書籍製造におけるデジタル印刷活用の実態調査結果を公表 – 出版業界でのデジタル印刷活用拡大へ

回答出版社の半数以上がすでにデジタル印刷を活用・試行、小ロット重版や品切れ防止で活用が拡大、出版社の収益機会拡大にも期待、採算性の可視化と運用支援が今後の課題に

電流協

 一般社団法人電子出版制作・流通協議会(以下「電流協」)は、一般社団法人日本出版取次協会(以下「取協」)と共同で組成する「取協電流協合同PT」にて実施した『書籍製造におけるデジタル印刷活用の実態調査』の結果を公表しました。

 本調査は、出版業界におけるデジタル印刷の活用実態を明らかにするため、取協電流協合同PTが出版社を対象に初めて実施した調査です。書籍を中心に刊行している出版社300社を対象に、2026年7月16日から9月11日まで実施し、142社から回答(回答率47%)を得たものです。出版社におけるデジタル印刷(デジタルショートラン、以下「DSR」)の認知・検討・活用状況、主な用途、導入効果、採算性、課題、今後の活用意向および必要とされる支援を調査しました。

 調査の結果、回答出版社の半数以上がDSRをすでに活用、または限定的なタイトルで試行・評価していることが分かりました。活用用途では「重版の小ロット化」が77%で最も多く、DSRが既刊書籍の小ロット重版、品切れ防止、供給継続を支える製造手段として広がり始めています。こうした結果から、DSRは読者への安定した供給を実現するだけでなく、出版社にとっても販売機会の確保や在庫負担の軽減につながる可能性があり、今後の活用拡大に期待が持てることが示されました。

 一方、導入・活用上の課題では「採算性が見えにくい」が46%で最も多く、書籍仕様への対応、小ロット重版に伴う業務量の増加、印刷品質への不安なども挙げられました。今後の活用拡大に向けては、製造単価だけでなく、在庫、返品、廃棄、販売機会の損失まで含めた採算性の可視化と、データ整備や業務面を含む導入・運用支援が重要になります。

調査実施の背景

 取協と電流協は、2026年1月21日に「出版業界でのデジタル印刷活用を推進する共同宣言」を発表しました。この共同宣言では、返品、過剰在庫、品切れ、製造・物流コストの上昇など、出版流通が抱える構造的な課題に対して、小ロット・短納期で製造できるDSRを解決手段の一つとして位置づけています。

 出版社、書店、取次、印刷会社などの出版業界関係者が連携し、「読者のために、必要なときに、必要な形で届ける」持続可能な出版エコシステムの構築を目指しています。また、共同宣言では、「DSR標準仕様の策定と提案」「出版社・印刷会社間の業務効率化」「DSR出版物の流通ルール整備と見える化」「出版社課題の解決と導入促進」「業界内外への周知活動」などを、業界協調で取り組む領域として掲げています。

 今回の調査は、共同宣言を具体的な取り組みにつなげるため、出版社におけるDSRの活用実態と課題を把握し、業界協調による今後の施策を検討するための基礎資料として実施しました。調査結果からは、DSRが出版社の課題解決と読者への供給継続に寄与する可能性が示唆されるとともに、導入・活用を後押しするために必要な取り組みも明らかになりました。

『書籍製造におけるデジタル印刷活用の実態調査』のポイント

1. 回答出版社の半数以上がDSRを活用または試行

 回答出版社では、DSRをすでに活用している出版社に、限定的なタイトルで試行・評価した経験のある出版社を加えると、52.8%がDSRを活用または試行していました。

  この結果から、DSRは一部の先進的な出版社だけの取り組みではなく、出版社における書籍製造の選択肢として、実用段階に入り始めていることがうかがえます。

 すでに活用・試行している出版社が半数を超えたことは、今後の普及に向けて前向きな材料といえます。一方、社内での検討段階にある出版社や、関心はあるものの具体的な検討には至っていない出版社も見られ、出版社によってDSRへの理解や活用段階には差があります。

2. 活用の中心は、既刊書籍の小ロット重版

 DSRの主な用途・目的では、「重版の小ロット化」が77%で最も多く、欠品防止、在庫コスト削減、売り逃し防止、継続的な書籍製造・絶版解消が続きました。

  DSRは、需要の見通しが立てにくい既刊書籍を、必要な時期に必要な量だけ製造する手段として主に活用されています。特に、一定の需要が継続しているものの、オフセット印刷では重版ロットと需要量が合わない既刊書籍について、品切れや絶版を回避し、読者への供給を継続する手段として期待されています。

 出版社にとっては、需要に応じた柔軟な重版によって販売機会を確保し、過剰在庫や返品のリスクを抑えられる点もメリットとなります。

3. 品切れ防止、在庫・返品削減などの効果に期待

 DSRの活用によって得られている、または期待されている効果としては、「品切れ防止・機会損失の低減」が約6割で最も多く、在庫・返品削減、重版対応の迅速化、絶版解消が続きました。

  DSRの価値は、単に少部数を印刷できることだけではありません。需要に応じて適切な数量を製造することで、書籍を読者へ継続的に供給し、出版社は販売機会を確保しながら、在庫、返品、保管、廃棄に伴う負担を抑えることができます。読者の「読みたい」というニーズに応えながら、出版社の収益機会を広げ、出版資産を有効に活用できることが、DSRの大きな可能性です。

  また、活用中の出版社では「絶版の解消」に対する評価も比較的高く、既刊書籍の供給継続に加え、著者との関係維持や出版資産の長期的な活用にも寄与する可能性が示されました。

4. 活用拡大の鍵は、採算性の可視化

 DSRの導入・活用上の課題として最も多かったのは、「採算性が見えにくい」の46%でした。次いで、自社の書籍仕様では適用が難しいこと、小ロット重版に伴う業務量の増加、印刷品質への不安、利益効果の評価が難しいことなどが挙げられました。 

 一方、すでに活用している出版社では、「利益が出ている」「採算が取れている」とする回答が約半数を占めました。また、試行・評価段階の出版社では、約6割が「条件次第で採算が成り立つ」と回答しています。

  この結果から、DSRの採算性は、対象タイトル、需要規模、製造ロット、残存在庫、価格、重版頻度などの条件によって異なり、適切な条件下では採算が成立し得ることがうかがえます。出版社が導入効果を判断するためには、製造コストだけでなく、在庫や返品にかかる費用、品切れによる販売機会の損失なども含めた総合的な評価が重要です。こうした採算性を可視化することで、DSRの導入メリットを具体的に把握し、活用の判断につなげることが期待されます。

5. 活用経験のある出版社では、今後の拡大意向が強い

 今後の活用方針について、回答全体では「未定」とする出版社が最も多かった一方、すでにDSRを活用している出版社の約9割、試行・評価段階にある出版社の約6割が、今後の活用拡大意向を示しました。

  実際に活用・試行することで、DSRの効果や適用条件への理解が進み、活用意向が高まる傾向がうかがえます。今回の調査では、採算性や運用面などの課題がある一方、活用経験のある出版社を中心に今後の拡大意向が確認されました。これらの結果は、課題解決に向けた環境整備を進めることで、DSRの利用がさらに広がる可能性を示しています。

今後の取り組み

 取協と電流協は、本調査で把握した出版社の活用実態、導入効果、課題および支援ニーズを踏まえ、出版業界におけるDSRの普及に向けた取り組みを継続します。今後の施策の検討・推進にあたっては、出版社をはじめとする出版業界関係者の意見を広く取り入れながら、DSRのさらなる活用拡大と環境整備に取り組んでまいります。

  取協電流協合同PTでは、デジタル印刷の活用拡大に向け、読者ニーズに応えられなかった販売機会損失に関する情報(失注情報など)の可視化を進めるとともに、出版社における導入・運用上の課題を整理し、行政による支援の働きかけなど、業界協調での取り組みを継続していきます。これらの取り組みを通じて、出版社がDSRの導入効果や採算性を把握し、活用を判断しやすい環境の整備を目指します。さらに、出版社における課題解決に加え、書店、取次、印刷会社を含めた出版業界関係者が連携し、需要や在庫に応じて出版物を柔軟に供給できる環境を整えていくことが重要と考えます。

  2026年1月の共同宣言は、出版DXと持続可能な出版エコシステムの構築に向けたスタートとして位置づけられました。今回の実態調査で明らかになった課題とニーズを具体的な施策につなげ、読者の「読みたい」に応えて必要な本を必要なときに読者へ届け続ける環境の整備を、業界協調で進めてまいります。出版社をはじめとする出版業界関係者に対しても、デジタル印刷の活用拡大を通じた、出版業界全体での持続可能な書籍供給の実現に向けた協力を呼びかけてまいります。


『書籍製造におけるデジタル印刷活用の実態調査』資料について

この調査結果の詳細をまとめた『書籍製造におけるデジタル印刷活用の実態調査』は、事前アンケートにご回答いただいた方に公開しています。

この実態調査資料では、出版社からの回答をもとに、書籍市場全体におけるデジタル印刷の活用割合と市場規模についても試算しています(その試算の算出方法・前提条件も掲載しています)。詳細は、この資料をご覧ください。


「出版業界でのデジタル印刷活用を推進する共同宣言」について

2026年1月21日に発表した「出版業界でのデジタル印刷活用を推進する共同宣言」の内容は、以下をご覧ください。

出版流通改革へ向け業界連携で共同宣言を発表 – 出版業界でのデジタル印刷活用を推進


一般社団法人 日本出版取次協会(取協)

取次各社共通の問題の解決にあたるとともに、出版物取次業の健全な発展と、出版物による文化的使命の達成を図り、業界の発展に寄与しています。

東京都千代田区神田神保町1-32 出版クラブビル6階

http://www.torikyo.jp/

一般社団法人 電子出版制作・流通協議会(電流協)

日本の電子出版産業の成長と健全な発展のための環境整備を目的として、出版コンテンツデータの制作流通(電子書籍やデジタル印刷の制作流通上の課題解決)や多元的な活用を推進する活動を2010年から行っております。

東京都千代田区一番町25番地 JCIIビル6階

https://aebs.or.jp/


問い合わせ先

一般社団法人 電子出版制作・流通協議会 事務局

https://aebs.or.jp/contact.html

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ビジネスカテゴリ
雑誌・本・出版物
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会社概要

URL
https://aebs.or.jp/
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都千代田区一番町25番地 JCIIビル6F
電話番号
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代表者名
入鹿山 智也
上場
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資本金
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設立
2010年07月