ビジネスパーソーンの約20%は、自身の高ストレスに無自覚で、コロナ禍で前兆なく休職するリスクが高い「隠れストレス負債者」
コロナ禍の「隠れストレス負債」の要因は、年収800万円以上の社内キーパーソンの「大丈夫」が口癖問題
その結果、ビジネスパーソンの約20%が「隠れストレス負債者」で、隠れストレス負債者の約60%は、年収800万円以上の社内キーパーソンで、「大丈夫です」が口癖であることが明らかになりました。
■隠れストレス負債が原因による、日本全体での損失額は7.6兆円
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、日本国内でうつ病・うつ状態の人の割合が2倍以上に増加したことが、経済協力開発機構(OECD)のメンタルヘルスに関する国際調査(※1)で明らかになりましたが、その中には、高ストレス者でもあるにもかかわらず、アンケート形式のストレスチェックでは見落とされる「隠れストレス負債」から、前兆なくなく、うつ病を発症するケースも含まれます。
この隠れストレス負債の実態について、株式会社DUMSCOで調査を実施した結果、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票の簡略版」による主観評価では、高ストレス者判定されなかったビジネスパーソンの23%が、ストレスに適応する自律神経の活動量を測定するANBAIの客観評価では、高ストレス者判定されることが明らかになりました。
これは、ビジネスパーソンの18%が隠れストレス負債者に該当し、日本全体での損失額は7.6兆円(※2)に及ぶ計算になります。
さらに、こうした無意識の乖離だけでなく、意図的な乖離も発生しており、ストレスチェック受検経験者(83名)のうち、30%が正直に回答しなかったことがあることも明かになりました。
■コロナ禍の隠れストレス負債の原因は、マジメで配慮のできる、年収800万円以上の社内キーパーソンの「大丈夫」が口癖問題
さらに、隠れストレス負債者の特徴を分析した結果、配慮ができるが故に、年収800万円以上の評価を得るも、その代償として、断ることが苦手になり、「大丈夫です」が口癖になってしまった、社内キーパーソンこそ、隠れストレス負債者に陥りやすいことが明らかになりました。
■ストレスを頭で認識しようとするため、人はストレスに気付きにくい
この調査結果について、『メンタル・クエスト 心のHPが0になりそうな自分をラクにする本』(大和出版)などの著者で、秋葉原saveクリニック院長・鈴木裕介氏は、20%のビジネスパーソンが、自身の高ストレスを自覚できない原因について、人がストレスに気付く順番について指摘。
「人間が慢性的な高ストレス状態になった時にまず生じやすいのは身体症状です。身体は負荷の高い環境に適応しようとしますが、これは自律神経による自動の調整のため、頭では認識されません。なので、頭では『まだ大丈夫』とおもっているのに身体は悲鳴を上げて動けない、というギャップが起こるのです。現代人は身体の『声』よりも、自分の頭で考えことを優先してしまいがちなので、心身の状態の深刻さに気づけない人が多い。むしろ、思考力に長けた優秀な方ほどその傾向は強いかもしれません」と語っています。
さらに、年収800万円を超えるキーパーソンに隠れストレス負債者が多かった点については、勤勉で責任感が強く、他人を心配させまいとする性格傾向である「メランコリー親和型」と共通点が多いと分析。
「メランコリー親和型は、他者に対して良心的で、仕事に対する責任感が強く、マジメな優等生タイプで、「うつ」になりやすい性格傾向です。組織から評価されやすい一方で、他者本位で断ることや自分の限界を提示することも苦手であるため、コロナ禍のような大きな環境変化ストレスによって、自分のキャパシティの限界を超えるような事態であっても、周囲を心配させまいと『大丈夫です』と言ってしまうケースが多い」と語っています。
■以前から指摘されていた、主観のストレスチェックの落とし穴
今回の調査で明らかになった、主観に基づくストレスチェックの落とし穴ですが、こうした落とし穴は、以前より指摘されてきました。
たとえば、防衛医科大学校などで自衛官のストレス研究に携わり、声の高さや抑揚などの変化からストレスを客観評価するアプリ「MIMOSYS」(※3)を監修する、東京大学大学院・徳野慎一特任教授は「本人がストレスを過小評価していたり、自覚していなかったりする報告バイアスがあると、正しい結果は得られない。とりわけ厳しい訓練で鍛えられてきた自衛官の場合、ストレスを抱えていても弱音を吐かず、ぎりぎりまで頑張ってしまう。そして、突然バタンとつぶれてしまうことも珍しくない。」と指摘しています。(※4)
鈴木氏や徳野氏が指摘するように、今後も大きな環境変化が予想されるコロナ禍は、隠れストレス負債者が、限界を超えて、前兆なく休職するリスクが高い状況でもあります。
東京大学の仲田准教授らによる新型コロナウイルスの第6波の試算では、東京都内で1万人感染という予測もされる中で、そうした隠れストレス負債者のリスクを解決すべく、エンジェル投資家で「ふるさとチョイス」を運営する株式会社トラストバンク会長兼ファウンダーの須永珠代氏を引受先として、株式会社DUMSCOは2億円を資金調達いたしました。
Appendix
■「ストレススキャン」と「ANBAI」
スマートフォンのカメラを活用し、ストレスに適応する役割を果たす自律神経の活動量を測定することで、ストレスを客観評価するサービス。
ストレススキャンはC向けに300万ダウンロードされ、ANBAIはそのノウハウをもとに法人向けに提供。東京海上日動、住友生命、千代田区などで導入されています。
また、自律神経の活動量を測定する際に、医療現場で広く用いられる「心拍変動解析(HRV)」という手法を、スマートフォンのカメラで実現し、99%以上の精度で一致させる技術力を活かして、婦人科がん患者のQOL向上を目指すヘルスケアアプリも、京都大学医学部と開発を開始しています。
■調査概要
調査方法:インターネットアンケート調査
調査期間:2021年7月14日~2021年7月31日
調査対象者:全国22歳以上のビジネスパーソン
有効回答者数:105人(有効回答数)
■鈴木裕介氏プロフィール
内科医として高知県内の病院に勤務後、一般社団法人高知医療再生機構にて医療広報や若手医療職のメンタルヘルス支援などに従事。
2018年「セーブポイント(安心の拠点)」をコンセプトとした秋葉原saveクリニックを開業、院長に就任。また、研修医時代の近親者の自死をきっかけとし、ライフワークとしてメンタルヘルスに取り組み、産業医活動や講演、SNSでの情報発信を積極的に行っている。
著書に『メンタル・クエスト』(大和出版)『NOを言える人になる』(アスコム)など
■会社概要
会社名:株式会社DUMSCO
所在地:東京都港区麻布台1丁目11-10 日総第22ビル9F
代表者:西池成資
設立:2010年5月
事業内容: ピープルアナリティクス事業
(※1)「Tackling the mental health impact of the COVID-19 crisis: An integrated, whole-of-society response」より引用
(※2)東京大学政策ビジョン研究センター経営研究ユニット「健康経営成果指標の策定・活動事業成果報告書」の、1人当たりのプレゼンティーイズム損出コスト56万円をもとに、2020年の生産年齢人口(7612万人)×隠れストレス負債者の割合(約18%)×56万円にて算出
(※3)声からストレスを客観評価するアプリ「MIMOSYS」
脳がストレスを感じると、声帯の筋肉が収縮して固くなり、無意識に周波数が高くなる反応を利用して、声の高さや抑揚にあらわれる微妙な変化をとらえ、ストレスを客観評価するサービス。
東京大学大学院徳野慎一特任教授監修のもと開発され、神奈川県の公式アプリ「マイME-BYOカルテ」、日立システムズ「音声こころ分析サービス」などに技術導入されています。
(※4)『「声」をバイオマーカーに、うつ病や認知症の診断補助ツールになるか』(日経BP総合研究所/Beyond Health)より引用
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