去最多となる見込みです※2。このような中、こども家庭庁では、令和5年4月の発足と同時に自殺対策室を設置し、関係省庁とともに、こどもの自殺対策に取り組んでいます。
こども家庭庁の調査研究では、自ら命を絶ったこどもには、複数の兆候がみられていたことや、3割弱のこどもが学校や家族などに直接自殺をほのめかしていたことが示されています※3。
このため、こども家庭庁では、こども・大人のそれぞれに合った施策の実施を通じて、社会全体で『こどもの自殺対策』に取り組むことや、地域において多様な主体が連携してこどもの自殺対策に取り組むことの重要性を発信することを目的に、「こどもの自殺対策の効果的な推進に係る業務」を実施しています。
今回の講演会は、本事業の一環として行われ、保護者や教職員、医療・保健・福祉関係者、地域で相談支援を行う方など、こどもの周りにいる大人がこどもの自殺対策に関する知識を得るとともに、職種を超えたネットワークを作ることで、地域全体でこどもの自殺防止のためのサポート体制をつくる契機とすることを目指しています。
■第1部 講演会の様子
第1部では、まず伊藤次郎氏が、「こどものSOSにどのように気づき、対応するか」というテーマで、基調講演を行いました。講演では、こども・若者を取り巻く多様な生きづらさが重なり合うことで、悩みが深刻化し得ることを提示した上で、支援者側も自身の所属(分野)だけでは対応しきれないことがあるため、多様な主体が面となって支えていく必要があることを述べました。あわせて、こどものSOSのサインは、身体・心・行動の3つの側面から変化が生じるが、身体や心の変化は他者から見えにくく、行動の変化に気づくことが重要であることを解説しました。

続いて、稲川洋生氏が、「学校における自殺予防について」というテーマで、道内の学校における自殺予防の取組を説明しました。北海道教育庁の「自殺予防教育プログラム」では、今後、小学校用の学習指導案を新たに作成するとともに、中学・高等学校の学習指導案も改訂予定であることを紹介するとともに、学校(教職員)に向けたSOSの出し方に関する教育のリーフレットを作成していることに触れ、児童生徒の自殺予防教育は学校長を中心に、学校全体で取り組む必要があることを述べました。また、校内の役割分担や学校外の専門機関との連携体制を平常時から構築しておくことの重要性についても言及しました。

さらに、松田考氏が、「表出しない困難を汲み取るこども・若者の支援について」というテーマで講演しました。松田氏は、こどもが真に豊かに育つためには、放課後や余暇を「思いどおり」に過ごせること(充実すること)が重要であるが、実際には一部のこどもは思いどおりに過ごせていないこと、居場所がその実現に大きな役割を果たしていることを述べました。また、相談窓口などの専門家に対して、こどもの周りにいる大人を「日常家(にちじょうか)」として、専門家と日常家がつながることで、こどもの「見守り」ができるようになることを説明しました。

第1部の後半では、登壇者3名によるパネルディスカッションを実施しました。
こどものSOSに気づき、つなぎ、支えるという3つの視点から、学校・行政・地域のそれぞれの立場の大人がどのように連携できるかを中心に意見を交わし、多職種連携による支援を行うための工夫や、継続的な見守りのあり方について議論しました。参加者からの質疑応答では、学校における自殺予防教育の実施状況や、支援者側のバーンアウトを防ぐセルフケアの方法や仕組みなどについて質問がありました。
<こどもの自殺予防に取り組む大人側のバーンアウトを防ぐためにはどうしたらよいでしょうか?>
こどもの自殺予防に対して支援をする中で、大人側も危機的な状況になることがあります。まず、一人で抱え込まず、皆で共有する(チームで関わる)という前提条件を整える必要があります。
また、こどもにSOSを出す姿を見せるという意味でも、大人が周りにSOSを出すことも重要です。支援をする大人も、一人一人がかけがえのない存在であることを心にとめておいてほしいと思います。

■第2部 グループワークの様子
第2部では、「事例を通じて連携・協働について考える」をテーマに、参加者が5名ずつのグループに分かれ、地域でこどものSOSに気づいた事例として、民生委員がこどもから「消えたい」と打ち明けられた場面を提示し、検討を行いました。
事例検討に当たっては、民生委員または参加者自身の職種の立場から、①こどもの今の困りごとやリスクを整理する(気づき、話を聴く)、②「どこ」に「どうやって」つなぐかを考える(つなぐ)、③つないだ後にできることを検討する(見守る)という観点に沿って、関係職種との役割分担や連携の進め方を議論しました。各グループでは、事例から考えられるこどもや家庭の状況から考えられるリスクを推測し、こども目線で自分たちには何ができるか議論を深めました。
第2部の終盤には、日々の業務の中で連携に関して課題に感じていること、明日から取り組んでみたいこと等をグループ内で共有する時間や、参加者同士で連絡先を交換する時間を設け、参加者同士のネットワーク作りに活用してもらいました。


――参加者の感想――
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フランクに楽しくグループワークすることができました。新しいつながりに感謝です。
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メンバー間の様々な視点から気づきが得られた。
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こどもの居場所づくり、つなぎ、連携、チームでの支援が大変勉強になり有意義な時間でした。
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(今後取り入れようと考えることはあるかという質問に対して)ネットワークづくりに取り組みたい。
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<概要>
開催日時: 2026年2月23日(月・祝)10:00–13:00
会場:TKP札幌ビジネスセンター 赤レンガ前 ホール5C(札幌市中央区北4条西6丁目1 毎日札幌会館5階)
プログラム:
第1部:講演会(10:00–11:30)
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基調講演「こどものSOSにどのように気づき、対応するか」(伊藤氏)
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講演「学校における自殺予防について」(稲川氏)
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講演「表出しない困難を汲み取るこども・若者の支援について」(松田氏)
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登壇者3名によるパネルディスカッション
第2部:グループワーク(11:45–12:45)
■登壇者紹介およびコメント
伊藤 次郎 氏(NPO法人OVA 代表理事)
こどもが深刻な悩みを抱える背景には、複数の要因が重なり合っている場合が少なくありません。そのため、関係機関や地域の大人がそれぞれの役割を担い、面的に支える体制の構築が不可欠です。危機の際に適切な連携が図れるよう、日頃からの協働体制づくりが重要です。
<略歴>
NPO法人OVA代表理事。精神保健福祉士。2014年にNPO法人OVAを設立し、デジタル技術を活用したアウトリーチ・インターネット相談の実践と研究を行っている
稲川 洋生 氏(北海道教育庁 学校教育局 生徒指導・学校安全課 課長補佐)
如何なる事情であれ、未来ある児童生徒が自ら命を絶つようなことは、決してあってはならならず、各学校等においては、不安や悩みを抱える子どもが孤立することのないよう、関係機関等との連携の下、自殺予防教育や相談体制の充実に努めることが重要です。道教委では、SOSの出し方に関する教育を含む自殺予防教育などにより、児童生徒自身が心の危機に気づき、身近な信頼できる大人に相談する力を培うとともに、児童生徒が安心してSOSを出し、相談することのできる環境整備を進めるなどして、自殺予防に取り組んでまいります。
<略歴>
北海道教育庁学校教育局 生徒指導・学校安全課 課長補佐。道立高校教員及び北海道教育庁にて指導主事を経験後、文部科学省初等中等教育局児童生徒課生徒指導室にていじめ・自殺等対策専門官を務める。令和7年より現職。
松田 考 氏(公益財団法人さっぽろ青少年女性活動協会 こども若者支援担当部長/一般社団法人ソーシャルペダゴジーネット 代表理事)
もし「自殺を食い止める専門家」がいたとして、、、「もう死んでしまいたい」という気持ちに陥っている人は、果たしてその専門家のところに相談に行くでしょうか。私は、専門家ではなく「日常家」として子ども・若者のそばに居る人を目指して、日々駆け回っています。
<略歴>
2001年 公益財団法人さっぽろ青少年女性活動協会に入職。青少年の健全育成業務に従事しながら、困難を抱える子ども・若者支援の必要性を現場でキャッチし、さっぽろ子ども・若者支援地域協議会の立ち上げなど、育成と支援を両輪としたユースワークの基盤を構築。2022年より一般社団法人ソーシャルペダゴジーネットを設立。
■有識者検討会委員(敬称略・五十音順)
石井綾華(NPO法人LightRing. 代表理事)
伊藤次郎(NPO法人OVA 代表理事)
奥村春香(認定NPO法人第3の家族 理事長)
後藤怜亜(NHK大阪放送局 ディレクター)
鈴木洋平(NPO法人ライフリンク 情報デザイングループ長)
谷本卓哉((株)大広 未来共創本部未来共創局オープンイノベーションセンター プロデューサー)
山寺香(厚生労働大臣指定法人・一般社団法人いのち支える自殺対策推進センター 広報官)
※2:「警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等」厚生労働省自殺対策推進室(令和8年1月29日公表)
※3:「令和6年度こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究報告書」いのち支える自殺対策推進センター
報道に際しては、WHO(世界保健機関)発行の『自殺予防を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識2023年版』を踏まえた報道をお願いいたします。
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