第30回「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」調査結果
公益財団法人旭硝子財団(理事長:島村琢哉)は、1992年より、毎年、世界の環境有識者を対象に環境アンケート調査を実施しております。今年は日本を含む210カ国に調査票を送付し、134カ国以上1,893名から回答を頂きました。以下に本年度の調査結果の要点を発表致します。調査結果の詳細は「第30回地球環境問題と人類の存続に関するアンケート調査報告書」に発表すると共に、財団ウェブサイトhttp://www.af-info.or.jpでもご覧頂けます。
● 今年の環境危機時計の時刻は9時42分で、昨年より5分針が戻った。前年より4分以上針が戻るのは8年ぶり。
● 今年は北米で30分と大幅に時刻が戻り、他のほとんどの地域でも時刻は戻っている。本年1月の米国のパリ協定再加盟が影響した可能性がある。
● 危機時刻を決める上で念頭に置いた項目は2011年以来一貫して「気候変動」が最多。
● 脱炭素社会への転換、気候変動の改善に関し、「人々の意識」、「政策、法制度」の観点からは、年々改善が進む方向にあると認識されている。
● SDGsの中で、「貧困をなくそう」、「人や国の不平等をなくそう」は、世界の地域によらず2030年に達成度が最も低いと考えられている。
● 日本のSDGsの取り組み、2030年の達成度が最も高いと思う目標は「安全な水とトイレを世界中に」、達成度が最も低いと思う目標は「ジェンダー平等を実現しよう」。
I 環境危機時計®~人類存続の危機に対する認識
I-1 環境危機時計®の時刻
・調査した地域の中で、今年、2地域で針が進み、7つの地域・国で環境危機時計®の針は戻った。(図3)
・最も針が戻ったのは北米で30分(10時33分→10時3分)、最も針が進んだのは、西欧で8分(9時59分→10時7分)であった。
・北米は30分針が戻ったが、依然としてオセアニア、西欧に次いで3番目に高いレベルの危機意識をもっている。
・調査開始以降の世界全体の危機時刻の推移では、1996年以降、2000年を除いて、常に9時台の「極めて不安」の領域を示している。(図4)
・世界の環境危機時刻は、2011年以来針が進む傾向にあったが、8年ぶりに前年より5分以上針が戻った。 (図4)
I-2 回答者の年代層による環境危機時刻の推移 (2012年~2021年)
・全世代で危機意識は高まっているが、今年は環境危機時計®の針は全世代で戻った。全世代で針が戻るのは8年ぶり。(図5)
・10年前には、20代、30代はそれ以上の世代よりも危機意識が低かったが、近年はその差が小さくなる傾向にある。(図5)
・40代、50代、60代以上が示した時刻は、2016年から2019年まで進んできたが、2020年から連続で戻った。(図5)
II 危機時刻記入にあたって念頭においた「地球環境の変化を示す項目」(世界)
本調査は、危機時刻を決める上で、次の「地球環境の変化を示す9項目」から、回答者が住む国または地域において最も深刻だと思われる環境問題を1位~3位で選んでいただいた。(2019年、2020年の調査結果は「2021年調査報告書」に比較データとして記載)
地球環境の変化を示す9項目:
1. 気候変動、2. 生物圏保全性(生物多様性)、3. 陸域系の変化(土地利用)
4. 生物化学フロー(環境汚染)、5. 水資源、6. 人口、7. 食糧、8. ライフスタイル(消費性向)、
9.社会、経済と環境、政策、施策
II-1 地球環境の変化を示す9項目の加重平均選択率
・危機時刻の記入にあたり念頭においた項目の選択率について、世界全体では「気候変動」が31%で最多、次いで14%の「生物圏保全性(生物多様性)」が続き、この順は4年連続で同じ。(図6)
II-2 危機時刻の順位
・危機時刻の順位に並べると、一位は「生物圏保全性(生物多様性)」の9時54分で昨年と同じ結果となった。2位は「生物化学フロー(環境汚染)」の9時53分で、これらは、世界の環境危機時刻9時42分より10分以上進んでいる。(図6)
・「生物圏保全性(生物多様性)」は、最も進んだ時刻となっており、「生物化学フロー(環境汚染)」は、最近、他の項目よりも針の進み方が早い。
III 環境問題への取り組みの改善の兆し ―パリ協定、SDGs採択(2015年)以前との比較
環境問題への取り組みの改善の兆しとして、①「一般の人々の意識」、②「政策・法制度」、③「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の3つの観点から、脱炭素社会への転換と「地球環境の変化を示す項目」について問うた。
(「全く進んでいない」を「-2」、「どちらかと言えば進んでいない」を「-1」、「どちらかと言えば進んでいる」を「+1」、「確実に進んでいる」を「+2」として数値化し平均値を出した)。
III-1 脱炭素社会への転換の進み具合に関する認識
・脱炭素社会への転換については、どちらかといえば進んでいるが、「政策・法制度」や「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の面は、「一般の人々の意識」の面ほど進んでいない。しかし、2019年から2年連続で、どの項目も進む方向にシフトしている。(図7)
III-2 気候変動の改善の兆しに関する認識
・改善の兆しがある項目として最も多く選ばれたのは、「気候変動」(27.7%)で、ついで「社会、経済と環境、政策、施策」(18.0%)、「ライフスタイル(消費性向)」(16.5%)と続く。(表2)
・「気候変動」について、回答者は政策、法制度や社会基盤(資金・人材・技術・設備)よりも、一般の人々の意識(1.33)について改善の兆しを見出している。(表2)
・「気候変動」に関する認識は、2019年から、「一般の人々の意識」、「政策・法制度」は改善の方向にシフトしているが、「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」は昨年から改善度がやや低下した。(図8)
持続可能な開発目標 (SDGs)の達成可能性に関して、世界平均で見たときと、自分が住む国・地域で見たときに、17 ある目標の中で2030 年に達成度が高いと思う目標、低いと思う目標を3つずつ選び、それぞれ高いもの、低いものから順に1 位、2 位、3 位を選んでもらった。回答は1~3位の百分率の積上げで、各項目を比較した。世界9地域(図3参照)のうち各項目を選んだ地域の数を図9に示した。それぞれの地域、国ごとのデータは、「2021年調査報告書」に記載。
・世界で2030年に達成度が低いと思う目標は、「1. 貧困をなくそう」が圧倒的に多く選ばれ、これに「2. 飢餓をゼロに」、「10. 人や国の不平等をなくそう」が続き、これらの目標の実現は世界で多くの人が難しいと考えていることがわかる。(図9左、赤)
・自国・地域で2030年に達成度が高いと思う目標は、ばらつきがあるが、「6. 安全な水とトイレを世界中に」「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」、「13. 気候変動に具体的な対策を」の三つが多かった。「4. 質の高い教育をみんなに」は、世界では2030年に達成度が高いと思う目標として、上位に選ばれていないが、自国でこの目標の達成度が高いと考える人は多い。(図9右、緑)
・自国・地域で2030年に達成度が低いと思う目標として「1. 貧困をなくそう」、「10. 人や国の不平等をなくそう」の二つを選ぶ地域が多かった。これらは、世界を見た時にも2030年に達成度が低いと思う目標に選ばれており、世界的に共通の課題である。(図9右、赤)
・日本人が国内で2030年の達成度が最も高いと思う目標として「安全な水とトイレを世界中に」、達成度が最も低いと思う目標として「ジェンダー平等を実現しよう」が選ばれた。
本調査は回答者から世界各国における環境問題の実情やご意見、改善策を記入して頂く自由記述欄を設けております。今年は海外133カ国以上、約500件、国内約300件のご意見を頂きました。いただいたコメント、ご意見の抜粋を、9月8日午前11時より財団ウェブサイトに掲載致します。
● 今年は北米で30分と大幅に時刻が戻り、他のほとんどの地域でも時刻は戻っている。本年1月の米国のパリ協定再加盟が影響した可能性がある。
● 危機時刻を決める上で念頭に置いた項目は2011年以来一貫して「気候変動」が最多。
● 脱炭素社会への転換、気候変動の改善に関し、「人々の意識」、「政策、法制度」の観点からは、年々改善が進む方向にあると認識されている。
● SDGsの中で、「貧困をなくそう」、「人や国の不平等をなくそう」は、世界の地域によらず2030年に達成度が最も低いと考えられている。
● 日本のSDGsの取り組み、2030年の達成度が最も高いと思う目標は「安全な水とトイレを世界中に」、達成度が最も低いと思う目標は「ジェンダー平等を実現しよう」。
I 環境危機時計®~人類存続の危機に対する認識
I-1 環境危機時計®の時刻
・世界の環境危機時計®は、過去3年、9時46~47分と高い危機意識を示していたが、今年は9時42分と昨年より5分針が戻った。前年より4分以上針が戻ったのは8年ぶり。(表1)
・調査した地域の中で、今年、2地域で針が進み、7つの地域・国で環境危機時計®の針は戻った。(図3)
・最も針が戻ったのは北米で30分(10時33分→10時3分)、最も針が進んだのは、西欧で8分(9時59分→10時7分)であった。
・北米は30分針が戻ったが、依然としてオセアニア、西欧に次いで3番目に高いレベルの危機意識をもっている。
・調査開始以降の世界全体の危機時刻の推移では、1996年以降、2000年を除いて、常に9時台の「極めて不安」の領域を示している。(図4)
・日本は昨年から針が10分戻って9時36分となり、世界平均より6分遅れた時刻を示している。日本は2009年以降、世界平均よりやや遅れた時刻となる傾向にある。(図4)
・世界の環境危機時刻は、2011年以来針が進む傾向にあったが、8年ぶりに前年より5分以上針が戻った。 (図4)
I-2 回答者の年代層による環境危機時刻の推移 (2012年~2021年)
・全世代で危機意識は高まっているが、今年は環境危機時計®の針は全世代で戻った。全世代で針が戻るのは8年ぶり。(図5)
・10年前には、20代、30代はそれ以上の世代よりも危機意識が低かったが、近年はその差が小さくなる傾向にある。(図5)
・40代、50代、60代以上が示した時刻は、2016年から2019年まで進んできたが、2020年から連続で戻った。(図5)
II 危機時刻記入にあたって念頭においた「地球環境の変化を示す項目」(世界)
本調査は、危機時刻を決める上で、次の「地球環境の変化を示す9項目」から、回答者が住む国または地域において最も深刻だと思われる環境問題を1位~3位で選んでいただいた。(2019年、2020年の調査結果は「2021年調査報告書」に比較データとして記載)
地球環境の変化を示す9項目:
1. 気候変動、2. 生物圏保全性(生物多様性)、3. 陸域系の変化(土地利用)
4. 生物化学フロー(環境汚染)、5. 水資源、6. 人口、7. 食糧、8. ライフスタイル(消費性向)、
9.社会、経済と環境、政策、施策
II-1 地球環境の変化を示す9項目の加重平均選択率
・危機時刻の記入にあたり念頭においた項目の選択率について、世界全体では「気候変動」が31%で最多、次いで14%の「生物圏保全性(生物多様性)」が続き、この順は4年連続で同じ。(図6)
II-2 危機時刻の順位
・危機時刻の順位に並べると、一位は「生物圏保全性(生物多様性)」の9時54分で昨年と同じ結果となった。2位は「生物化学フロー(環境汚染)」の9時53分で、これらは、世界の環境危機時刻9時42分より10分以上進んでいる。(図6)
・「生物圏保全性(生物多様性)」は、最も進んだ時刻となっており、「生物化学フロー(環境汚染)」は、最近、他の項目よりも針の進み方が早い。
III 環境問題への取り組みの改善の兆し ―パリ協定、SDGs採択(2015年)以前との比較
環境問題への取り組みの改善の兆しとして、①「一般の人々の意識」、②「政策・法制度」、③「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の3つの観点から、脱炭素社会への転換と「地球環境の変化を示す項目」について問うた。
(「全く進んでいない」を「-2」、「どちらかと言えば進んでいない」を「-1」、「どちらかと言えば進んでいる」を「+1」、「確実に進んでいる」を「+2」として数値化し平均値を出した)。
III-1 脱炭素社会への転換の進み具合に関する認識
・脱炭素社会への転換については、どちらかといえば進んでいるが、「政策・法制度」や「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の面は、「一般の人々の意識」の面ほど進んでいない。しかし、2019年から2年連続で、どの項目も進む方向にシフトしている。(図7)
III-2 気候変動の改善の兆しに関する認識
・改善の兆しがある項目として最も多く選ばれたのは、「気候変動」(27.7%)で、ついで「社会、経済と環境、政策、施策」(18.0%)、「ライフスタイル(消費性向)」(16.5%)と続く。(表2)
・「気候変動」について、回答者は政策、法制度や社会基盤(資金・人材・技術・設備)よりも、一般の人々の意識(1.33)について改善の兆しを見出している。(表2)
・「気候変動」に関する認識は、2019年から、「一般の人々の意識」、「政策・法制度」は改善の方向にシフトしているが、「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」は昨年から改善度がやや低下した。(図8)
IV 持続可能な開発目標 (SDGs)の達成可能性に関する認識
持続可能な開発目標 (SDGs)の達成可能性に関して、世界平均で見たときと、自分が住む国・地域で見たときに、17 ある目標の中で2030 年に達成度が高いと思う目標、低いと思う目標を3つずつ選び、それぞれ高いもの、低いものから順に1 位、2 位、3 位を選んでもらった。回答は1~3位の百分率の積上げで、各項目を比較した。世界9地域(図3参照)のうち各項目を選んだ地域の数を図9に示した。それぞれの地域、国ごとのデータは、「2021年調査報告書」に記載。
・世界で2030年に達成度が高いと思う目標として、「13. 気候変動に具体的な対策を」が1位で多くの地域で選ばれている。「9. 産業と技術革新の基礎をつくろう」、「17. パートナーシップで目標を達成しよう」が同数で2位となっている。(図9左、緑)
・世界で2030年に達成度が低いと思う目標は、「1. 貧困をなくそう」が圧倒的に多く選ばれ、これに「2. 飢餓をゼロに」、「10. 人や国の不平等をなくそう」が続き、これらの目標の実現は世界で多くの人が難しいと考えていることがわかる。(図9左、赤)
・自国・地域で2030年に達成度が高いと思う目標は、ばらつきがあるが、「6. 安全な水とトイレを世界中に」「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」、「13. 気候変動に具体的な対策を」の三つが多かった。「4. 質の高い教育をみんなに」は、世界では2030年に達成度が高いと思う目標として、上位に選ばれていないが、自国でこの目標の達成度が高いと考える人は多い。(図9右、緑)
・自国・地域で2030年に達成度が低いと思う目標として「1. 貧困をなくそう」、「10. 人や国の不平等をなくそう」の二つを選ぶ地域が多かった。これらは、世界を見た時にも2030年に達成度が低いと思う目標に選ばれており、世界的に共通の課題である。(図9右、赤)
・日本人が国内で2030年の達成度が最も高いと思う目標として「安全な水とトイレを世界中に」、達成度が最も低いと思う目標として「ジェンダー平等を実現しよう」が選ばれた。
本調査は回答者から世界各国における環境問題の実情やご意見、改善策を記入して頂く自由記述欄を設けております。今年は海外133カ国以上、約500件、国内約300件のご意見を頂きました。いただいたコメント、ご意見の抜粋を、9月8日午前11時より財団ウェブサイトに掲載致します。
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