エピストラと日立、AIを活用しファーメランタの医薬原料中間体「(S)-レチクリン」の生産において、世界最大級の収量とラボ実験回数の最大73%減を達成
2025年度中にパイロットスケールで、スケールアップ時の収量低下を抑制した生産の実証を実施

エピストラ株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役CEO:小澤陽介、以下「エピストラ」)は、株式会社日立製作所(本社:東京都千代田区、執行役社長兼CEO:德永俊昭、以下「日立」)とファーメランタ株式会社(本社:石川県野々市市、代表取締役CEO:柊崎庄吾、以下「ファーメランタ」)と共同で実施している、医薬原料中間体「(S)-レチクリン」(*1)の微生物培養プロセス開発において、ラボスケール(*2)実証(*3)が本年10月に完了したことをお知らせします。
本実証は、エピストラの実験条件最適化と日立の培養シミュレーション技術を組み合わせ、医薬原料成分の生産プロセスをラボからパイロットスケール(*4)まで一貫して最適化し、スケールアップ時の収率低下を抑制することを目的としています。
今回のラボスケールの実証では、ファーメランタが開発したスマートセル(*5)を用いて培養実験を実施しました。エピストラと日立は、スケールアップを見据えた条件設定のもと、エピストラ独自開発の条件最適化AI「Epistra Accelerate」を用いて、11変数(温度、温度、pH、通気量、培地成分など)からなる約4,300兆通りの膨大な条件の中から、60回の実験で最適条件を特定しました。その結果、(S)-レチクリンの収量が3.2 g/Lから6.0 g/Lまで向上し、また、ラボにおける実験回数を従来比で最大73%削減*6できたことを確認しました。
本取り組みは「AI×シミュレーション×スマートセル」を融合した新たな生産開発アプローチであり、微生物を用いたバイオプロダクションとして世界最大級(*7)の収量を達成しています。本成果は、医薬品などに使用される中間体の生産性向上と、安定的かつ効率的な供給体制の確立に寄与することが期待されます。
エピストラ、日立、ファーメランタの3社は、2025年度中にパイロットスケールでの生産実証を実施し、スケールアップ時に課題となる収量低下の抑制に向けて検証を進めてまいります。
詳しくは、株式会社日立製作所のニュースリリースをご覧ください。
*1 (S)-レチクリン : 医薬品の製造における原料 → 中間体 → 原薬(API) → 製剤という段階で、(S)-レチクリンは「中間体」に該当し、最終的な有効成分(API)を合成するための途中生成物です。中間体は、品質や収率を安定させるためにプロセス開発で重要な役割を果たしており、特に抗がん剤や鎮痛薬の合成経路において、(S)-レチクリンを経由することで効率的な生産が可能になります。
*2 ラボスケール:数 mL ~数 L程度の容量の培養槽で培養する実験室レベルのスケール。
*3 実証実験の一部は農林水産省中小企業イノベーション創出推進事業 (SBIR3事業)で実施しています。
*4 パイロットスケール : 実験室レベル(ラボスケール)と商業生産レベル(フルスケール)の中間に位置する規模での試験生産。
*5 スマートセル : 多数の遺伝子改変を加え、特定の機能を高めた細胞。
*6 73%削減の根拠 : 実験回数削減率は、代表的な古典的実験計画法(Box–Behnken法)における必要試行数との比較に基づく。11因子・中心点1回の場合、必要試行数は221回。本件は60回で条件探索を完了したため、(221−60)/221≈73% の削減となります。
*7 世界最大級の根拠:公開されている最新の学術論文では3L規模のラボスケール培養槽を用いた酵母による(S)-レチクリンの収量が4.6~4.8 g/Lであり、以降ラボスケールにおいてこれを超える報告は確認されていません。今回の成果は、現時点で世界最大級の収量と考えられます。
Pyne, Michael E., et al. “A yeast platform for high-level synthesis of tetrahydroisoquinoline alkaloids.” Nature Communications 11.1 (2020): 3337.
Narcross, Lauren, et al. “Benzylisoquinoline alkaloid production in yeast via norlaudanosoline improves selectivity and yield.” bioRxiv (2023): 2023-05.
日立製作所について
日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社、全世界で約28万人の従業員を擁しています。詳しくは、www.hitachi.co.jp をご覧ください。
ファーメランタについて
ファーメランタ株式会社は、2022年に創業した合成生物学スタートアップです。約35名の研究開発メンバーと約10名の事業開発管理メンバーを擁し、大腸菌を用いた医薬・化粧品・食品原料などの高付加価値化合物を発酵生産する独自の技術基盤を有しています。発酵プラットフォームにより、アルカロイド、フラボノイド、カロテノイドなど多様な代謝産物をスケールアップ可能な形で設計・生産し、研究から商業生産までを一貫して実施。これまでに累計40億円以上の資金調達および助成金獲得を達成し、「すべての人々に有効成分を届ける」という理念のもと、持続可能なバイオ生産の社会実装を進めています。
エピストラについて
製薬会社などライフサイエンス分野の研究開発を行う企業を対象として、独自開発のAI技術を駆使した実験条件最適化AI「Epistra Accelerate」や、画像解析AI「Epistra Vision」などを活用したハンズオン研究支援サービスを提供しています。すでに大手製薬会社など 60 件を超える導入実績もあり、理化学研究所との共同研究では、網膜色素上皮細胞への分化効率を 80%以上向上させることに成功し、国際論文誌「eLife」に採択されています。詳しくは、 https://epistra.jp をご覧ください。
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