国際幸福デーを前に、【100年生活者調査~2024年国際比較編~】を実施 幸福度も「100歳まで生きたい」気持ちも、6カ国で日本が最下位 人生100年時代、生き方のポジティブな側面への注目が向上の鍵
「日本の未来は明るい」の回答が2割の中、3人に2人が「生まれ変わっても日本」と回答
3月20日の「国際幸福デー」に合わせ、当研究所は100歳まで生きたい日本人の割合について調べています。2024年も調査を実施したところ、2023年と同様に3割未満となり、幸福度も含めて海外5か国(アメリカ、中国、フィンランド、韓国、ドイツ)と比較しても最も低い結果となりました。その要因として、日本人は100歳まで生きることに関して、「迷惑をかけたくない」「大変そうに見える」などネガティブな面のみに注目していることが判明しました。
一方、100歳まで生きたいと考えている人に限っては、他国と同じようにポジティブに捉えていました。このことから、人生100年時代のリスクに目を向けるのではなく、ポジティブな側面を周知することで、日本人の100歳まで生きたい気持ちを向上させる可能性が示唆されました。
(参考)100年生活の実態調査:https://well-being-matrix.com/100years_lab/posts/100_230320_02/
【100年生活者調査~2024年国際比較編~】サマリー
1.「100歳まで生きたい」と感じる日本人は昨年度と同様に3割未満で、対象6カ国で最も低かった
2.100歳まで生きることについて、海外5か国は「不安が増える」といったリスク面だけでなく、「幸せそうに見える」などポジティブな側面にも注目していた
3.日本人はポジティブな側面に目を向ける割合が低かった一方、100歳まで生きたい人に限っては前向きに捉えていた
4.幸福度も6カ国中で最も低く、GDPで抜かれたドイツに幸福度でも及ばない結果となった
5.このことから、人生100年時代のリスクに焦点を当てるのではなく、ポジティブな側面を周知することにより、日本人の100歳まで生きたい気持ちを向上させる可能性がある
【100年生活者調査~2024年国際比較編~ 】結果詳細
■Q1. 人生100年時代において、あなたは100歳まで生きたいと思いますか?(1つ選択)
―「100歳まで生きたい」日本人は、前回調査と同様に3割未満で、6か国中で最も低かった
100歳まで生きたいかを聞いたところ、「とてもそう思う」もしくは「そう思う」と答えた割合は、日本が27.4%で対象6か国の中で最低でした。最も高かったのはアメリカの66.7%で、次いで中国(65.6%)、フィンランド(58.4%)と続きました。
■Q2. あなたは、「自分の100歳までの人生」についてどのように考えていますか?
― 2-1 日本は、他国と比べてポジティブな側面に注目している割合が低かった
100年人生に対する考え方を質問し、「そう思う」「ややそう思う」の割合を海外と比較しました。その結果、「みんなに迷惑をかけたくない」(日本71.2%)、「大変そう」(日本59.5%)といったネガティブな項目について、海外と顕著な差は見られませんでした。しかし、「幸せそうに見える」(日本21.1%)「チャンスが増える」(日本28.7%)など前向きな側面は、海外と比べて低いことがわかりました。
― 2-2 日本でも「100歳まで生きたい人」は、他国と同じようにポジティブな側面に注目している
日本人の傾向を詳しくみるために、Q1の「とてもそう思う/そう思う」と「あまりそう思わない/まったくそう思わない」の回答層別に結果を比較しました。その結果、「とてもそう思う/そう思う」回答層は、「チャンスが増えること」(59.4%)、「幸せそうに見える」(43.5%)など、日本全体で低かった3項目を選択する割合が高い傾向にあり、「あまりそう思わない/まったくそう思わない」回答層と比べて25.3ポイント~42.3ポイント高くなりました。
■Q3.あなたは全体として、どの程度幸せですか。「とても不幸せ」を0点、「とても幸せ」を10点とすると、何点くらいになると思いますか。いずれか1つだけ選んでください(1つ選択)
―日本の幸福度は前回調査とほぼ同じで、6か国中で最も低かった
10点満点で幸福度を質問したところ、日本の平均点は5.9点で対象6か国で最も低い結果となりました。一方、最も高かったのは中国の7.4点で、フィンランド(6.8点)、ドイツ(6.6点)と続きました。日本はドイツに2023年のGDPで抜かれて4位となりましたが、経済指標だけでなく幸福度でもドイツに及ばないことがわかりました。
■Q4. あなたは、この国の未来についてどのように考えていますか?
―日本の未来に対する期待は、幸福度の向上、経済成長、総合的な明るさで6か国で最も低かった
ただし、「生まれ変わるとしてもこの国が良い」は、3人に2人近くがポジティブな回答に
自国の未来について質問したところ、日本は「総合的な明るさ」 「幸福度の向上」「経済成長」の3項目が6か国で最低でした。しかし、「生まれ変わるとしてもこの国が良い」は63.7%で、ドイツを上回りました。
調査結果に関する研究員コメント:田中 卓
前回調査に続いて今回も、「100歳まで生きたい」という気持ちと幸福度は、日本が最も低いという結果になりました。「100歳までの人生の考え方」をみると、日本だけが人生100年時代のポジティブな側面を見ていないことがはっきりしました。他の国では、人生100年時代に対する不安や大変さといったネガティブな側面がありつつも、同時にポジティブな側面にも意識が向けられています。日本でも「100歳まで生きたい」人は、ポジティブな側面を見ているので、例えば「長生きすると不安も増えるけれど、チャンスも増える」というような、100歳までの人生のポジティブな側面に対する社会的な注目度を高めていくことがこれからの課題だと思います。
日本人の3人に2人が「生まれ変わっても日本がよい」と答えた背景には、日本人の幸福観があると考えています。京都大学こころの未来研究センターの内田由紀子さんの『これからの幸福について』1)によると、「共同体を幸福の起点とし、利他性や協調性を最重視する」幸福観があり、日本もこの考え方に近いようです。「共同体」や「場」が幸福の起点となるからこそ、先行きの見通しが厳しくても共同体と離れるという選択をせず、みんなで幸せになりたいと考える日本人が多いのではないでしょうか。そのため、日本でない国に生まれ変わるのはという選択肢は選ばれず、「生まれ変わっても日本」が高くなっているのかもしれません。
今回の調査結果を見て、幸福度を高めて100年人生に前向きな人を増やすためには「自分の幸せを考えること」と同じぐらい「周りの人の幸せを感じやすくすること」が大切だと考えています。「共同体を大切」にして「みんなの役にたちたい」と考える日本の人たちの特徴を踏まえると、「周りの人は幸せだ」と感じた人の方が、その人自身も幸せになる可能性が高まるのではないでしょうか。
1)内田由紀子著.これからの幸福について 文化的幸福観のすすめ.新曜社,2020,
ホームページURL:https://well-being-matrix.com/100years_lab/posts/100report_240318/
【100年生活者調査~2024年国際比較編~ 】概要
■調査目的 :100年生活の実態について把握する
〔国内調査〕
■調査手法 :インタネットモニター調査
■対象地域 :日本 全国
■調査日時 :2024年3月
■調査対象者 :20代~70代の男女 2800名
〔海外調査〕
■対象地域 :アメリカ、フィンランド、中国、韓国、ドイツ
■調査日時 :2024年3月
■調査対象者 :20代~70代の男女
・アメリカ、フィンランド、ドイツ:各600名、中国:500名、韓国:540名
Hakuhodo DY Matrixについて
Hakuhodo DY Matrixは、「The well-being company」として人々の幸福と健康の増進に役立てることを目指し、博報堂DYホールディングスのグループ会社として2021年4月に創業しました。
会社名 株式会社 Hakuhodo DY Matrix
所在地 〒105-8658 東京都港区芝2-14-5
社員数 180名(2023年4月1日現在)
代表者 代表取締役社長 奥井 隆之
設立 2021年4月1日
資本金 1億円(博報堂DYホールディングス100%出資)
また、100年生活者研究所では毎週金曜日に、「人生100年時代」をテーマとしたニュースを配信しています。記事の詳細は下記URLにてご確認ください。
研究所HP:https://well-being-matrix.com/100years_lab/
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