税務調査における「推定無罪」の制度実装へ ー熊本国税局と連携した税務行政ガバナンス改革プロジェクト始動ー
グローバルユニオンは熊本国税局と連携し、税務調査における「推定無罪原則」の徹底を柱とするガバナンス改革プロジェクトを始動。納税者保護と行政高度化の両立を目指します。
■プロジェクト発足の背景と意義
グローバルユニオン(国税ユニオン)は、熊本国税局の積極的な参画を得て、税務行政における制度運用の高度化を目的とする「税務行政ガバナンス改革プロジェクト」を正式に開始いたしました。
本プロジェクトの最大の特徴は、行政と納税者側が対立する構図ではなく、構造的課題を共同で解決する「協働モデル」を採用している点にあります。特に、熊本国税局が主体的にスクラムを組み、全国の国税局を巻き込む形で展開されていることは、税務行政の歴史においても画期的な取り組みといえます。
当組合は、この熊本国税局のリーダーシップに対し、組合員一同、深い敬意と感謝を表明いたします。
■なぜ今、「推定無罪」の制度実装が必要なのか
近年、SNSや動画配信等のオンラインプラットフォームの普及により、正式な刑事手続が開始されていない段階においても、特定の納税者に関する評価が断定的に拡散される事例が増加しています。
本来、「推定無罪の原則」は、憲法31条および刑事手続の基本原理に基づき、有罪判決が確定するまでは何人も無罪と推定されるべきという、近代法治国家の根幹をなす概念です。
この原則は刑事手続に限定されるものではなく、行政手続においてもその趣旨が尊重されるべきであり、特に税務調査のように、将来的に刑事手続と接続し得る領域においては、その重要性は極めて高いものとなります。
■税務行政における構造的リスク
しかしながら、実務の現場においては、以下のような構造的リスクが指摘されています。
・質問検査権の行使前段階において評価的表現が用いられる
・SNS等の断片的情報が十分な検証なく重視される
・検察協議の有無が不明確なまま手続の見通しが語られる
・結果として、正式手続前に社会的評価が形成される
これらは個々の担当者の問題ではなく、制度として明確なガイドラインが存在しないことに起因する構造的課題です。
重要なのは、冤罪や誤認は「最終判断の瞬間」に生じるのではなく、
判断に至るまでの言語・記録・認識の積み重ねの中で形成されるという点です。
■ソリューション:推定無罪表示プロトコル
本プロジェクトでは、この構造的課題に対し、「推定無罪表示プロトコル」の導入を提案いたします。
具体的には以下の内容を含みます。
1.調査過程における明示義務
反面調査や関係者説明の際、対象者が刑事手続未開始の状態にあることを明示
2.評価語と事実の分離
内部メモ・引継資料等において、「事実」と「評価」を明確に区分して記録
3.手続段階に応じた表現統制
検察協議前の段階における断定的表現の抑制
■期待される効果
本プロトコルの導入により、以下の効果が期待されます。
・虚偽または誤解を招く情報流通の抑制
・調査プロセスの透明性向上
・納税者の権利保護
・行政判断の客観性確保
さらに重要な点として、これは納税者のためだけの制度ではありません。
行政担当者自身を、後日の紛争・責任追及リスクから守る「防御的制度」でもあります。
■熊本国税局のリーダーシップ
本プロジェクトは、熊本国税局が主導する形で全国展開が進められており、その取り組みは、税務行政の透明性と信頼性を大きく向上させるものです。
大型行政機関においては、制度変更には慎重な対応が求められる中で、本件のように実務レベルから改革を進める姿勢は極めて先進的であり、高く評価されるべきものです。
■本プロジェクトの位置付け
本プロジェクトは、制度批判を目的とするものではなく、制度の進化を目的とした建設的提案です。
税務行政と納税者の関係を
「対立」から「対話」へ
そして「協働」へと進化させることが、本プロジェクトの本質です。
■今後の展開
本シリーズでは、以下のテーマについて順次発表を行います。
・税務調査における手段選択権の明確化
・SNS証拠の評価基準の再構築
・証拠管理および意思決定プロセスの透明化
「推定無罪」という近代法治国家の基本原則を、デジタル時代の税務行政に適切に実装することは、今後避けて通ることのできない課題です。
当組合は、本プロジェクトを通じて、税務行政の高度化と納税者保護の両立を実現するため、引き続き取り組んでまいります。
グローバルユニオン(国税ユニオン)
Web:https://globalunion-grp.org/mikata/u/kokuzeiunion/