年頭所感
適切なリスク管理を通じてAIの価値を最大化する取組である「AIガバナンス」があたりまえのものとして定着した社会の実現をめざす「一般社団法人AIガバナンス協会」(本部:東京都中央区、代表理事:生田目雅史、羽深宏樹、大柴行人)より、2025年の年頭にあたりご挨拶と所感を申し上げます。
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
旧年よりAIガバナンス協会(AIGA)の活動にご支援とご理解を賜り、心より御礼申し上げます。
2024年10月、AIGAは任意団体から一般社団法人へと移行しました。一般社団法人化に際して発表したミッションステートメントでは、「『AIガバナンス』があたりまえのものとして定着した社会」の実現を掲げ、私たちの活動を社会の幅広いステークホルダーとともに進めていくという方針を改めて確認しています。業界やAIのバリューチェーンをまたがって80社近くの正会員企業及び7名の有識者会員にご参画いただいているAIGAは、今後協会の活動基盤をより強固なものとし、AIガバナンス実装の輪を広げていきます。
2024年は、多様な分野で生成AIの本格的な実装が進み、社会におけるAIの存在感が一段と高まった年でした。生成AIはこれまでの情報処理や単純な業務支援の枠を超え、意思決定や価値創造のプロセスに深く組み込まれるようになりつつあります。たとえば顧客接点の自動化・効率化、自然言語を含むデータ分析の高度化、クリエイティブなコンテンツの作成、AIエージェントの活用など、ユースケースは様々な分野に広がっており、多くの企業がその事業計画においてAIによる価値創造を位置付けています。AIは単なる一技術を超え、社会や産業の変革を牽引する存在へと進化しているといえるでしょう。
一方で、この技術がもたらす様々な副次的効果も認識されるようになりました。AIに関わる主体は、偽情報・誤情報や個人情報・著作権をめぐる懸念、システムの安全性への影響、AIのバイアスに基づく差別、悪用といった様々な課題について注視していく必要があります。技術革新の恩恵を引き出すためには、こうしたリスクともしっかりと向き合い、対応策を議論していかなければなりません。
こうした背景もあり、2024年はAIのリスク管理に関する政策や法整備の検討が進んだ1年でもありました。日本では総務省・経済産業省より「AI事業者ガイドライン1.0版」が公表され、生成AIほか各種AI技術の導入や運用に関する基本方針が示されたことに加え、AIをめぐるさらなる制度整備の議論や、個人情報保護法などの関連領域の政策的な議論が本格化しました。また世界的にも、EUにおけるAI法の成立、米国における州レベルでのAI規制の進展など、様々な動きが起きています。
上記のような社会の変化を受けてAIGAは、AIガバナンスの社会実装を推進するためのハブとして、様々な政策文書等で示された実現すべき価値=”What”を具体的な実践=”How”へと落とし込むため、大きく3つの柱で活動を推進してきました。
まず、AIガバナンスの実務知見の蓄積とそれを踏まえたスタンダードづくりです。AIGA会員による「AIガバナンス行動目標」の自己宣言を皮切りに、諸業界を代表する企業が毎月のAIガバナンス研究会で取組紹介・議論を行い、そうした知見をもとにAIガバナンスの実装状況を自己診断するツール「AIガバナンスナビ」の開発・運用を開始しています。
2点目は、広い会員基盤と上記の実践知を活かした政策提言です。前述の「AI事業者ガイドライン1.0版」をはじめ様々な政策立案の過程に参加してきたほか、自由民主党や内閣府AI制度研究会、個人情報保護委員会等での政策検討にも貢献すべく、機動的な意見集約と政策提言を行ってきました。
3点目は、領域を横断した知見交流を生むためのAIガバナンス関係者のコミュニティづくりです。国内外のポリシーメーカーやAIセーフティ・インスティテュートをはじめとする関係機関、関連分野の研究者など、様々なバックグラウンドをもつ関係者の皆様と共同でのイベントを積極的に開催し、マルチステークホルダーでの議論の促進に努めてきました。
そして2025年、AIGAはAIガバナンスの社会実装をより具体的に推し進めるため、以下の施策を特に重点的に展開していきたいと考えています。
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AIガバナンスナビの本格運用とベストプラクティスの積み上げ:2024年に開発・運用に着手した「AIガバナンスナビ」を本格運用に移行し、AIガバナンスをめぐる現場の課題のシステマティックな把握と改善のサイクルを確立します。また、その中で各業界におけるAIガバナンス実装のベストプラクティスを集約し、そこから得られる知見を整理・発信していきます。
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AI・データ関連制度の検討への貢献:AI制度やデータ関連法制の今後の方向性をめぐる議論や既存のガイドラインの見直し等の政策的な議論へ参画し、AIガバナンスをめぐる最先端の実践的な知見をポリシーメーカーに伝えるハブとしての機能を一層強化します。
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国内外のより多様なステークホルダーとの議論:国内の他団体や大学、政府関係機関等との知見交流をこれまで以上に深め、AIガバナンス構築における産官学でのコラボレーションを推進します。また、国際的なフォーラムへの参加や海外のステークホルダーとの議論の機会も積極的に確保し、日本のガバナンスモデルを世界に向けて発信するとともに、国際的な制度協調への貢献も目指します。
これらの取組を、政策や経営レベルで設定される理念的なゴールと現場での具体的なガバナンス実務の双方に常にキャッチアップしながら推進することで、日本におけるアジャイルなガバナンスの実装をリードしていきます。
本年も「AIガバナンス」があたりまえのものとして定着した社会の実現に向け、皆さまと共に歩んでまいりたいと思います。末尾となりますが、皆さまのご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。2025年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
AIガバナンス協会
代表理事 生田目 雅史
代表理事 羽深 宏樹
代表理事 大柴 行人
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