日立、製造ライン立ち上げと歩留まり向上を支援するプロセスインフォマティクス技術を開発

SEM画像解析とAIを活用し、中間工程品から製品性能を高精度に予測

株式会社 日立製作所

 日立は、日立ハイテクと共同で、最適な製造プロセス探索を支援する「製造プロセス改善ソリューション」*1を進化させる新技術として、製造途中で得られる計測データを用いて、高精度な性能予測を可能とし、製造ライン立ち上げと歩留まり向上を支援するプロセスインフォマティクス技術を開発しました。本技術では、中間工程品のSEM*2画像データから抽出した構造特徴量*3を用いて性能を予測し、その結果を製造情報へフィードバックします(図1)。従来は製造時に設定した情報を基に性能を予測していましたが、中間工程品の構造特徴量を活用することで、製品性能との相関性が高まり、高精度な予測を実現しました。

 今回、リチウムイオン電池の試作ラインを用いた検証において、限られたデータでも従来よりも高精度な性能予測ができることを実証しました。製造プロセスの途中段階で製品性能を見極めることで、現場での試行錯誤に伴う作業者負担を軽減するとともに、製造ラインの立ち上げ期間短縮や歩留まり向上への貢献が期待されます。今後、お客さまとの協創により、本技術による製造ライン高効率化の実証を進めます。また、多様な製造業への適用も視野に研究開発を進め、製造時のロス削減や環境負荷低減を通じて、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

*1 最適な製造プロセス探索を支援する「製造プロセス改善ソリューション」を開発し、インフォマティクス事業を強化:2025年1月23日

*2 走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)。

*3 分析対象物の内部構造に関する特徴を定量的に表した数値。

図1 製造途中の中間工程品から構造特徴量を抽出しプロセスインフォマティクス処理を行うリチウムイオン電池製造プロセスのイメージ

■背景および課題
 近年、製造業では市場ニーズの急速な変化に対応するため、製造ラインの迅速な立ち上げや製造プロセスの効率化が求められています。日立と日立ハイテクは、こうした課題に応えるべく、製造プロセスに特化した独自データベースや生成AIを用いて、高効率な製造プロセスを提案することでお客さまを支援する「製造プロセス改善ソリューション」を発表し、実証を進めています。一方、製品の品質や性能をAIで高精度に予測するには大量の学習データが必要となり、時間やコストの面で課題がありました。そこで、日立と日立ハイテクは、製造途中の中間工程品に着目し、構造特徴量抽出技術とインフォマティクス技術を融合することで、限られた学習データでも製品性能を高精度に予測するプロセスインフォマティクス技術を開発しました。

■課題を解決するために開発した技術

1. 中間工程品の構造特徴量を用いた性能予測モデル
 リチウムイオン電池製造途中の中間工程品である電極シート*4の構造特徴量を抽出し、機械学習モデルに適用することで、限られたデータでも高精度な電池性能予測が可能であることを試作ラインで確認しました。従来は電極製造時に設定した製造情報を説明変数*5として入力していましたが、今回、中間工程品の構造特徴量を活用することで予測誤差が低減しました(図2)。さらに、説明変数の寄与度を評価した結果、構造特徴量と目的変数*6である電池性能の相関性が明確となりました。現場で根拠をもって予測結果を活用できるようになることで、製造ライン立ち上げ時の試行錯誤や作業者負担の削減に寄与することが期待されます。

*4 電池の構成要素の一つで、活物質や導電助剤などを集電体に塗布したシート状のもの。

*5, 6 説明変数は機械学習モデルの入力として使用され、目的変数(予測したい変数)に影響を与える変数のこと。

図2 性能予測の一例: (a)従来、および(b)今回開発した機械学習モデルの予測精度検証結果。予測対象は電極内のイオン伝導抵抗。赤点線は予測一致を意味する。MAEは予測誤差の平均値を示す。

2. SEM画像解析による構造特徴量抽出技術
 日立ハイテクが開発した高真空を必要としないSEMを用いることで、電極シート表面の観察像を数分で取得し、画像解析により、電極中の凝集および空隙構造や構成要素の分布を反映した重要な構造特徴量を抽出する技術を開発しました。本技術により、電池性能を測定する前の段階で、中間工程品である電極シートの良否判別が可能となります。製造工程における品質異常リスクを早期に検知し、迅速な対応が可能となり、製造プロセスの効率化に繋がることが期待されます。

■今後の展望
 今後、日立は本技術の更なる高度化に向けた研究開発を進め、お客さまとの協創を通じて、幅広い分野での製造プロセス効率化を支援していきます。また、現場作業者の負担軽減に取り組みながら、製造ロス削減・環境負荷低減によるカーボンニュートラル社会実現に貢献していきます。

 なお、本成果の一部は6月25~26日にドイツで開催されるAABC(Advanced Automotive Battery Conference)  Europe 2025, Global Battery Manufacturing Productionで発表予定です。

■関連情報

日立の研究開発ウェブサイト

■照会先

株式会社日立製作所 研究開発グループ

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会社概要

株式会社 日立製作所

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業種
情報通信
本社所在地
東京都千代田区丸の内一丁目6番6号
電話番号
03-3258-1111
代表者名
小島 啓二
上場
東証プライム
資本金
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設立
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