脳卒中患者の実生活における上肢活動量パターンの特定-ウェアラブルセンサーを用いた横断研究-~ニューロリハビリテーション研究センター

運動麻痺の重症度と上肢活動量の組み合わせから、6つの異なるサブグループが存在することを明らかに

畿央大学

脳卒中患者では、運動麻痺が回復しても日常生活では十分に上肢を使用できない場合があります。しかし、同程度の運動麻痺の重症度であっても、実生活での手の活動にどのような違いがあるのかは十分に明らかになっていませんでした。畿央大学大学院博士後期課程の南川 勇二氏と森岡 周教授らの研究チームは、脳卒中患者101名の両手首に加速度計を装着し、24時間の実生活における上肢活動量を計測しました。その結果、運動麻痺の重症度と上肢活動量の組み合わせから、6つの異なるサブグループが存在することを明らかにしました。さらに、そのサブグループには麻痺側上肢に対する注意や利き手などによって、上肢活動量が異なる可能性が示されました。この研究成果は学術誌Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation(Identifying heterogeneous patterns of real-world upper limb use beyond motor severity: a cross-sectional sensor-based study in people with subacute stroke)に掲載されています。

 

研究概要

脳卒中後には、上肢の運動機能が回復しても、日常生活の中で麻痺した手が十分に使われないことがあります。また、同程度の運動機能を有する患者であっても、実生活での上肢の使い方には大きな違いがみられることが知られています。その背景には、運動機能だけでなく、麻痺側上肢への注意や使用習慣、利き手との関係など、さまざまな要因が関与している可能性があります。そのため、脳卒中患者の上肢機能を理解するには、練習場面での上肢機能評価だけでなく、実生活で実際にどのように使っているかを捉えることが重要です。

畿央大学大学院博士後期課程の南川 勇二氏、西 祐樹氏、生野 公貴氏、森岡 周教授らの研究チームは、亜急性期脳卒中患者101名を対象に、両手首に装着した加速度計を用いて24時間の日常生活における上肢活動を測定し、運動麻痺の重症度と実生活での上肢活動量の関係から6つの特徴的なサブグループを明らかにしました。 その結果、同程度の運動麻痺であっても上肢活動量が異なるサブグループが存在し、中等度の運動麻痺では学習性不使用が示唆されるグループ、軽度の運動麻痺では上肢への不注意と関連して使用の非対称性が大きいグループなどが認められました。また、臨床評価を用いた分析から、上肢機能、日常生活での上肢使用の質、上肢への不注意、麻痺側と利き手の関係などが、各グループを特徴づける要因として示されました。

本研究は、従来の運動麻痺の重症度だけでは捉えきれない、実生活における上肢活動の多様性を明らかにした点に新規性があります。さらに、ウェアラブルセンサーによる客観的な上肢活動の評価と従来の臨床評価を組み合わせることで、患者ごとの特徴をより詳細に把握し、実生活での上肢活動に応じた個別的なリハビリテーションにつながる可能性を示しました。

 

本研究のポイント

脳卒中患者101名を対象に運動機能と実生活での上肢活動の関係から6つのサブグループを明らかにした。同程度の運動機能であっても上肢活動には異なる特徴がみられ、運動機能だけでは実生活での上肢活動を十分に捉えられないことが示された。上肢機能に加え、上肢への不注意、利き手との関係などがサブグループを特徴づける臨床的特徴として示された。

 

研究内容

本研究では、脳卒中患者における運動麻痺の重症度と実生活での上肢活動量との関係を明らかにし、その特徴に基づくサブグループを特定することを目的としました。亜急性期脳卒中患者101名を対象に、両手首にリストバンド型の3軸加速度計を24時間装着し、日常生活における両上肢の活動を客観的に測定しました。加速度データから、麻痺側と非麻痺側の活動強度の対称性を示す指標である上肢活動強度比を算出し、上肢運動麻痺の重症度を評価するFugl-Meyer Assessment(FMA-UL)と組み合わせてクラスター分析を行いました。

クラスター分析の結果、FMA-ULと実生活での上肢活動量の組み合わせから、6つの特徴的なクラスターが明らかになりました(図1)。

 

図1.運動機能と実生活での上肢使用に基づく6つのサブグループ

重度の運動麻痺に伴って麻痺側上肢の活動量が少ないクラスターだけでなく、同程度の運動麻痺でありながら、上肢使用の左右差が大きく異なるクラスターが認められました。また、運動麻痺の重症度が軽度であっても麻痺側上肢の活動量が少ないクラスターや、比較的両上肢を左右対称に使用するクラスター、麻痺側上肢をより強く使用するクラスターなど、多様な活動パターンが確認されました(図2)。

 

図2.各クラスターにおける24時間の上肢活動量パターンの代表例

6つのクラスターそれぞれについて、24時間の日常生活における両上肢の活動を1秒ごとに可視化した代表例。日常生活における麻痺側・非麻痺側上肢の活動強度の比を示す上肢活動強度比を示し、中央の0に近いほど両上肢を対称的に使用していることを示す。縦軸は両上肢の活動強度の和を示し、色が暖色となるほどその活動パターンが多くみられたことを示す。同程度の 運動麻痺の重症度(FMA-UL)であっても、実生活での上肢活動には異なるパターンがみられている。

 

さらに、各クラスターを特徴づける臨床的要因を検討するため、上肢機能評価であるAction Research Arm Test(ARAT)、Motor Activity Log(MAL)、上肢への不注意の有無、感覚機能、心理面、麻痺側と利き手との関係などの複数の臨床評価を用いた決定木分析を行いました。その結果、ARATを中心に、上肢への不注意、MAL、麻痺側と利き手との関係などが、各クラスターを特徴づける臨床的指標として示されました(図3)。

 

図3.臨床評価による6つのクラスターの特徴

各クラスターを特徴づける臨床的特徴を決定木分析により示した。最終的に分岐した後の割合は、それぞれの条件を満たした患者が各クラスターに分類された割合を示す。

 

本研究の臨床的意義および今後の展開

本研究成果は、脳卒中患者では同程度の運動機能を有していても、実生活における上肢の使い方には多様なパターンが存在することを示した重要な知見です。この結果は、脳卒中患者の上肢機能を評価する際に、従来の運動機能評価だけでなく、実生活でどのように上肢使用しているかを評価することの重要性を示しています。また、上肢への不注意や日常生活での主観的な上肢使用状況、麻痺側と利き手との関係など、運動機能以外の臨床的特徴も考慮することで、患者ごとの特徴に応じた個別的なリハビリテーションにつながる可能性があります。

今後は、今回明らかになったサブグループの上肢活動量が回復過程の中でどのように変化するのかを縦断的に調査するとともに、それぞれのサブグループに応じた介入方法や長期的な機能予後との関係を検証していく必要があります。

論文情報

Yuji Minamikawa, Yuki Nishi, Koki Ikuno, Shu Morioka

Identifying heterogeneous patterns of real-world upper limb use beyond motor severity: a cross-sectional sensor-based study in people with subacute stroke

Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation. 2026 Oct 5

【問い合わせ先】

畿央大学 広報センター

Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: pr@kio.ac.jp

すべての画像


ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

畿央大学

0フォロワー

RSS
URL
https://www.kio.ac.jp/
業種
教育・学習支援業
本社所在地
奈良県北葛城郡広陵町馬見中4-2-2
電話番号
0745-54-1603
代表者名
冬木 正彦
上場
未上場
資本金
-
設立
2003年04月