海外駐在員調査を公開|配偶者のキャリアや家族の適応サポートが赴任受け入れおよび家族帯同の検討課題に
〜 駐在経験者は家族帯同による海外生活を有意義と評価 〜
「駐在ファミリーカフェ」は、海外駐在員、および本帰国後3年以内の駐在経験者を対象に、「海外赴任と家族へのサポート」に関するアンケート調査を実施しました。
1.調査結果要旨
<駐在員配偶者の現状>
・共働き世帯が多い現代に、駐在帯同を理由に退職した方が駐在員配偶者の45.2%。帯同せず別居を選択し日本で仕事を継続する方が12.5%、海外帯同休職・産休・育休制度などを利用して駐在帯同した方が11.6%、他にも日本の仕事を海外からリモートで継続する方や、現地採用で就職する方など、少しずつだが多様化傾向。
・駐在員からも、駐在帯同期間における配偶者のキャリア継続を望み、リモートや現地で就労できる選択肢や、スキルアップのための支援に期待する声が多数。
<海外駐在に対する駐在経験者の考え>
・駐在員における仕事の悩みや不安は、マネジメントにおける言語・文化の違いと、日本本社の理解・サポート不足によるものと答えた方が多数。居住地の治安・拘束リスクや、仕事とプライベートの区切りが曖昧になるなど、生活面への言及も目立つ結果に。
・一方で、再度、海外赴任の辞令が出たら承諾したいと考える駐在経験者は60.0%。承諾しないと答えた方は5%以下に留まりました。赴任地の治安や生活水準によってその度合いに差はあるものの、海外での仕事・生活は駐在員にも家族にも有意義との声が多数。
<駐在家族のサポート>
・海外滞在中にメンタルヘルスチェックの機会があったと答えた方は、駐在員64.6%、配偶者12.8%。
・配偶者にとって環境適応における支えは、家族外の情報提供者とコミュニティの存在。メンタル・キャリアサポート、カウンセリングの利用ニーズに注目。
海外赴任の受け入れ、そして家族帯同の検討課題として、駐在員のみならず、配偶者のキャリア形成への影響が挙げられています。優秀な人材の採用や活躍には、サポート制度の認知・利活用が重要であることがうかがえます。
※ 本調査結果は「駐在ファミリーカフェ調べ」と表記の上、ご利用ください。
全ての調査結果の提供も可能です。本リリース問い合わせ先までご連絡をお願いします。
2. 調査概要
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対象期間:2023年11月9日~2023年12月10日
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調査対象:海外駐在員、または過去3年以内に海外赴任経験のある会社員
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回答者 :110名(男性:90名、女性:18名、その他・回答なし:2名)
※ 管理職・マネジメント層(係長、課長、部長、社長・役員、アドバイザー・顧問など):93名、非管理職:17名 -
調査目的:昨今の駐在員および駐在員配偶者における、海外駐在に対する考え方やその実態の把握・共有
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発表者 :駐在ファミリーカフェ
3.調査結果報告
駐在員の配偶者は駐在帯同を理由に退職した方が45.2%、休職制度利用者が11.6%。帯同せず別居を選択し日本で仕事を継続する方は12.5%。日本の仕事を海外からリモートで継続する方、現地採用で就職した方など、少しずつだが多様化傾向。
駐在帯同にあたり日本で勤めていた会社を退職した配偶者は45.2%と、大半を占めました。配偶者の日本の勤め先に海外帯同休職制度があり、同制度を利用している方は10.6%。産休・育休制度を利用している方の1.0%を合わせると、復職する権利を有している方は11.6%となります。
一方、別居を選択し日本で仕事を継続している方は12.5%と、僅差ながら休職制度利用で駐在帯同する配偶者の割合を上回っています。
他にも日本の仕事を海外からリモートで継続する方や、ビザや会社の制度上、就労が許可される場合には現地採用で就職する方など、就労形態は多様化傾向にあります。
駐在員からも、駐在帯同期間における配偶者のキャリア継続のために、リモートや現地で就労できる選択肢を望む声が多数。現状は滞在国のビザや会社ルールにより就労が難しいケースが多いが、海外生活中のスキルアップに期待も。
共働き世帯が多い現代において、配偶者のキャリア継続が可能となる選択肢を望む声が多数寄せられました。従来から駐在帯同家族の考え方として言われている「家族のサポートに専念してほしい」と回答した方は10%を下回りました。
現状では滞在国のビザの制約や、駐在員の所属、休職中の配偶者が所属する会社のルールにより、就労が難しいケースが多くを占めます。その環境下で海外生活をスキルアップのチャンスと捉え、日本では機会のない挑戦に取り組んでほしいと、配偶者の本帰国後の活躍に期待する声も目立ちました。
一方、駐在ファミリーカフェが2021年に実施した「駐在妻の再就職アンケート」結果を引用すると、駐在帯同により退職した配偶者の正社員比率は、帯同前の約78%から本帰国後の再就職では約29%まで低下しました。その非正規雇用の再就職者のうち、パート・アルバイトが約32%と最多層を占めました。
また、業務委託と答えた方が、約5%から約10%に増加した点からは、フリーランスなどの働き方も選択されていることが読み取れます。
(参考)2021年6月17日 駐在ファミリーカフェ
【調査結果】『駐在妻の再就職アンケート』から見えた再就職の現状とキャリア形成に向けたヒント
駐在員における仕事の悩みや不安は、マネジメントにおける言語・文化の違いと、日本本社の理解・サポート不足が多数。居住地の治安・拘束リスクや、仕事とプライベートとの区切りが曖昧など、生活面への言及も目立つ結果に。
海外での仕事に悩みや不安があると答えた駐在員は、53.7%でした。自由記述では、現地社員のマネジメントにおける言語・文化の違いや、日本本社とのコミュニケーションや理解・サポート不足に悩むケースが多く寄せられました。また、帰国後の配置や職務内容、キャリア形成が不安という声もありました。
本回答には仕事面のみならず生活面に関する記述も多く、居住地の治安・拘束リスク・医療や健康面における不安のほか、休日や深夜帯対応・社内外の出張者対応などプライベートとの区切りが曖昧という声も散見されています。
今後の海外赴任辞令も承諾したいと考える駐在経験者は60.0%、承諾したくない方は5%を下回る結果に。多少の困難はあるものの、海外での仕事・生活は駐在員にも家族にも有意義との声が多数。承諾可否の検討理由は子の年齢と配偶者のキャリアへの影響。
海外赴任は駐在員のキャリア形成に加え、海外生活の経験が家族の将来に役立つと考える駐在員は多く、多少の困難はあるが、海外生活を経て家族のつながりがより強くなったという声が目立ちました。
一方、回答者のうち13.6%を占めた単身赴任者からの声では、子の年齢・配偶者のキャリア形成のために帯同させにくいケースや、家族を帯同させたい駐在員本人の意向に反して家族が希望しないというケースが挙げられました。配偶者の退職は望んでいないため、別居で定期往復する生活を希望したいという回答も寄せられています。
承諾可否は現時点で不明という声には、赴任地や、子の年齢・配偶者のキャリア・親の介護など家庭の状況によって変化するためとの回答が中心となりました。
共働き世帯が多い現代に対応するサービス・サポートに不足・不満が集中傾向。
海外駐在に伴う会社からの人事サポートに対しては、引越し関連の手配・手続きや費用補助など、単身・世帯共通で従来から整備されてきた項目の満足度は75%以上となりました。
一方、渡航前・滞在中において会社のサポートに対する不満の割合が大きい項目を挙げると、メイド・ベビーシッターの費用補助、子女の教育関連、配偶者のキャリアサポートなど帯同家族関連に集中しています。
親や親戚・身近な知人がいない海外生活では、乳幼児の育児について、他人に頼りづらく、配偶者が一人で背負い、心的負担を抱え続けるケースが数多く発生しています※。日本の満3歳以上幼児教育・保育無償化に対応した同様のサポートを実施する会社もありますが、満3歳未満のサポートを行っている会社はごく少数です。
現在では物価上昇の影響も重なり、現地の幼児教育・保育にかかる費用が高額になるケースが多く、経済的な負担を理由に悩む家庭は少なくありません。また帰国時の子女教育や配偶者のキャリアに対する情報提供あるいは外部サービス紹介などの支援サポートは、ほとんど行われていないのが一般的です。
海外の企業事例では、駐在員配偶者向けに約30年前からキャリアサポートが導入されているほか、コーチング利用や自己啓発学習など専門的あるいは個人的な目標達成に役立つプログラムを提供するなど、配偶者サポートを「優秀な人材を採用し離職を防止するための投資」と位置付ける企業が増えています。
(参考)2023年3月17日 Global Connection
How HEINEKEN strives to empower each expat partner’s journey
※ 過去調査 2019年5月15日 駐在ファミリーカフェ
海外滞在中のメンタルヘルスチェックの機会は、駐在員64.6%、配偶者12.8%。
赴任地の環境に適応するために心身への負担を感じやすい海外生活において、メンタルヘルスチェックには特別な役割があります。海外滞在中にメンタルヘルスチェックの機会が会社主導、または自分主導であると答えた方は、駐在員64.6%に対して配偶者12.8%と、大幅な差があることが分かりました。
家族の心身の健康は駐在員パフォーマンスの安定・向上に結びつくものであり、重要視すべきと考えます。
配偶者にとって環境適応の支えは、家族外の情報提供者とコミュニティの存在。メンタル・キャリアサポート、カウンセリングの利用ニーズに注目。
配偶者が赴任地の環境に適応する上で、赴任前の語学研修や情報提供が助けになっているとの声が多く、日本人コミュニティの紹介や現地の友人作り、オンラインでの繋がりが支えになっています。
また、駐在員からの回答でありながら、配偶者のキャリアサポート・カウンセリングの利用ニーズは76.7%にのぼり、一方で利用経験がある方は8.1%と少数派で、そのギャップが最も開いていることに注目できます。帰国後における配偶者の再就職の難しさから、夫婦で配偶者のキャリア形成に悩みを抱えており、サポートを望んでいることが読み取れます。
現代の夫婦の就労形態や、海外赴任先となる地域の増加、円安や海外物価高の影響により、海外赴任に対する家族の受け入れ方は多様化しています。これまで以上に、駐在員と家庭内および人事関係者、それぞれの間における個々の状況に合わせたコミュニケーションと、サポート制度の認知・利活用が重要であることがうかがえます。
「駐在ファミリーカフェ」はこれまでの活動を通して、海外赴任における "家族の健康と幸せ" は、「駐在員の生産性向上」や「会社へのエンゲージメント強化」、「不慮の早期帰任によるコスト増大の防止」そして「離職防止」につながると考えています。
しかし、慣れない土地で家族が健康と幸せを維持していくことは、簡単ではない現状を目の当たりにしてきました。昨今の世界情勢や夫婦の就労形態の変化も影響していることから、今後も定期的に調査・分析を実施していきます。
「駐在ファミリーカフェ」は、駐在員とその家族全員が充実した海外⽣活を送り、広い視野を⾝につけて笑顔で帰国できることを⽬指して、駐在家族が世界各地からボランティアでオンライン運営しています。
駐在員家族の“知りたい”にこたえる海外生活情報・交流サイト「駐在ファミリーカフェ」
(参考)
補足資料:
本アンケートの全調査項目は以下の通りです(太字箇所は調査結果の概要にて記載)。
1.海外赴任を了承した理由や背景、期待したこと
2.海外赴任における予め定められた任期の有無
3.海外赴任前後を比較した仕事の繁忙度合いの変化
4.海外における仕事の悩み・不安
5.海外滞在中における駐在員および配偶者のメンタルヘルスチェック機会有無
6.昨今の円安・海外物価高による海外生活の家計負担・圧迫実感
7.渡航前における、会社側提供の帯同家族向けサポート種類別満足度
8.渡航時・海外滞在中における、会社側提供の帯同家族向けサポート種類別満足度
9.帰任時における、会社側提供の帯同家族向けサポート種類別満足度
10.海外赴任先の家族形態(配偶者・子女帯同、単身赴任、単身者)
11.海外赴任先における配偶者の環境適応手段
12.海外赴任・他国へのスライド・本帰国のタイミングについて、家庭内で日常的に相互理解・把握しているか
13.配偶者とのコミュニケーションに関する課題や工夫
14.海外赴任中の配偶者の就労状況
15.海外赴任中の配偶者のキャリア継続に関する考え
16.再度、海外赴任辞令が出た場合の判断
17.会社サポートに関する要望・意見の有無と伝達経験
18.海外生活や会社制度・サポートへの要望
19.ご回答者の属性(海外赴任居住地/滞在年数/海外赴任期間/所属企業・機関・団体の規模/業界/役職/年齢/性別)
以上
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