静岡大学の狩野芳伸准教授の研究グループが司法試験の自動解答国際コンテストで首位
人工知能による裁判過程の自動化支援に向けて一歩
静岡大学情報学部の狩野芳伸准教授の研究グループは、我が国司法試験の自動解答を競う国際コンテストCOLIEE 2022において、正答率首位の性能を達成しました。
・人工知能分野において、人間の言葉を扱う自然言語処理は世界が研究開発にしのぎを削る最後のフロンティア
・その中でも、法律関連の文章は法律的な専門知識に加え、論理や「世界の知識」が必要な挑戦的分野
・究極的には裁判過程の自動化支援にむけて、実用も期待されている
・本研究は司法試験の自動解答を題材に研究開発の技術向上を目指すコンテストCOLIEE 2022において、参加者中首位の正答率を達成
【研究者コメント】
数年間にわたり毎年、この国際コンテストを運営すると共に、参加者として性能向上の研究を積み重ねてきました。ついに首位を獲得したのは、歴代の研究室メンバーの努力の賜物です。引き続き「法律のわかるAI」の実現を目指します。
【研究概要】
静岡大学情報学部の狩野芳伸准教授の研究グループは、我が国司法試験の自動解答を競う国際コンテストCOLIEE 2022において、正答率首位の性能を達成しました。
【研究背景】
人工知能分野において、人間の言葉を扱う自然言語処理は世界が研究開発にしのぎを削る最後のフロンティアです。その中でも、法律関連の文章は法律的な専門知識に加え、論理や「世界の知識」が必要な挑戦的分野で、究極的には裁判過程の自動化支援にむけて、実用も期待されています。
【研究の成果】
本研究は、我が国司法試験(民法短答式)の自動解答を競う国際コンテストCOLIEE 2022のTask 4において、自動解答器を作成し参加者中首位の性能を達成したものです。近年主流となっている大規模深層言語モデルを用いた解答器群と、確実に解答のできる古典的な自然言語処理手法を用いた解答器とを作成し、それぞれの長所を生かすシステム混合により最終的な解答を導きました。
【今後の展望と波及効果】
今後の研究としては、根拠や理由を示すことのできる「説明可能なAI」にむけて、新たな問題設定と評価設計を行い、次のフェーズに進めたいと考えています。本研究で得られた研究成果は、今後、我が国の法曹分野におけるデジタル化の進展とも呼応しつつ、裁判過程の自動化支援につながると期待されます。
【論文情報】
Fujita, M., Onaga, T., Ueyama, A., Kano, Y.: Legal textual entailment using ensemble of rule-based and bert-based method with data augmentations including generation without excess or deficiency. In: Sixteenth International Workshop on Juris-informatics (JURISIN) (2022)
2022年6月13-14日に開催される、法情報学の国際ワークショップJURISIN2022(Sixteenth International Workshop on Juris-informatics (JURISIN 2022) associated with JSAI International Symposia on AI 2022 (IsAI-2022) にて発表される。
【研究助成】
文部科学省科学研究費助成金 基盤研究(S)「裁判過程における人工知能による高次推論支援」
【用語説明】
自然言語処理:コンピュータで人間の言葉(自然言語)を扱う工学分野の名称。
COLIEE:Competition of Legal Information Extraction and Entailment の略、毎年開催されてきた国際法律文書処理コンテストの名称。我々は主催者でもあるが、今回は参加者としての成果。
深層言語モデル:近年の人工知能技術の核である深層学習(多層ニューラルネットワーク)を用いて、大規模な自然言語テキストを学習させたもの。
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