高校生の探究記述1,000件を分析。手が届く範囲に問いを絞り込んでいるのは、約10人に1人。

中央教育審議会の「審議まとめ」が示した探究の「課題の質」「プロセスの質」を、探究学習フィードバックシステム「Qareer」の投稿データから分析。鈴木寛氏のコメントも掲載

株式会社クアリア

探究学習フィードバックシステム「Qareer(クアリア)」を運営する株式会社クアリア(東京都渋谷区、代表取締役:芦野恒輔)は、高校生の探究記述1,000件を分析した研究記事「探究の質とは何か:課題の質」「探究の質とは何か:プロセスの質」を公開しました。

これらの記事では、次期学習指導要領に向けた審議まとめで整理された探究の「課題の質」と「プロセスの質」について、Qareerに蓄積された数万件の提出から無作為に抽出した1,000件を、75項目で分析した結果をもとに考察しています。

※「探究の質とは何か:成果の質」は11月上旬公開予定

調査の背景

2026年10月5日、中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会は「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」を公表しました。探究的な学びについては、その「質」をどう捉え、高めていくかが重要になります。審議まとめでは、探究の質を捉える視点として「課題の質」「プロセスの質」「成果の質」の三つが示されました。このうち「課題の質」は、設定した課題が自己や他者、社会にとってどのような意味を持つか、という視点で整理されています(中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」P.330)。

一方、学校現場では、生徒の設定した課題(テーマ・問い)に「何か足りない」と感じても、どこが足りないのかを言葉にしにくい場面があります。弊社が学校現場の先生と探究について話す中でも、質の高い・低いの判断は一人ひとりの先生の経験に委ねられやすく、質を高めるための関わり方も校内で共有しにくい、という声を多く聞いてきました。

そこで今回、視点として示された「課題の質」を、目の前の生徒の問いに当てはめる手掛かりを得るため、生徒が実際に書いた探究の記述の分析に着手しました。あわせて、問いに対してどのような方法を選び、どう進めていくかという「プロセスの質」についても、同じ記述をもとに分析しました。

主な分析結果

以降の数値は、提出された文章から各項目の判定条件を確認できた割合(表出率、分母は1,000件)です。項目ごとに判定条件が異なるため、項目間の割合の高低は力の高低を示すものではありません。

なお、記述がないことを、生徒にその力がないこととは扱えない点にはご留意ください。

発見1

複数の情報を踏まえて問いの焦点を定めた記述は18.6%、

自分の経験を他の人にも当てはまる問いにした記述は13.3%

分析した力

一部以上を確認

すべてを確認

情報を組み合わせて、

問いを絞り込む力

78.7%

18.6%

自分の経験を、他の人にも当てはまる問いにする力

88.4%

13.3%

※1 「すべて」は条件をすべて確認できた場合、「一部」はいずれかのみ確認できた場合です。

※2 「一部以上」には「すべて」を含みます。

※3 詳細の確認方法は、研究記事をご覧ください。

「一部以上」と「すべて」の差、つまり条件の一部のみ確認できた提出は、上の2項目で60.1%・75.1%でした。

この結果から、経験や情報に触れることと、それらを根拠に問いを定めることは必ずしも同じではないと考えられます。そのため、探究の課題(テーマ・問い)を見るときは、テーマが絞られているかに加えて、どのような経験や情報を根拠にその問いに至ったのかに目を向ける必要があるのではないでしょうか。

発見2 

問いの対象範囲を定めた記述は34.9%、

大きなテーマを具体的な問いにした記述は25.6%

手が届く範囲に問いを絞っていた記述は2.3%

分析した力

一部以上を確認

すべてを確認

問いの対象範囲を定める力

62.1%

34.9%

大きなテーマを、具体的な問いにする力

58.0%

25.6%

手が届く範囲に問いを絞る力

11.5%

2.3%

※1 「すべて」は条件をすべて確認できた場合、「一部」はいずれかのみ確認できた場合です。

※2 「一部以上」には「すべて」を含みます。

※3 詳細の確認方法は、研究記事をご覧ください。

3項目とも、「一部以上」と「すべて」の割合に開きがありました。具体的には、対象とする地域や集団などの限定、大きなテーマを具体的な問いにする過程、制約を踏まえて範囲を絞る判断について、それぞれの条件がそろった記述は限られていました。

この結果から、課題(テーマ・問い)が定まった後にも、「どこまで扱うか」が具体的になっているかを確かめる必要があると考えられます。自らが現実的に利用できるリソースや条件を考慮した上、実際に何を、どこまで扱うかを考える必要があるのではないでしょうか。

発見3 

自分の関心や希望進路から問いを生んだ記述は49.3%

身近な人の困りごとを問いにした記述は3.1%

分析した力

一部以上を確認

すべてを確認

自分の関心や希望進路から問いを生む力

52.3%

49.3%

日常の中の違和感を問いにする力

46.4%

35.1%

身近なことと社会をつなげて考える力

39.8%

29.8%

身近な人の困りごとを問いにする力

5.4%

3.1%

見えにくい立場や見過ごされている課題を捉える力

3.6%

0.9%

※1 「すべて」は条件をすべて確認できた場合、「一部」はいずれかのみ確認できた場合です。

※2 「一部以上」には「すべて」を含みます。

※3 3.1%・0.9%は、特定の形の記述を捉えた項目の値で、他者への関心の有無を示すものではありません。
  (例:具体的な当事者と、その立場が見過ごされていること)

※4 詳細の確認方法は、研究記事をご覧ください。

これらの項目では「一部以上」と「すべて」の差が小さく、最大でも11.3ポイントでした。関心や進路希望などに触れた記述は、それがテーマにどうつながったかまで書かれていることが多く、発見1・2の項目とは対照的です。一方、「身近な人の困りごとを問いにする力」で条件をすべて確認できた記述は3.1%、「見えにくい立場や見過ごされている課題を捉える力」では0.9%と少数でした。

この結果から、社会に関わるテーマを扱うことと、その問題が誰にとってどのような意味を持つかを捉えることは別だと考えられます。そのため、例えば「地域の活性化」をテーマにしたとしても、住民と商店経営者では課題や目指したい姿が違うかもしれず、誰のどのような状況に応える問いかを考えることで、取り組む意味が具体的になると考えられます。

なお、本分析では、自分の関心から出発する問いと、誰かの困りごとから出発する問いに優劣があるとはしていません。研究記事「探究の質とは何か:課題の質」では、自分の疑問を確かめたいという動機も「問いの意味」に含まれるとして、考察しています。

教育現場への示唆

生徒の課題(テーマ・問い)に「何か足りない」と感じたとき、確認したいのは次の二つと、そのつながりです。

  • 問いの意味

    誰にとって、なぜ大切なのかが具体的になっているか。「何を見聞きして気になったのか」「誰の、どのような状況に関わる問いか」を確かめます。

  • 問いの中身

    明らかにしたいことが、根拠に基づいて定まっているか。「何が分かっていて、何がまだ分からないのか」「使える時間や協力を得られる相手を踏まえ、どこまで確かめるのか」を見ます。

  • 二つのつながり

    取り組む理由と、調べる内容が噛み合っているか。

詳細は、研究記事「探究の質とは何か:課題の質」からご確認ください。

「プロセスの質」では、探究の進め方を分析

研究記事「探究の質とは何か:プロセスの質」では、同じ1,000件から、探究の進め方に関わる11項目を取り上げています。例えば、「仮説を立てて、何を調べるかを決める力」では、条件の一部以上を確認できた記述は46.6%、すべての条件を確認できた記述は9.8%でした。ここでは、「こうではないか」という見通しと、それを確かめるための調査内容・項目が書かれていることを確認しています。

記事では、「計画と達成基準」「調査設計」「情報収集」「試行と修正」の四つの観点から、活動が進んでいるかに加え、その活動で知りたいことを確かめられるか、結果を次の進め方にどう生かすかを説明しています。

詳細は、研究記事「探究の質とは何か:プロセスの質」からご確認ください。

第3回「探究の質とは何か:成果の質」は、「探究の質とは何か:成果の質」は11月上旬公開予定です。

鈴木寛先生 コメント

本調査について、鈴木寛先生よりコメントをいただきました。

鈴木寛(すずきかん) 東京大学公共政策大学院教授、慶應義塾大学特任教授 

高校で探究学習が本格的に始まってから4年が経ち、学校によって取り組みに大きなばらつきが見られるようになっています。今、求められているのは、探究の質を高めることと、充実した実践をより広く届けることの両方です。

そのためには、どのような探究が生徒の成長につながるのか、その違いがどこにあるのかを、具体的に捉えていく必要があります。今回の調査は、高校生が実際に書いた探究の記述をもとに、探究の質を高めるための手掛かりを示すものです。蓄積されたデータは、教育効果につながる探究のあり方を、今後さらに深く理解していくための重要な材料になると考えています。

質の向上は、探究の実践を広げることにもつながります。どのような探究に意味があり、どのように取り組めばよいのかが具体的に見えてくれば、これまで探究の意義や効果に確信を持てなかった先生方も、一歩を踏み出しやすくなるはずです。すでに探究の指導に取り組んでいる先生方にも、これから取り組もうとしている先生方にも、ぜひ読んでいただきたいと思います。

調査概要

調査主体

株式会社クアリア

(研究ノート執筆:平田正英 [株式会社クアリア 共同創業者])

対象

Qareerを導入している学校の高校生による探究の提出

件数

Qareerに蓄積された高校生の探究に関する提出文章約2万件を母集団とし、そこから無作為に抽出した1,000件を分析対象とした。1件あたりの文字数はおおむね700〜800字。分析単位は提出文章であり、生徒の人数とは異なる。

方法

①質的コーディングにより、記述に表れた思考・判断や成長への希望を75項目(探究の7局面に関する66項目と「本人が望む成長」に関する9項目)に整理し、項目ごとに定義と判定条件を設定。

②判定条件に沿って、AIで各項目を「確認できない/一部を確認/すべて確認」の3段階で判定。条件の一部以上を確認できた提出の割合と、すべての条件を確認できた提出の割合を算出した。分母はいずれも1,000件とした。

項目の作成に用いたデータ

表出率を算出した分析対象と同じ1,000件を使用。

指標

表出率=条件の一部以上を確認できた提出の割合、およびすべての条件を確認できた提出の割合(分母はいずれも1,000件)

本リリースの範囲

課題設定に関わる22項目のうち、

テーマを選ぶ理由と問いの焦点・範囲に直接関わる10項目

留意点

記述がないことを力がないこととは扱わない。1,000件は1,000人とは限らない。探索的な分析で、力の獲得や指導による向上は検証していない。設問や提出段階が記述の表れ方に影響しうる。Qareer導入校の提出であり、高校生全体を代表しない

詳細

探究の質とは何か:課題の質(2026/10/21)

探究の質とは何か:プロセスの質(2026/10/28)


【会社概要】

ミッション:「学ぶと変われる」を全ての生徒へ

会社名  :株式会社クアリア(法人番号1011001149857)

所在地  :東京都渋谷区神宮前6丁目23番4号桑野ビル2階

設立   :2022年9月

代表取締役:芦野 恒輔

事業内容 :学校における探究学習の支援等

URL    :https://qareer.jp/

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会社概要

株式会社クアリア

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URL
https://qareer.jp/
業種
教育・学習支援業
本社所在地
東京都渋谷区神宮前 六丁目23番4号 桑野ビル2階
電話番号
-
代表者名
芦野恒輔
上場
未上場
資本金
250万円
設立
2022年09月