「大学における障害学生の受け入れ状況に関する調査2024」結果(受験編概要)について
自らも大学で学んだ経験をもつ障害当事者の手によって編集・発行された、日本で唯一の障害のある受験生のための大学案内より、障害学生の在籍状況、受験可否・受験時条件、受験時の配慮の概要についての状況
このプレスリリースで紹介しているデータのほとんどの項目は、大学案内障害者版 Web情報サービスにて公開しています。https://www.nscsd.jp/Activities/Johoteikyo/
調査の概要
・本調査は、障害学生の受験に関するさまざまな障壁の中の一つである進学情報を得る負担を少しでも軽減し、障害者の自立と社会参加を促進するための情報提供を目的に 1994 年に開始され、2024年の調査で30年目、のべ 16回目となります。障害をもつ受験生や大学で学んでいる障害学生が必要としている情報について質問や選択肢を作成し実施しています。
・当センターでは、本調査に対する回答を「大学としての総意である正確な事実である」という前提で『大学案内2026障害者版』(書籍) および「大学案内障害者版 Web情報サービス」を通じて、大学ごとに情報提供する目的のものです。
調査期間
2024年7月~2024年12月
調査機関 一般社団法人全国障害学生支援センター(自社調査)
調査対象
調査対象は2024年4月現在の全国すべての、学校教育法に基づく大学(学生の募集を停止している大学を除く)、放送大学、および文部科学省所管外大学校。821校(大学 811 校・大学校 10 校)の全数調査
調査方法
当センターのWebサイトにログインし、回答入力画面に回答を記入いただきました。
回答状況

種別 |
調査対象数 |
回答数 |
回答率% |
前回比 |
大学① |
811 |
380 |
46% |
▲2pt |
国立 |
85 |
41 |
48% |
▲1pt |
公立 |
101 |
61 |
60% |
▲5pt |
私立 |
625 |
278 |
44% |
▲1pt |
大学校② |
10 |
1 |
10% |
opt |
合計(①+②) |
821 |
381 |
46% |
▲1pt |
・回答数は381校で、回答率は46%でした。前回調査より5校減りました。
※回答率とは、ある項目の回答数を回答大学数381で割った数(率・%)です。
※前回比とは、前回と今回の回答率の差(ポイント・pt)です。
※表中の▲は「マイナス」の意味です。
調査結果について
このプレスリリースでは調査結果より特徴的なものを抜粋しています。結果の全体は下記のリンクよりご覧ください。(情報誌・障害をもつ人々の現在127号 ISSN 1883-1532)
https://www.nscsd.jp/Activities/Johoshi/Article/127/Survey.aspx
在籍状況について

障害種別 |
大学(校) |
率 |
前回比 |
人数 |
増減 |
平均(人) |
視覚障害 |
135 |
35% |
1pt |
374 |
↑ |
2.8 |
聴覚障害 |
192 |
50% |
1pt |
913 |
↓ |
4.8 |
盲ろう |
3 |
1% |
0pt |
3 |
↑ |
1.0 |
肢体障害 |
192 |
50% |
0pt |
504 |
↓ |
2.6 |
発達障害 |
266 |
70% |
3pt |
3668 |
↓ |
13.8 |
精神障害 |
279 |
73% |
12pt |
6103 |
↑ |
21.9 |
知的障害 |
47 |
12% |
3pt |
98 |
↑ |
2.1 |
内部障害 |
217 |
57% |
▲1pt |
2673 |
↑ |
12.3 |
重複障害 |
162 |
42% |
4pt |
1530 |
↑ |
9.4 |
その他の障害 |
140 |
37% |
6pt |
807 |
↑ |
5.8 |
種別不明 |
34 |
9% |
2pt |
208 |
↑ |
6.1 |
合計 |
314 |
82% |
3pt |
16881 |
↑ |
53.8 |
・障害学生の在籍がある大学は307校に達し、回答数の80%で前回比2ポイント増えています。在籍者の総数が1万5千人を超えました。また、障害学生が在籍する一大学あたりの障害学生の数が、平均51.7人であり、前回調査と比べさらに増えました。
受験可否について
受験可否は当センターが独自の定義に基づいて調査しています。

受験可 |
大学に障害学生から問い合わせがある前の段階(まだ大学に障害学生から問い合わせがない段階)で、該当する障害種別の障害学生を受け入れることを決定している状態。 |
受験可否未定 |
大学に障害学生から問い合わせがあり、該当する障害種別の障害学生の状況をみて、受験をみとめるかどうか判断している状態。 |
今回の受験可否の調査結果および過去からの推移は以下の通りです。

受験可否 |
可 |
未定 |
||||
障害種別 |
数 |
率 |
前回比 |
数 |
率 |
前回比 |
視覚 |
163 |
43% |
0pt |
219 |
57% |
0pt |
聴覚 |
172 |
45% |
0pt |
210 |
55% |
0pt |
肢体 |
184 |
48% |
0pt |
198 |
52% |
0pt |
発達 |
182 |
48% |
▲2pt |
200 |
52% |
2pt |
精神 |
172 |
45% |
▲1pt |
210 |
55% |
1pt |
内部 |
175 |
46% |
0pt |
207 |
54% |
0pt |
知的 |
140 |
37% |
1pt |
242 |
63% |
▲1pt |
受験可と回答した大学の率の推移

・数年続いてきた受験可の減少と可否未定の増加はこれまでほど顕著ではなくなり、発達と精神以外は変化が見られませんでした。
・障害別でみると、知的障害が140校、視覚障害が163校で少ない状況が続いています。
受験可否未定理由(精神障害)
今回のプレスリリースでは精神障害を例に挙げました。

数 |
率 |
前回比 |
|
事前協議後検討 |
200 |
52% |
0pt |
統一見解なし |
35 |
9% |
1pt |
キャンパス設備の問題 |
3 |
1% |
0pt |
教職員側の態勢未整備 |
9 |
2% |
0pt |
試験ノウハウがない |
12 |
3% |
0pt |
合格しても受け入れられない |
0 |
0% |
0pt |
その他 |
6 |
2% |
1pt |
・受験可否未定の大学にその理由を尋ねてみると、どの障害種別でも「事前協議後に対応を検討するから」がもっとも多くなっています。障害学生が「事前協議」で受験出来るかどうかが左右されるという実態は依然として変わっていません。
・受け入れ未定の理由としては「統一した見解がまとまっていない」「試験のノウハウなし」「教職員の体制未整備」が多いです。大学全体の相違や、試験・人的サポートが、受験時の大学側の課題といえます。
・「合格しても受け入れられない」のような事実上の受験不可ともいえる選択肢への回答が、視覚で3校、聴覚で2校、発達で2校、内部・知的で1校となっており、若干減りましたがこうした姿勢が残っていることは問題です。
受験時の条件
今回のプレスリリースでは肢体障害を例に挙げました。

数 |
率 |
前回比 |
数 |
率 |
前回比 |
||
事前相談 |
203 |
53% |
1pt |
大学は事故責任なし |
6 |
2% |
0pt |
診断書の提出 |
127 |
33% |
▲1pt |
誓約書の提出 |
3 |
1% |
0pt |
障害者手帳コピーの提出 |
89 |
23% |
▲2pt |
入学後大学で配慮なし |
1 |
0% |
0pt |
新設備設置・購入なし |
14 |
4% |
0pt |
解答不可能な問題の減点 |
0 |
0% |
0pt |
試験変更なし |
15 |
4% |
1pt |
健康診断受診 |
0 |
0% |
0pt |
入試時自分で身辺処理 |
24 |
6% |
0pt |
入学後は自分で身辺処理 |
17 |
4% |
0pt |
入学後の補助者 大学は関与なし |
7 |
2% |
0pt |
その他 |
26 |
7% |
0pt |
・肢体障害の受験時条件では「入試時自分で身辺処理」が24校、「入学後は自分で身辺処理」が17校、「入学試験の形式変更なし」15校、「新設備設置・購入なし」が14校となっています。
受験時の配慮の概要

配慮あり |
率 |
前回比 |
|
視覚障害 |
272 |
71% |
3pt |
聴覚障害 |
281 |
74% |
2pt |
肢体障害 |
282 |
74% |
3pt |
発達障害 |
244 |
64% |
1pt |
精神障害 |
234 |
61% |
2pt |
内部障害 |
241 |
63% |
2pt |
知的障害 |
214 |
56% |
3pt |
・受験時配慮については、どの障害種別も「配慮あり」の前回比が増加しています。・昨年4月から私立大学を含めたすべての大学で、合理的配慮が義務化されたことが影響していると考えられ、今後のより一層の取り組みが期待されます。・精神障害では「配慮あり」が2ポイント増加しており、このことは評価できます。・視覚、肢体、知的の前回比が3ポイントと最も高いです。・聴覚、精神、内部の前回比は2ポイントです。特に前回調査で「配慮あり」が大きく減った内部障害も今回伸びたことは評価できます。
受験時配慮ありの割合の推移

大学案内障害者版 Web情報サービス
このプレスリリースで紹介しているデータのほとんどの項目は、大学案内障害者版 Web情報サービスにて公開しています。2024年4月から当センターの「お客様アカウントサービス」でアカウントを作っていただくと、調査の各質問の選択肢ごとに、回答した大学の数(統計情報)が表示されます。
調査結果の今後の分析
毎年の調査結果につきましては当センター機関誌『情報誌・障害をもつ人々の現在』(ISSN 1883-1532)にて公表しています。今回の分析は127号(2025年3月30日発行)に掲載しております。
今後の予定としましては、7月1日発行の機関誌では、受験時配慮の詳細についての分析を掲載する予定です。また10月・12月も授業での配慮等の調査分析を掲載予定です。また、本年度より機関紙がオンラインにてどなたでもお読み頂けることになりました。
『情報誌・障害をもつ人々の現在』(ISSN 1883-1532)
https://www.nscsd.jp/Activities/Johoshi/

『大学案内2026障害者版』

本調査の大学ごとの回答の詳細は『大学案内2026障害者版』で公表しております。書誌情報の概要は以下の通りです。
2025年2月10日発売 A4版630ページ
定価 定価6,300円(税込6,930円) 障害学生割引3,150円(税込3,465円)
ISBN978-4-9911821-5-3
※2023年10月のインボイス制度導入に伴いより当センターは課税業者となりました。
インボイス登録番号T9021005012549
書籍の詳細は前回のプレスリリースをご覧ください。
PRTimesプレスリリース「新刊『大学案内2026障害者版』発売」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000112752.html
※当センターについての概要、過去の受賞歴なども掲載されています。
本件お問い合わせ先
一般社団法人全国障害学生支援センター
所在地:〒252-0318 神奈川県相模原市南区上鶴間本町3-14-22 田園コーポ3号室
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代表理事 殿岡翼 携帯:080-2069-7251
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