事業承継研究会が定例会を実施 後継者がいるからといって承継が上手くいくとは限らない。実際のトラブルから今後のサポートについて議論

どんなに順調に利益を出している企業も、後継ぎがいなくては将来的な事業の継続はなし得ません。後継者不足にあえぐ企業も少なくない一方で、決まった後継者がいたけれど予定通りにはいかなかったケースも。
税理士の神谷保宏さんから紹介された事例が、今回の議論の主題となりました。
「従業員数300人規模の、安定的な実績を残してきた企業でした。社長は息子に後を継いでもらうつもりで、本人にもそう伝えた上で、現場で15年以上働いてもらっていたんですよ。けれど、プレッシャーもあってか息子さんが辞めてしまって。予定が狂ってしまいました。社長は退任目前。それなら古参の社員に継いでもらおうかと考えましたが、経営は社長ひとりがほぼ全てを担っていたのでジャッジができない。結局、社長が続投した後に、M&Aをしようとなりました。幸いなことに良い会社だったので、合併先も見つかり、社員も職を失わず、むしろ休日が増えたと喜んだそうですよ。とはいえ、社長の年齢も考えると、健康を損なうような事態もあり得る話でした」
経営者が現場でがんばるのは良いが、がんばり過ぎたがために後継者の育成や、事業を受け渡す準備があと回しになってしまう場合があります。さらに、この事例のように予定通りに承継が進まないことも。読みきれない部分があるとはいえ、不測の状況も含めて、先回りした計画を立てておくのが大切だと神谷さんは話します。
「最近は、中小企業庁から事業承継計画を作成するためのフォーマットも出されています。参考にできるもの、利用できるものを使いながら、少しでも早く考えておいてもらいたい。余裕のある行動をとっておけば、焦って承継を進めるようなこともなくなるはずです。こうしたツールもおすすめしながら、ひとりで考えるのが難しいところを積極的にサポートしていきましょう」
こうした方向性が研究会のメンバー間で確認されました。事業承継にまつわるトラブル、課題は企業によってさまざま。それぞれの経験を共有し、幅広いケースに対応するための議論が今後も続けられます。
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