田園イノベーション・ミートアップ
8地域が集い、田園地域づくりの未来を語り合う
7月30日、富山県の「持続可能な魅力ある田園地域創出事業」における支援地域が一堂に会する「田園イノベーション・ミートアップ」が富山県民会館で開催された。他地域の成功・失敗を共有しながら学びを深め、地域間のネットワーク構築を目的とした本イベント。県内から計8地域の代表者20名が集い、それぞれの取組みを報告し、熱い議論が交わされた。

「外とのつながり」が地域の未来を変える
冒頭、事業の統括プロデューサー・山口綱士氏(株式会社HAKUHODO DESIGN)が事業趣旨を説明。「日本各地で人口減少が進む中、地域内だけで完結するコミュニティは成り立たなくなっています。求められるのは『外とどうつながるか』という視点です」としたうえで、地域づくりの二つの柱を提示した。
一つ目は「コミュニティづくり」。 来訪者が「ずっと関わりたい」と思う理由をつくり、繰り返し通ってもらうことで非日常を日常化すること。「そのためにはまず、自分の地域にどんなニーズがあるかを知ることが大事です」と強調した。
二つ目は「生業づくり」。 地域資源を磨くだけでなく、外で通用する価値に転換すること。そして何より「収益の仕組みづくり」が重要だという。
「地域を磨き上げ、外とつながることで、世界が憧れる田園地域を創出していきたい。各地域のみなさんの実例から、その答えが見えてくると思います」
8地域の挑戦 それぞれの課題と未来
続いて、各地域の代表者が活動状況を報告。山口氏が一つ一つに丁寧にコメントする時間となった。
① 富山市大長谷:認定NPO法人化で資金を確保
27世帯39人の小さな集落。地域おこし協力隊や自治振興会が中心となり、移住者と関係人口の増加に取り組んでいる。「令和6年秋から本格的に活動をスタートしました。関係人口は徐々に増えてきましたが、受け皿となる住まいが少ないのが課題です」
対策として、「NPO法人白木峰と大長谷を愛する会」の認定NPO法人化を計画。資金調達の道を広げるとともに、有機農業の誘致と古民家リフォームを進める方針だ。
山口氏は「認定NPO法人化によってお金が集まりやすくなることに期待します。同時に、どんなニーズ、どんな取り組みが求められているのか、さらに探ることも必要ですね」とアドバイスした。

② 射水市西高木:40人グループの「モチベーション問題」にどう向き合うか
35歳以下の若手農業関係者でグループ「F35」を組織。「カッコいい農業」を目指して、古民家を拠点にレストランバスツアーや首都圏マルシェ、定期便試験販売を実践してきた。
「メンバーは40人に増えました。ただし、モチベーションにばらつきが出てきて、グループの目的があいまいになりつつあります」という課題を抱える。今後は古民家周辺の土地活用を進め、「メンバーそれぞれにメリットがあるグループ」へ転換したいと考えている。
山口氏は「体制が大きくなると、関わりの深い人と浅い人が出てくるのは自然なことですが、そこで大事なのは、地域と関われる『関わりしろ』(余白)を作ること。地域との絆を深めながら、そこにうまくメンバーの活動も接続できるような仕組みが作れるとよいですね」とアドバイスした。

③ 富山市桐谷:地元住民と移住者、地域外者の協働モデル
地元住民、移住者等で構成する「桐谷六合企画」が活動。昨年は住民と共に収穫体験し野菜の話を聞くとともに、料理づくりや散策を楽しむ1泊2日のオーガニックビレッジツアーを実施し、日帰り6名、宿泊1名の参加があった。
「今後は桐谷らしいツアーを確立し、空き家活用、交流スペース設置で関係人口を増やしていきたい。ダム周辺の自転車レース復活も目指しています」
山口氏は「今後、どんな人に来てもらいたいのか。シニア層か、農業関係者か、地域づくり関係者か。絞る必要はありませんが、『どんな人に何を提供し、何ができるのか』を意識して活動を進めてください」とアドバイスした。

④ 砺波市庄川:「小学生が大人になっても住み続けたいまち」へ
庄川こども商店、木育ワークショップ、水と木のクラフト展など、子どもたちを巻き込んだ様々なイベントを展開。地元野菜を活かしたとうもろこしスープ開発も手がけた。
一昨年度策定した地域のビジョンは「時をつむぎ、心をかさねる」。「小学生が大人になっても住み続け、また戻ってきたくなるまちを目指しています。今後は、住民全員にこのビジョンを浸透させ、『まちづくり=人づくり』の輪を広げたい」
山口氏は「既にいろんな取り組みをされている。特に若い世代を巻き込んでいるのが素晴らしい。今後も地域と関わることの楽しさを伝えていってください」とコメントした。

⑤ 富山市船峅:「人こそ最大の地域資源」という気づき
「ふなくら活性化協議会」と「ふなくらや企画」が合同で活動。昨年度は地域住民を招いた勉強会を6回開催し、「船峅でどう暮らしたいのか」「どんな子育てをしたいのか」を語り合った。
「勉強会を通じて、地域みんなで主体的に考える姿勢が芽生えました。『人こそ最大の地域資源』だという気づきも得られた」
昨年度策定した地域のビジョンは「村まるごとキャンパス」。持続可能なプロジェクト推進、外部とつながる入口づくり、宿泊体験実施を展開する計画だ。
山口氏は「元々は別だった二つのチームが合同で活動しているのですね。地域の中で複数の視点があるのは素晴らしいこと。子育て世代も含め多くの層を巻き込みながら、今後も多様な意見を取り込みながらビジョンの実現に向けて取り組んでいけるとよいと思います」とコメントした。

⑥ 射水市水戸田:「日常の延長にある非日常」を提供
人口約1,100人の里山地域。陶房「匠の里」、いみず食香バラ、小杉丸山遺跡など豊かな資源に恵まれている。住民参加のワークショップを通じて、ビジョン「人の心を耕す里山地域」を策定した。
「匠の里を『水戸田地区の土間』と位置づけ、『火入れ体験』や『いみず食香バラの摘み取り体験』などを開催します。日常の延長にある非日常を提供することで、五感で楽しめる体験とコミュニティづくりを進めていきたい」
山口氏は「『日常の延長にある非日常』はいい言葉ですね。日常と非日常を行ったり来たりできることはとても大切。魅力的な取り組みになると期待しています」とコメントした。

⑦ 富山市神明:「通過する場所」からの脱却を目指して
今年度この事業に採択され活動が始まったばかりのチーム。富山市中心市街地に近く「半市街地・半農村地」という特徴はあるものの、立ち寄れる場所が少なく通過する場所になっている点が課題。その他にも農業の担い手不足、農業施設の維持困難、少子高齢化など課題は多い。
2025年に地域おこし協議会を発足し、アグリスポーツ、ひまわり畑、餅つき大会などを実施。「今後も地域の声を聞きながら活性化に取り組み、就農者や、農業以外の分野でも神明に関わる人を増やしていきたい」
山口氏は「まずは地域内で『今後何を目指すのか』を議論し明確にし、地域の外の人から『神明はこういうところ』と言ってもらえるものを作り上げていくことが重要です」とアドバイスした。

⑧ 射水市金山:松茸、鴨、ホタル…豊かな資源を活かす
松茸や鴨、ホタル、ビオトープなど多くの資源を持つ地域。メンバーは地域の若手農業者を中心に多様な主体で構成されている。
「活動はまだ始まったばかりですが、農業と食をからめてビジョンを策定したいと考えています。ピザ焼き体験や原木椎茸栽培を通じて、この地域の代名詞となるブランドを確立し、『インターそばの里山オアシス』を目指します」
山口氏は「交通の便のいいことは強みではありつつ、大事なのは『この地域の魅力の根本は何か、それをどう見せていくか』です。外から見たこの地域の特徴と魅力を、しっかり言葉にして作り上げてください」とアドバイスした。

ディスカッション ― 課題を共有し、互いに学ぶ
報告の後、8地域は活動傾向が似ている4地域ずつ、2グループに分かれてディスカッションを開始。各10分間、3回相手を変えて意見交換した。
グループA:農と空き家活用が中心
桐谷、金山、大長谷、船峅
グループB:場とコミュニティ運営が中心
庄川、神明、西高木、水戸田

議論の中で出された主なテーマは—
実証実験を行った地域の経験談と課題 ビジョン策定で起こった問題点 仲間を増やすことの難しさ 誰でも交流できる場づくり ネットワークを広げる具体的な方法 宿泊施設をどう整備するか
参加者たちは異なる地域の事例から刺激を受け、自地域での実践に向けたヒントを得ていった。

クロージング ― 「圧倒された」「とても有意義だった」
ディスカッション終了後、各地域の代表者が一言感想を述べた。
水戸田「いろんな形で農業、自然栽培の話が聞け、参考になりました」
神明「人をどう呼び込むか、中心人物をいかに取り込んでいくかを考えることの大切さを感じました」
船峅「どの地域のメンバーも熱量が高く、圧倒されました。いろんな刺激をもらえてよかった」
金山「先に取り組んでいる地域から参考意見をいただきました。過疎の地域で普段は前向きではない話題も多い中、今日はとても有意義でした」
桐谷「いろんな地域と交流できました。それぞれの地域でどう展開していくのか、今後が楽しみです」
大長谷「各地域、課題は似ていますが、解決方法はそれぞれ異なることが分かりました」
西高木「仲間が増えてワクワクしています。今後が楽しみです」
庄川「地域に戻るといろんな問題が起こると思いますが、今日はいろんな活力をもらえました」
本イベントで構築されたネットワークが、今後の各地域の活動にどう活かされていくのか。8地域の挑戦は続く。

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