「リース件数が少ないから安心」ではなかった 東証プライム上場・ラサ工業が新リース会計に本気で向き合った理由
Transリース会計とPower Queryによる仕訳連携支援の導入で、約50件規模のリースにも早期から対応

2027年4月1日以後開始する事業年度から原則適用となる新リース会計基準。「うちはリース件数が少ないから、大きな対応は必要ない」――そう考えがちなケースでも、実務では対象取引の洗い出し、会計方針の検討、仕訳設計、既存システムとの連携など、準備すべきことは少なくありません。
東証プライム市場に上場するラサ工業株式会社も、対象件数は約50件規模と決して多くない一方、早い段階からシステム導入と運用設計を進めてきました。なぜExcelや内製ではなく「Transリース会計」(トランスリース会計)を選んだのか。そしてPower Queryによる仕訳連携支援は実務をどこまで変えたのか。経理部会計課の奈良様、水島様にお話を伺いました。
ラサ工業株式会社について
ラサ工業株式会社は、東証プライム市場に上場する化学メーカーです。その源流は、沖縄県大東諸島の沖大東島、通称「ラサ島」でのリン鉱石採掘にさかのぼります。肥料原料としてのリン鉱石から始まった事業は、その後リン酸などの工業薬品へと発展し、現在では化成品・機械・電子材料の3事業を軸に多角的な事業を展開しています。
なかでも半導体向け高純度リン酸は、半導体製造の前工程におけるエッチングなどに使用される主力製品です。同社は日本・台湾・韓国に同製品の生産拠点を有してグローバルに営業展開しており、生成AIやデータセンターの拡大を背景とした半導体需要の高まりもあり、生産体制の強化を図っています。100年以上にわたり培ってきたリン酸の技術を軸に、AI・データセンター向け半導体という成長市場でグローバルに事業領域を広げ続けている——それも、ラサ工業という会社の大きな魅力のひとつと言えるでしょう。
課題編:「リース件数が多くない」からこそ、対応を軽く見ない
新リース会計基準(企業会計基準第34号)の適用にあたり、ラサ工業がまず直面したのは、「自社にとってリースとは何か」を洗い出す作業でした。
同社は、本社に加えて大阪、宮城、群馬、福岡などに工場や営業拠点を展開しています。工場では自社所有の敷地内で完結している取引が多く、新リース会計の対象となるケースは限定的でした。一方、営業所が製品の中継拠点として借りているタンクや倉庫、賃借しているオフィス、借り上げ社宅などが検討対象となりました。
特に借り上げ社宅は約100件ありますが、多くは、新リース会計基準の結論の背景で少額リースの参考値として示されている「300万円」という目安を下回る規模でした。もっとも、借り上げ社宅を含め、どこまでをオンバランスの対象とするかについては、取引ごとに内容を確認しながら整理していく必要があります。
こうした検討を経て、ラサ工業では対象となるリースを整理し、本社で一元的に管理する方針を固めました。有形資産では専用サーバーなどの機器リースはほとんどなく、対象は主にオフィス、タンク、土地などの不動産関連に集約されています。
各拠点の処理は変えず、本社で四半期ごとに組み替える
もうひとつの大きな論点は「どこで、どう仕訳を切るか」でした。従来、各拠点の経理担当が賃借料などの仕訳を個別に計上しています。新基準対応のために拠点ごとの仕訳方法そのものを変更すると、担当者への教育だけでなく、既存の上流システムからの仕訳データ連携にも影響が広がります。
「ある取引が新リースに該当するかどうか、私自身も100点の回答ができるとは限りません。各拠点の担当者に判断まで任せるのは難しいと思いました」
そこで、各拠点では従来通りの会計処理を維持しながら、四半期ごとに本社へ資料を集約。新たなリース取引の有無を確認したうえで、本社で必要な組み替え仕訳を行う運用を採用しました。
経理部会計課は8名で、そのうち新リース会計対応の実務は奈良様、水島様を含む実質3名程度で進める想定です。上場企業であっても、新リース会計だけに専任できる人員が潤沢にいるわけではありません。だからこそ、現行の業務プロセスを大きく変えずに運用できることが重要でした。
検討編:内製、Excel、既存システム――それぞれにあった壁
対応方針を固める中で、ラサ工業は複数の方法を検討しました。
社内でのシステム内製は、将来の保守が課題に
最初に検討したのは、社内の情報システム部門によるシステム内製です。対象件数がそれほど多くないことから、自社プログラマーによる開発も候補となりました。しかし、将来の基準改正や仕様変更が発生した際、開発担当者の異動・退職などによってメンテナンスできなくなるリスクがあるとして、内製は見送ることになりました。
Excelは作れても、長期運用と引き継ぎに不安
次に検討したのがExcelです。IFRS第16号を適用している台湾子会社ではExcelによるリース管理を行っており、国内でも同様に対応することは技術的には可能に見えました。
一方で、リース計算には割引計算などが含まれ、数式は複雑になりがちです。多数の数式が組み込まれたシートでは、誤って関数を削除した場合の復旧や、担当者交代時の引き継ぎが難しくなります。Excelで作れることと、長期間安定して運用できることは相容れないと判断しました。
既存システムでは、実現したい仕訳を十分に描けなかった
固定資産管理で利用していたベンダーの新リース対応製品も検討しました。ただ、ラサ工業が求めていたのは単純なリース計算だけではなく、「各拠点では従来の仕訳を維持し、本社で四半期ごとに組み替える」という独自の運用を実現できることでした。
その運用を具体的な仕訳ベースで相談した際、十分な確信を持てる回答を得ることが難しく、価格面も含めて採用には至りませんでした。
決め手編:「仕訳の話が通じる」ことが、選定の決め手に
そんな中、ラサ工業とトランザックの最初の接点となったのがダイレクトメールでした。奈良様が目に留めたのは、「公認会計士がつくった会社」であることと、価格面の取り組みやすさでした。
「公認会計士の方なら、こちらが実現したい仕訳の意図も伝わるのではないかと思って、まず話を聞いてみようと思いました」
実際の打ち合わせでは、トランザック側の担当者が公認会計士であるため、ラサ工業が考えていた仕訳を起点に会話を進めることができました。
「仕訳のことを話すと、『ああ、そういうことですね』とすぐに分かってもらえる。一般的な経理の話でも、実務を知らないと伝わりにくいことがありますから、そこは大きかったです」
打ち合わせを重ねる中で、帳票や機能も継続的にアップデートされ、「これならやりたいことが実現できそうだ」と判断。予定していた3社目への相談は行わず、Transリース会計を選定しました。
最大のポイントは、既存の仕訳を変えなくてよいこと
ラサ工業が最も重視していたのは、「各拠点の現在の仕訳を変えずに済むこと」でした。各拠点では賃借料や支払手数料など、従来と同じ科目で処理を継続し、四半期ごとに本社で減価償却費・支払利息などへ組み替えます。
「Excelで考えていた仕訳のイメージをTransリース会計に入れたとき、そのまま欲しい仕訳として出てくるかどうかを一番見たかったんです。実際に出てきたので、そこが一番重要でした」
もし各拠点の仕訳そのものを新基準対応へ変更すれば、既存の上流システムとのインターフェースにも改修が必要になります。また、税務上は引き続き賃借料として把握する必要があるため、会計上の組み替えによって元の賃借料情報が追えなくなると、外形標準課税を含む税務申告時の集計も複雑になります。
既存の業務プロセスと税務上必要な情報を残しながら、会計上必要な組み替えだけを本社で行えること。これが、ラサ工業にとってシステム選定の本質的な要件でした。

導入プロセス編:想定を超えていた仕訳連携支援(Power Query)
Transリース会計の導入とあわせて、ラサ工業はPower Queryを利用した仕訳連携支援も採用しました。目的は、Transリース会計から出力される仕訳CSVを、既存の会計システムへ取り込める形式に変換することです。
導入作業中にはデータ連携で一部エラーも発生しましたが、データを一つひとつ確認しながら修正し、最終的には想定通りに動作する状態まで整備しました。
ただし、奈良様が当初想定していたのは、ここまでの自動連携ではありませんでした。Transリース会計から分かりやすい帳票が出れば、それを見ながら会計システムへ手入力することも覚悟していたといいます。
「会計システムは項目数が多いので、そこまで合わせてもらうのは大変だろうと思っていました。でも、実際にはそのまま取り込めるところまでやってもらえた。想定よりもできていて、正直びっくりしました」
結果として、手作業で仕訳を入力する必要はなくなり、Power Queryで変換したデータを会計システムへ取り込み、内容をチェックする運用が可能になりました。
「マニュアルがなくても感覚で使える」
実際にTransリース会計への入力を担当した水島様は、操作性について次のように話します。
「入力に悩むところがなく、すっと入力できました。特に難しい操作はなかったです」
奈良様からも「マニュアルがなくても感覚で使えそう」との評価をいただきました。新リース会計では、会計判断そのものが難しい場面も少なくありません。だからこそ、システム操作まで複雑にしないことは、少人数で運用するうえで重要なポイントになります。
メッセージ編:「件数が少ない」を理由に、対応を後回しにしない
今回の取材で奈良様が繰り返し強調したのは、「リース件数が少ないからといって、対応が軽く済むとは限らない」ということでした。
「リースのデータは割引計算もありますから、Excelで組もうとすると数式が複雑になりがちです。特殊な関数を使える担当者がいなくなったとき、引き継ぎが厳しくなります」
内部統制の観点でも、複雑なExcelを業務で利用する場合には、数式の検証、変更管理、担当者交代時の引き継ぎなど、EUCに対する統制負荷が大きくなります。
セミナーなどで他社の状況を聞く機会もあるという奈良様は、適用開始が迫る中でも、まだ対応を検討している企業が少なくないことに驚いたといいます。
「3月決算の会社で、来期首から対応するという話も聞きますが、本当に間に合うのかなと思います。件数が少なければ対応できるのかもしれませんが、最後の数か月で慌てて進めるより、早いうちから対象を整理しておいた方がいいと思います」
新リース会計では、対象取引の識別だけでなく、重要性の判断、リース期間、割引率、仕訳方法、既存業務プロセスとの整合性など、事前に整理すべき事項が多岐にわたります。また、オンバランスとなる範囲によっては、自己資本比率などの財務指標にも影響します。
だからこそ、件数の多寡にかかわらず早期に着手し、自社の実務プロセスに即した会計処理と運用方法を十分に検討すること。それが、ラサ工業の実体験から得られたメッセージです。
ラサ工業株式会社(取材時点)
上場市場:東京証券取引所 プライム市場(証券コード:4022)
主な事業:化成品・機械・電子材料
導入サービス:Transリース会計、仕訳連携支援(Power Query)
取材協力:経理部 会計課 課長 奈良 篤憲様、主査 水島 崇様
Transリース会計について
Transリース会計は、株式会社トランザックが開発した新リース会計基準への対応に必要なリース計算・仕訳作成・注記作成が可能なクラウドサービスです。公認会計士による専門家支援や、Power Queryを活用した会計システムとの仕訳連携支援など、企業ごとの業務プロセスに合わせた導入支援を提供しています。

株式会社トランザック
東京都新宿区西新宿1-25-1新宿センタービル49階
お問合せ先:contact@transacc.jp
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