アボット、国内初となる心房と心室に留置するデュアルチャンバのリードレスペースメーカ「AVEIR™ DRシステム」の薬事承認を取得、心房と心室両方のセンシングとペーシングが可能に
デュアルチャンバリードレスペースメーカAVEIR™ DRシステムは、既存機種である心室用リードレスペースメーカAVEIR™ VRと今回追加された新機種である心房用リードレスペースメーカAVEIR™ ARの2本で構成されます。
AVEIR DRシステムは、独自の通信技術 i2i™テクノロジーにより心房と心室の拍動を生理的に同期させたペーシングを行います。
既にAVEIR VRをご使用中の患者さんは、追加でAVEIR ARを植込むことで、心房と心室を同時に管理するデュアルチャンバモードで動作するAVEIR DRシステムにアップグレードすることが可能です。
AVEIR ARは、国内初となる心房に留置して心房のセンシングとペーシング、両方を行うリードレスペースメーカです。単体での使用も可能です。
2024年10月3日―アボットメディカルジャパン合同会社 (本社:東京都港区、代表執行役員社長:千田 真弓、以下「アボット」)は、徐脈性不整脈の治療に用いられるリードレスペースメーカ「AVEIR™(アヴェイル)」の製造販売承認について、2024年9月27日に厚生労働省から一部変更承認を取得したことをお知らせいたします。これにより、新機種となる国内初の心房用リードレスペースメーカ「AVEIR AR」が追加されました。また、既存機種である心室用リードレスペースメーカ「AVEIR VR」と組み合わせた場合には、「AVEIR DRシステム」として心房と心室を生理的に同期させるデュアルチャンバペーシング治療を実現します。これはリードレスペースメーカ治療の適応範囲が広がることを意味し、より多くの患者さんが、従来型ペースメーカに比べて低侵襲で合併症リスクも低いとされる[1]リードレスペースメーカ治療を受けられるようになります。
ペースメーカの適応となる徐脈性不整脈の原因として、主に房室ブロック、洞不全症候群、徐脈性心房細動といった3つの病態があげられます。日本国内におけるペースメーカ適応患者数は年間約4.6万人[2]で、洞不全症候群と房室ブロックがその8割以上を占める[3]とされます。ペースメーカ治療では、患者さんの病態に応じてリードと呼ばれる電極を心房と心室それぞれに、または両方に留置します。また、患者さんの心拍をより精緻に適切に管理するには、心臓の自然な電気活動を感知する「センシング」と心臓に電気刺激を与えて心拍を促す「ペーシング」を適切に設定することが必要です。洞不全症候群や房室ブロックの患者さんの場合は、心房と心室の両方にリードを留置し、センシングとペーシングの両方を行うデュアルチャンバのペースメーカ(DDDモード[4])を使用することが一般的です。
近年では、リードがデバイス本体に一体化されたリードレスペースメーカの技術が登場し、患者さんの体への負担や合併症リスクの低減等が実現しています。一方で、アボットが2022年12月に提供を開始した心室に留置するリードレスペースメーカAVEIR VRは心室用であり、適応となる患者さんは主に徐脈性心房細動に限られていました。
アボットが今回新たに承認を取得したAVEIR DRシステムでは、新機種として追加された心房用リードレスペースメーカAVEIR ARと、既存の心室用リードレスペースメーカAVEIR VRを同時に植込むことで、心房と心室を生理的に同期させたデュアルチャンバのリードレスペースメーカ治療を提供します。AVEIR ARは、国内初となる、心房に留置してセンシングとペーシングの両方を行うことが可能なリードレスペースメーカです。2本のデバイスは、アボット独自の通信技術「i2i™テクノロジー[5]」によって心拍ごとに通信を交わし、精緻に連動されます。
さらにAVEIRは、患者さんの病態に応じた治療の選択肢(心房または心室への単独デバイス植込み、心房・心室の同時植込み)を柔軟に提供するために、単独デバイスでの治療後にもう片方のデバイス植込みによる追加治療(アップグレード)を行うことが可能なシステムになっています。具体的には、当初は心房のみ、または心室のみに単体でデバイスを植込んだ患者さんに対しても、後から追加でもう一方のデバイスを植込み、AVEIR DRシステムに変更することが可能です。
AVEIRが提供する、病態に応じた治療の選択肢の例:
治療オプション1: AVEIR AR単独使用からAVEIR DRシステムへのアップグレード
治療オプション2: AVEIR VR単独使用からAVEIR DRシステムへのアップグレード
東京女子医科大学病院 循環器内科 寄附部門教授である庄田 守男先生は、次のように述べています。「リードレスペースメーカ登場以来その恩恵を多くの患者さんが享受してきましたが、選択肢は心室ペーシング用デバイスだけでした。今回承認されたAVEIR DRにより、従来型である経静脈ペースメーカの機能を超小型心臓内植込みデバイスで代替できることになりました。また植込んだデバイスを摘出するための抜去専用カテーテルもすでに承認されていますので、高齢者以外の患者さんにも適用できる可能性があります。ペースメーカ治療分野においてゲームチェンジが行われるかもしれません。」
アボットのカーディアックリズムマネジメント事業部のジェネラルマネージャー 坪井 一晴は、次のように述べています。「リードレスペースメーカは、従来型ペースメーカよりも低侵襲でリードや皮下ポケットに関連した合併症リスクが軽減され、デバイス埋込の隆起等の見た目や腕の動きの制限を気にする必要がなくなるという利点も持っています。アボットは、治療を必要とする徐脈性不整脈患者さんのQOL向上のために、リードレスペースメーカ技術の開発に今後もより一層注力し、患者さん一人ひとりにとってより適切な治療の選択肢を提供すべく、努力をして参ります。」
なお、AVEIR DRシステムはその海外臨床試験において、医師による植込み成功率で98.3%を示しました。植込み後3か月時の心房と心室の同期成功率は98.2%を示し、様々な姿勢で平均95%以上の房室同期率を記録しています。
AVEIR(アヴェイル)について
従来型ペースメーカの約1/10のサイズのリードレスペースメーカとして、2022年12月に心室用のAVEIR VRの製造販売承認を取得。今回2024年9月の一部変更承認では、国内初となる心房用のペースメーカAVEIR ARが新機種として追加され、二つのデバイスを組み合わせて使用する場合にはAVEIR DRシステムとして承認されました。AVEIRは、専用の抜去カテーテルを用いて、心房および心室に植込まれたデバイスを摘出するための設計がなされています。また、植込み時に正しい留置位置を事前評価するための世界初のプレマッピング機能を有しています。
販売名:アヴェイル LP、医療機器承認番号:30400BZX00287000
※国内におけるAVEIRの使用については、日本不整脈心電学会が定める基準を順守する必要があります。
従来型ペースメーカによる治療について
従来ペースメーカでは、前胸部の鎖骨下を切開してつくった皮下ポケットにデバイス本体を入れ、リードと呼ばれる電極を鎖骨下の静脈から挿入して心臓に留置し、本体とリードを接続します。合併症としては主に感染症があり、リードあるいは皮下ポケットに関連し、その発症率はそれぞれ植込み後5年で8%、11%と報告されています[8]。
リードレスペースメーカによる治療について
リードレスペースメーカは、リードと呼ばれる電極と本体が一体化されたデバイスで、カテーテルを使って大腿静脈から本体を直接心臓に植込む低侵襲な方法がとられます。胸部を切開しない手術方法であり、リードや皮下ポケットがないため従来型ペースメーカと比較して合併症のリスクが56%低減されることが示されています[9]。また、胸に手術の傷跡が残らない、デバイスを埋め込んだ部位が隆起するといった見た目の問題がない、腕の動きが制限されることがない、といったメリットがあります。
不整脈について
心臓は、右心房にある洞結節が興奮することで電気信号を発生し、その電気信号が心臓全体の筋肉に伝わることで、規則的な収縮を繰り返し全身に血液を送り出しています。不整脈は、この電気信号が正常に伝わらず、心臓のリズムが乱れた結果、心臓から送り出す血液の量が足りなくなる状態で、最悪の場合は心不全などを引き起こし、死に至る可能性もあります。不整脈は、心臓の脈拍が遅くなる「徐脈性」と早くなる「頻脈性」に分けられます。徐脈性不整脈に対する主な治療法として、ペースメーカの植込みがあります。
[1] Daniel J. Cantillon, Srinivas R. Dukkipati, et al. Comparative study of acute and mid-term complications with leadless and transvenous cardiac pacemakers. Heart Rhythm 2018; 15, Issue 7: 1023-1030.
[2] 一般社団法人日本不整脈デバイス工業会(JADIA)、2023年ペースメーカ市場調査(植込みベース)、新規患者数より
[3] 一般社団法人日本不整脈デバイス工業会(JADIA)、2023年ペースメーカ市場調査(植込みベース)デュアルチャンバ数と全数から算出
[4] ペースメーカの動作モードで、心房と心室の両方を感知、刺激する。これにより、ペースメーカの動作をより自然な心臓の動きに近づける設定のこと。
[5] デバイス間の伝導電気信号を使用したアボット独自の通信方法のこと。
[6] ペースメーカの動作モードで、心房のみをペーシングし、心房の感知と抑制を行う設定のこと。(R)は「レートレスポンス」のことで、患者の活動レベルに応じて心拍数を自動調整する機能のこと。
[7] ペースメーカの動作モードで、心室のみをペーシングし、心室の感知と抑制を行う設定のこと。(R)は「レートレスポンス」のことで、患者の活動レベルに応じて心拍数を自動調整する機能のこと。
[8] Udo EO, Zuithoff NP, van Hemel NM, et al. Incidence and predictors of short- and long-term complications in pacemaker therapy: the FOLLOWPACE study. Heart Rhythm 2012; 9: 728–735.
[9] Daniel J. Cantillon, Srinivas R. Dukkipati, et al. Comparative study of acute and mid-term complications with leadless and transvenous cardiac pacemakers. Heart Rhythm 2018; 15, Issue 7: 1023-1030.
アボットについて
アボットは、人々が人生のあらゆるステージにおいて最高の人生を送ることができるようサポートをするグローバルヘルスケアリーダーです。業界をリードする診断薬・機器、医療機器、栄養剤、およびブランド ジェネリック医薬品分野の事業および製品を含め、人々の生活に大きな影響をもたらす画期的なアボットの技術は、ヘルスケアの広範な領域にわたっています。現在、世界160カ国以上で、約114,000人の社員が活動しています。
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