自治体の情報取得において住民が最も利用するのは公式ホームページである一方、スマートフォンでの情報取得や緊急時のSNS利用を求める声も住民がデジガバサービスを受ける際の個人情報の利用には丁寧な説明が必要
~デジタルガバメントへの住民ニーズの鍵を探る国際大学グローバル・コミュニケーション・センターとサイバーエージェントの共同調査、第3弾~
本調査研究は全3回の発表を予定しており、第1弾の研究発表では、どのような人がデジタルガバメントへのニーズを抱えており、またどのようなことがニーズの高さに影響を与えるのかに関する全体の傾向についてレポートを行い、第2弾の研究発表では、住民が利用したいデジタルガバメントのサービスについてレポートしました。このたび第3弾の研究発表では、住民が必要とする情報取得手段の詳細および、デジタルガバメントを推進する上で鍵となる個人情報の提供に関する意向についてレポートします。
■本調査研究の目的と概要
本調査研究は、デジタル技術を用いた暮らしのサービスや、暮らしの理想像に関する住民のニーズの把握を目的として、インターネット調査による結果をもとに様々な統計分析および機械学習を用いて回答傾向の分析を行いました。(分析手法の詳細は後述の注釈※にて説明いたします)
デジタルガバメント(以下、デジガバ)へのニーズは、12の質問(※1)に対する回答項目数の量によって計測し、「自治体との近さ(エンゲージメント)」と「住民が求める暮らしの豊かさ(ウェルビーング)」がデジガバへのニーズに影響を与えるという仮説のもと、今後の日本におけるデジガバが目指すべき姿を描き、サービス利用者である住民のニーズを明らかにします。
■今回の調査結果から見えたトピックス
- 最も必要とされている情報取得手段は、自治体の公式ホームページ。利用状況には理想とのギャップも存在しており、スマートフォンへの適応が求められている。
- 分かりやすい公式ホームページをつくるには、目的に応じて情報を整理し、簡潔な文章を用いることが重要。
- 自治体の公式ホームページでよく見られている情報は「ゴミの分別・出し方」「行政手続き申請」「健康・医療」「新型コロナ関連」。
- SNS(LINE/Twitter/Facebook)の利用で求められていることは「緊急時の連絡先情報」「行政手続き」「電子投票」。
- 住民がデジガバサービスの提供を受ける際に、自治体に対して利用しても良いと考えている個人情報は「年齢」「性別」「住所」。
■本調査研究の主なFINDINGS
FINDINGS①:最も必要とされている情報取得手段は自治体の公式ホームページ。利用状況には理想とのギャップも存在しており、スマートフォンへの適応が求められている。
自分が住む街に関する情報取得手段について、普段の利用状況を知るべく「現状の情報取得手段」と、どこから情報が得られるとより暮らしやすくなるか「望ましい情報取得先」について、同じ情報源の項目を用いて尋ねた。
どちらの質問項目に対しても「自治体の公式ホームページ」と回答する人は最も多く、最も必要とされている情報取得手段であることがわかった(図)。
第一弾の調査結果(※2)においても、住民が自治体とのやりとりで最も望ましい手段として公式ホームページが挙げられており、自治体にとって非常に重要な情報発信の手段の1つとなっている。
住民の暮らしやすさを向上させるためには、公式ホームページのUI・UX(ユーザー体験)を工夫し情報発信を行うことが重要である。
一方で、2つの質問項目における回答間の差異(ギャップ)について分析したところ(※3)、特に自治体のスマートフォン向け情報発信について、暮らしやすさにつながる情報源として認識しているものの、現在の情報取得手段として思うように活用できていない(ギャップ)実態が明らかとなった(図)。
近年のスマートフォンの普及を鑑みても、スマートフォンに最適化された情報発信を強化していくことが求められている。
図:現状の情報取得手段と理想の情報取得手段のグラフ
FINDINGS②:分かりやすい公式ホームページをつくるには、目的に応じて情報を整理し、簡潔な文章を用いることが重要。
自治体の公式ホームページについて、分かりにくいと思う箇所を聞いたところ、「手続きに関する情報とニュース情報を分けてほしい(36.5%)」「文章を簡潔にしてほしい(26.9%)」という回答が最も多かった。
FINDINGS③:自治体の公式ホームページでよく見られている情報は「ゴミの分別・出し方」「行政手続き申請」「健康・医療」「新型コロナ関連」。
自治体の情報誌や公式ホームページで見たことがあるページを聞いたところ、「ゴミの分別・出し方(57.7%)」「行政手続き申請(56.4%)」「健康・医療(53.6%)」「新型コロナ関連(46.5%)」との回答が多かった。
FINDINGS④:SNS(LINE/Twitter/Facebook)の利用で求められていることは「緊急時の連絡先情報」「行政手続き」「電子投票」。
TwitterやFacebook、LINEなどのSNSを利用して行いたいことを聞いたところ、「緊急時にどこに連絡すれば良いのかが一目でわかる連絡帳がSNS上にほしい(42.5%)」が最も多く、次いで「行政手続き(妊娠・子育て、引っ越しなど)をSNS上で完結させたい(32.7%)」「選挙や住民投票時の投票をSNS上でおこないたい(32.2%)」という回答が多かった。
SNSはコミュニケーション手段として普段から利用されていることから、緊急時の連絡手段などとしてのニーズが高いと思われる。公式ホームページや各種SNSなど、情報発信手段に合わせて提供する内容にも工夫が求められる。
FINDINGS⑤:デジガバサービスの提供を受ける際に利用してもよい個人情報は「年齢」「性別」「住所」。
デジガバサービスを受ける際に自治体が利用してもよい個人情報を聞いたところ、「年齢(82.0%)」「性別(79.4%)」「住所(66.1%)」が過半数で、次いで「世帯構成(46.4%)」との回答が多かった。
行政サービスのデジタル化、特に暮らしの状況や関心に応じた情報提供を検討する際は、まず年齢と性別の利用から始めることで、デジタル化の抵抗を感じている層を軽減することができる可能性がある。
一方で、利用してもよいと回答する人が最も少なかった個人情報は「位置情報(9.5%)」となった。第2弾の調査結果(※4)において、「コロナ対策」「防災・防犯」ともに位置情報を利用したオンラインサービス(近隣における診療所の案内や、災害時における最寄りの避難所の通知、など)が最も求められていたが、これらのサービス推進には、住民に対する便益をしっかりと説明し合意形成を図ることが重要となる。
※1
デジガバへのニーズを尋ねた12の質問
Q1:オンライン市議さんに相談サービスの利用意向について
Q2:自治体から受け取りたい情報の形態について
Q3:暮らしの状況に応じたサービスの利用意向について
Q4:自治体ホームページの分かりやすさについて
Q5:自治体ホームページの分かりやすい箇所について
Q6:自治体ホームページの分かりにくい箇所について
Q7:自治体ホームページや情報誌で見たことのある情報について
Q8:SNSで行いたい行政サービスの種類について
Q9:LINEを起点としたサービス提供について
Q10:防災防犯のオンラインサービスへのニーズについて
Q11:新型コロナ対策のオンラインサービスへのニーズについて
Q12:マイナンバーカードを使った行政サービスへのニーズについて
※2
「自分が住むまちに関する情報を普段よく得ている情報源(A)」、「自分が住むまちに関する情報について、どこから情報を得られるとより暮らしやすくなると思うか(B)」の回答を得点化(この質問は1位から3位までの順位を聞いた。1位=3点、2位=2点、3位=1点の順位別に重みづけをした点数の総得点)し、x軸にAを、y軸にBを位置づけ、現実の情報取得手段と理想の情報取得手段の差異(ギャップ)を可視化した。
なお、本調査票(インターネットパネル調査:デジタルガバメントに関する住民ニーズ調査)の全質問項目および回答項目の一覧情報をご要望の方には、本情報をPDF形式にてお渡しいたしますので、g-pub@glocom.ac.jp宛にデジタルガバメントに関する住民ニーズ調査票のPDFを希望の旨、ご連絡ください。
共同研究について
◆共同研究主体
・国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM) レジリエントシティ研究ラボ
https://www.glocom.ac.jp/activities/project/6864
GLOCOMは国際大学付属の研究所として1991年に設立され、学際的日本研究や情報通信技術の発展・普及に根ざした情報社会の研究と実践を活動の中心におき、産官学民の結節の場として、常に新しい社会動向に関する先端研究所であることを目指す研究所です。当ラボは、持続可能な社会や街づくりを目指し、地域課題の解決策の実践や、レジリエントでスマートな街づくりのデザインについて、デジタル活用の観点から研究しています。
研究代表者:櫻井美穂子
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授/レジリエントシティ研究ラボ代表
ノルウェーにあるUniversity of AgderのDepartment of Information Systems准教授を経て2018年より現職。専門は経営情報システム学。スマートシティ、DX、レジリエンス、サスティナビリティなどをキーワードに自治体や地域コミュニティにおけるデジタル活用について研究している。Hawaii International Conference on System Sciences (2016)およびITU Kaleidoscope academic conference (2013)にて最優秀論文賞受賞。実践研究活動として、ヨーロッパ7か国の大学や自治体が参加するEU Horizon2020「Smart Mature Resilience」プロジェクトに参画。日本では、自治体や企業との協働による「災害時コミュニケーションを促進するICT利活用に関する首長研究会」や「DX街づくり/ビジネスデザイン勉強会」を主宰。
・株式会社サイバーエージェント デジタルガバメント推進室 https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=24592
官公庁・自治体向けに、行政の推進するデジタル化支援全般を行う専門組織です。
調査概要
◆ヒアリング調査
アンケート調査票の設計にあたり、有意抽出の20代~50代の男女8名を対象としたヒアリング調査を2020年12月~2021年1月にかけて実施。
◆インターネットパネル調査
・調査主体:株式会社サイバーエージェント、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
・調査委託先:株式会社マクロミル
・調査時期:2021年2月22日~2月24日
・調査方法:インターネットリサーチ
・調査対象:全国15歳~89歳 4,129人(マクロミルのパネル29,027人を対象とした一次サンプリングで「自治体ホームページの閲覧経験がある」と答えた回答者から、全国15歳~89歳の4,129人を人口構成比に基づく割当法により抽出。)
※以下内訳
15-19才 :230人
20代 :474人
30代 :596人
40代 :703人
50代 :590人
60代 :692人
70代 :535人
80代 :309人
第1回目の調査について
住民と自治体との ”心理的近さ” が、行政サービスのデジタル化ニーズにプラスの影響~デジタルガバメントへの住民ニーズの鍵を探る国際大学グローバル・コミュニケーション・センターとサイバーエージェントの共同調査、第1弾~
第2回目の調査について
住民の行政サービスにおけるパーソナライズ化ニーズは7割超えと高く、また「マイナンバーカード」「コロナ対策」「防災・防犯」分野のオンラインサービス利用意向が高い~デジタルガバメントへの住民ニーズの鍵を探る国際大学グローバル・コミュニケーション・センターとサイバーエージェントの共同調査、第2弾~
第1回目・2回目の調査リリースはこちらでご覧いただけます https://www.glocom.ac.jp/activities/project/6864
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