第5回羽ばたく女性研究者賞(マリア・スクウォドフスカ=キュリー賞) 受賞者の決定

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)は、第5回羽ばたく女性研究者賞(マリア・スクウォドフスカ=キュリー賞) 受賞者を決定しました。

JST

最優秀賞

黒木 祐子(クロキ ユウコ) 氏

Intesa Sanpaolo AI Research(イタリア)

Data & AI Researcher

専門分野:情報科学

奨励賞

小林 天美(コバヤシ アミ) 氏

東北大学 医学イノベーション研究所 医学創生研究部

講師(研究室主宰者、国際卓越研究員)

専門分野:神経科学

奨励賞

山口 そのみ(ヤマグチ ソノミ) 氏

ダナ・ファーバーがん研究所 がん免疫学・ウイルス学部門

HFSP 博士研究員

専門分野:ファージ生物学、構造生物学、生化学

特別賞

森本 真里子(モリモト マリコ) 氏

ノートルダム大学 化学・生化学科

アシスタントプロフェッサー

専門分野:化学生物学、免疫学、がん生物学

 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)(本部:埼玉県川口市本町4-1-8、理事長:橋本 和仁)は、第5回羽ばたく女性研究者賞(マリア・スクウォドフスカ=キュリー賞)の受賞者を決定。6月4日(木)駐日ポーランド共和国大使館にて開催された授賞式において受賞者を発表しました。

 第5回となる今回は、2025年10月1日から12月10日まで応募を受け付け、外部有識者からなる選考委員会による審査を経て、最優秀賞1人、奨励賞2人の受賞者を決定しました。加えて、選考において、本賞の趣旨に適い表彰に相当する応募者に対し、特別賞1人への授賞も決定しました。

 日本電子株式会社(JEOL)の協賛により、最優秀賞受賞者に100万円、奨励賞受賞者に各50万円、特別賞に30万円の賞金が贈呈されました。また、最優秀賞受賞者には、駐日ポーランド共和国大使館およびポーランド科学アカデミーより、マリアが生まれ育ったポーランドの研究機関などへの訪問機会が提供されます。


受賞者の研究概要

黒木 祐子 氏
不確実な状況においても、より良い判断を ― 経験を重ねて学ぶ仕組みを、数式で解き明かす

ホワイトボードを用いた研究議論

 私たちの身の回りには多くの情報がありますが、意思決定に必要な情報が最初から十分にそろっているとは限りません。私は、このように情報が限られていたり、ばらつきや誤差を含んでいたりする不確実な状況でも、限られた観測からデータの背後にある重要な関係性や仕組みを見つけ出し、「次に何を調べればよいか」を学びながら、効率良くより良い判断に近づいていく学習方法を研究しています。

 これは確率や統計、最適化などの数学に基づく「統計的機械学習」と呼ばれる分野で、計算の無駄を抑えたアルゴリズムを開発することで、多くの選択肢の中から有望なものを絞り込んだり、変化の大きい状況でも安定して判断したりすることを目指しています。将来は、実験回数が限られる材料や生命科学の研究において、「何をどれだけ試せばよいか」を数理的に示すことにつなげたいと考えています。

小林 天美 
小さなRNAは何を引き起こすのか ― タウたんぱく質の凝集と広がりを分子レベルで解明

研究成果の発表

 アルツハイマー型認知症は、年をとるにつれて起こりやすくなる病気で、日本では高齢の方の多くがかかるといわれています。この病気の原因の1つは、「タウたんぱく質」という物質が、脳の中で異常に集まって固まってしまうことです。

 私の研究では、細胞の中にあるRNAという分子からできる、とても小さなかけらが、タウたんぱく質と結びつき、そのかたまりを作りやすくしていることを見つけました。このかたまりは、ほかの細胞にも広がってしまいます。そこで私は、タウたんぱく質とRNAのかけらが細胞の中のどこにあるのかを、目で見て確かめられる方法を開発しました。さらに、RNAのかけらの働きを弱める分子を使うことで、神経細胞の中のタウたんぱく質のかたまりを減らせることも示しました。

 この研究は、将来、認知症などの脳の病気を治す方法につながると期待されています。

山口 そのみ 
細胞は何を合図に動くのか ― 分子レベルで迫る生命の判断原理

細菌免疫に関する国際研究会(山口氏は後列左から4人目)

 RNAやヌクレオチドといった非常に小さな分子は、細胞の中で「情報の合図」として働き、遺伝子の働きや防御反応を精密にコントロールしています。私は、こうした細胞の中で働く小さな分子が、今の細胞状態を判断し、それに応じて動きを変えている仕組みを研究しています。 

 博士課程では、遺伝子の働きを抑える「RNAサイレンシング」という重要な仕組みに注目し、分子がごくわずかな形の違いを見分けて正しいRNAを選ぶ仕組みを、立体構造の解析によって明らかにしました。これは、長年ブラックボックスだった過程を分子レベルで説明した成果です。さらにその後は、細菌がウイルスに感染した際、細胞内の分子バランスの変化を感知して防御反応を切り替える新しい仕組みを発見しました。

 これらの研究は、生命が分子の情報を基に状況を判断し、適切に行動する原理を示すものであり、将来の医療やバイオ技術への応用も期待されています。

森本 真里子 
免疫の「オン・オフ」を自在に操る ― 化学が切り開く次世代医療

ラボで仮説を確かめるための実験

 私たちの体には、ウイルスやがんから身を守る「免疫」という仕組みがあります。しかし免疫は、強すぎても弱すぎても病気の原因になります。そこで本研究は、化学の力を使って免疫の働きを自在に切り替え、病気とより上手に闘える体をつくることを目指しています。

 1つ目は、細胞表面にある「糖鎖(とうさ)」  という小さな分子に注目し、免疫のスイッチとしての役割を解き明かす研究です。食べ物の糖とは異なり、細胞表面をびっしり覆うこの分子を人工的につくる手法や、病気のときの変化を捉える新技術を開発しています。

 2つ目は、免疫細胞の働きを邪魔する原因となるたんぱく質にだけ結合し、まるごと分解して消し去る特別な分子を設計・開発する研究です。

 この研究は、免疫を「元気な状態」によみがえらせ、これまで治療が難しかった病気に立ち向かう新しい医療への道を切り開くことが期待されます。


羽ばたく女性研究者賞(マリア・スクウォドフスカ=キュリー賞)について

 JSTでは、科学技術・イノベーションの創出に向けて女性研究者の活躍を推進しており、2021年度、駐日ポーランド共和国大使館と共に、日本の女性研究者のより一層の活躍推進に貢献することを目的に、国際的に活躍が期待される若手女性研究者を表彰する「羽ばたく女性研究者賞(マリア・スクウォドフスカ=キュリー賞)」を創設しました。本賞は、ポーランドが生んだ偉大な女性研究者、マリア・スクウォドフスカ=キュリーが、30歳台前半での功績を認められ後にノーベル賞を受賞したことにちなみ、その名を冠しています。

 本賞が対象としている博士後期課程および博士号取得後数年以内の女性研究者は、自立した研究者としての飛躍が最も期待される一方で、さまざまなライフイベントに直面することが多いのも事実です。本賞によって受賞者の活躍を称え広く知ってもらうことが、情熱としなやかさをもって飛躍しようとする女性研究者への応援と次世代の女性研究者育成につながることを期待しています。 

 

 賞の詳細はこちら、受賞者一覧はこちらをご参照ください。

 また、JSTが実施する2つの女性研究者賞である「輝く女性研究者賞〈ジュンアシダ賞〉」「羽ばたく女性研究者賞〈マリア・スクウォドフスカ=キュリー賞〉」の歴代受賞者インタビューページも新たに開設しました。あわせてご覧ください。


お問い合わせ

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)

人財部ダイバーシティ推進室

E-mail:diversity@jst.go.jp

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会社概要

URL
https://www.jst.go.jp/
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
埼玉県川口市本町 川口センタービル
電話番号
048-226-5601
代表者名
橋本和仁
上場
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資本金
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設立
1996年10月