日本を代表する現代彫刻家・戸谷成雄 出身地における初めての個展 「戸谷成雄 彫刻 」を、長野県立美術館で2022年11月4日(金)から開催!
彫刻家・戸谷成雄(1947-・長野県上水内郡小川村生まれ)は、国内外の戦後美術において制度として解体された彫刻と向き合い、その本質から再構築しようと試みてきました。作品の基本的な構造は、戸谷が彫刻家をこころざした1970年代の熟考により形作られました。人類学や言語学の方法論をもちいて社会の構造のありかたを問うという、そのころの世界的な思想のながれは、日本社会について人間の存在認識から探求する視点をもたらし、戸谷の制作における彫刻の構造と根源の問いとも共振します。長野県での初めての個展となる本展では、戸谷成雄の初期から近年の作品まで約30点を展示します。「表面」や「構造」といった戸谷の彫刻概念の視座として、日本語の言語構造へのアプローチに目を向けてみることで、そのあわいから立ち現れる彫刻観を展望します。
■展示構成
エントランスで体感、戸谷成雄作品のテーマ
正面エントランスの吹き抜けの空間には、<雷神―09>(2009)を展示します。木が雷に打たれた姿から着想されたもので、各階から見える作品の姿はそれぞれ異なります。彫刻の表面に無数に刻まれている傷は、「視線」によって掘り出されたものが彫刻になるという戸谷の思考にもとづいて、交差する「視線」と、「表面・構造」との関係を表しています。<雷神―09>は圧倒的なスケールで、戸谷成雄作品の根源的なテーマの体感をもたらします。
第1展示室:吹き抜けの展示室
死のモニュメントとしての<森Ⅸ>(2008)、同じく死のモニュメントである墓を表す<≪境界≫からⅢ>(1995-96)、地上と地下を結ぶ<地霊Ⅲ-a>(1991)といった作品群が、<雷神―09>同様に「視線」と「表面・構造」との関係を表しながら、吹き抜けの展示室にて「死」の世界を暗示します。「死」は他者がいなければ実感することができず、それゆえ自分と他者との関係に意識を向けるきっかけのひとつとなります。他者との世界の共有は言語をめぐる問題とも関わってきます。1 階では作品の間を歩き回りながら、2 階からは展示室全体を俯瞰していただけます。
第2展示室:初期作品を中心に――彫刻の起源
戸谷作品に通底する「彫刻の起源」への初期の模索を中心にご紹介します。名実ともに戸谷作品の起点に位置付けられる<POMPEII‥79>(1974)は、古代都市・ポンペイに着想を得ており、ポジとネガといった対概念の中間として「表面」の概念を表すとともに、他者との世界の共有と個との関係を問いかけます。 同様の関係を考察した同時期の他作品(現存せず)も写真でご紹介します。「視線」の「構造」についての初期の模索は、時代をくだって<連句的Ⅱ>において、かたまりとしての「表面」の模索は、<視線体-積>などで繰り返されます。「連句的」というタイトルは、このように螺旋を描くようにして思索を深めていく戸谷の彫刻観を示しているかのようです。さらに戸谷は、彫刻における人体の表現を、彫刻の起源と人間の存在を結びつけるものと捉えていました。以後、「表面」のテーマと関係づけられていくのは、壁側に人物像の影がかたどられた<射影体>が示すとおりです。
第3展示室:モニュメンタルな作品を中心に――「表面・構造」と「言語」
<森の象の窯の死>(1989)は、作品タイトルに助詞「の」が意図的に繰り返されており、タイトルの意味そのものに言語に限定しえない空間表現が与えられ、戸谷成雄の彫刻概念「表面・構造」が「言語」と結びつけられている例です。<双影体Ⅱ>(2001)は、鏡像関係にある2つの直方体による 「表面・構造」にあえて「間」が作られており、空間の余韻を感じさせます。 浮彫彫刻での「表面・構造」を問う展開も、 スケールの大小にかかわらず、戸谷作品に通底する深い思索の存在を表しています。
本展のキャッチフレーズの「ある全体として」は、戸谷が自身の彫刻について述べるときに頻繁に用いる言葉でもあります。「ある」は「或る」や「在る」を意味しており、「大きな一つのかたまり」を意味する「全体」にかかると、矛盾をはらんだフレーズとなります。まさに戸谷の彫刻観の複雑さを如実に物語る言葉といえるでしょう。
◆開催概要
戸谷成雄 彫刻 ―ある全体として
会期|2022 年 11 月 4日(金)―2023年 1 月 29 日(日)
会場|長野県立美術館 展示室 1・2・3
- SNS フォロー割り 開催!
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