abt、ネオニコ系農薬問題プログラムの2026年度助成4件を決定──科学と市民の協働で食と生態系の未来を問う
公表ページ:https://www.actbeyondtrust.org/info/22177/

2011年度の開始から15年、通算91件・約1億2,000万円の支援実績。今年度は霞ヶ浦・秋田・八重山・家庭内環境を対象とした4件の調査研究・市民活動を採択。
公益社団法人アクト・ビヨンド・トラスト(所在地:東京都世田谷区、代表理事:星川淳、以下「abt」)は、2026年度「オーガニックシフト部門 ネオニコチノイド系農薬問題プログラム」の採択企画4件を決定しました。EUが2020年までに4種のネオニコチノイド系農薬を使用禁止とし、その後も規制強化の動きを続ける一方、日本は再評価プロセスの最中にあり、規制強化への見通しは依然として不透明です。こうした「世界との差」が広がる中、abtは科学的調査と市民活動の双輪で「食と生態系の未来」を問い直す取り組みを支援します。
■ 背景:EUは規制強化、日本は再評価の最中
ネオニコチノイド系農薬(IRAC分類4A)は、昆虫の神経系に作用する殺虫剤です(※1)。水溶性で植物全体に行き渡る浸透移行性の特徴を持ち、さまざまな作物に広く使用される一方、標的害虫以外の生物を含む生態系への悪影響(※2)や、ヒトへの健康影響の可能性(※3)が指摘されてきました。
EUでは2020年までに4種のネオニコチノイドを使用禁止としたほか、そのうちの2種(クロチアニジン、チアメトキサム)につき、日本からの輸入品を含む食品残留基準値を検出限界値以下とする規制強化を2026年に開始しました(※4)。日本においても農薬再評価の優先対象となり、農林水産省・食品安全委員会・環境省で評価作業が進んでいますが(※5)、再評価の進め方について日本弁護士連合会が意見を表明する(※6)など、規制強化への見通しは不透明な状況が続いています。
農薬問題は、食の安全や人の健康にとどまりません。標的害虫以外のさまざまな生物を含む生態系や生物多様性に関わり、さらに、農薬の登録や残留基準値設定のプロセスが透明かつ公正であるか、科学的知見が適切に反映されているかといった、社会正義の観点からも問われる課題です。abtは「beyond ecology(エコロジーの、その先へ)」をビジョンに掲げ、この複合的な課題に継続して取り組んでいます。
■ 2026年度助成プログラム概要

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プログラム名 |
オーガニックシフト部門 ネオニコチノイド系農薬問題プログラム |
|---|---|
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助成対象期間 |
2026年度 |
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採択件数 |
4件 |
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総助成額 |
296万560円 ※配信時までに確定額を記載 |
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通算実績 |
2011年度より15年間、通算91件・41団体・約1億2,000万円 |
■ 事務局総評
本助成では、ネオニコチノイド系農薬の低濃度影響について、なお不明な点があり慎重な検証が必要であることを踏まえ、河川・湖沼・水田・家庭内など多様な環境を対象とした調査研究を重視しました。将来顕在化しうる課題を先取りして捉えようとする姿勢を評価しています。あわせて、地域を巻き込んだ学び合いや実践を通じ、ネオニコフリーやオーガニックへの移行を具体的に展望できる、複合的で着実な取り組みも評価しました。科学的知見を用いながら多様な主体と協働できる、地域づくりのモデルとなることを期待しています。
■ 選考委員コメント

古瀬 繁範(特定非営利活動法人 地球と未来の環境基金 理事長)
「予算の制約がある中で、取り組む内容がより本助成趣旨に沿っていることが採択の鍵になったと思います。採択に至らなかった皆様の取り組みも高く評価しています。安心安全な社会づくりに向けて、一緒に歩んでいきましょう。」

宮田 秀明(摂南大学 名誉教授)
「2026年度の採択企画には、注目すべきポイントが揃っています。中里亮治氏の企画ではユスリカ種における慢性毒性の多様性、農民連食品分析センターではダストを介する室内汚染という着眼点、秋田の環境を考える県民の会では水質等の汚染実態の究明とそれを活用した普及活動、城本啓子氏では八重山地域水田における汚染実態の新規究明──。いずれも、これまで十分に可視化されてこなかった領域に光を当てる挑戦です。」

星川 淳(公益社団法人アクト・ビヨンド・トラスト 代表理事)
「ネオニコチノイド系農薬を含む浸透性殺虫剤のリスクを限りなくゼロに近づけるという目的地に向けて、一歩でも前に進むことに役立ち、かつ活動の成果が一般社会にも伝わりやすい企画を高く評価しました。」
■ 2026年度 採択企画一覧
2026年度の採択4件は、いずれも過去に本プログラムで採択された個人または団体による継続・発展企画です。abtが長期的に伴走してきた調査研究と市民活動の集大成が含まれています。

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代表者/団体 |
企画名 |
助成回次 |
助成金額 |
|---|---|---|---|
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中里 亮治 |
霞ヶ浦(北浦・西浦)湖内のネオニコチノイド系農薬およびその代替農薬濃度の季節変化ならびに当該農薬類の暴露がユスリカ類幼虫の死亡率や羽化障害におよぼす影響に関する研究 |
2年目(前回:2025) |
900,000円 |
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一般社団法人農民連食品分析センター |
室内ほこりに含まれるネオニコチノイド系農薬調査 |
3年目(2018, 2022) |
360,560円 |
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秋田の環境を考える県民の会 |
秋田におけるネオニコ汚染実態の定量的解明と環境・食の安全基盤構築の県民的展開(3) |
3年目(2024, 2025) |
1,200,000円 |
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城本 啓子(JSPS特別研究員) |
「世界自然遺産の島」の水田における各種浸透性農薬の検出状況とその使用実態の解明 |
3年目(2024, 2025) |
500,000円 |
■ 各企画の概要と継続性
・ 中里 亮治 氏(2回目):昨年度の霞ヶ浦(北浦)におけるオオユスリカ調査を発展させ、季節変化と生物影響を横断的に検証する研究。
・ 農民連食品分析センター(3回目):過去には農業従事者の尿中濃度や市販国産鶏卵の残留濃度など、独自の残留調査を実施。今回は家庭内のほこりを対象とする室内汚染の究明に挑む。
・ 秋田の環境を考える県民の会(3回目):水道水や日本酒中のネオニコ残留濃度調査、自主的な学習会開催などを積み重ねてきた3年間の集大成。調査結果を活用した普及活動も展開。
・ 城本 啓子 氏(3回目):八重山地域の水田における環境DNA分析とネオニコ濃度を組み合わせ、浸透性農薬と生物多様性の関係を解明する意欲的な研究。
■ 参考情報(出典)
※1 クロップライフジャパン「IRAC作用機構分類体系 第11.3版」(2025年11月)
※3 平久美子「ネオニコチノイド系殺虫剤のヒトへの影響」Jpn. J. Clin. Ecol. 2012;21:24-34.
※5 食品安全委員会 食品安全セミナー「農薬の再評価に係る食品健康影響評価の進展」(2025年4月)
※6 日本弁護士連合会「農薬再評価における公表文献の収集、選択及び分類に対する意見書」(2024年11月)
■ 資料のご案内(メディア向け)
本プレスリリースには、メディア関係者向け共有資料として添付しています。取材・記事化の際にご活用ください。
■ 公益社団法人 アクト・ビヨンド・トラスト(abt)について
公益社団法人アクト・ビヨンド・トラスト(abt)は、「beyond ecology(エコロジーの、その先へ)」をビジョンに掲げ、環境問題を社会構造や公正さの視点から捉え、市民による実践を支えてきた独立した民間助成基金です。設立以来、資金提供にとどまらず、活動の発掘・選考・専門家連携・伴走支援まで行ない、草の根の挑戦を継続的に支えてきました。2025年度までに通算236件・101団体・約2.76億円を助成。2025年に公益社団法人として認定されました。
ウェブサイト:https://www.actbeyondtrust.org/
■ 本件に関するお問い合わせ先
公益社団法人アクト・ビヨンド・トラスト(abt)
担当:北畠 拓也
Email:kitabatake@actbeyondtrust.org
〒154-0005 東京都世田谷区三宿1-14-8 三宿バドスクエア308
TEL:03-6665-0816(代表)
お問い合わせフォーム:https://www.actbeyondtrust.org/contact/
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