ネイチャーポジティブは「見えない生態系」が鍵。微生物多様性を金融・都市開発に組み込む新アプローチを提唱
〜土壌・水質から都市の公衆衛生まで、最新のゲノム解析技術をネイチャーポジティブに適用〜
株式会社BIOTA(本社:東京都港区、代表取締役:伊藤 光平)は、これまで見落とされてきた「微生物多様性」をネイチャーポジティブ・ファイナンスや都市開発の新たな評価指標として組み込むためのPerspective論文を発表しました。本論文は、Springer Natureが発行する生物多様性分野の国際学術誌『npj Biodiversity』に受理・出版されました。
生物多様性の損失を止め、2030年までに回復軌道へ転換する国際目標としてネイチャーポジティブが注目を集めており、企業や金融機関は自然資本への依存を評価し、投資家や社会に開示する枠組であるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)への対応が急務となっています。本論文は微生物多様性を測定し、その価値を自然資本の枠組みに組み込むことで、これまでのネイチャーポジティブではなし得なかった環境再生と人々のウェルビーイング(公衆衛生)を同時に達成する新しいビジネスモデルと都市デザインの可能性を提示するものです。

1. 発表の背景:これまでの「生物多様性」が見落としていたもの
2022年に採択された、生物多様性保全のための国際的な枠組、 昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)では、2030年までに年間2,000億ドルの資金動員が求められており 、自然関連の民間投資は拡大しています。生態系サービスへの支払い(Payments for Ecosystem Services:PES)は、生態系サービスの維持・回復に貢献する主体に対して経済的対価を支払う仕組みであり、自然保全を持続的な資金循環につなげる重要な手段ですが、GBF全体の中ではまだ限定的な位置づけにとどまっています。ましてや現在のPESや一般的な生物多様性評価は、森林、魚、鳥など「目に見える」大型生物や特定の指標に偏っています。
しかし、炭素・窒素循環、水質浄化、土壌の肥沃化、さらには人間の免疫調節に至るまで、地球のあらゆるライフサポートシステムを根底で支えているのは、目に見えない「微生物」です 。本論文は、生態系の土台である微生物の役割がPESを含む生物多様性文脈から見落とされている現状に警鐘を鳴らし 、微生物多様性を適切に測定・評価してPESに組み入れることが、より強靭で包括的なネイチャーポジティブに不可欠であることを主張しています。

2. 本論文の主張:微生物多様性が都市とビジネスにもたらす価値
論文および解説資料では、微生物多様性をネイチャーポジティブの指標に組み込むことで、以下の領域で具体的な価値(生態系サービス)が創出される可能性を議論しています。
公衆衛生と免疫向上:豊かな自然の微生物叢に触れることは、人間の免疫発達をサポートし、アレルギーや自己免疫疾患のリスクを下げると言われています 。「微生物の供給源」としての都市のグリーンインフラは積極的な健康増進の投資手段へとなるかもしれません。
水資源の高度な浄化:現在の水質評価は特定の指標菌(大腸菌など)の有無に頼っていますが、微生物多様性をベースにしたモニタリングを行えば、水質の早期の異常検知が可能になり、より確実な安全保証につながる可能性があります。
生態系の安定と炭素貯留:多様な土壌微生物は、分解や窒素循環を担っています。微生物の多様性が高いほど、干ばつや気温変化といったストレスに対して生態系の機能が安定し、長期的な炭素貯留や農業生産性の向上につながると考えられます。
3. テクノロジーが実現する「見えない生態系」の可視化
PESでは、支払い根拠となる測定可能な指標の確立が不可欠です。これまで「測定が難しい」とされてきた微生物ですが、最新のゲノム解析技術によりビジネス指標への転換が可能になりました。 本アプローチでは弊社の強みのゲノム解析技術である、環境中の微生物の伝播や共有性を予測する「共有ASV解析技術」や 、保全活動が水質や土壌にどう影響したかの因果関係を証明する「微生物由来源追跡技術」を活用することによって、従来の「病原菌がいないか」を確認する保守的な検査から、「どの程度多様な微生物が存在しているか」を確認する能動的なモニタリングへのパラダイムシフトを加速させることができると考えられます。微生物PESの実装には、事業者や行政が自然資本の中で微生物多様性を計測する価値を理解し、生物資本と民間資金をシームレスに接続する仕組みを作っていく必要があります。
本論文の知見は、今後多額の資金動員が求められるネイチャーポジティブ・ファイナンスにおいて、民間資金を誘導する強力な枠組み(生物多様性クレジット等)になり得ます。微生物という「見えない生態系」に投資することは、水・食・健康という人間の生存基盤すべてに対する最善かつ包括的な投資の1つとなります。
【論文情報】
タイトル: Microbial diversity as the next frontier of payments for ecosystem services in nature-positive finance
著者: Kohei Ito, Honami Ando & Hiroshi Honda
掲載誌: npj Biodiversity
DOI: https://doi.org/10.1038/s44185-026-00136-7
【当社の取り組み】
株式会社BIOTAは、都市環境中の微生物多様性の健康度を評価し、その多様性を高める都市デザイン(建築・ランドスケープ・マテリアルデザイン)を行っています。
この「微生物多様性」の概念をいち早く社会実装するため、以下の領域で共創できるパートナー企業(環境コンサルティング、デベロッパー、クリエイティブエージェンシー、自治体など)を広く募集します。
都市開発・オフィス緑化:都市部のような省スペースでも実現できる微生物多様性を指標とした、働く人のウェルビーイングを高める新しい空間デザインの共同実証。
TNFD対応・環境コンサルティング:「微生物多様性スコア」を用いた、競合と差別化できる新たな自然資本評価・開示のスキーム構築。

【お問い合わせ先】
株式会社BIOTA
住所:108-0074 東京都港区高輪 2 丁目 21 番 1 号 THE LINKPILLAR1 NORTH 6階 LiSH
メール:info[@]biota.ne.jp
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