新民法(共同親権導入)施行後も家庭裁判所は旧来のまま──NPOキミトが施行直後の当事者調査を公開
法務省Q&Aが示す「調停の葛藤低減効果」は確認されずアンケート・座談会/個別ヒアリング・判決資料から見えた“現場のリアル”
特定非営利活動法人アートで社会問題を解決する会キミト(以下、「弊会」とする。所在地:東京都中央区銀座一丁目、代表:森めぐみ)は、今年4月に施行された「新民法」による共同親権導入後の家庭裁判所について、当法人が主催する学び場「森ゼミ」※のゼミ生(当事者/別居親)を対象に1)アンケート調査・2)座談会/個別ヒアリング・3)判決内容の比較を実施。その結果、家庭裁判所の運用は施行前と大きく変わっていないという実態が明らかになりました。
※「森ゼミ」とは、全国の連れ去り被害者から参加希望者を募り、体験会・テストを経て選抜された当事者/別居親の学び場。現在9名が在籍し、法改正前から家庭裁判所での経験共有と法的リテラシー向上に取り組んでいます。

■調査の意義
今年4月1日に新民法(共同親権導入)が施行されて4か月が経過しました。本調査は施行後の当事者の体験を基にした恐らく民間では初の調査資料であり、立法趣旨と現実とのギャップを明らかにしています。本リリースでは、以下の3つの調査結果の概要を示します。
■調査概要
調査1:アンケート調査(回答者6名)
調査2:Web座談会方式のヒアリング(参加者6名)及び個別ヒアリング(「調査1」の6名)
調査3:施行前後の判決内容比較(森ゼミ生2名の裁判資料)
※調査1の回答を調査2で精査した。
■調査結果の要点
●「家裁は変わった」と回答したのは6名中1名のみ。
●調停・審判・訴訟の場面で、共同親権の議論が出ない事例が多数。
●面会交流の拡充が進まず、施行前と同様の運用が継続。
●弁護士が共同親権を阻む構造は依然として存在。新民法の立法趣旨の理解はない。
●一部裁判官には「片親疎外」への理解が見られるが、運用の標準化には至らず。
●施行後の判決でも、父母の協力義務・人格尊重義務が十分に考慮されていない事例を確認。
■法務省Q&Aとの乖離~Hさんの家裁の判決~
1、法務省のQ&A内の調停の効果
法務省が公開する「新民法Q&A」では、調停について次のように説明されています。
「父母の葛藤を低下させ、子の利益に目を向けてもらうための取組が調停手続において実施されている」 「調停の過程で感情的な対立が解消され、親権の共同行使をすることができる関係を築くことができるケースもあり得る」と、「調停には父母の葛藤が下がる効果がある」との前提です。
しかし、今回の調査では、法務省が想定するような調停での「葛藤の低減」や「共同親権に向けた合意形成」の効果は確認されませんでした。
2、施行後の判決内容
Hさんの判決は施行後複数回期日を経て終結し6月に判決が出ました。
施行後に弁論終結したHさんの判決では、①調停で葛藤が低減した効果はなく、②共同親権の議論も行われず、③子どもを会わせず非協力的な相手方が単独親権を得て、③面会交流の内容は「手紙を書いてもよい」間接交流、④試行的面会交流の必要性はない、④相手の離婚慰謝料が数万円認められるという完全敗訴の結果でした。家庭裁判所の審理も判決も、連れ去り抑止効果はありませんでした。
(弊会は、特に、「調査官調査報告書」で子どもが「パパに会いたい」と述べているにも関わらず、判決では子どもの声は重視されず③のように「手紙を書いてもよい」間接交流が判決されたことを重く見ています。)
3、新民法の立法趣旨と法務省Q&A
NPOキミトは、2年前の共同親権導入の主要な国会審議は本会議と法務委員あわせて計14回すべて傍聴しましたが、衆議院でも参議院でも国会議員は「連れ去り」のワードを口にしてテーマ化した議論をしました。この立法趣旨を実現させるための具体性を示したのが法務省の「Q&A形式の解説資料(民法編)」です。
ところが、上記のように、施行後のHさんの家庭裁判所の判決は法務省Q&Aとの乖離したものでした。
■当事者の声
●「共同親権という言葉は一度も出なかった」(Aさん)
ー調停委員から共同親権の議論はなく、施行前と変わらない印象。
●「裁判官が『洗脳』という言葉を使った」(Bさん)
ー片親疎外への理解が示されたが、運用の標準化には至らず。
●「直接交流が高裁で間接交流に下げられた」(Cさん)
ー理由は「子どもがまだ小さいから」。共同親権導入後も従来と変わらず。
●「共同親権を主張したら『そういうことは言うな』と言われた」(Dさん)
ー裁判官が立法趣旨を十分に理解していない可能性。
●「母が嫌だと言うだけで交流が断絶されたまま」(Eさん)
ー面会交流の運用は施行前と変わらず。
●「裁判官が『子の利益を第一に考える』と明言した」(Fさん)
ー一部に変化の兆しはあるが、弁護士は従来通り。
■判決比較(施行前後の差異)
森ゼミ生2名(Gさん・前出のHさん)の判決文を比較したところ、以下の共通点が確認されました。
●いずれも同居親の単独親権を認定。
●父母の協力義務・人格尊重義務の重要性が十分に考慮されていない。
●判決理由が同居親側の主張に偏重。
施行後に弁論終結したHさんの判決は全国的に早い判決とみられるが、前述のように内容は施行前と同様。
―考察―
NPOキミトは、GさんHさんの事件経緯をGさんは半年Hさんは4年間観察を継続し離婚裁判の本人尋問も傍聴している。両名とも典型的な連れ去り事案である。
しかし、両名の判決は、施行前後でありながら差異が見られなかったことを鑑みると、新民法の立法趣旨を家裁が実現できていないと言える。
■合意であれば共同親権は出ている
弊会は和解判決で2件「共同親権」が出ているのは把握しています。1件は高裁判決、1件は家裁です。
そのうち1件の別居親側の代理人弁護士は「相手次第でしかなく裁判所が葛藤を下げて共同親権のマインド醸成を促すような姿勢はない。子どもの利益への視点は感じない」と、裁判所は施行前後で変化を感じないとの感想を述べていました。また「連れ去りは人格的利益を害する行為と言えるが新民法が掲げた人格尊重義務に言及しネガティブに判断するといったことは見受けられない」と率直に語っていました。
■NPOキミトの見解と今後の活動目標
今回の調査から、新民法(共同親権導入)施行後も家庭裁判所の運用は旧来の慣行に強く引きずられていることが明らかになりました。特に、制度の核心である 「父母の協力義務」「人格尊重義務」が十分に考慮されていない点、そして 「連れ去り抑止効果が確認されなかった」点 は重大です。
立法趣旨に沿った運用改善、裁判官・調停委員・弁護士の理解促進、面会交流の標準化など、実効性ある改革が求められます。社会規範の見本である司法こそがリーダーシップを取るべき課題です。
弊会は、裁判所の実態調査の継続と国政と関係府省庁へのレポート活動を通じて、国会の立法趣旨(子どもの利益)の実現を目標に活動していきます。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
