心温まる"ちょっといい話"「第30回新聞配達に関するエッセーコンテスト」入賞作品をご紹介 日本新聞協会
新聞配達や新聞販売所に関するちょっといい話、新聞販売所スタッフとの心温まるエピソード、新聞配達の経験などを描いた、胸に残るエッセーをお楽しみください
毎年、数多くのエッセーをお寄せいただき、今回は全国から3223編のご応募がありました。
厳正な審査の結果、「大学生・社会人」「中学生・高校生」「小学生」の3部門でそれぞれ最優秀賞、特別審査員を務めるスピードスケート五輪金メダリストの小平奈緒さん(相澤病院所属)が選んだ審査員特別賞など、全30編の入賞作を決定し、新聞、公式サイト、入賞作品集「ふれあいの詩」等でも紹介しています。
各部門で最優秀賞に輝いたのは、社会と人々をつなぐ役目を担う仲間としての警察官と新聞配達員の交流、配達中に負ったケガを押して未配達の家がないように仲間に知らせた配達員への感謝と尊敬の気持ち、寒い中で働く配達員へ温かいプレゼントを贈る少女の思いやり、をそれぞれ描いた3作品です。
この他の入賞作、小平さんの選評は下記のリンクからご覧いただけます。胸に残るエピソードの数々をお楽しみください。
https://www.pressnet.or.jp/about/recruitment/essay/list_2023.html
「第30回新聞配達に関するエッセーコンテスト」各部門受賞者
各部門の受賞者の氏名は次のとおりです(順不同・敬称略)。
〈最優秀賞〉
「大学生・社会人部門」本田 美徳(大阪府寝屋川市)
「中学生・高校生部門」廣瀨 泉穂(大分県竹田市)
「小学生部門」能美 にな(北九州市)
〈審査員特別賞〉
「大学生・社会人部門」山田 美和子(宮城県大崎市)
「中学生・高校生部門」森 順咲(東京都世田谷区)
「小学生部門」三浦 かりん(北海道下川町)
〈優秀賞〉
「大学生・社会人部門」中村 裕子(福岡県大牟田市)
「中学生・高校生部門」竹原 美桜(岡山県鏡野町)
「小学生部門」佐藤 莉緒(秋田県横手市)
〈入選〉
「大学生・社会人部門」
①板垣 嘉彦(新潟県村上市)、②岩木 麻彩(富山市)、③工藤 圭太(北海道旭川市)、④齋藤 千鶴子(福島市)、⑤神 喬子(福岡県筑紫野市)、⑥田尻 隆(千葉市)、⑦安田 沙織(秋田市)
「中学生・高校生部門」
①石田 唯華(名古屋市)、②今野 莉子(北海道佐呂間町)、③齋藤 祐紀(青森県藤崎町)、④佐藤 蒼維(秋田県横手市)、⑤平野 惠太郎(東京都板橋区)、⑥福井 菜々子(青森市)、⑦森 江里(高知県いの町)
「小学生部門」
①市村 香織(長野県中野市)、②岩下 和美(大阪府枚方市)、③内田 羽奏(大阪府枚方市)、④草薙 ことね(秋田市)、⑤佐藤 和(宮崎県延岡市)、⑥野入 桃子(北九州市)、⑦能間 美穂(北九州市)
「第30回新聞配達に関するエッセーコンテスト」 各部門最優秀賞受賞作品
(年齢は2023年10月2日現在)
《最優秀賞「大学生・社会人部門」》
「あの日の青年」 本田 美徳< ほんだ・よしのり>(61歳) 大阪府寝屋川市
私が交番勤務の巡査時代。その青年は必ず朝刊を深夜2時頃に配達してくれた。この街ではなぜそんなに早く配達してくれるの?といつも疑問に思っていたことを尋ねた。
「警察署と交番にはいつも一番に配達します」と返してくれた青年に、へぇ?そうなの、と驚く私に、僕も先輩たちから聞いたんですがと前置きして、青年はほほ笑みながら続けた。
「お巡りさんは事件を扱う仕事だから、真っ先に読んでもらわないといけないからって。それに明け方までずっと頑張ってるでしょう。僕らと同じ仲間ですよね。お疲れさまです」
軽く頭を下げてバイクの音を響かせながら青年は次の配達に向かった。同じ仲間。確かに私たちと彼らは社会をつないでいる。新聞の社会面に載る出来事の守り手と、街の人々にその出来事を知らせる重要な役目。
あの日は木枯らし吹く寒い夜だった。青年の姿と大学生時代に新聞配達をしていた私の姿と重なった。
《最優秀賞「中学生・高校生部門」》
「感謝と尊敬の気持ち」 廣瀨 泉穂<ひろせ・みずほ>(15歳) 大分県竹田市
台風一過のある日、母の勤務する病院に、足を骨折した男性が救急搬送されてきました。その人は、バイクで新聞配達をしている時、風倒木にぶつかって大けがをしたのです。
それなのに、自分の痛みはそっちのけで、配達員仲間に電話して、配達できていない家を一軒ずつ教えて、全ての家へ配達をしてもらったそうです。入院も必要なけがを負いながら、自分のことは後回しにして、仕事を優先したと母に聞いて、私はとても感動しました。
私の通っている中学校では、朝自習の時間に新聞コラムを読み解いたり、気になる記事をスクラップして感想を書いたりしています。それも毎日、新聞を配達してくれる方々のおかげでできることと思ってはいましたが、あの骨折しても役目を果たした男性のことを聞いて以来、感謝と尊敬の気持ちが、より大きくなりました。進路を意識する時期に入った私は、あの配達員さんのように、仕事に誇りを持ち、行動する人になりたいと思います。
《最優秀賞「小学生部門」》
「明け方のサンタさん」 能美 にな<のうみ・にな>(9歳) 北九州市
いつものように新聞をとりに行く。朝のひんやりした、すんだ空気にふれて目が覚める。季節をはだで感じながら、きれいに折りたたまれた新聞を開くと私の一日が始まる。今日はどんな記事があるだろう。
師走。早朝の寒さにおどろいた。周りはまだ真っ暗。冷えきっている新聞を手に考える。配達員さんはもっと早い時間から届けてくれているんだな。今よりもっと寒いんだろうな。
そこで、日ごろの感謝の気持ちをこめて、おこづかいでカイロを贈ることにした。配達のじゃまにならないよう、手首にまくタイプ。メッセージもそえて新聞受けにかけておく。プレゼントに気がついてくれるかな。
いつも新聞を届けてくれてありがとう。毎朝わくわくを届けてくれるサンタさんのような配達員さんへ。届けてくれるその手が、少しでも温まりますように。今日だけは私もサンタさん。
明日はこの冬初めての雪がふるらしい。
メリークリスマス。
この他の入賞作品、小平さんのコメントは、こちらのリンクからご覧ください。
https://www.pressnet.or.jp/about/recruitment/essay/list_2023.html
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