「ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし」展 究極のロードムービー『夢の涯てまでも ディレクターズカット 4K レストア版』東京都写真美術館で10日間の限定上映が決定
30年の時をこえてアーティスト・写真家としての重要作「Electronic Paintings」「Written in the west」を”N&A Art SITE”で展示
このたび、現代 ドイツを代表する映画監督・写真家である、ヴィム・ヴェンダースの展覧会『ヴィム・ヴェンダースの透明な まなざし』を エヌ・アンド・エー株式会社(代表取締役:南條史生)が企画運営を行うN&A Art SITEにて、2024 年 2 月 1 日(木)から 3 月 2 日(土)まで開催いたします。
本展では、ヴェンダースが「究極のロードムービー」と称する『夢の涯てまでも』(91)のクライマックスシーンから生み出された、鮮烈な色彩の電子絵画作品「Electronic Paintings」(91)に加え、『パリ、テキサス』(84)ロケ時にヴェンダースが撮影し、写真家としての氏の才能を知らしめたアメリカ中西部の風景写真「Written in the west」(83)シリーズを展示します。
さらに「恵比寿映像祭2024『月へ行く30の方法/30 Ways to Go to the Moon』」の地域連携プログラムの一環として、2月20日㈫から3月1日㈮(2月26日、2月29日を除く)、3月20日(水・祝)の10日間にかけて『夢の涯てまでも ディレクターズカット 4Kレストア版』(94)を東京都写真美術館にて上映する他、本展に関するドキュメンタリー映像上映・トークイベントを開催することが決定いたしました。
■開催概要
展覧会名:『ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし / Wim Wenders’s Lucid Gaze』
アーティスト:ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders
会期: 2024年2月1日(木)―3月2日(土) 12:00-17:00 (日) (月) (祝) 休
会場: N&A Art SITE(東京都目黒区上目黒1-11-6 / 東急東横線中目黒駅より徒歩5分)
企画: 御影雅良 Mikage Masayoshi キュレーション: 墨屋宏明 Sumiya Hiroaki
主催: DART株式会社(代表取締役:墨屋宏明)、GCI BOOKS(代表:御影雅良)
特別協力:東京都写真美術館、エヌ・アンド・エー株式会社(代表取締役:南條史生)
協力: 東北新社、Criterion Collection
ウェブサイト:https://nanjo.com/wim_wenders_lucidgaze/
※展示作品は一部を除き販売いたします。
※作品のご購入は会場でのお申込制です。
●関連イベント
① 『夢の涯てまでも ディレクターズカット 4Kレストア版』上映
「恵比寿映像祭2024『月へ行く30の方法/30 Ways to Go to the Moon』」地域連携プロ
グラムの一環として、2月20日㈫から3月1日㈮(2月26日、2月29日を除く)、3月20日
(水・祝)の10日間にかけて東京都写真美術館にて『夢の涯てまでも ディレクターズカット
4Kレストア版』を上映いたします。
会場:東京都写真美術館 1F ホール
期間:2024年2月20日㈫―3月20日(水・祝)(休映日: 2月26日、29日、3月2日-3月19日)
上映時間:12:50-17:50|2月20日㈫、21㈬、24㈯、25㈰、27㈫、28㈬、3月20日(水・祝)
15:50-20:50|2月22日㈭、23㈮、3月1日㈮
※上映時間と同時に本編が始まります。余裕を持ってご来場ください。
※前半(133分)と後半(156分)の間に、10分間の休憩を予定しております。
料金:当日券(座席指定券)一般 2,200円
※当日券は、美術館開館と同時に、東京都写真美術館1階受付にて販売します。各種割引及び前売券はございません。
定員:190席
ウェブサイト(東京都写真美術館):https://topmuseum.jp/contents/exhibition/movie-4809.html
[上映前トークイベント]
ヴェンダースがみた「過去から未来へのまなざし」 『夢の涯てまでも』から『PERFECT DAYS』
日時:2024年2月25日(日) 11:00-12:00 (12:50の回上映前)
登壇者(予定):御影雅良(『夢の涯てまでも』アソシエイト・プロデューサー)
高崎卓馬(『PERFECT DAYS』企画・共同脚本・プロデューサー)
モデレーター:墨屋宏明(『ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし』展キュレーター)
※トークの内容に一部、映画のストーリー等に関する情報が含まれます。
※ご参加は、当日の上映回の座席指定券をお持ちの方が対象です。
※トークイベント終了後 12:50より上映を開始いたします。
② ドキュメンタリー『ヴィム・ヴェンダース イン 東京』上映
1990-91年に東京を訪れたヴェンダースが、 NHK 編集室において当時の最先端映像技術であったハイビジョン(Hi-Vision)を用いて制作した「夢のシークエンス」の制作ドキュメンタリーをN&A Art SITEにて上映いたします。
タイトル:『ヴィム・ヴェンダース イン 東京』(90) ※上映時間 1時間3分
会場:N&A Art SITE
期間:2024年2月1日㈭― 3月2日㈯ ※(日) (月) (祝) 休
上映時間:12時の開廊と同時に上映開始 (1時間3分毎にループ上映)
『夢の涯てまでも ディレクターズカット 4Kレストア版』 本作に至るまでの長い道のり
1977から78年にかけて、オーストラリアを訪れたヴェンダースは、アボリジニの「夢の道」とも言われるソングラインのアイデアに魅了され、「The End of the World(世界の終わり)」についての思考をめぐらせ、S F作品の脚本を書き始める。これが『夢の涯てまでも』の長い構想の始まりだった。それから、3度にわたり映画化を試みたが実現せず、その間に『パリ、テキサス』(84)と『ベルリン天使の詩』(87)を制作した。ようやく構想から14年の歳月を経て撮影に至るが、試写段階で約9時間だった本作に対して、ヴェンダースは2時間半の作品として提供する契約の義務を負っていた。しかし、同時にそれは不可能に近い約束だと監督自身は悟っていた。1991年の初公開時、無惨にも半分以上も切り刻まれた本作は、興行的に大失敗することになる。
ヴェンダースはその後、納得のいくロングバージョンとして発表するために、再編集の権利を得て、5時間のディレクターズカット版(94)として美術館などのイベントで上映し始め、2015年には、遂に劇場公開することができた(日本での劇場公開は2021年)。この大作はヴェンダース自身が「究極のロードムービー」と称してきたが、今では完全な傑作として世界中のメディアが評している。
1991年当時、インターネットという言葉も普及していなかった時代に、映画の中に数多く登場するハイテク機器をウェンダースが預言したことにも驚かされるが、コロナ禍でテクノロジーにどっぷり浸かった、私たちの現代の生活と重ね合わせてみることで、ヴェンダースが「The End of the World(世界の終わり)」を示唆した警告としても感じ取ることができるのではなかろうか。
また、もう一つのこの映画の魅力は、サウンドトラックと衣装にある。当時、ヴェンダースは、U2、ルー・リード、トーキング・ヘッズ、パティ・スミス、R.E.M.ら錚々たるミュージシャンらにシンプルに「90年代末に創作しているかもしれない音楽」を依頼したのだ。そして、主人公の衣装は、ヴェンダースがドキュメンタリー作品『都市とモードのビデオノート』(89)で追いかけたファッションデザイナー・山本耀司が手がけている。ヴェンダースが愛するクリエイターたちが、「過去に見た未来」の姿は、2024年のいま、これまでのヴェンダースの様々の作品を思い起こさせる懐かしさも感じられるだけでなく、作者自身が「最も好きな映画」ともいうだけあって、これからのヴェンダースファンにとっても見逃せない作品と言える。(文:墨屋宏明)
『夢の涯てまでも ディレクターズカット 4Kレストア版』
BIS ANS ENDE DER WELT - Director’s Cut
監督・脚本・原案:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ピーター・ケアリー
原案:ソルヴェイグ・ドマルタン
撮影:ロビー・ミューラー
編集:ペーター・プルジゴッダ
録音:ジャン=ポール・ミュゲル
美術:ティエリー・フラマン
出演:ウィリアム・ハート、ソルヴェイグ・ドマルタン、
サム・ニール、ジャンヌ・モロー、笠智衆
1994/ドイツ・フランス・オーストラリア/カラー/ヨーロピアン・ビスタ/287分
■展覧会に寄せて
「世の中、大いに変わったよね。あの頃は、僕たちが最初にハイデフィニション・デジタル・アートの出現をこの目で、あそこのNHK編集室で目撃したのだよ。覚えているだろう。」とヴィム・ヴェンダースは、私の問いかけ(そろそろ「Electronic Paintings」の展覧会をやらないか)にすぐに応えた。2022年5月のある日のこと、新作映画『THE TOKYO TOILET』(現『PERFECT DAYS』)の制作発表会があり、ヴィムから連絡があって私たちは32年ぶりに再会した。ほぼ2時間に渡り旧交を日本酒で温めて、話は多岐に渡った。大きな場所でやるにはもっと考えないと、今のデジタルが当たり前な世代には「伝わらない」かも、という懸念が彼にはあった。しかし、まずは小さな空間で33年前の始まりの姿を観てもらう事に意味がある、と理解を示してくれた。私は、今回展示するヴィムの作品群は、日本で生まれたテクノロジーを使ってアートを作り上げた美術史に残る傑作だと思っている。
御影雅良(『夢の涯てまでも』アソシエイト・プロデューサー)
■展示作品について
『夢の涯てまでも』のシーンで、主人公の盲目の母親は、最新鋭の機械を通して、主人公が世界中を旅しながら撮影したイメージを脳内で「見る」ことになります。そのクライマックスとなるシーンは、1990-91年に東京の NHK 編集室において、当時の最先端映像技術であったハイビジョン(Hi-Vision)で制作され、ヴェンダースによって「夢のシークエンス」と名付けられました。ヴェンダースは制作の過程で、8ミリフィルム、16ミリフィルム、ビデオ画像、写真、ドローイングなどのアナログデータをデジタルデータに変換したときに、見た事もない絵のような幻影を偶然発⾒します。これらのイメージに主演俳優らの写真を撮影・合成し、鮮烈な視覚表現を作り上げました。その「動く絵画」の中からヴェンダース自身が静止画像を取り出し、画像・色彩を操作しながら、当時最先端の印刷技術で高精細に出力した作品シリーズは「Electronic Paintings」と名付けられました。
ヴェンダースは「我々が行ったのは、ひとつの画像(フレーム)を構成している何百万という画素(ピクセル)の電⼦媒体を、⾃由に解き放してみようという試みだった。もし画家と同じように、⾃らの⾃然と湧き上がる意思で、絵筆やチョーク、絵具を使うように電⼦媒体をコントロールした場合どうなるかという実験だった。」と書いています。会場で同時に展示する本映画制作当時の貴重なドキュメントからは、当時の画期的な制作の様子や時代背景を窺うことができます。
さらに本展では、映画『パリ、テキサス』撮影時の⽶国ロケハンでヴェンダースが撮影したアメリカ中西部の風景写真「Written in the west」シリーズを展示します。アメリカ中西部の荒涼とした砂漠に点在する、人々に忘れ去られたような商業施設、澄み切った空には、ヴェンダースが捉えた「世界の涯て」が映し出されています。
今回、日本で30年以上保管していたヴェンダースの署名⼊り 「Electronic Paintings」(A/Pポートフォリオ)及び、「Written in the west」シリーズから出展が可能となりました。
ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざしは、映画の制作時から30年以上を経た現代社会において、テクノロジーから生み出される表現とは何か、そして、私たちがこれから歩む未来を生きるための新しい視点を提示してくれます。
■ヴィム・ヴェンダース|Wim Wenders
1945年ドイツ・デュッセルドルフ生まれ。ミュンヘン大学で映像制作を学び、1967年から映画監督としての活動を開始する。長編映画デビュー作『ゴールキーパーの不安』(71)で第32回ヴェネツィア国際映画祭 国際映画批評家連盟賞を受賞。その後も『ことの次第』(82)でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、『パリ、テキサス』(84)でカンヌ国際映画祭パルム・ドール、『ベルリン・天使の詩』(87)でカンヌ国際映画祭監督賞、『ミリオンダラー・ホテル』(00)でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞と、国際的な活躍を続ける。大の親日家でもあり、85年には、小津安二郎監督へのオマージュ作品『東京画』を製作。最新作『PERFECT DAYS』(23)では、主演を務めた役所広司がカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞し、国内外から注目を集めている。写真家としても、ポンピドゥーセンターでの『Written in the west』展(86)を皮切りに、ビルバオ・グッゲンハイム美術館(02・スペイン)、上海美術館(04・中国)など、世界各地の美術館で展覧会を開催。2022年には第33回高松宮殿下記念世界文化賞(演劇・映像部門)を受賞。
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