沖縄県名護市、民間救急による転院搬送を10月1日開始 消防と連携する全国初の体制

消防本部が運用を管理し、民間救急が医師とともにメディカルコントロール体制を整備。内閣府「令和8年度北部振興事業」の実証事業として、一般社団法人OPHISが設計・準備を支援。

一般社団法人OPHIS

沖縄県名護市(市長:渡具知 武豊)は、2026年10月1日、民間救急が病院間の転院搬送を担う「官民連携型救急搬送体制実証事業」の運行を開始しました。運行はフィルタス株式会社(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:相川 なほ子)が担い、名護市消防本部による運用管理と、同社が医師とともに整備したメディカルコントロール体制のもとで搬送の質を担保します。この二つの管理のもとで民間救急を自治体の救急医療体制に組み込む仕組みは、全国で初めてです(※1)。

一般社団法人OPHIS(所在地:東京都世田谷区、代表理事:匂坂 量)は、所属するメンバーが総務省「地域活性化起業人」として名護市消防本部に入り、2025年4月から本事業の設計と準備を支援してきました。

名護市消防本部、フィルタス株式会社、一般社団法人OPHISのメンバー(名護市消防本部にて)

■事業の概要

名護市(名護市消防本部)を事業主体とする実証事業で、2026年6月に内閣府の令和8年度北部振興事業に採択されました。対象は次の2種類の転院搬送です。

  1. 名護市内の医療機関から、沖縄県内の医療機関へ転院する患者

  2. 離島からヘリコプターで名護市内のヘリポート等に運ばれ、医療機関へ搬送する患者

いずれも医師が転院を必要と判断し、搬送中に救急救命士による観察等が必要と認めた患者に限ります。緊急性が極めて高い患者は、これまでどおり消防救急車が対応します。

運行体制

  • 車両:【1台】

  • 受付時間:【8:30〜20:00(年中無休)※ 沖縄県中部への搬送は18:30・南部は18:00まで】

  • 従事者:【民間救急の専門スタッフ2名体制(救急救命士の有資格者を含む)】

  • 患者・医療機関の費用負担:【なし】

  • 依頼方法:医療機関から【フィルタス社の専用窓口】へ依頼

■背景:救急出動の増加と、民間救急の活用を進める政策の方針

総務省消防庁「令和7年版 救急・救助の現況」によると、2024年の救急出動件数は771万件を超えて3年連続で過去最多となり、うち転院搬送は58万1,928件(前年比4.6%増)でした。転院搬送の多くは一刻を争うものではありませんが、ほかに搬送手段がない地域では、緊急事案に備えるべき消防救急車が担ってきました。2025年6月には総務省消防庁と厚生労働省が転院搬送に関する通知を9年ぶりに改訂し、緊急性の乏しい転院搬送に民間の搬送事業者や病院救急車を活用するよう求めています。2026年度の診療報酬改定でも、救急自動車以外を用いた転院搬送が評価の対象に加わりました。

沖縄県北部は消防の管轄面積が広く離島を抱え、救急病院は名護市内の2施設に限られます。救命救急センターは中部・南部にあるため、専門的な治療のための転院搬送が日常的に発生しています。名護市消防本部では2023年に全救急出動の約11%を転院搬送が占め、同年の全国平均(7.3%)の約1.5倍でした。2028年度には公立沖縄北部医療センターの開院が予定されており、それまでに持続可能な転院搬送体制を整える必要があります。

■本事業の3つの特徴

1. 市の委託事業として、民間救急を地域の救急医療体制に組み込む

これまで民間救急は、個々の医療機関や患者から依頼を受けて搬送を行ってきました。本事業では名護市が民間救急に業務を委託し、転院搬送の担い手として地域の体制に位置づけます。医療機関にとっては、救急救命士の同乗が必要な転院搬送を、消防救急車や自院の車両以外に依頼できるようになります。消防救急車を緊急性の高い事案に振り向け、救急車の到着の遅れを防ぐことが狙いです。

2. 消防の運用管理と、民間救急のメディカルコントロール体制で質を担保する

メディカルコントロール体制とは、医師が救急救命士の活動に指示・助言を行い、事後検証や教育を通じて活動の質を医学的に保障する仕組みです。本事業では、フィルタス社が医師とともにこの体制を整備し、名護市消防本部が研修等を通じて運用を管理します。搬送中に容態が急変した場合は、119番通報により消防へ引き継ぎます。

患者搬送車内(左)と名護市消防本部ヘリポート(右)での研修の様子

3. 効果を測定し、事業改善やさらなる発展へつなげる 

本事業では、運用の立ち上がりから最終的な成果まで、段階を追って効果を検証します。初期は、医療機関の利用状況、転院搬送の所要時間等を測定し、安全で円滑な運用ができているかを確かめます。あわせて、消防救急車と民間救急それぞれの稼働状況を継続して把握します。最終的な成果としては、一定期間のデータを蓄積したうえで、市内の救急事案における消防救急車の現場到着時間への効果を検証します。

■実施体制と搬送の流れ

関係機関の役割と搬送の流れ

名護市がフィルタス社に業務を委託し、名護市消防本部が運用を管理します。転院元の医師の依頼を受けて民間救急が出動し、医師の指示・助言を受けながら転院先へ搬送します。OPHISは、転院搬送データの分析にもとづく運行体制の設計、効果検証の設計と分析、関係機関との調整を担っています。

■今後の展開と、他地域での導入について

名護市での実証を起点に、2027年度以降は沖縄県北部の他地域への展開を検討しています。転院搬送は市町村の境界を越えて発生するため、圏域として一体の体制づくりが必要です。

本事業の財源である北部振興事業は沖縄県固有の制度ですが、公的機関の委託による民間救急の位置づけ、民間救急によるメディカルコントロール体制の整備、消防による運用管理という組み合わせは、他地域でも応用を検討できます。導入には、救急救命士が従事できる民間救急等の事業者、体制構築に協力できる消防本部、依頼側となる医療機関の協力が必要です。OPHISは実証の結果と設計の過程を、同様の課題を抱える自治体・消防本部に向けて公開していきます。

■関係者コメント

名護市消防本部 消防長 照屋 貢

転院搬送は、地域の医療を支えるために欠かせない一方で、地域機関と連携し適切に対応していくことが大変重要となります。本事業では、民間救急の皆さまに消防と連携した質の管理のもとで転院搬送を担っていただくことで、市民の皆さまが必要なときに救急車を利用できる体制を守っていきます。消防本部としても、研修等を通じて民間救急の皆さまと連携し、安全な運行を支えてまいります。

フィルタス株式会社 代表取締役 相川 なほ子

このたび、全国初となる官民連携型の新たな転院搬送体制が名護市で運行開始することを、大変意義深く受け止めています。医療機関で培ってきた救急救命士活用の専門性を、救急現場にとどまらず地域医療を支える力へと広げることは、次代を担う優れた人材の育成にもつながると確信しています。今後も、医療機関・行政・消防との連携を一層深め、地域全体で医療を支える持続可能な仕組みづくりに挑戦してまいります。名護市から始まるこの取り組みを、誰もが安心して暮らせる社会の実現に資するモデルへと育て、全国へ発信してまいります。

一般社団法人OPHIS 代表理事 匂坂 量

名護市消防本部の皆さまと2025年4月から重ねてきた検討が、ついに運行開始を迎えました。本事業は、民間救急を地域の救急医療体制に組み込み、消防と医師による管理・監督のもとで質を担保するという、全国で初めての取り組みです。転院搬送の負担は全国の消防が抱える共通の課題です。実証で得られる知見を丁寧に検証し、沖縄県北部、そして同じ課題を抱える全国の地域に展開できるモデルへと発展させていけるよう、引き続き関係機関の皆様と力をあわせて取り組んでまいります。

■本取り組みに関するお問い合わせ

同様の課題を抱える自治体・消防本部、医療機関、報道機関の皆さまからのご相談を歓迎いたします。

・一般社団法人OPHIS 担当:前原 俊彦 ・Email:info@ophis-ems.org ・TEL:090-1659-1864

■注記

※1 当法人調べ(2026年9月時点)。自治体や省庁等の公開資料、民間の搬送事業者の公開情報を調査した範囲で、消防の管理と民間救急が整備する医師の管理・監督体制のもとで民間救急が転院搬送を担う仕組みは確認されていません。

■参考

・北部振興事業:https://www8.cao.go.jp/okinawa/6/64.html

・地域活性化起業人制度:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/bunken_kaikaku/02gyosei08_03100070.html

・転院搬送における救急車の適正利用の推進について(令和7年6月30日、総務省消防庁・厚生労働省):https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/250630_kyuuki_01.pdf

■団体概要

一般社団法人OPHIS(オピス)は、超高齢化社会における救急搬送体制の持続可能化を目指す非営利団体です。救急搬送制度改革事業、調査研究事業、救急システム支援事業の3つを柱に、「救える命が救われる社会」の実現に取り組んでいます。

団 体 名: 一般社団法人OPHIS(オピス)

代表理事:匂坂 量(国士舘大学防災・救急救助総合研究所 講師、博士(救急救命学)、救急救命士)

設 立 日: 2024年1月

所 在 地: 〒156-0043 東京都世田谷区松原3丁目27番10号

ホームページ : https://ophis-ems.org

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会社概要

一般社団法人OPHIS

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URL
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業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都世田谷区松原 3-27-10
電話番号
-
代表者名
匂坂 量
上場
未上場
資本金
-
設立
2024年01月