海上・港湾・航空技術研究所の研究チームが『令和6年「海の日」海事関係功労者国土交通大臣表彰』を受賞
~ 革新的な複数AUV隊列制御技術を開発・実装 ~
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所(所長 峰本 健正、東京都三鷹市、以下「海上技術安全研究所」)の金 岡秀 次世代海洋無人機プロジェクトチーム(PT)長、藤原 敏文 研究統括監等で構成される複数AUV※隊列制御実装チームが、『複数AUV隊列制御技術の開発及び実装に貢献した功績』により、日本の海事分野において特に顕著な功績を挙げた個人や団体を称える「令和6年「海の日」海事関係功労者国土交通大臣表彰」を受賞しました。
※AUV: Autonomous Underwater Vehicle: 自律型無人潜水機
海上技術安全研究所の複数AUV隊列制御実装チームは、これまで高効率な海底調査の実現に向け、複数のAUVを同時に運用する手法に関する研究に携わってきました。また、当チームは従来の高効率に加え、高精度・高品位な調査も同時に遂行する革新的な複数AUV同時運用手法として、複数AUV隊列制御技術を新たに開発・実装し、実海域試験を通じてその有効性を実証しました。
この度、この功績が高く評価され、当チームは令和6年「海の日」海事関係功労者国土交通大臣表彰を受賞しました。
<受賞内容>
(1) 受賞名 : 令和6年「海の日」海事関係功労者国土交通大臣表彰
(2) 受賞件名 : 複数AUV隊列制御技術の開発及び実装に貢献した功績
(3) 受賞者
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所 複数AUV隊列制御実装チーム
金 岡秀 次世代海洋無人機PT長
藤原 敏文 研究統括監
篠野 雅彦 海洋先端技術系水中ロボティクス研究グループ長
岡本 章裕 海洋先端技術系水中ロボティクス研究グループ主任研究員
稲葉 祥梧 海洋先端技術系水中ロボティクス研究グループ主任研究員
佐藤 匠 海洋先端技術系水中ロボティクス研究グループ研究員
瀧本 忠教 研究特命主管
今里 元信 海洋先端技術系再生エネルギー研究グループ上席研究員
(4) 功績の概要
海事・海洋技術に関する我が国の中核的研究機関である海上技術安全研究所(以下「海技研」)は、安全で安心な社会の実現、環境と調和した社会の実現、海事産業の競争力強化、そして未来を拓く技術の創造に向けて、最先端の研究を展開しています。特に、近年の我が国周辺海域を取り巻く様々な情勢の変化に対応するため、海洋資源の持続可能な利用、安全保障の強化、海洋環境の保全など、総合的な海洋の安全保障への貢献を念頭に、AUVに代表される海洋無人機の研究開発に力を注いでいます。
高速航行が難しい潜水機ならではの制約から、調査効率の向上は長年にわたりAUV運用における最重要課題の一つとされてきました。こうした課題に対するアプローチとして、海技研は複数のAUVを同時に運用する手法の研究開発に取り組み、これまでも傭船費や人件費などの投入コストに対する運用効率を飛躍的に向上させる成果を示しました。
しかしながら、複数のAUVを同時に運用する際には、AUV間の相対位置の発散に対する洋上管制の維持や、各AUVによる観測データの整合性および品質の確保といった重要な課題があります。これらの問題を解決するため、海技研は複数AUV隊列制御技術として動的ウェイポイント(航路点)誘導と基本隊列制御の2種類の手法を開発・実装しました。この手法により、AUV全機を洋上からの音響測位・通信が有効に働く範囲(有効管制域内)に留めつつ、各機の相対位置を最適に調整することで、複数AUVによる海底調査において高い安全性と信頼性を確保しながら、従来の高効率に加え、高精度・高品位の情報収集が可能になりました。
海技研が開発した複数AUV隊列制御技術のもう一つの大きな特長は、さまざまなAUVやASV(Autonomous Surface Vehicle:自律型洋上中継機)システムに簡単に実装できる高い汎用性です。令和4年9月、国の主要研究開発プロジェクトである戦略的イノベーション創造プログラム(SIP : Strategic Innovation promotion Program)のもと、海技研は異なる設計思想や開発主体を持つ4機のAUVと1機のASVに隊列制御技術を実装し、実海域試験を通じてその汎用性を実証しました(図1)。さらに、異機種AUV10機の同時運用まで拡張可能であることもシミュレーションにより確認しています。
現在、海技研が開発・所有している航行型AUVおよびその運用技術は、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が実施した南鳥島付近での資源探査航海においても令和4年度と令和5年度の2年連続で活用されています。こうした背景から、海技研の複数AUV隊列制御技術は、海洋資源の効率的な探査や環境モニタリングにおいて、将来的な商業化を見据えた潜在的なユーザーの確保にも繋がるため、当該技術による顕著な社会貢献は、今後益々期待されるものとなります。
主要特許:
Operating method of multiple underwater vehicles and operating system of multiple underwater vehicles. US Patent US11511835B2.
特許第7248343号「複数の水中航走体の投入方法,及び揚収方法」
※当該研究開発の過程において、全15件の国際・国内特許を出願・登録しています。
<お問い合わせ先>
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所
海上技術安全研究所 企画部広報係
Tel:0422-41-3005 Fax:0422-41-3258
E-Mail:info2@m.mpat.go.jp
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