世界134カ国から約700人が参加した、オタワ条約第5回検討会議 「地雷のない世界」に向けた日本の地雷・不発弾対策協力
シェムリアップ・アンコール宣言と行動計画を採択
独立行政法人国際協力機構(JICA)は、2024年11月25日~29日にかけてカンボジアのシェムリアップで行われた、対人地雷禁止条約第5回検討会議に参加し、「カンボジアとの協力によるアフリカにおける地雷対策のための能力強化」についてのサイドイベントや、カンボジアの地雷対策を更に発展していくための新たな技術協力プロジェクトに関する合意文書に署名を行いました。JICAは、被害国のオーナーシップと能力強化を推進しており、カンボジアとの長年の協力関係をもとに、他の地雷被害国に対してカンボジアの知見を共有し、地雷廃絶に向けた取り組みを継続していくことを発信しました。
1.対人地雷禁止条約第5回検討会議の概要
検討会議は5年毎に開催され、対人地雷禁止条約の履行状況について先回検討会議で採択された行動計画に基づきレビューを行い、新たな行動計画を採択します。条約発効から25年を迎える節目の年に開催された今回の検討会議は、条約発効当時、世界で最も多くの地雷被害者を出していましたが、その後、国をあげて地雷対策に取り組んできたカンボジアで開催されました。
開会式では、リートイッ上級大臣の挨拶の後、イラクで地雷被害により足を失った女性から、地雷被害を受けた女子を含む障害者への支援とともに、地雷廃絶を訴えました。フン・マネット首相からは、内戦の和平合意の後も、地雷被害に人々が苦しんできた歴史に触れつつ、地政学的に不安定な世界において、カンボジアの経験を踏まえて地雷対策を進め、安全な世界の実現に貢献することを表明しました。
日本政府を代表して出席した英利外務大臣政務官からは、人間の安全保障に言及しつつ、上川前外務大臣が発表した包括支援パッケージと日カンボジアイニシアティブを紹介。来年の第22回締約国会議に向けて議長職としてのコミットメントを表明しました。
5日間にわたる本会議には世界134か国から約700人が参加し、シェムリアップ・アンコール宣言と次の検討会議までの行動計画が採択されました。同宣言及び行動計画では、改めて対人地雷による被害と苦しみを終わらせることへの国際的な決意と取り組むべき活動が示され、5年前の検討会議の宣言・行動計画にはなかった気候変動や環境配慮への対応が盛り込まれました。また、会議開催前日からプレイベントや、会議期間中約30のサイドイベントが行われ、対人地雷廃絶に向けた議論が会議場内外で活発に行われました。
同会議開催の直前には、米国がウクライナ向けに対人地雷を供与する方針であることが報道され、本会議中、対人地雷廃絶を推進するNGOによる抗議行動が行われました。また、会議最終日に採択された宣言においても、武力紛争で対人地雷が継続して使用されていることへの危機感を示し、全ての締約国に条約義務の順守を求めました。
会議最終日には、本会議終了後、来年12月の第22回締約国会議終了まで締約国の議長職を務める市川とみ子軍縮会議日本政府代表部大使が、任期中の優先課題として、①被害国のオーナーシップと能力強化支援の強化、②高度・新興技術の導入、③女性・平和・安全保障(WPS)とのシナジー強化、④条約普遍化を挙げました。特に①については、JICAが推進してきたカンボジアとの協力により他の地雷被害国に対してカンボジアの知見を共有してきたことに触れ、今後もこれを継続していくとしました。
2.対人地雷禁止条約第5回検討会議におけるJICAの取り組み・成果
(1)地雷のない世界を目指すマーチ(March for a Mine-Free World)
対人地雷禁止条約検討会議のスローガン「地雷のない世界」を訴えるためのマーチ。世界遺産であるアンコールワットを、リートイッ上級大臣兼カンボジア地雷対策犠牲者支援庁長官をはじめとするカンボジアの閣僚や各国代表団、地雷被害者や地元の子どもたちが約2時間かけて歩きました。日本政府からは市川とみ子軍縮会議日本政府代表部大使他、JICAからは安藤理事他が参加しました。
(2)無償資金協力で建設中の平和博物館の視察及び日本の機材・技術の展示イベント
検討会議開会前日の11月24日、内戦と地雷被害の歴史を展示した平和博物館の視察イベントを日本政府(JICA含む)及びカンボジア(CMAC)の共催で実施しました。同博物館の本館は、日本の無償金協力で建設中(2026年4月完工予定)。日本は英利外務大臣政務官と安藤理事、カンボジアはリートイッ上級大臣とラタナCMAC長官、各国代表団や国際機関等から200人以上が参加し、博物館敷地内に臨時で展示した日本の地雷除去機等の機材や既存の博物館内の展示物を視察しました。
安藤理事のスピーチで、JICAにとってカンボジアは初めて地雷対策協力を始めた特別な国であると発言した際には参加者から拍手が起きました。また英利外務大臣政務官からは、日本企業の機材やJICAの能力強化を通じてオールジャパンで取り組んでいくことを発言。日本企業の各種機材・技術展示の周囲には人だかりができる場面もあり、特に地雷被害国の参加者の関心の高さが伺えました。検討会議を前に、日本とカンボジアの地雷対策分野の強固な協力関係を示すとともに、平和博物館を披露する機会にもなりました。
(3)サイドイベント「アフリカとアジアの協力による持続可能な地雷対策のための能力強化」
会議初日の11月25日、JICA・CMAC・国連地雷対策サービス部(UNMAS)共催のサイドイベントを実施しました。ナイジェリア及び南スーダンの地雷対策機関代表者と、CMAC副長官と小向国際協力専門員がパネルディスカッションを行い、アフリカ各国における地雷対策能力強化の課題と、カンボジアの教訓等を共有しました。フロアからは、エチオピア、ソマリア、ザンビアの政府関係者がパートナーシップの意義について発言しました。
本イベントには、アフリカ各国代表団や欧米ドナー、国際機関やNGO等から約100人が参加し、会場は満席となりました。JICAとCMACのパートナーシップ、地雷対策能力強化の重要性、アフリカにおける地雷対策といった切り口が関心を集めたものと思われ、本イベントで醸成されたアフリカを含む協力関係を、来年8に開催されるTICAD9につなげていきます。
(4)討議議事録の署名
会議期間中の11月25日、JICA安藤理事とCMACラタナ長官との間での新たな技術協力プロジェクト「カンボジア地雷対策センター組織能力強化プロジェクト フェーズ2」に関する討議議事録(合意文書)の署名を行いました。本プロジェクトでは、CMACが他の地雷被害国を支援していくための体制強化の他、技術開発拠点としての体制強化(日本の機材・技術の開発・実証支援を含む)及び広報分野での協力(無償資金協力で建設中の平和博物館の運営を含む)を予定しています。
(5)ブース出展
会議期間中は会場敷地内にJICAブースを設置して、JICAの地雷・不発弾対策協力のパンフレットやクラスター事業戦略を配布し、JICAとカンボジアとの長年の協力関係、対人地雷廃絶に向けたJICAの貢献を発信する機会となりました。
3.2025年の地雷・不発弾対策関連の主な予定・イベント
2月上旬 |
ナイジェリア向け地雷対策研修 (カンボジア) |
2月下旬 |
アフリカ諸国とカンボジア・地雷対策パートナーシップ・ワークショップ (ザンビア) |
3月下旬 |
カンボジアにおける新規技術協力プロジェクト開始 |
4月4日 |
地雷に関する啓発および地雷除去支援のための国際デー |
5月下旬 |
ラオスにおける新規技術協力プロジェクト開始 |
8月下旬 |
TICAD9 アフリカの地雷・不発弾対策に関するサイドイベント(横浜) |
秋 |
ウクライナ地雷対策会議(東京)(JICAサイドイベントや登壇の可能性) |
12月 |
対人地雷禁止条約第22回締約国会議(ジュネーブ) |
暫定の予定につき変更の可能性があります。
4.取材対象者
小向 絵理 JICA国際協力専門員(平和構築分野)
ウプサラ大学大学院平和・紛争学部修士課程修了。
国際NGO職員として、ウガンダ北部のスーダン難民キャンプや紛争後のルワンダ等において人道緊急支援に従事。
1998年からJICAの平和構築分野に携わり、2008年より現職。
アフリカ・中東・アジア・コロンビア等の紛争影響地域におけるJICAの平和構築の協力にかかる業務を実施。
地雷・不発弾対策については、2000年からカンボジア、ラオス、コロンビア、ウクライナ等を対象に案件形成・実施促進等の業務を実施。
著作は『平和構築に向けた絆‐カンボジア地雷対策センターの改革・成長と南南協力の軌跡‐』他
参考リンク:
「支援される国」から「世界の地雷対策リーダー」へ カンボジアと共に目指す地雷ゼロの世界 | ニュース・広報 - JICA
紛争経験を世界への貢献に生かす「南南協力」【カンボジア】|JICA MAGAZINE | 広報誌 JICAマガジン
林 明仁 JICA専門家
東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。
NGO職員、大学での非常勤講師などを経て2012年より2018年までラオスの不発弾処理機関であるUXO LaoにてJICA専門家として組織能力を強化するプロジェクトを実施。
2020年よりカンボジアの地雷除去機関であるCMAC(カンボジア地雷対策センター)にてJICA専門家として組織能力強化のプロジェクト実施。
ラオス、コロンビア、アフリカ、ウクライナなどへのCMACによる研修事業の形成・実施を支援している。
参考リンク:
【カンボジア・農業】JICAがカンボジアでどのような農業・地雷支援を行なっているのか
地雷と闘い12年、日本人専門家が描く未来 ジャパンの技術を世界へ:朝日新聞デジタル
■JICAの地雷・不発弾対策協力の概要
https://www.jica.go.jp/activities/issues/peace/__icsFiles/afieldfile/2024/11/15/MApanfJP.pdf
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