日本製鉄、株主総会で石炭関連投資拡大への懸念

SteelWatch Stichting

(東京、2025年6月24日)スティールウォッチは「鉄と私たちの未来に石炭はいらない」というバナーを掲げ、日本製鉄の2025年株主総会に出席する投資家に、石炭に依存した投資方針が抱える座礁資産リスクの詳述した新聞を配布(撮影:スティールウォッチ / 立山大貴)

(東京、2025年6月24日)日本製鉄の第101回定時株主総会が本日開催され、会場内外において、同社の気候変動対策の後退を懸念する声が上げられた。今月18日付けで締結したUSスチール社の買収のために、米国内の高炉6基の延命を約束したことなど、石炭を利用した生産を大幅に拡大、延長する一連の取り組みが同社の脱炭素計画と矛盾する故だ。

昨年2024年の株主総会では、気候変動戦略に関する3つの株主提案が初めて出され、20~30%の高い賛成票を得た。しかしそれから一年、日本製鉄による具体的な気候変動対策改善は見られず、今年の株主総会へ向かう公道には、『鉄と私たちの未来に石炭はいらない』[1]というメッセージが掲げられた。

国際気候NGOスティールウォッチのメンバーを中心に、総会向かう株主たちに向け、同社の石炭拡大がもたらすビジネスリスクと、十余年にわたる気候変動対策の空白期間について声を上げるよう投資家に呼びかけた。

「日本製鉄はゼロエミッション達成を表明しているものの、USスチール社との取引確保のために石炭を利用した鉄鋼生産への新規投資を約束したり、豪州での石炭採掘を拡張するなど、実際の行動は逆行している」と、スティールウォッチ、アジア担当のロジャー・スミスは指摘する。さらに同社は、排出量の計算方法を変更し、証書上のみの低排出鋼材、いわゆる「マスバランス」方式を提案し、国際的な鉄鋼基準を弱めようとすることで、真の低排出鋼材を求める買い手の需要を妨げようとしている[2]。

「日本製鉄は座礁資産となりうる設備の所有を最大化しているようだ。同社は石炭使用を数十年以上固定化し、また炭素制約のある世界で競争力を維持するための生産転換の機会を逃すことで、大きなリスクを負うことになる。」

USスチール社の2023年の温室効果ガス総排出量は2951万t(スコープ1および2)にのぼり、2030年までにUSスチール社が保有する高炉6基のリライニング改修を行うという日本製鉄の計画を考慮すると、排出量が減少する可能性は低い。日本製鉄の2023年度の総排出量7650万t(スコープ1および2)と合わせると推計1億t以上の年間排出量となり、同社は今後世界最大かつ最も排出量の多い鉄鋼メーカーの一つとなることが見込まれる。

日本製鉄がUSスチール社の高炉改修を終え、設備がさらに20年もの寿命を与えられる時には、現トランプ政権ははすでに退任している。石炭からの脱却は、気候危機回避、そしてビジネスリスク回避の観点からも、今優先されるべき課題だ。政府規制当局や鉄鋼バイヤーからも早急の対策が求められている声が強まりつつある。USスチール社との合意で事業拡大の新たな局面に立つ日本製鉄は、今日の決定が今後10〜20年の気候変動の行方を左右することを忘れてはならない。

日本製鉄の気候変動対策について、詳細はスティールウォッチの2025年評価報告書を参照いただきたい。

以上

参考:

  1. 本日の株主総会付近でのアクションを撮影した写真は以下リンクからダウンロード可能。https://drive.google.com/drive/u/0/folders/1v70tD-Sddv3pniRjzpVObvQz1OgGxtdZ 

  2. スティールウォッチ「日本鉄鋼連盟が推進する低排出鋼材、世界基準と乖離:国内外の市民団体が反対声明」(2025年6月5日)

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電話番号
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代表者名
キャロライン・アシュリー
上場
未上場
資本金
-
設立
2023年06月