シリア:政府軍、医学生を拷問したうえで殺害
国際人権NGOアムネスティ・インターナショナル(http://www.amnesty.or.jp/)は、医療従事者を拷問し、殺害したシリア政府を強く非難した。
【写真】政府軍に殺害された市民の葬儀に参列する人びと。これまでに、1万人以上が殺害されている。(c)AI
アレッポ市で3人の若い医学生が逮捕された。その一週間後、焼け焦げ切断された3人の遺体が発見された。政府軍が、医療従事者の崇高な医療行為を踏みにじっていることを示す、新たな証拠である。
3人は全員、アレッポ大学の学生だった。そのうちのバセル・アスランとムサド・バラドは医学部の4年生、ハゼム・バティクは英文学部の2年生で応急医療にあたっていた。
彼らは医者、看護婦、応急医療班から成るチームの一員であった。そのチームは、保安部隊の銃撃で負傷したデモ参加者を収容する目的で設置された仮設の野戦病院で、救命医療にあたっている。デモ参加者は、逮捕、拷問あるいは殺害される恐れさえあるため、国営の病院へ行くことができない。
彼らは6月17日、市内で逮捕後、空軍情報部によって拘禁されていた。
「わが身の危険を顧みず、負傷者の治療にあたっていた若手の医療従事者たちを惨殺したこと。これはつまり、政府軍は反体制派の鎮圧には手段を選ばないということです」とシリアに数週間滞在していたアムネスティの上級危機対応顧問であるドナテラ・ロベラは述べた。
「犠牲者が増える中、アサド政権は、負傷者とその治療をする医療従事者の捜索を強化しています。このような人権侵害は、ますます日常化している、裁きを受けない政府軍の人権犯罪の一部だということです」
3人の学生の焼死体は6月24日早朝、アレッポの北東にあるネイラブ地域で焼け焦げた車の中で発見された。
死体置き場で遺体を見た医療関係者がアムネスティに語ったところでは、バセル・アスランは頭部に銃弾を受け、両手は後ろで縛られていた。片足と片手は折れ、数本の歯が失われており、両足の下の部分の肉がはげ、骨が出ていた。数本の指の爪がはがされていた。ほかの2人の遺体はさらにひどく焼けており、同じように他の損傷があった。
アムネスティはこれらの話を裏付ける遺体の画像を見た。学生たちの身分証と大学のカードは、遺体のそばに手つかずに残されており、遺体が焼かれた後そのままそこに放置されたことがわかった。
一緒に発見された4番目の焼死体は、まだ身元が確認されていない。
3人が逮捕された直後、一人の親が息子に電話をかけると、見知らぬ男が電話に出て、「お前は息子の育て方を知らない。我々があいつにどのふるまうべきか、教えてやる」と脅したという。
空軍情報部で拘禁されていたとき、友人数名が釈放を求めて情報部を訪れた。対応した空軍情報部高官は、「あいつらのことは忘れろ」と取り合わなかった。その高官は、これまでなら賄賂を出せば拘禁者を釈放したといわれている。
■アレッポにおける弾圧
治安部隊は、デモ隊が平和的でも日常的に、その群衆に向け実弾を発射し、既知の抗議者やその予備軍、支援者を逮捕し拷問する。
最近、市では以前より頻繁に大規模なデモが行われるようになり、それにしたがって治安部隊の弾圧はより残虐で広範囲に行われるようになってきた。
5月末、アムネスティ代表団は、アレッポ市で毎日のように治安部隊が平和的なデモ隊に無差別に実弾を発射し、デモ参加者と見物人を殺害するのを目撃した。犠牲者の中には数人の子供もいた。
■標的になった医療従事者
2011年2月に始まったデモの発端から、政府軍は、攻撃で負傷したデモ参加者と見物人の救命緊急医療に携わったと疑われる医者および医療従事者たちを攻撃目標にしてきた。
アムネスティはこのような攻撃を、昨年10月に発表した報告書で詳細に記している。
政府軍と民兵はまた、攻撃した町や村の野戦病院や診療所を徹底的に破壊し、焼き払った。
「騒乱や紛争のさなかで、医療従事者や応急医療班は負傷者に迅速に救命医療を施し、安全に避難させるために非常に大きな危険をおかしています。このような危険は、医療従事者を攻撃目標とし報復するという政府の方針により、ますます大きくなっています」とロベラは言った。
「国のトップレベルでの人権侵害は、いずれは裁きを受けるときがくる、ということを知るべきです」
2011年4月にはすでに、アムネスティは昨年3月に始まったデモに対する政府の弾圧において、非人道的犯罪が行われていたと結論付けた。
我々は繰り返し国連安保理に、悪化する治安状況を国際刑事裁判所(ICC)に委託し、人道犯罪は普遍的管轄権の対象であることを明確にするよう要求してきた。
「シリアの惨状を終わらせるために、国連安保理は断固たる行動を起こさなければなりません。ロシアは、その行動の妨害を止めるべきです」とドナテラ・ロベラは言った。
「ロシアがやるべきこと。それは、シリアの状況をICCに付託することを支援することです」
▼シリアの人びとを救うために、あなたにできるアクションがあります
https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/syria_20120608.html
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アムネスティ・インターナショナルは、世界最大の国際人権NGOです。1977年にノーベル平和賞を受賞し、現在は全世界に300万人以上のサポーターがいます。
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【写真】政府軍に殺害された市民の葬儀に参列する人びと。これまでに、1万人以上が殺害されている。(c)AI
アレッポ市で3人の若い医学生が逮捕された。その一週間後、焼け焦げ切断された3人の遺体が発見された。政府軍が、医療従事者の崇高な医療行為を踏みにじっていることを示す、新たな証拠である。
3人は全員、アレッポ大学の学生だった。そのうちのバセル・アスランとムサド・バラドは医学部の4年生、ハゼム・バティクは英文学部の2年生で応急医療にあたっていた。
彼らは医者、看護婦、応急医療班から成るチームの一員であった。そのチームは、保安部隊の銃撃で負傷したデモ参加者を収容する目的で設置された仮設の野戦病院で、救命医療にあたっている。デモ参加者は、逮捕、拷問あるいは殺害される恐れさえあるため、国営の病院へ行くことができない。
彼らは6月17日、市内で逮捕後、空軍情報部によって拘禁されていた。
「わが身の危険を顧みず、負傷者の治療にあたっていた若手の医療従事者たちを惨殺したこと。これはつまり、政府軍は反体制派の鎮圧には手段を選ばないということです」とシリアに数週間滞在していたアムネスティの上級危機対応顧問であるドナテラ・ロベラは述べた。
「犠牲者が増える中、アサド政権は、負傷者とその治療をする医療従事者の捜索を強化しています。このような人権侵害は、ますます日常化している、裁きを受けない政府軍の人権犯罪の一部だということです」
3人の学生の焼死体は6月24日早朝、アレッポの北東にあるネイラブ地域で焼け焦げた車の中で発見された。
死体置き場で遺体を見た医療関係者がアムネスティに語ったところでは、バセル・アスランは頭部に銃弾を受け、両手は後ろで縛られていた。片足と片手は折れ、数本の歯が失われており、両足の下の部分の肉がはげ、骨が出ていた。数本の指の爪がはがされていた。ほかの2人の遺体はさらにひどく焼けており、同じように他の損傷があった。
アムネスティはこれらの話を裏付ける遺体の画像を見た。学生たちの身分証と大学のカードは、遺体のそばに手つかずに残されており、遺体が焼かれた後そのままそこに放置されたことがわかった。
一緒に発見された4番目の焼死体は、まだ身元が確認されていない。
3人が逮捕された直後、一人の親が息子に電話をかけると、見知らぬ男が電話に出て、「お前は息子の育て方を知らない。我々があいつにどのふるまうべきか、教えてやる」と脅したという。
空軍情報部で拘禁されていたとき、友人数名が釈放を求めて情報部を訪れた。対応した空軍情報部高官は、「あいつらのことは忘れろ」と取り合わなかった。その高官は、これまでなら賄賂を出せば拘禁者を釈放したといわれている。
■アレッポにおける弾圧
治安部隊は、デモ隊が平和的でも日常的に、その群衆に向け実弾を発射し、既知の抗議者やその予備軍、支援者を逮捕し拷問する。
最近、市では以前より頻繁に大規模なデモが行われるようになり、それにしたがって治安部隊の弾圧はより残虐で広範囲に行われるようになってきた。
5月末、アムネスティ代表団は、アレッポ市で毎日のように治安部隊が平和的なデモ隊に無差別に実弾を発射し、デモ参加者と見物人を殺害するのを目撃した。犠牲者の中には数人の子供もいた。
■標的になった医療従事者
2011年2月に始まったデモの発端から、政府軍は、攻撃で負傷したデモ参加者と見物人の救命緊急医療に携わったと疑われる医者および医療従事者たちを攻撃目標にしてきた。
アムネスティはこのような攻撃を、昨年10月に発表した報告書で詳細に記している。
政府軍と民兵はまた、攻撃した町や村の野戦病院や診療所を徹底的に破壊し、焼き払った。
「騒乱や紛争のさなかで、医療従事者や応急医療班は負傷者に迅速に救命医療を施し、安全に避難させるために非常に大きな危険をおかしています。このような危険は、医療従事者を攻撃目標とし報復するという政府の方針により、ますます大きくなっています」とロベラは言った。
「国のトップレベルでの人権侵害は、いずれは裁きを受けるときがくる、ということを知るべきです」
2011年4月にはすでに、アムネスティは昨年3月に始まったデモに対する政府の弾圧において、非人道的犯罪が行われていたと結論付けた。
我々は繰り返し国連安保理に、悪化する治安状況を国際刑事裁判所(ICC)に委託し、人道犯罪は普遍的管轄権の対象であることを明確にするよう要求してきた。
「シリアの惨状を終わらせるために、国連安保理は断固たる行動を起こさなければなりません。ロシアは、その行動の妨害を止めるべきです」とドナテラ・ロベラは言った。
「ロシアがやるべきこと。それは、シリアの状況をICCに付託することを支援することです」
▼シリアの人びとを救うために、あなたにできるアクションがあります
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