JISDA、ウクライナ前線での3年にわたる現地調査報告を公開
日本企業史上、最も前線に近い現地調査が突きつける現実―戦場からの提言

JISDA株式会社(Japan Integrated Security Design Agency/日本技術安全保障戦略機構、以下「JISDA」)は、ウクライナの戦場における3年にわたる現地調査をもとに、日本が現代戦から何を学ぶべきかを整理した報告書を公開しました。
JISDAの創業チームは、法人設立以前から約3年間にわたり、ウクライナで継続的な現地調査を行ってきました。調査は首都や後方地域に限られたものではなく、実際に戦闘の影響を受ける前線周辺、さらにはロシアとの国境に近い地域にまで及びます。最も近いところでは前線から約20kmの地点にまで赴き、現地で装備がどのような環境で使われ、どのように損耗し、どのように改修され、運用者が何を必要としているのかについて、継続的に見て、聞き、分析を重ねてきました。
JISDAは、本調査において企業・メーカー側の視点の把握にとどまらず、実際に装備を運用する部隊側からの情報収集を特に重視してきました。その理由は、現代戦における真に実用的な知見が、開発側や供給側の論理だけではなく、現場で装備を使用し、損耗に対応し、必要に応じて改修を加えながら任務を遂行する部隊の運用実態の中にこそ存在するためです。現地では、企業が提供した製品がそのまま使用されるのではなく、部隊の判断によって修正・補強・再設計に近い形で運用される事例も少なくありません。JISDAは、こうした現場の実態を直接把握することが、日本の安全保障、防衛産業、装備開発の将来を考えるうえで不可欠であるとの考えから、部隊側の声を基点とした継続的な現地調査を行ってきました。
こうした背景で、調査の過程は、必ずしも安全が十分に確保された環境に限られるものではありませんでした。滑空爆弾が飛来しうる圏内を含む高緊張下の地域において、現代戦の現実がどのように変化し続けているのかを直接確認し、机上や後方からの情報収集だけでは見えてこない前線の速度と現場の要求を捉えてきました。JISDAは間違いなく、日本で最もウクライナの現状に詳しいスタートアップです。JISDAが今回公開する報告書は、そうした現地での継続調査の蓄積を踏まえ、日本の安全保障、防衛産業、装備開発にとって重要となる視点を整理したものです。
■報告書公開の背景
私たちは戦争をするために戦争から学ぶのではなく、戦争を防ぎ、平和を守るためにこそ、現代戦の現実から学ばなければならないと考えています。現実を直視しないことは、平和への責任を果たすことにはつながりません。だからこそJISDAは、遠くから断片的な情報を追うのではなく、現地に足を運び、前線で何が起きているのかを見続けてきました。
ウクライナ前線では、いまこの瞬間も、装備と運用のあり方が極めて速い速度で変化しています。無人機、電子戦、通信、妨害対策、即席の改修、部品交換、現場での整備―。現代の戦場では、後方で有効だと判断された設計や運用が、前線に届く頃にはすでに十分でなくなっていることが多くあります。使用される周波数、映像伝送、航法、アンテナ配置、無人機の機体構成、ペイロードの扱い方などが、週単位、場合によってはそれ以下のスパンで見直されているのが現実です。
JISDAが現地で見てきたのは、こうした変化が単なる技術トレンドではなく、兵士の生存性と任務達成に直結する構造的な現実であるということでした。装備は、一度作って終わるものではありません。使われ、対策され、壊れ、改修され、再び使われる。その循環そのものが、現代戦における戦闘力の一部になっています。今回の報告書は、こうした現場の実相を踏まえ、日本がこれから向き合うべき課題を整理したものです。
本報告書の詳細は、JISDA公式HPよりご覧いただけます。
【報告書のダウンロードはこちら】
https://jisda.jp/news-detail/?id=g_iuaqqhb
■報告書の概要
本報告書では、現代の高強度の紛争、とりわけ無人機が大量に投入される戦場において、装備開発の前提そのものが大きく変わっていることを指摘しています。
平時の感覚では、兵器や防衛装備は長い研究開発期間を経て試験され、調達され、部隊に配備されるものと考えられがちです。しかし、現代の戦場ではこの前提が崩れています。装備を一度完成させて終わりではなく、運用結果を受けて継続的に変化させ続ける能力そのものが重要になっています。
また、前線で装備の有効性を決めるのは、スペック表に記載された数字だけではありません。過酷な電波環境、妨害、探知・位置特定の脅威、疲労した運用者、通信途絶、不完全な整備環境、部隊ごとの練度差、交換部品や修理性といった要素が重なり合い、装備が本当に使えるかどうかが決まります。仕様書上の「合格点」と、戦場での「有効性」は一致しないというのが、本報告書の重要な問題意識です。
JISDAが提示する主な視点
今回の報告書では、ウクライナ前線での現地調査を踏まえ、日本が今後重視すべき視点として、主に以下の点を提示しています。
1.戦場の開発速度を前提にし、前線のフィードバックを設計へ戻すこと
現代の戦場では、装備の改良サイクルが極端に短くなっており、一度作って終わりではなく、短い周期で改良し続ける開発体制が不可欠です。そのためには、後方で整理された要件だけではなく、前線の使用者の声や実際の運用実態を継続的に設計へ反映し、現場で起きている変化を開発に戻していく仕組みを持つことが重要です。なおウクライナでは中央政府からの調達には時間がかかるため部隊に届く頃には型落ちになっており、使い物にならないことが多いという声もあります。
2.調達上の仕様ではなく、実戦での仕様で考えること
一定距離の飛行、一定重量の搭載、一定の映像伝送といった最低基準を満たしていても、それだけで実戦に十分とは限りません。強い妨害環境下でも成立するか、短時間で扱えるか、現地改修がしやすいか、通信断やGNSS不良時にも任務継続性があるかを見なければなりません。さらに、妨害、損耗、環境悪化、運用の乱れを見越して、それでも使えるだけの「余裕」を設計に織り込むことが求められます。
3.試験環境を現実に近づけ、その限界も含めて評価すること
平時の安全で安定した試験環境だけでは、実戦における装備の有効性を十分に見極めることはできません。妨害、不確実性、通信断、GNSS不良、整備環境の悪化、運用者の負荷といった要素を可能な限り織り込んだ評価が必要です。また、デジタルツインを含む仮想環境ベースの検証についても、現実の戦場に対してどこまで有効であるかを不断に評価し、その限界と有効性の双方を見極める視点が重要です。
■今回の報告書の位置付け
今回公開する報告書は、ウクライナ前線での現地調査を通じて蓄積してきた知見のごく一部を、一般向けに整理したものです。特定の個別案件や製品評価を目的とするものではなく、日本がこれから安全保障、防衛産業、装備開発のあり方を考えていくうえで、どのような視点を持つべきかを提示するものです。
JISDAは、現地で得た知見を単なる経験談として終わらせるのではなく、日本の将来に資する構造的な示唆へと変え、社会に還元していくことを重視しています。今回の資料も、そうした取り組みの全体像の中のごく一部をまとめたものであり、現地で蓄積してきた知見のすべてを網羅するものではありません。
今後もJISDAは、こうした知見を継続的に整理・発信し、報告書や提言として順次公表していく予定です。単発の発表にとどまらず、連載的・継続的なかたちで内容を深めながら、日本の安全保障、技術、産業、制度のあり方に資する議論を広げていきます。また、必要とする各企業に対しても、それぞれの課題や関心に応じて適切な形で知見を提供してまいります。
現代戦の現実は、防衛や安全保障に直接関わる領域だけでなく、無人機、通信、電子戦対応、デュアルユース技術、関連部材、ソフトウェア、製造基盤など、広い産業領域と接続しています。JISDAは、現地で見てきた現実を、日本の技術、産業、制度へとつないでいく役割を果たしてまいります。
■JISDA代表取締役・國井翔太 コメント
防衛産業は、通常の民生品以上に、失敗の代償が大きいです。製品が役に立たなかった時、その損失は売上の問題だけでは済みません。任務失敗、装備損耗、そして人命の危険に直結します。
だからこそ、現代戦の現実を理解し、その知見を通じて、一人でも多くの命を守ることのできる装備を作ることが重要です。前線を知らず、調達要求の最低性能だけを満たす製品を売り込むことは、結果として現場を危険にさらします。逆に、前線の速度、運用の現実、改良の必要性を正しく理解し、要求性能を超えた仕様を追求することこそが、これからの日本の防衛力に必要な姿勢です。
私たちが戦場の現実から学ぶのは、戦争をするためではありません。戦争を起こさせないため、そして万が一の事態においても一人でも多くの命を守るためです。抑止力とは、単に装備を持つことではなく、現実に即した備えを持つことによって、相手に誤算を与えず、危機そのものを未然に防ぐ力でもあります。
いま日本に求められているのは、世界各地の戦場で何が起きているのかを理解し、その現実を直視したうえで、戦争を防ぎ、平和を守るための思想と仕組みを持つことです。私たちは、そのために現場へ足を運び、必要な知見を積み上げてきました。その過程には、当然ながら相応の緊張とリスクが伴います。それでもJISDAは、日本を、世界を守り、平和を維持するために、これからも挑戦を続けてまいります。
■JISDA株式会社について
JISDA株式会社は、2025年11月に設立された、安全保障分野における高度な研究開発およびインテグレーションを行う防衛スタートアップ企業。国内外の運用現場に関する情報収集を通じて、技術シーズと防衛ニーズを統合的に追求する体制を有する。試作から量産に至る技術的基盤を自社内に保持するとともに、現場部隊の運用知見および中央省庁における制度設計・政策形成に関する理解を持っている。自由で開かれた市場を尊重する主体として、民間の立場から次世代の安全保障スタンダードを日本から発信することを目指す。
【本件に関するお問い合わせ先】
社名:JISDA株式会社
所在地:〒100-0005 東京都千代田区丸の内1丁目7-12 サピアタワー8F
代表者:代表取締役社長 國井翔太
E-mail: info@rise.jisda.jp
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