NPO支援者はなぜ増えないのか。——「育成」ではなく「市場の仕組み」を問い直した調査レポートを公開

第一線で活動する実践者への調査から見えてきた、NPO支援市場の構造課題を公開。調査報告会を8月27日に開催します。

特定非営利活動法人NPOサポートセンター

特定非営利活動法人NPOサポートセンター(所在地:東京都港区、代表理事:松本 祐一)は、「NPO支援人材の発掘・育成」に関する調査プロジェクトの成果をまとめた調査レポートを公開いたします。

「NPO支援者が足りない」と言われて久しい一方で、その背景にある構造について体系的に調査された例は多くありません。そこでNPOサポートセンターでは、NPO支援を仕事として実践する11名へのアンケート・インタビュー調査を実施しました。調査対象には、第一線で活動する支援者や、長年にわたりNPO支援業界を牽引してきた実務家も含まれています。

私たちは当初、「NPO支援人材をどのように発掘・育成すればよいのか」という問いから調査を開始しました。しかし、11名への調査を通じて浮かび上がったのは、「育成」の前に、新人支援者が最初の案件を獲得し、信頼を築くための市場の仕組みが十分に存在していないという現実でした。

現在活躍している支援者の多くは、NPOでの実務経験や業界内での人脈、紹介を通じて仕事を獲得し、実践を重ねながら専門性を広げてきました。一方で、同じ道筋を新たな支援者が再現できる仕組みは十分に整備されていません。

こうした発見を受け、本調査では問いそのものを、「NPO支援人材をどう育成するか」から、「新人支援者が市場へ参入し、最初の案件を獲得できる仕組みをどう設計するか」へと転換しました。

調査から見えてきたのは、専門性や意欲の不足ではなく、「最初の案件を獲得する仕組み」が十分に存在しないという市場構造上の課題です。本調査結果をまとめたレポートを公開するとともに、その内容を紹介する調査報告会を開催します。

■ 調査結果まとめ

【① NPO支援市場は「紹介」によって回っていた】

今回の調査では、ほぼすべての対象者が、NPO勤務時代の人脈、独立以前からの知人、以前のクライアント、中間支援組織とのつながり、支援者同士の紹介などを通じて最初の案件を獲得していました。

独立当初だけでなく、現在の案件獲得においても紹介は主要な経路となっています。ただし、活動初期には中間支援組織や業界内の知人・同業者からの紹介が多く、その後は既存クライアントからの再依頼や紹介へと移行していく傾向が確認されました。

調査結果から、NPO支援市場は営業や公募を中心とした市場ではなく、「紹介ネットワーク市場」として機能している実態が明らかになりました。

この構造は、

業界内の知人・中間支援組織からの紹介 → 最初の案件 → 支援実績と信頼の蓄積 → 継続依頼・既存クライアントからの紹介 → 新たな実績の形成

という循環として整理できます。

紹介を中心とする市場は、NPO側にとって信頼できる支援者を見つけやすいという利点がある一方、実績のない新人支援者は専門性を備えていても最初の候補になりにくい構造となっています。

以上のことから、新人支援者に不足しているのは能力だけではなく、「紹介される機会」である可能性が示唆されました。

そのため、中間支援組織には、NPOから「誰に依頼すればよいか」という相談を受ける立場として、新人支援者の専門性や人となりを把握し、市場へ橋渡しする役割が期待されます。

【② 支援者は実践を通じて専門性を広げていた】

調査対象者11名のうち9名は、支援開始当初と現在で専門テーマが変化していました。

多くの支援者は、最初から経営支援を専門としていたわけではありません。ファンドレイジングや広報など個別テーマから支援を始め、NPOから寄せられる相談に応えながら、より上流の経営課題や組織課題へと専門領域を広げていました。

専門性の変化には、

  • ファンドレイジング等の機能支援からビジョン・中長期計画・組織開発への発展

  • 現在の専門領域に隣接する業務改善やプロジェクトマネジメントへの拡張

  • DX、評価、セキュリティ、政策提言など新たな社会的ニーズへの対応

  • 特定分野への専門特化

などが見られました。

また、多くの支援者は十分に学んでから案件を受けるのではなく、実案件や自団体での実践、先進事例への挑戦を通じて専門性を高めていました。

支援者の専門性は、講義だけで身につくものではなく、「実践」と「学習」を往復する中で形成されています。

【③ 専門性だけでは仕事にならない——信頼は三つの要素から生まれる】

調査では、専門知識だけでは案件につながらず、「この人なら紹介できる」と第三者に思われる信頼の形成が重要であることが明らかになりました。

支援者への信頼は、次の三つの要素によって構成されています。

① 支援テーマに関する専門性

課題解決に必要な知識や経験を持ち、実績や情報発信によって専門性を示すことは、支援者としての基本的な信頼につながっています。

② NPO現場への理解

NPO特有の組織運営や財源、人材、当事者性への理解は、関係構築において重視されることが分かりました。NPO勤務経験がなくても、現場訪問や活動体験などを通じて理解を深めることは可能であると考えられます。

③ 支援者としての価値観

今回の調査で特に特徴的だったのは、多くの支援者が「どのようなNPOを支援したいのか」「何を大切に支援するのか」といった、自らの価値観について語っていたことです。

売上だけを目的に案件を受けないこと、組織にとって必要なことは契約終了のリスクがあっても伝えること、自身のビジョンやミッションを明確に示すことなど、支援者自身の価値観がNPOからの信頼につながっていました。

今後の育成では、専門知識だけでなく、支援者自身の価値観や支援姿勢を言語化する機会も重要になると考えられます。

【④ 「育成」だけではなく、「市場接続」が必要】

今回の調査を通じて、私たちは「NPO支援人材をどう育成するか」という問いだけでは十分ではないと考えるようになりました。

現在活躍している支援者は、NPO現場での経験や専門性に加え、業界内ネットワークや支援者としての価値観を持った状態で市場へ参入し、その後は紹介を通じて案件を獲得し、実践を通じて専門性と信頼を積み重ねています。

中間支援組織や先輩支援者との関係は、単なる人脈ではありません。

それらは、

  • NPO現場への理解を深める

  • 専門性や支援姿勢を周囲に知ってもらう

  • 初回案件の信用を補完する

  • 共同支援や相談の機会を生み出す

  • 次の案件や登壇・執筆機会につながる

  • 支援者の孤立を防ぎ、継続的な活動を支える

といった、市場接続に必要な機能を果たしていました。

こうした結果から、本調査では、新人支援者が市場に接続するためには、

  • 学習(Learning)

  • コミュニティ(Community)

  • 実践経験・OJT(Experience)

  • 中間支援組織等による信用補完(Trust)

を組み合わせ、「最初の案件」へ接続する仕組みが必要であるという仮説に至りました。

本調査では、この考え方を「新人支援者が信頼を獲得し、最初の案件を得るための市場接続モデル(Market Entry Model)」として整理し、今後はその実証に取り組みます。

■ 調査からの提言

本調査では、NPO支援人材不足を「育成」の課題として捉えるだけでなく、「新人支援者が信頼を獲得し、最初の実績を積むまでの市場接続モデル」の視点から捉え直す必要性を提案しています。

  • 提言1 : 新人支援者が紹介・相談につながる市場接続の機会をつくる——中間支援組織・既存支援者・新人支援者が継続的につながる

  • 提言2 : 案件形成・提案・契約などの実践的スキルを共有する——NPO支援における共通言語、品質、案件形成の基礎力を身につける

  • 提言3 : 共同支援・OJTを通じて信頼を積み重ねる——第三者から推薦される実績をつくる

  • 提言4 : NPO側の受け入れ環境を整備する

■ 調査報告会を開催します

本調査結果をもとに、調査報告会を開催します。

当日は、

  • 調査結果の概要

  • NPO支援人材不足の構造課題

  • 今後の市場接続モデルの取り組みの方向性

  • 参加者との質疑・意見交換

を予定しています。

  • 日時 : 8月27日(木)13:00(60分)

  • 会場 : オンライン(Zoom)

  • 対象 : NPO支援者、NPO支援者をめざす方、中間支援機能を強化したいNPO、助成財団、企業財団、NPO経営者、NPO支援に関心のある企業

  • お申込みはこちらから : https://npo-sc.smktg.jp/public/application/add/6163

【報告会参加者へ公開版レポートを先行提供】

報告会へお申し込みいただいた皆さまには、本調査をもとに作成した公開版レポートを、報告会終了後に先行してお送りします。なお、公開版レポートは、報告会開催から1か月以内を目安に一般公開を予定しています。

■ さいごに

本調査結果について、現場で活動されているNPO支援者の皆さまはどのように感じられるでしょうか。

  •  「紹介で仕事が広がってきたな」 

  • 「最初の案件を獲得するまでが一番苦労した」 

  • 「専門性以上に、信頼を積み重ねることが大切だった」 

そんな経験を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。 

一方で、「自分は違った」「こんな視点もある」という声もあるでしょう。 私たちは、この調査結果を一つの結論ではなく、NPO支援市場の未来を皆さんとともに考えるための出発点にしたいと考えています。 報告会では、ぜひ皆さまの経験やご意見もお聞かせください。

■ 今後について

本調査では、「新人支援者が最初の案件を獲得する仕組み」が十分に整っていないという仮説が見えてきました。しかし、これは一つの結論ではなく、日本のNPO支援市場をより良くするための「最初の仮説」です。

NPOサポートセンターでは、この調査結果を踏まえ、今後は「新人支援者が信頼を獲得し、最初の実績を積むまでの市場接続モデル」の実証に取り組みます。調査で得られた知見を実践へとつなげ、誰もがNPO支援者として市場へ参入し、活躍できる仕組みづくりを目指します。

あわせて、本調査の問題意識に共感いただけるNPO支援者、中間支援組織、NPO、資金提供者の皆さまとも連携しながら、この市場形成モデルをともに育てていきたいと考えています。ご興味をお持ちの方は、ぜひご連絡ください。

【本調査について】

本調査は、米日財団(USJF)の助成を受け、「NPO支援人材の発掘・育成」調査プロジェクトとして実施しました。

【米日財団】

米日財団(USJF)は、日米関係の強化と共通課題の解決を目的とする独立した民間助成財団です。1980年の設立以来、両国で1億ドル以上の助成を通じて多様な取り組みを支援してきました。現在は助成プログラムとともに、500名を超える両国のリーダーを結ぶネットワーク「日米リーダーシップ・プログラム(USJLP)」を運営しています。

URL:https://us-jf.org/ja/

本調査に関するお問い合わせ

特定非営利活動法人 NPOサポートセンター

所在地 : 東京都港区芝4-7-1 西山ビル4階

電話 : 03-6453-7498(担当:笠原、堤)

メール : mcn@npo-sc.org

サイト : https://npo-sc.org/

NPOサポートセンターの法人概要

法人名:特定非営利活動法人NPOサポートセンター

所在地:東京都港区芝4-7-1 西山ビル4階

設立 : 1993年

理事長:松本 祐一

Web : https://npo-sc.org/

TEL : 03-6453-7498

事業内容 :

・NPOの団体支援と人材育成

・企業との連携やCSRに関するコンサルティング

・自治体の協働に関する研修とコンサルティング

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会社概要

URL
https://npo-sc.org/
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都港区芝4-7-1 西山ビル4階
電話番号
03-6453-7498
代表者名
松本 祐一
上場
未上場
資本金
-
設立
1998年03月