「コツメカワウソを用いた観光促進事業」の問題点を解説
Podcast番組「生きもの地球ツアー」配信&解説記事を公開

2025年12月、アニマルカフェの運営やコツメカワウソの輸入・販売を行う企業が、全国の市町村や自治体、観光協会や経営者に向けて、「地域活性化を目的としたコツメカワウソを用いた観光促進事業」の募集をしました。
この事業に対し、日本アジアカワウソ保全協会、動物との共生を考える連絡会、WWFジャパンは2026年1月19日に「共同声明:コツメカワウソを利用した地域活性化プロジェクトについて」を公開しました。
JWCSはこの事業の問題点を、Podcast番組のJWCSラジオ「生きもの地球ツアー」で配信し、ブログnoteに詳しい解説記事を掲載しました。以下はその要約です。
コツメカワウソカフェを含むアニマルカフェを取り巻く問題点
(1)違法捕獲による供給の可能性
コツメカワウソはIUCNのレッドリストでは「危急種」カテゴリーであり、商業目的の国際取引はワシントン条約で2019年11月より原則禁止となりました。京都大学野生動物研究センターの調べによると、2021~22年に、日本の空港税関で押収された5頭、国内動物園・水族館13施設で飼育されていた43頭、国内のアニマルカフェ5施設の33頭から得たサンプル(糞便・毛皮・血液など)について、すでに研究されていたマレーシアやタイなど東南アジア9カ所の野生個体からのDNA塩基配列と比較した結果、アニマルカフェや押収個体は、共通して「タイ南部の密猟ホットスポット、タイ湾沿岸とマレーシア国境付近の2つの密猟ホットスポット」と一致していることが明らかになりました。一方、動物園や水族館の個体は、タイの別地域の野生個体由来の可能性が示されています。
つまり、アニマルカフェ個体と押収(密輸)個体の出自が共通していることから、「タイ南部の一定の地域」からの違法な輸出である可能性が示されたのです。
(2)飼育環境上の問題点
さらに、全国5カ所のカフェで、コツメカワウソの飼育環境調査がなされたところ、そのすべてで、動物園や水族館の飼養基準と比べて圧倒的に水量が少なく(深さもとれない)、水循環がなされていない問題、餌をキャットフードに頼っていることなどの問題点が報告されています。水環境は、水の入れ替えがない限り、病気の蔓延を引き起こしやすく、隔離しようにも、そのスペースが十分にないなどにより、命を落とす個体が生じる可能性があります。結論として、動物福祉上の問題があるのです。
(3)野生動物を用いた日本のアニマルカフェの問題
コツメカワウソに限りませんが、日本における野生動物を用いたアニマルカフェは2004年に始まり、それ以降、施設数および取り扱う動物種の多様性が急増しています。以前からある保護ネコカフェのように、本来は新しい飼い主とのマッチングを主目的とした場所であっても、人気のある野生動物(コツメカワウソ、ミーアキャットやフクロウなど)を導入して収入を得ているカフェも確認されています。2019年時点で、日本には少なくとも137の営業中のアニマルカフェが存在し、419種の動物が飼育されていました。 しかし、コロナ禍を経て、経営が厳しくなったアニマルカフェも増え、飼育そのものの業務も、立ちいかなくなることは想像に難くありません。東京都では2020年に61施設から2025年に55施設と減少しています。コツメカワウソに関しても、今回の「観光事業誘致にコツメカワウソを」という、個体販売を試みる背景には、そのような経営上の問題があるものと考えられます。
(4)飼育下で数が増えても保全にはならない
いずれの野生動物も生息環境とともに生きています。つまり、その環境を構成する「役割」をもって暮らしています。
コツメカワウソの場合は、匂いや手探りで、甲殻類・貝類・魚類を捕獲し食べますが、たとえばその際に、池の底のどろを攪拌することで、植物の根に酸素を送り込みますし、殻や食べ残しや糞は、その池の動植物たちの栄養にもなります。そして家族で暮らし、子育ては家族みんなで行う動物です。つまり、環境とともに、仲間とともに、暮らしていけるような条件づくりが「保護」です。
カワウソカフェなどでの需要があり続ける限り、コツメカワウソへの脅威はなくなりません。カフェで増えたからといって、そのまま現地で野生復帰させることはできませんから、結局は「カフェでの利用動物を繁殖によって増やしていく」だけであり、野生動物保護につながるような取り組みになりようがありません。
アニマルカフェでの商品化の問題「かわいい」「癒されたい」という 現代人の心
(1)イヌやネコをかわいがることと、アニマルカフェの野生動物をかわいいと思うことの違い
私たちは当たり前のようにペットを受け入れていますが、イヌ、ネコ、ウマなどの動物の側も、1万年、2万年という長い歴史の過程で人と暮らすことを選択してきました。つまり野生動物は「馴れている」ように見えても、イヌやネコとはまったく異なる「ヒトという生き物の捉え方」をしています(詳細はnote参照)。
(2) 「癒し」と「リスク」その関係
海外の研究者による日本のアニマルカフェの研究は、日本の若者が足しげく通う理由やそこでの行動を、若者の心の状態と関連させて分析しています(詳細はnote 参照)。
しかも、珍しい動物をペットにしている写真や動画は見映えがするので、「いいね」や「高評価」、「視聴者数」を稼ぎやすく、それが収入につながるためでしょうか。多くの投稿が見受けられ、その珍しさに接したい欲求がさらに欲求を生み出していきます。そして珍しい動物の安易な購入を助長していき、その結果、「外来種や病原体の潜在的な侵入源となるおそれ、来店者が頻繁に接触することによる感染症の伝播リスクが高まり、かつ、動物福祉に関しても深刻な懸念がある」とも指摘されています。
(3)「餌やり」の功罪
一歩ひいて動物たちをよく観察するということよりも、触れてみること、あるいは餌に寄ってくる動物たちのピンポイントの行動のみが「映えるショットとして消費」され、それに対価を払うという仕組みは、非常に重大な誤解を招いていると考えられます。そこに「癒しがある」という捉え方を助長させれば、それが良いこととして勘違いされたまま、「ベストショットをとるための消費行動」をますます増大させていくでしょう。
まとめ
触れあうことや「かわいい」ことを売りにするだけでは、教育とは言えません。
一方、日本で野生動物と触れ合える「アニマルカフェ」は「癒しの場」を求める若者にたいへん人気であり、自分で飼育することなく、比較的安価に「癒し」を得られるサービスが人気であることは事実として受け止める必要があります。そしてその背景には若い世代の「不安」感がベースにあると思われます。
そのうえで野生動物との共存のためには、野生動物の立場から人間の行動制御をしていくことが重要です。家庭で飼育できる動物を限定する「ボジティブリスト」の導入も検討すべきでしょう。
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