第16回 シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション 「思いもよらないしるし」アイディアが国内外から集結!応募作品過去最多1,287点より、受賞作品9点が決定!
中村勇吾氏、原研哉氏、深澤直人氏、三澤遥氏、武井祥平氏の豪華審査員を迎えて開催!
第16回目となる今回は、中村勇吾氏、原研哉氏、深澤直人氏、三澤遥氏の4名の審査員、ゲスト審査員の武井祥平氏および特別審査員 舟橋正剛の計6名で厳正な審査を実施しました。
今回は、『思いもよらないしるし』をテーマとし、しるしの概念の根底に立ち返ることで生まれる価値や、見落としていたしるしの意味に気づかせてくれるような存在、そんな本質的な驚きを感じられるしるしを表すアイデアを募集しました。その結果、国内外から過去最多となる1,287点の応募があり、そのうちの9点を受賞作品として決定しました。
受賞作品一覧 |
グランプリ 1作品(賞金300万円)
「F!nd !t」 (中山大暉)
準グランプリ 2作品(賞金50万円)
「Hole Decoration」 (藤井誠、山田奈津子)
「卒業記念印」 (石川和也)
審査員賞 5作品(賞金20万円)
中村賞 「花ひらくコースター」 (田中夢大、坂上立朗)
原賞 「パスタのしるし」 (松本和也)
深澤賞 「柔らかい判子」 (蘭雲傑)
三澤賞 「RGBペン」 (田平宏一、野村紹夫)
武井賞 「沈黙する表札」 (長堀拓弥)
特別審査員賞 1作品(賞金20万円)
「失敗は、きらめきのもと」 (樋口優里)
第16回シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティションについて |
第16回シヤチハタ・ニュープロダクト・デザインコンペティション(SNDC)は、前回を大きく上回る1287件の提案が集まりました。テーマの『思いもよらないしるし』の解釈は、偶発的に起きる出来事や、見落としてしまいそうな瞬間などさまざまでしたが、造形的なデザインだけでなく行為に焦点を当てた提案も多く、審査会は議論が白熱しました。
また、初めての試みとして、ゲスト審査員の制度を設けました。今回はエンジニアの武井祥平氏を迎え、デザイナーとは違う視点が審査に加わったと同時に、応募アイデア自体の傾向として、テクノロジーを活用する提案も増えた印象です。最終審査会に可動するモックアップが数多く集まったのも新鮮でした。シヤチハタらしいハンコをベースにしたアイデアから、全く新しいプロダクトまで、多様な可能性のある提案の応募を感謝いたします。
審査員 コメント |
中村勇吾 Yugo Nakamura
インターフェースデザイナー
tha ltd. 代表
ウェブサイトや映像のアートディレクション、デザイン、プログラミングの分野で横断/縦断的に活動を続けている。主な仕事に、ユニクロの一連のウェブディレクション、KDDIスマートフォン端末「INFOBAR」の UIデザイン、 NHK Eテレ「デザインあ」のディレクションなど。
~審査コメント~
全体の印象として、結構面白いものが多かったと思います。例年、繊細な造形のような部分で賞を取る人が多かったですが、今年は違う土俵で「しるし」を考えた人が多かったと感じました。デジタルを軸にした作品でもきちんと実装できそうなイメージや、シヤチハタが本気になるくらいビジネスの仕組みまで考えられている提案が受賞して、きちんとほしいと思えるものがあったのもよかったです。
原研哉 Kenya Hara
グラフィックデザイナー
日本デザインセンター 代表
デザインを社会に蓄えられた普遍的な知恵ととらえ、コミュニケーションを基軸とした多様なデザイン計画の立案と実践を行っている。無印良品、蔦屋書店、GINZA SIX、JAPAN HOUSE、らくらくスマートフォン、ピエール・エルメのパッケージなど活動の領域は多岐。
一連の活動によって内外のデザイン賞を多数受賞。著書『デザインのデザイン』(岩波書店刊、サントリー学芸賞)『白』(中央公論新社刊)は多言語に翻訳されている。
~審査コメント~
今年も、審査員の人たちが何を大賞に見立てていくかという過程が面白かった。一次審査で1000点以上の作品から通過作品を選ぶのですが、自分が残したものが、他の審査員が選んだ作品と並ぶと、また違う文脈が生まれます。最初から大賞然とした、強い輝きを放つものが会場にあるわけではありません。どの賞も同じだとは思いますが、エントリーした人の作品のポテンシャルに、審査員たちの考え方やアイデアがくっついて、トルネードのように相まって、大賞という存在が出来上がるのだと思います。
深澤直人 Naoto Fukasawa
プロダクトデザイナー
NAOTO FUKASAWA DESIGN 代表
卓越した造形美とシンプルに徹したデザインで、国内外の大手メーカーのデザインとコンサルティングを多数手がける。電子精密機器から家具、インテリアに至るまで手がけるデザインの領域は幅広く多岐に渡る。デザインのみならず、その思想や表現などには国や領域を超えて高い評価を得ている。受賞歴多数。
2018年3月作品集「Naoto Fukasawa EMBODIMENT」(Phaidon)発刊。
~審査コメント~
作品のレベルの問題ではなくて、視点が変わってきていると感じました。これまでは、物の性質を形にしようという提案が多かったのですが、気付きの行為とか、しるしをつけるというのはこんな感じだろうとか、そういう行為自体を形状にしている感覚があります。それがハマると、ぐっとくる作品が生まれる。グランプリ作品もそうですが、もしそういうものを自覚的に作っているのだとしたら、相当すごいなと感じます。
三澤遥 Haruka Misawa
デザイナー
日本デザインセンター 三澤デザイン研究室
2005年に武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業後、デザインオフィスnendoを経て、2009年より日本デザインセンター原デザイン研究所に所属。
2014年、三澤デザイン研究室として活動開始。ものごとの奥に潜む原理を観察し、そこから引き出した未知の可能性を視覚化する試みを、実験的なアプローチによって続けている。
~審査コメント~
今年は元気で勢いのあるアイデアが多く、審査が難しかったです。一次の紙面上の審査と二次のプロトタイプ審査では印象ががらりと異なって見えました。アイデアだけでなく、ものとして説得力のあるものが最終的には選ばれました。作品はもちろん、審査中の審査員一人ひとりのコメントも面白く、その言葉で審査が大きく揺らいだり一気に進んだりする独特の空気があります。「思いもよらない」というテーマでしたが、それにふさわしい着眼点があるものに支持が集まり、受賞に結びついたと思います。
ゲスト審査員 コメント |
武井祥平 Shohei Takei
エンジニア
nomena 代表
高専で電気工学、大学で認知心理学を専攻。2012年東京大学大学院情報学環・学際情報学府修士課程修了。同年、nomena設立。工学的な視座から前例のない表現の可能性を追求する活動を展開。自身の創作活動の他、気鋭のアーティストやデザイナーとの共同制作、テクニカルディレクションも数多く手がける。主な仕事に、東京2020聖火台機構設計など。
~審査コメント~
ゲスト審査員としてお呼びいただき、初めて参加しましたが、全体的にレベルが高く、自分ではできないような発想が多かったです。「思いもよらない」というテーマは難しいだろうと思っていましたが、うまいところをついてくる作品が多く、想像よりもハンコ以外の提案もあったので、面白く拝見しました。デザインの第一線で活躍する他の審査員の方々とエンジニアの自分の視点はやはり違うので、みなさんのコメントを聞くのも楽しく、参加できてよかったです。
特別審査員 コメント |
舟橋正剛 Masayoshi Funahashi
一般社団法人未来ものづくり振興会 代表理事
シヤチハタ株式会社 代表取締役社長
1992年 米国リンチバーグ大学経営大学院修士課程終了。広告代理店勤務を経て1997年 シヤチハタ工業株式会社(現シヤチハタ株式会社)入社。2006年 シヤチハタ株式会社代表取締役社長 就任
~審査コメント~
武井さんをゲスト審査員に迎え、「思いもよらないしるし」というテーマを据えて、少し違う雰囲気の第16回になりました。内容も非常にユニークなものが多く、デザインコンペとはいえども、実用的に商品化したいものも多くありました。いろいろなアイデアが散りばめられており、非常に高いレベルで面白かったです。
受賞作品 |
グランプリ
F!nd !t (ファインド イット)
中山 大暉 Hiroki Nakayama
出会いの瞬間の「お!」をしるせるデバイスです。自転車での移動中に見つけた、いい感じのカフェ、素敵な景色など、心が揺さぶられた瞬間に「!」ボタンを押すだけで、急いでいても両手が塞がっていても、その場にしるしを残せます。連動するアプリ上には自分だけの地図が出来上がります。
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「インターネット上のしるしの提案は毎年一定数ありますが、絵に描いた餅の印象が多く、評価しづらかった。しかしこの作品は実装できるイメージもありますし、実際の空間でポンと押す感じがちょうど良いです。最近自転車を買ったので、内蔵してほしいと思いました。」(中村) 「自動的に位置情報がマーキングされることとは違う、しるしをつける快感があります。心の中のさざ波を感じながら、自転車ハンドルを持った手のままでプッシュするという一連の行為が合致していて、デバイスとして気持ちいいものができそうという、審査員の意見に賛同しました。ビックリマークというアイコンも、ふさわしいと思います。」(原) 「気づきのポイントの瞬間に押せるというのがすごい。記憶しようとしても自転車のスピードでは「あ」と思っているうちに通り過ぎてしまうから、「あ」の瞬間に押せるのがいい。」(深澤)「レンズ越しではなく、肉眼でシャッターを切るところが新鮮だと感じました。画面を見て撮るのではなく、目の前の風景である「今」をスタンプする感じにリアリティがあります。 しるすという捉え方が柔らかく発想がユニークで、まさに思いもよらない、でした。」(三澤)
準グランプリ
Hole Decoration
藤井 誠 山田 奈津子
Makoto Fujii Natsuko Yamada
(チーム名:ディノーム)
ロウソクの火を吹消した後に、ロウソクを抜くと生まれてしまう、ケーキの上の穴。せっかくのお祝いのケーキにできてしまったその穴を、装飾の一部にしてしまうキャンドルホルダーの提案です。ロウソクをケーキに挿すという行為に、しるす感覚を加えたいと考えました。
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「キャンドルを立てた後に残る花の形が非常に繊細に設計されており、出来栄えに感心しました。子どもほどきっと驚きは大きくて、まさに予測もしなかった、想像を超えた効果が生まれるんじゃないかな。小さいけど、子供の感受性に訴えかける力は大きいと思います。」(原)
「ロウソクを抜いた後のちょっとイヤだなという気持ちはもはやどこか諦めていましたが、その感情をプラスに変えてくれることが、思いもよらない嬉しさにつながります。」(武井)
準グランプリ
卒業記念印
石川 和也
Kazuya Ishikawa
卒業式に先生から手渡される初めての印鑑。多くの学校では卒業のタイミングに印鑑が記念品として選ばれるが、その際に最適なデザインを考えました。彼らの門出を祝って贈られるのは、卒業証書に模した印鑑です。
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「卒業式の高揚した気分で、あのハンコがあるとすごく売れそうだなと思いました。デザインコンペで商品性はあまり評価されませんが、それを超えてかなり鮮やかです。デザイン的にはベタだけど、計算していいとこついていると思います。」(中村)
「ずっと使っていた印鑑が、中学校の卒業式でもらったものでした。私のはプラスチックケースで味気ないものでしたが、卒業証書の筒に入っていて時間の経過とともに年季が出て、愛着もより大きなものになるだろうと温かなイメージが膨らみました。」(三澤)
審査員賞
中村賞
花ひらくコースター
田中 夢大 坂上 立朗
Mudai Tanaka Tatsuaki Sakagami
コップに付着した水滴が落ちることで、にわかに色づき、美しい模様が広がるコースターです。その日の気温などによって、一度きりの模様が現れます。普段は気に留めない結露という現象がしるしとなって、日常に思いがけない彩りをもたらします。
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「偶然に生まれる模様みたいなものが、基本的に好きです。コースターが濡れたことを利用して模様を作るというのは、確かにありそうなアイデアではあるけれど、やっぱり毎回違う思いもよらない形が生まれるという点は、すごく面白いと思います。」(中村)
原賞
パスタのしるし
松本 和也
Kazuya Matsumoto
トマトソースをこぼしてしまった、テーブルクロスや白いシャツ。シミをじっと眺めていると、まるで朱色のしるしのように見えてくるかもしれない。慌てて拭きとる前に、ネガティブな出来事をポジティブに楽しめる「なまえのあるパスタ」をデザインしました。
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「確かに「思いもよらない」印だと思いました。パスタは小麦粉からできているのでかたちは自在、押し出し成形でこんな名前入りのパスタができると楽しいかもしれません。林家のパーティか、シェフの名前か、お祝いか。ロットはどれくらいから可能でしょうか。」(原)
深澤賞
柔らかい判子
蘭 雲傑
LAN YUNJIE
柔らかい素材でできたハンコです。一般的にハンコは平面に押すことが多いものですが、この提案では紙箱の角や凹凸のある面などにフィットし、立体的に印字できます。ハンコの使い方の可能性を広げ、思いもよらないところにしるしがつけられるかもしれません。
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「子供が喜ぶ感じや、ぽんぽんぽんって軽やかに押す感じ、全部が入っていると思いました。今までの印鑑やスタンプは、慎重に的確にという視点が多かったけれど、そうじゃないんだなと。やたらめったらやっていいんだ、と。素材も形も色もあってます。」(深澤)
三澤賞
RGBペン
田平 宏一 野村 紹夫
Koichi Tabira Akio Nomura
小学生からパソコンに触れ、プログラムを学ぶ昨今。普段目にする色の名前ではなく、RGBで色を表す水性ペンによって、色の仕組みについて学習する効果もあります。
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「ペンは色名に情報のイメージがありすぎて、たとえば緑だと葉っぱを描いてしまうような、引っ張られてしまう感覚もあるのですが、RGBだとその意識が変わるなと思いました。CMYKではなく、RGBというところに良い引っ掛かりがあります。」(三澤)
武井賞
沈黙する表札
長堀 拓弥
Takumi Nagahori
防犯意識の高まりから表札を掲げない住宅が増えていますが、本来は家庭のシンボルとしての役割も持ちます。この表札は普段は平滑な状態で住宅の景観に溶け込みますが、訪問者が来るとセンサーに反応して名前が現れます。現代に合わせた表札のかたちです。
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「表札で自分の名前を知られたくないという問題意識はありつつも、試作品を見て「きっとこういうものを作ってみたかったんだろうな」と感じてしまいました。ものづくりへの純粋な情熱や発明家精神のようなものにあふれたプロトタイプが、素敵でした。」(武井)
特別審査員賞
失敗は、きらめきのもと
樋口 優里
Yuri Higuchi
同じ問題を何度も間違えると、気持ちが落ち込むかもしれません。この提案は、バツ印の印影を重ねることで、それらがきらめく大きな星へと変化していくスタンプです。本来否定のしるしであるバツが、星という希望にみちた「思いもよらないしるし」となります。
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「中高生の勉強に関わるアイテムはほとんど出していないのですが、商品としてとても可能性があると思いました。問題集で繰り返しできなかった部分に、2回目、3回目…としるしをつけるようなアイテムは世の中になかった気がします。」(舟橋)
第16回 シヤチハタ・ニュースプロダクト・デザイン・コンペティション 概要 |
■応募受付期間:2023年 4月1日(土)~ 5月31日(水) 12:00
■テーマ: 思いもよらないしるし
「しるし」が持つ可能性を広げるプロダクトもしくは、仕組みをご提案ください。
なお、応募作品は未発表のオリジナル作品に限ります。
■参加資格:
・個人、グループ及び企業、団体。年齢、性別、職業、国籍不問
(ただし、日本語でのコミュニケーションが可能であること)。
・1次審査を通過した場合、2023年9月1日(金)までに、模型制作が可能であること。
・入賞した場合、2023年10月13日(金)18時(予定)から東京都内で行われる表彰式に参加が可能なこと。
※1人または、1グループで複数作品の応募が可能です。
ただし、事前エントリーは1応募につき、1エントリーに限る。
■賞:グランプリ1作品(賞金300万円)、準グランプリ2 作品(賞金50万円)、
審査員賞5作品(賞金20万円)、 特別審査員賞1作品(賞金20万円)
※全ての受賞作品が、商品化の対象となります。また、本コンペの公式サイトで公開されます。
■一次審査提出物:プレゼンシート(サイズ:A3、枚数:1枚、形式:PDF、容量:10MB以内)
■審査基準:1.テーマの理解力|2.新規性・革新性|3. 提案の実現性
■応募方法:公式サイト(https://sndc.design)にてご応募いただく。
■表彰式:2023年10月13日(金) 18時から予定
■主催:一般社団法人未来ものづくり振興会
■特別協賛:シヤチハタ株式会社
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