ホルムズ海峡情勢で注目度急上昇中。船内生活用水確保の重要性と、PETER TABOADA RO膜式造水装置によるハイブリッド造水設備環境
ホルムズ海峡は、世界のエネルギー輸送や商船運航にとって極めて重要な海域である。近年の中東情勢の緊迫化により、同海域では通航リスクや船舶の待機リスクが強く意識されている。多くの船がホルムズ海峡を通航できず、ペルシャ湾内での停泊を余儀なくされており、同海域の混乱が船舶運航に直接影響していることがうかがえる。
このような状況では、本船が予定外に沖待ちや停泊を強いられたり、補給港への入港が遅れたりすることになりかねない。こうなると、予定どおりに寄港できずに清水の十分な補水ができないこともあり得る。そして結果として、本船の清水タンクの残量に余裕がなくなれば、生活用水不足として乗組員の衛生環境や船内生活にも直結する問題となる。
PETER TABOADAのRO膜式造水装置は、こうした地政学リスクや補水遅延への備えとして、船内の生活用水を確保し、乗組員の生活を守る装置である。
船舶の水事情
船舶における清水の確保は、乗組員の生活環境を守るうえで必須である。飲料水、調理、洗面、シャワー、清掃など、一般的に一人当たり一日200Lの水が必要とされているので、船に乗組員が20人いれば、一日に4tの生活用水が必要ということになる。
通常であれば、航海中に船内にある蒸発式造水装置で造水をし、不足分は寄港時の補水によって清水を確保する。しかし今回のホルムズ海峡の様に湾内での停泊を余儀なくされると、造水装置で造水ができず、また航路の変更などで予定どおりに寄港できなければ、十分な補水ができないケースもある。
従来型の蒸発式造水装置とRO膜式造水装置
船舶では、従来から蒸発式造水装置が広く使用されてきた。
蒸発式は、エンジンの排熱を利用して海水を蒸発させ、その蒸気を凝縮して清水を得る方式である。蒸留水であることから、純度が高く(純水)、ボイラー水などに最適である。しかしエンジンが稼働している航海中には有効な方式だが、エンジンが停止している停泊中には、海水を蒸発させるための熱源を確保できないために造水できない。
この様に、従来の蒸発式造水装置はエンジン不稼働時に造水が制約され、今回のホルムズ海峡の様に湾内に停泊を余儀なくされると造水装置で造水することができない。
こうした状況の中で注目されているのが、PETER TABOADAの逆浸透膜(RO膜)式造水装置である。

RO膜式造水装置は、高圧ポンプで海水をRO膜に通過させることで、海水中の塩分や不純物を除去して清水を造水する方式である。蒸発式送水装置と異なり熱源を必要としないため、エンジンが停止中でも発電機が運転中であれば造水できる。即ち、余儀なく沖待ちや長期停泊をさせられた際にも、発電機の電力だけでRO膜式造水装置を運転して、生活用水を確保することができる。
PETER TABOADA RO膜式造水装置の特長
PETER TABOADAのRO膜式造水装置の一番の特長は、造水量が1.8~200m3/dayと非常に幅広い製品ラインナップを取り揃えていることである。本船の清水運用に合わせて最適な容量の造水装置の選定が可能である。
またコンパクトモデルのSWYシリーズ(1.8~20m3/day)はRO膜式造水装置ユニットと前処理設備(マイクロフィルター、サンドフィルター、海水供給ポンプ)が分離しているため、限られた船内スペースに設置しやすい設計となっているので、新造船だけではなく、就航船にも容易に設置することができる。
一方、PETER TABOADAはスペインのメーカーであり、決して日本で馴染みのあるヨーロッパのメーカーではない。しかし、RO膜式造水装置の心臓部となるRO膜は安心の日本製で日東電工のメンブレンを採用している。また、高圧ポンプにはアメリカのCAT Pumps社のプランジャーポンプを採用しており、高い耐久性とメンテナンス性が評価されている。
製品ラインナップ(一部抜粋)

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モデル名 |
生産水量 |
サイズ(L×W×H) |
|---|---|---|
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SW-Y 20/34 |
3.4 m³/day |
1205×365×725 |
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SW-Y 40/50 |
5 m³/day |
1280×395×750 |
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SW-Y 130/150 |
15 m³/day |
1375×580×1200 |
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SW 300 |
30 m³/day |
2800×950×1900 |
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SW 1000 |
100 m³/day |
3890×1200×2150 |
ハイブリット造水設備環境の提案
RO膜式造水装置は蒸発式造水装置に取って代わるものではない。重要なのはそれぞれの特性を活かして、より良い造水設備環境を整えていくことである。だから私たちは既存の蒸発式造水装置にRO膜式造水装置を加えたハイブリット造水設備環境を提案したい。

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RO膜式造水装置 |
蒸発式造水装置 |
|---|---|
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蒸発式造水装置はエンジンの排熱量を超えた量の造水はできないので、不足分をRO膜式造水装置で補う。 |
純度の高い水(純水)を精製できるので、ボイラー水として使用する。 |
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長期停泊時、蒸発式造水装置を運転できない時に乗組員の生活用水としてRO膜式造水装置で造水する。外航船は4~5m3/dayが一つの目安。 |
エンジンの排熱で造水できるので、航海中であれば造水コストが掛からない。航海中にどんどん造水する。 |
ケミカルタンカー タンククリーニング用清水として
ケミカルタンカーはタンククリーニング用に大量の清水を必要とする。荷役が多ければ航海時間が短く、蒸発式造水装置で造水する十分な時間を確保できない。
現状、足らない分の清水は寄港地で補水することで補っているが、清水の購入費用も水だからといって安い訳ではない。PETER TABOADA製のRO膜式造水装置を導入されたケミカルタンカーのお客様からは、半年から1年程度で装置の元を取れるとのことであった。更にホルムズ海峡の様な時でも、乗組員の生活用水確保もできるので、ケミカルタンカーにおいては導入のメリットが大きいとのことであった。
まとめ
船舶の清水確保は、通常運航時だけでなく、予期せぬ停泊、長期沖待ち、航路制限、補給遅延、地政学リスクへの備えとしてもその重要性を増している。
ホルムズ海峡をめぐる昨今の情勢は、船舶が常に予定どおり入出港・補給できるとは限らないことを改めて示している。海上での待機が長引けば、生活用水の確保は乗組員の船内活動を維持するうえで大きな課題となる。
PETER TABOADAのRO膜式造水装置は、熱源に依存せず、エンジン停止中でも造水できる点で、従来の蒸発式にはない強みを持つ。さらに、価格面での優位性や生産水量を調整しやすい柔軟性により、船種や運航形態に合わせた導入が可能である。
長期沖待ちや補水遅延への備えとして、また本船の水供給リスクを低減する設備として、PETER TABOADAのRO膜式造水装置は有効な選択肢の一つである。
ホルムズ海峡情勢のように、予定外の沖待ちや長期停泊が発生すると、船内の生活用水確保は乗組員の生活環境に直結する重要な課題となる。
だからこそ、私たちは既存の蒸発式造水装置に、PETER TABOADAのRO膜式造水装置を加えた「ハイブリッド造水設備環境」を提案したい。航海中は蒸発式造水装置で高純度の清水を効率よく造水し、停泊中や清水不足時にはRO膜式造水装置で生活用水を確保する。この二つを組み合わせることで、通常運航時の効率性と、非常時の備えを両立することができる。
これからの船舶には、一つの造水方式に頼るのではなく、状況に応じて清水を確保できる柔軟な設備環境が求められる。「ハイブリッド造水設備環境」は、本船の清水リスクを低減し、乗組員の安心と安定した船舶運航を支える有効な選択肢である。
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