病院アートの力で、重症患者の家族が「気持ちを落ち着かせて待機できる空間」を集中治療病棟に整備

4年間に及ぶ院内改修プロジェクトが、ついに完結!3月3日より利用開始

 筑波メディカルセンター病院(病院長 河野元嗣、所在地 つくば市、以下 当院) は、筑波大学 ADP (アート・デザインプロデュース)の学生チーム「パプリカ」(指導教員 岩田祐佳梨)、および特定非営利活動法人チア・アート(理事長 貝島桃代、所在地 つくば市) と協働し、2021年に緩和ケア病棟で行ったクラウドファンディング(以下CF)の余剰金500万円を利用して、重症患者が入院する集中治療病棟(以下 ICU)内の家族控室2部屋を改修し、2025年3月3日より正式利用がスタートしました。

ICU家族控室完成をよろこぶ病院職員と学生、アートコーディネーター

 動画URL:https://youtu.be/-7P541Rq7AE

 茨城県南地域の三次救急医療を担う、当院の救命救急センターは、年間6,300件を超える救急搬送のほか、ドクターカーの運用、救急ヘリコプター搬送による重症患者受け入れを行っています。今回改修したICU家族控室は、重症度の高い患者や病棟で急変した患者の家族が、処置が終了するまでの間に待機する場所で、一日あたり最大10組が利用し、長い時は8時間近く滞在する場合もあります。また、当院のICUは開院当初からある棟に位置しているため、老朽化に加え、「狭く圧迫感がある」などの職員からの声もあり、療養環境改善が長年の課題となっていました。

 そこで、当院では2007年より行われている病院アート・デザイン活動の一環として、ICU家族控室の改修に取り組みました。費用面では、2021年に実施した緩和ケア病棟家族控室改修のCFの余剰金を、本改修の一部に充てることとし「患者さんとご家族のための療養環境の改善」というプロジェクト当初の想いを継承しつつも、ICUという病棟の特性に配慮し、視覚的に印象に残りにくい配色、扉のない開放的な2部屋を設計し、シンプルながらも身体と心が休まり、不安な気持ちを換気できる空間に整備しました。本改修により、ご家族が抱える心身の負担軽減に繋がるなどの効果が期待されています。

 今後も当院は、患者さんご家族が落ち着いて過ごすことのできる療養環境の改善に努めてまいります。

■改修の概要

家族控室1:薄暗く古い印象の部屋から、優しい印象の部屋に改修
家族控室4:オープンな待合室を新設

◼︎ICU病棟・家族控室の特性

 病棟の特性上、患者家族は気が動転しているケースが多く、処置中は、患者の状態が落ち着くまでは面会できないことから、ICUの家族控室は不安と緊張が蓄積されていく場所となっています。ICUに勤務する医師・看護師へ行ったヒアリング調査によると、「ご家族は医療者からの情報提供でしか患者さんの様子を知ることができず、一方的に思いを巡らせ、ひたすら感情を押し殺して冷静になろうとする空間である」や、「家族控室に対して不満を聞いたことはないが、それは気持ちにゆとりがない場面で使用しているからではないか」などと推察する意見が寄せられました。

 また、実際にICUを利用した患者家族からは「照明が薄暗く、心身ともに窮屈で、ドアを解放したまま利用した」「落ち着かず頻繁に部屋を出入りしていた」「自分たち家族が置かれている状況の深刻さを自覚させられた」などの声が寄せられ、深刻な状況下だからこそ、気持ちを落ち着かせる空間を望む声が聞かれていました。

◼︎なぜCFの余剰金でICU家族控室を改修したのか

 緩和ケア病棟のCFでは、439名より13,084,000円(373%)の支援が寄せられ、改修完了後に約500万円の余剰金が残りました。2022年7月の利用開始以降、余剰金の使用用途を検討していく中で「緩和ケア病棟に使用しなくて良いのか」などの意見も聞かれました。しかし、プロジェクトの根幹である「患者さんとご家族のための療養環境改善」は、救急病院として当院が抱える「救急患者と家族を受け入れる空間整備の必要性」という思いと重なり、支援者の皆様に様々な広報媒体で告知したのち、本改修に充てることとしました。

改修された緩和ケア病棟の家族控室

【CFプロジェクト概要】

タイトル:#病院にアートを

     患者さんとご家族が笑顔になれる緩和ケア病棟へ

支援金額:13,084,000円(達成率373%:目標金額350万円)

支援者数:439名 ※窓口支援者含む

期 間 :2021年7月10日(土)~8月31日(火)

利用開始:2022年7月1日(金)

緩和ケア病棟家族控室の完成を伝えるプレスリリース

■アート活動の理解を深める職員内覧会

 3月3日の利用開始にあたり、2月26日~3月2日の期間で職員向け内覧会を開催し、改修に至る背景や過程を学生とアートコーディネーターが、本改修に直接携わらない職員へ説明をする機会を設けました。実施後のアンケートでは「ご家族の緊張を和らげてくれそうな気がする」や「余計なものが無くさっぱりしていて、落ち着く空間だと思った」、「アートによる変化が加えられる前後での違いに驚いた。アートの力を改めて感じる」などの声が参加した職員から寄せられました。

改修の説明を受ける病院職員

■プロジェクトメンバーからのコメント

看護部 2A病棟師長 酒寄 裕美

 従来の家族控室はどことなく無機質で寂しい雰囲気がありました。今回、大幅に改修していただき、明るく柔らかい雰囲気になりました。重症患者さんの緊急入院時、医療者からの説明や手術を終えるのを待つご家族の緊張や不安、ご負担は計り知れません。家族控室がご家族にとって、少しでも気持ちが安らぐ場になることを願います。

診療部 緩和医療科 医長 矢吹 律子

 当院緩和ケア病棟の家族控室改修にあたっては、CFを通じて多くの方々にご支援をいただき、誠にありがとうございました。あらためて御礼を申し上げます。早いもので、あれから2年半が経とうとしています。PCUの新たな家族控室は、ご家族がくつろいでほっと一息をつける大切な空間になっています。家族控室で休む時間があることで、心の余裕を持って患者さんと過ごすことができるとの声をいただいております。このたびのICU家族控室のリニューアルもとても嬉しく思っております。ICUの家族控室も、ご家族の張り詰めた気持ちを少しでも和らげてくれる空間であってほしいなと思います。

アートコーディネーター(特定非営利法人チア・アート) 菅原楓 ・園家悠司

 CFを通じてPCU家族控室の改修に始まった一連のプロジェクトがICU家族控室の改修をもって完了を迎えました。ICU(集中治療室)家族控室で待機される患者さんのご家族・縁者の方々の気持ちや状態、現状の利用の様子を確認しながら、病院スタッフや筑波大の学生チーム「パプリカ」と共に改修後の環境について検討を重ねてきました。設計のキーワードを「気持ちの換気を行う空間/印象に残りすぎない空間」にすることになり、広いソファや丸みのある壁や淡い色の内装など柔らかい空間づくりを目指しました。ここを利用される方の気持ちを少しでも落ち着けられる環境になれたらと願っています。

【以下、参考資料】

筑波大学学生チーム「パプリカ」

 筑波大学における学生主体の実践型授業「大学を開くアート・デザインプロデュース(通称、ADP)」のプロジェクトチームの一つとして2008年に発足しました。多様な領域・学年の学生が集まり、病院スタッフやアートコーディネーターとともに、デザインによる院内の環境改善に携わっています。

特定非営利活動法人チア・アート

 2018年より医療者と芸術側をつなぐ、病院のアート・デザインコーディネートを担っています。医療現場のリサーチや職員との対話のプロセスを通してアートワークショップや空間のデザインを企画・運営し、院内の環境改善に取り組んでいます。現在、アートコーディネーターとして菅原楓、園家悠司が活動中。

・チア・アートHP:https://www.cheerart.jp

筑波メディカルセンター病院のアート・デザインプロジェクト

 当院では、2007 年より筑波大学芸術分野との協働でアート・デザインによる療養環境の改善に継続的に取り組んできました。 展示や患者さん参加型のアートワークショップ、待合室、病院エントランスの空間デザイン、滑り止めのトレーシートのデザインなど、患者さん、ご家族、職員をエンパワメントする活動を実施しております。

 2020年度は、新型コロナウイルス感染症による院内の緊張感の高まりに対し、患者さんやご家族に安心を感じてもらうこと、職員への敬意を表現することを目的に、職員の働く姿の写真展 「病院のまなざし展」を院内で実施したほか、2021年には当院初となるクラウドファンディングにより緩和ケア病棟内家族控室を改修し、2022年7月より利用を開始しています。

・当院のアート活動:https://www.tmch.or.jp/effort/art.html

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会社概要

URL
http://www.tmch.or.jp/
業種
医療・福祉
本社所在地
茨城県つくば市天久保1-3-1 筑波メディカルセンター病院
電話番号
029-851-3511
代表者名
志真泰夫
上場
未上場
資本金
-
設立
1981年06月